今回の記事では、2020年9月18日に公開される『TENET テネット』の興行について深掘りしていきます。
度々の延期を重ねていた『TENET テネット』は世界同時公開ではなく、公開ができそうな国から順次公開していくということになりました。
ハリウッドの大作はネタバレ防止の為に世界同時公開するということが普通ですが、昨今の異常事態に合わせた公開の仕方となり、本当に良かったと思います。
そのため、すでに海外では上映が始まっており、日本が世界最遅公開です。
ハリウッド大作は世界同時公開が当たり前の中、こういった柔軟な対応をしたワーナーブラザーズの決断力は賞賛に値します。
この記事ではずばり『TENET テネット』が観客に映画は映画館で観るのがやっぱり良いと思わせるのか、配信でも充分だと思わせるのかについてデータも交えつつ考察していきたいと思います。
目次
『TENET テネット』が映画界を左右する作品である理由
コロナウイルスが映画界に与えた影響
『TENET テネット』が映画業界の未来を左右するほどの影響力があるかもしれないことについて述べていく前に、新型コロナウィルスが映画業界に与えた影響について数字から見ていきたいと思います。
そこで2019年の世界興行収入ランキングトップ10を振り返ってみます。
- 第1位『アベンジャーズ/エンドゲーム』:27億9,780万564ドル
- 第2位『ライオン・キング』:16億5,694万3,394ドル
- 第3位『アナと雪の女王2』:14億5,002万6,933ドル
- 第4位『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』:11億3,192万7,996ドル
- 第5位『キャプテン・マーベル』:11億2,827万4,794ドル
- 第6位『ジョーカー』:10億7,425万1,311ドル
- 第7位『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』:10億7,414万4,248ドル
- 第8位『トイ・ストーリー4』:10億7,339万4,593ドル
- 第9位『アラジン』:10億5,069万3,953ドル
- 第10位『ジュマンジ/ネクスト・レベル』:7億9,657万5,993ドル
これらの興行収入の数字を見ると、2020年になって新作がほとんど稼げないと言っているのが嘘みたいに信じられないくらい稼いでいます。
イッシー
2019年の世界興収ランキングの特徴としては、トップテンのうち9位までの作品が10億ドル(約1,000億円)を超え、27億ドル以上稼いだ1位の『アベンジャーズ/エンドゲーム』は世界歴代興収ランキングでも1位になったこと、そしてディズニー作品だけで世界興収が約100億ドル(約1兆円)を超えたということです。
このように、2019年は映画業界がかつてないほどのとんでもない額を稼いだ年だということが分かります。
当然、映画業界の誰もが2020年もこの勢いが続くと思っていたはずです。
しかし新型コロナウィルスが中国から世界に広がり始めパンデミックになり、世界中の映画館が数ヶ月間全く営業ができなくなっただけで、パラダイムシフトが起こるかもしれない事態になってしまったのです。
このパラダイムシフトがどういうものかというと、新作は映画館でかけられてから、配信になるという今までの流れから映画館でかけられずにいきなり配信されることになる時代がくるかもしれないということです。
イッシー
2020年の世界興行収入を見ると、新型コロナウィルスの影響をもろに受けなかった『バッドボーイズ フォー・ライフ』が4億2,461万7,855ドル稼いでいますが、新型コロナウィルスの影響をもろに受けた『ドクター・ドリトル』は2億4,589万1,166ドル、『2分の1の魔法』は1億3,064万3,844ドルに留まっています。
2作とも新型コロナウィルスの影響がなかったらもっと稼げたはずの作品なので、新型コロナウィルスが映画業界に与えた影響の大きさが実感できます。
そして世界中の映画館が営業できない間、各映画会社は新作を延期にしたり、劇場公開せずに配信のみにしたりなどの対処をしていました。
イッシー
それはユニバーサル社が2020年4月10日(日)に配信した『トロールズ ミュージック★パワー』が大きな利益を上げ、成功を収めたということです。
この作品が配信された時期がちょうど、世界の都市がロックダウンされていた時期と被っていたということが大きな要因としてあったのかもしれません。
しかしこの作品の成功によって、ユニバーサル社が自社作品の劇場公開と配信を同時に行うことを視野に入れていると発表しましたが、世界中に映画館を展開している映画館の運営会社各社が猛反発し、同時ということにはならず、新作が劇場公開されてから配信まで日数を空ける方向に落ち着きました。
イッシー
そんなすぐに配信のみの新作が増えるということはないと思います。
しかし映画館側に利益の一部を支払わなくていいぶん、配信の方が映画会社に入ってくる利益も多くなるということもあり、映画会社は徐々に配信のみの新作を増やしていくかもしれません。
2020年も後半になり、世界各地の映画館が感染対策をしながら営業を再開し始めていますが、通常より販売座席数を減らしているため、まだまだ興行収入としては苦しい数字が続いています。
【座席間隔のガイドライン”改定”を要請】
映画館では、ガイドラインで定められ #前後左右は空席#TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 副支配人
「どんなに頑張っても五割以上の回復は見込めない。このまま続くと営業も厳しくなる店舗も」#報ステ #報道ステーション— 報道ステーション (@hst_tvasahi) August 26, 2020
それに、映画館が再開し始めたと言ってもまだまだ安心はできません。
