クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』。
世界の滅亡を阻止するスパイアクション映画ですが、ノーラン監督の作品の中でも、かなり難解な作品でもあります。
「時間」にこだわった作品が多い中、今作で描かれるのは「時間の逆行」。
ただ時間をさかのぼるのではなく、時間の逆行と順行が絡み合っているため、1度観ただけですべてを理解することはさすがに難しいほど複雑で、緻密に作り上げられた作品になっています。
しかし1度鑑賞した後、ルールや世界観をすると、たとえ科学や量子物理学に興味がなくても、大まかな現象は理解可能になります。
つまり『TENET テネット』は2度目からの鑑賞の方が、より楽しめる作品なのです。
というわけで、今回はそんな『TENET テネット』の複雑なタイムラインを整理して、時系列を理解しやすいよう、解説していきたいと思います。
『TENET テネット』の時系列を解説&考察
名も無き男の時系列
まず主人公である名もなき男の行動を、簡単に整理してみます。
- オペラハウスでのテロ
- 捕まって拷問されるも、謎の男に助けられる
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- 時間逆行の研究施設へ導かれる
- ムンバイで手がかりを得た後キャットに会い、オスロ空港へ
- アマルフィでセイターと接触、プルトニウム奪還に失敗
- 時間を逆行させる装置を見る
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- 逆行でカーチェイス
- そのまま逆行で2度目のオスロ空港へ
- 順行に戻り、プリヤに会う
- 14日のスタルスク12へ逆行、最終決戦
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物語の進行上での名もなき男の動きを見ると、逆行したのはセイターに捕まり部隊に助けられてからオスロ空港までと、プリヤに会ってから最終決戦までの2回。
主人公の視点で観るとわかりやすいのですが、他の登場人物が絡むと複雑かつ難解になってきます。
くりす
- 14日、キエフのオペラ劇場で、プルトニウム(アルゴリズム)を手に入れる作戦に参加
- 逆行弾を目撃、謎の人物に助けられる(実は未来から逆行してきたニール)
- ロシア人(セイターの部下)に捕まって拷問を受け服毒自殺するが、助けられて気付けば船の中に
- 研究施設に導かれ、研究員のバーバラから逆行する弾丸などについて説明を受ける
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- 逆行弾の手掛かりを追い、インドのムンバイへ
- 協力者のニールと会い、一緒に逆バンジー
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- 武器商人の家に押し入り、妻のプリヤ(夫ではなく、彼女が権力を握っている)から情報を得る
- ロシアの武器商人セイターに近付くため、妻のキャットに接触
- オスロ空港内に保管されているゴヤの贋作を盗むため、ニールと作戦を練る
- 保管庫のシステムを解除させるため、ジャンボジェットを保管庫に激突させる
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🇺🇸アメリカ合衆国
『#TENETテネット』舞台裏
国衆合カリメア🇺🇸✈️《ジャンボジェット実機》を激突
🔴クライマックスの《挟撃作戦》🔵観客の度肝を抜く、前代未聞の見せ場はどのようにして生まれたのか⁉
驚天動地な舞台裏の詳細はこちら▼https://t.co/wMS0qMBWZ8 pic.twitter.com/ThCFUklac2
— 映画『TENET テネット』公式 (@TENETJP) October 21, 2020
- 保管庫に侵入、そこで回転式の不思議な装置を発見
- 装置から出てきた謎のマスクの男と戦うことに(実は未来の自分)
- 贋作は手に入れられなかったものの、キャットに何とかセイターを紹介してもらう
- ニールと共に、タリンでプルトニウム(アルゴリズム)奪還作戦を決行
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- 一度はプルトニウムが入ったケールを手に入れるものの、キャットを人質に取ったセイター(未来から逆行してきた)が現れ、カーチェイスになる
- 最終的にセイターの部下に捕まる
- 倉庫でセイターから尋問を受けるが、テネットの部隊が現れて助かる
- 倉庫にあった装置で逆行したセイターを追って、自らも逆行