新型コロナウィルスの流行がまた再拡大してしまえば、映画館が再び営業停止になる可能性もあります。
そうなると、やっと映画業界に出始めた勢いがまた無くなってしまいます。
イッシー
▼2019年の興行収入についての記事はこちら▼
『TENET テネット』が重要作である理由
『TENET テネット』は今後の映画業界を左右する作品です。
イッシー
つまり、映画会社は新作を劇場公開ではなく配信のみにすることに対して異常事態時の一時的な措置と考えている一方で、観客は映画館での鑑賞に拘らず配信で早く見たいと思っている人が多いということです。
映画会社は新作を配信のみにするということに対してまだまだ慎重な姿勢を崩しておらず、そんな短期間の間に映画業界の構造が大きく変わることはないと考えています。
ただ、新型コロナウィルスの影響により家にいる時間が長くなった観客は、新作を配信で見ることが当たり前になるかもしれない未来を受け入れる準備をしつつあります。
こういう状況であれ、配信されていたとしても映画館に足を運んでくださったお客様たち。感謝です。観客の皆さまの顔を目にしすると映画を作って行こうと、気持ちを新たにしました。映画『劇場』は8/13まで映画館で上映しています。
是非、映画館で観て頂きたい映画です。
よろしくお願いします。 pic.twitter.com/Q9KlgSfFhZ— 行定勲 (@ISAOYUKI) July 30, 2020
まさに時代の狭間といえる時に超大作『TENET テネット』が公開されることは非常に重要な意味を持ちます。
『TENET テネット』はスパイ映画ですが、時間逆行がテーマとなっているため、普通のスパイ映画とはまるで違います。
時間逆行がテーマになっているというということは、逆再生の映像がふんだんに使われているということであり、それが『TENET テネット』の一番の醍醐味です。
『TENET テネット』が観客に映画は映画館で観るべきか、配信でも充分なのかの判断材料にふさわしい理由は、その映像にあります。
イッシー
しかし『TENET テネット』の逆再生される未知なる映像体験は、観客の気持ちを揺さぶる充分な力があると思っています。
ストーリーが衝撃的な映画も観客の心に強く残りますが、今までに誰も見たことがないような刺激的な映像がある映画もまた観客の心に強く残るものです。
例えば『マトリックス』シリーズなどは映像で観客の度肝を抜いた映画と言えるでしょう。
『マトリックス』シリーズも『TENET テネット』も難解なストーリーでありながらも映像でとにかく観客の興味を惹きつけるという作風は同じです。
『マトリックス』シリーズは公開時大ヒットしそれから何年経っても熱心なファンに支えられ、さらにまさかの4作目の制作が決定されるという話になれば、映画業界がざわつくほどの人気作です。
イッシー
そして観客が映画は映画館で観るのがやっぱり良いと思うのか、配信でも充分だと思うのかは最終的には観客の気持ち次第だと思います。
クリストファー・ノーラン監督は映画館で特別な体験ができる『TENET テネット』という作品を準備したので、後は観客の映画館で映画を見ることに対する不安な気持ちより、映画館で見たい気持ちが上回るかにかかっています。
イッシー
『TENET テネット』のヨーロッパやアジアなどのすでに公開されている地域での初週の興行収入は5,600万ドル以上でした。
通常より、25%~50%の座席数しか販売されていないことを考えると、大健闘したと言える数字だと思います。
イッシー
ただ、この結果が映画業界の未来に直接結びつくとは言えないと思います。
何故なら初週に映画館に行く観客は、初めから映画は映画館で観るものと思っている人の可能性が高いからです。
注目すべきなのは、これからの興行収入の推移です。
イッシー
なので、しばらく『TENET テネット』の興行収入を注視しておく必要がありそうです。
本当に5億ドル稼げるようなことがあったら、人々の中から映画館で映画を観たい気持ちが消えていなかった何よりの証明になると思っています。
『TENET テネット』は映画業界の今後を左右する重要作:まとめ
◤ 『#TENETテネット』
断トツのNo.1大ヒット!◢9/4(金)からアメリカで遂に公開!
✅全米初登場No.1!
✅中国でノーラン史上最高のオープニング興収!
✅世界興収1億5,000万ドルに迫る!『TENET テネット』現象
\全世界に吹き荒れる!/ pic.twitter.com/1djJ0rRog9— 映画『TENET テネット』公式 (@TENETJP) September 7, 2020
ここまで『TENET テネット』が映画業界が今まで通り劇場公開を主流にしていくのか、配信のみの作品を将来的に増やしていくのかについて掘り下げて述べてきました。
イッシー
『TENET テネット』の公開に合わせて2020年7月に期間限定で公開されていた『ダークナイト』を見に行った時に本当に思ったのが、映画に対する没入感が映画館で観るのと家で見るのとではまるで違うということです。
イッシー
こういった経験をすると、過去に公開された作品は配信でも構いませんが、始めて観る新作は映画館で観たいなと強く思います。
新型コロナウィルスのことを考えると、映画館で映画を観ることに不安があり、配信でも良いから早く見たいという気持ちも分かります。
自分の観たい映画が何度も延期されるとその分さらに待たされることになりますからね。
イッシー
でもだからこそ『TENET テネット』にはこの先、しっかり世界興収で5億ドル以上を稼いで、観客に映画は映画館で観るべきと再び思わせて欲しいなと思います。
そして映画業界がかつてないほどの活況を見せた2019年のような盛り上がりになることを期待しています。
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