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- 先刻のカーチェイス現場に戻るが、プルトニウム回収は失敗、セイターに凍らされる
- 部隊に助けられた後、キャットを助けるために、ジェット機を爆破させた過去のオスロ空港まで逆行する
- 過去の自分と遭遇して、格闘になる
- 装置に入って順行の時間に戻り、過去のニールと接触、ニールがこの時しっかりと「自分」を認識していたことを知る
- ニールとキャットも装置に入って順行へ変更、キャットを救うことに成功する
- プリヤと話して、アルゴリズムがそろうと世界が逆行して消滅すると知る
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- ニールや部隊と共に逆行して、オペラハウスのテロが起きた14日のスタルスク12に向かう
- レッドチームとして、決められた時間の10分前から巡行で作戦に参加
- ニールは決められた時間の10分後から、逆行するブルーチームで作戦に参加、キャットはアルゴリズム奪還後に夫のセイターを殺すため、過去の自分と上手く入れ替わってヨットに乗り込む
- レッドチームのアイブスと施設の中に入るものの、セイターの部下がセットした爆弾で、入口が崩れてしまう
- そのまま地下に向かうが、格子扉の鍵が開けられず危機に陥る
- 扉の向こうに倒れていた死体(実はニール)が逆行して起き上がり、鍵を開けて去って行く
- キャットはセイターを合図前に殺してしまうが、アルゴリズムは無事回収、ニールの助けで施設からも間一髪で脱出する
- この先の未来で、自分が戦いのリーダーになると教えられ、ニールと別れる
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- その後、プリヤに殺されそうになっていたキャットを救う
タリンでのプルトニウム(アルゴリズム)奪還作戦時、名もなき男とニールが乗った車のドアミラーには最初からヒビが入っているのですが、カーチェイス中に撃たれて、ヒビが直っています。
細かい点にこだわり、逆行の手がかりを残す辺り、ノーラン監督らしいと言えばらしいですね。
くりす
時間が逆になっても、熱いものは熱いままのはずなので、名もなき男が凍るのも本当はおかしいはずで、この辺りは「映画」としての面白さを取り、わざと採用したシーンなのかなと思っています。
ニールの時系列
次にニールの視点で、物語の最初からの動きを追ってみます。
- 未来から逆行(何歳の時からだったかや、何年かけてやって来たのか、などはすべて不明)
- オペラハウスで主人公・名もなき男を救う(顔は見えないためこの時点では正体不明、バックに付いたオレンジの飾りが手掛かり)
- 名もなき男から協力を求められ、ムンバイで出会う
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- (最終決戦までは、名もなき男と一緒の時系列で行動)
- 最終決戦では、決められた時間の10分後から逆行するブルーチームとして、作戦に参加
- 名もなき男とアイブスが突入する施設の入口に、セイターの部下が爆弾を仕掛けるのを確認
- 彼らを助けるために、装置に入って逆行から順行へ
- ジープからロープを垂らして、無事に名もなき男とアイブスを救出することに成功
- 名もなき男がニールのバックに付いたオレンジの飾りを見て、オペラハウスで助けてくれたのがニールと知ったため、真実を話す
- 友情の終わりを告げて、名もなき男から去る
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ここからは作品内でしっかりと描かれていませんが、名もなき男と別れてからニールは逆行して施設の地下に戻り、格子扉を開けてセイターの部下に撃たれて死亡します。
名もなき男が施設の地下で見た死体、格子扉の向こう側で死んでいたのに生き返り扉を開けて去って行くのはニールです。
死体のバックにはオレンジの飾りが付けられているので、死体がニールだったというヒントはちゃんと残されています。
くりす
ただ、最終決戦後に真実を告げた時、友情の終わりと言っていることから、ミッション成功のためこれから死にに行くことは、わかっていたのでしょう。
友情の始まりと終わりは同じ時点というのは、逆行を描いた作品らしい悲劇と言うか、皮肉と言うべきか。
くりす
いつ名もなき男と出会ったのかとか、やはりキャットの子どもなのかとか、謎がいっぱいで明かされないままなんですよね、ニールというキャラクターは。
そして鍵を開けるのが得意とアイブスも言っているので、ニールが世界を救うために逆行して鍵を開けに行って死ぬことはアイブスもわかっていたのかもしれません。
くりす
考え出すと止まらなくなるのでここはわかりやすい演出だったと思うのが良いのでしょうね。
キャットの時系列
次は、キャットについてです。
キャットがセイターとテネットの戦いや逆光現象に巻き込まれるのは、カーチェイス前からなので、セイターに倉庫で暴行されるところから順に追って行きます。
- フリーポートに連れて来られる
- 夫のセイター(順行)に暴行を受け、アウディに乗せられる
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- 逆行してきたセイターにそのまま連れられ、カーチェイス時の人質にされ、そのまま拉致される
- 装置のある部屋で、逆行セイターに逆行銃で撃たれる
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- 名もなき男、ニールと共に逆行してオスロ空港へ向かい、傷を治癒させようとする
- 巡行に戻る
- 再び逆行して14日へ行ってから順行に戻り、過去の自分が息子とヨットを降りたことを利用して、セイターの乗るヨットに乗り込む
- セイターを殺し、ヨットから脱出
- 学校に息子の迎えに来たところで、名もなき男に言われていたように、記録として時刻と場所の音声メッセージを残す
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さて、どうしてもわからないのが、キャットの撃たれた傷についてです。
くりす
そこは無視して考えても、逆行に入っても、逆行した人間の時間の流れが遅くなったり肉体が自然に回復するわけではないはずです。
なので、キャットが逆行しても怪我は治らない、傷が治るとしたら逆行弾で撃たれた瞬間に傷がなくなる、全快する、が正しいのではないでしょうか。
くりす
そうでないと、若返ってしまう現象も起きるような…。
一体どういうルールで時間稼ぎができたのかは、詳しく知りたいところです。
くりす
セイターの時系列
そして、もっとも行動を追いにくいのがセイターです。
タリンの倉庫からの行動を追ってみましょう。
- 倉庫でキャットと口論、暴行する
- (倉庫内の装置で逆行)
- 名もなき男がアルゴリズムの入ったケースを奪ったタイミングで現れ、キャットを人質にアルゴリズムを要求
- 空のケースを渡される
- 倉庫に戻って名もなき男を尋問、キャットを逆行銃で撃つ
- 装置に入る(順行へ)
- もう一度尋問
- テネットの部隊が来ため、装置に入り逆行で逃亡、追ってきた名も無き男の車を爆破
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- (映画では描かれていないものの、この後アルゴリズムを回収して、14日のベトナムまで逆行する)
- 順行に戻って、ベトナムにいく(ヘリでヨットに到着)
- 自殺するタイミングで、爆発を起こし世界を滅ぼそうとするものの、逆行してきた(前日くらいに順行に戻っていると思われる)キャットに射殺される
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とにかくわかりにくいのが、タリンでのセイターの動きです。
マスクをしていたら逆行のセイターと部下たち、していなかったら順行と思って観ていると、フリーポートにキャットが初めて連れて来られた時、すでにマスクをしたセイターの部下が車の運転席にいたなど、細かい点に気付きやすいかも。
くりす
『TENET テネット』の時系列を解説&考察まとめ
🔥ENTROPY
《エントロピー》
YꟼOЯTИƎ🧊《時間の矢》の原因は、「乱雑さ」を意味するエントロピー。紅茶にミルクを入れると混ざり合っていくように、秩序だった状態は次第に乱雑に…エントロピーは時間と共に《増大》していく。
つまりそれが《減少》したら、時間は…?#TENETテネット pic.twitter.com/8TJ81ETU9S
— 映画『TENET テネット』公式 (@TENETJP) October 15, 2020
さて、ここまで『TENET テネット』のキャラクターそれぞれの時系列を、整理してきました。
正直まだまだ謎はあり、何度も鑑賞することで理解が深まるとともに新しい発見もあります。
謎を解き明かすために、すでに複数回鑑賞している人も多いはず。
くりす
少し調べるだけでも、なるほどと納得いくことがありますよ。
『TENET テネット』を存分に楽しむには、最低でも2回見ることを強くおすすめしたいと思います!
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