庵野秀明による大ヒットアニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの最新作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。
1995~96年に放送されて社会現象を巻き起こしたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をリビルドし、全4部作で描いたシリーズとなっています。
2007年に公開された第1部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、09年の第2部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』、12年の第3部『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に続く今作は、「新劇場版」シリーズの集大成であり完結作です。
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今回はそんなアニメ映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』をネタバレありでご紹介します。
▼鑑賞前の振り返りの記事はこちら▼
目次
- 1.映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』作品情報
- 2.映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』あらすじ【ネタバレなし】
- 3.映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』キャラクター/声優
- 3.1碇シンジ / 緒方恵美
- 3.2綾波レイ / 林原めぐみ
- 3.3アヤナミレイ(仮称) / 林原めぐみ
- 3.4式波・アスカ・ラングレー / 宮村優子
- 3.5真希波・マリ・イラストリアス / 坂本真綾
- 3.6葛城ミサト / 三石琴乃
- 3.7赤木リツコ / 山口由里子
- 3.8加持リョウジ / 山寺宏一
- 3.9碇ゲンドウ / 立木文彦
- 3.10冬月コウゾウ / 清川元夢
- 3.11伊吹マヤ / 長澤美樹
- 3.12日向マコト / 優希比呂
- 3.13青葉シゲル / 子安武人
- 3.14鈴原トウジ / 関智一
- 3.15相田ケンスケ / 岩永哲哉
- 3.16洞木ヒカリ / 岩男潤子
- 3.17鈴原サクラ / 沢城みゆき
- 3.18高雄コウジ / 大塚明夫
- 3.19多摩ヒデキ / 勝杏里
- 3.20長良スミレ / 大原さやか
- 3.21北上ミドリ / 伊瀬茉莉也
- 4.【ネタバレ】映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想・考察
- 5.映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』あらすじ・声優・ネタバレ感想・考察まとめ
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』作品情報
作品名 | シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| |
公開日 | 2021年3月8日 |
上映時間 | 155分 |
総監督 | 庵野秀明 |
監督 | 鶴巻和哉 中山勝一 前田真宏 |
脚本 | 庵野秀明 |
原作 | 庵野秀明 |
出演者 | 緒方恵美 林原めぐみ 宮村優子 坂本真綾 三石琴乃 山口由里子 石田彰 立木文彦 清川元夢 長沢美樹 子安武人 優希比呂 |
音楽 | 鷺巣詩郎 |
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映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』あらすじ【ネタバレなし】
「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」
ミサトの率いる反ネルフ組織・ヴィレは、コア化で赤く染まったパリ旧市街にいました。
旗艦であるAAAヴンダーから選抜隊が降下し、残された封印柱に取りつきます。
復元オペの作業可能時間はわずか720秒。
決死の作戦遂行中、NERVのEVAが大群で接近し、マリが搭乗する改8号機は迎撃を開始。
一方その頃、シンジ、アスカ、アヤナミレイ(仮称)の3人は日本の大地を彷徨っていましたが…。
映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』キャラクター/声優
碇シンジ / 緒方恵美
- 主人公
- エヴァのパイロット
- 第3の少年(サードチルドレン)
綾波レイ / 林原めぐみ
- エヴァのパイロット
- 第1の少女(ファーストチルドレン)
- “アヤナミシリーズ”と呼ばれる複製体の一人
アヤナミレイ(仮称) / 林原めぐみ
- エヴァのパイロット
- “アヤナミシリーズ”と呼ばれる複製体の一人
- 綾波レイを知る人々からは「そっくりさん」と呼ばれる
式波・アスカ・ラングレー / 宮村優子
- エヴァのパイロット
- 第2の少女(セカンドチルドレン)
- “シキナミシリーズ”と呼ばれる複製体の一人
- アニメ版や旧劇場版に登場していた“惣流・アスカ・ラングレー”がオリジナルとみられる
真希波・マリ・イラストリアス / 坂本真綾
- エヴァのパイロット
- シンジのことを「わんこくん」、アスカのことを「姫」と呼ぶ
- 昭和歌謡を好んで口ずさむ
- 碇ゲンドウや碇ユイ、冬月コウゾウと古い仲である様子
渚カヲル / 石田彰
- エヴァのパイロット
- ゼーレの少年
- 第1の使徒(→第13の使徒)
- 新劇場版では『Q』で死亡している
葛城ミサト / 三石琴乃
- 元NERV 戦術作戦部作戦局第一課長
- 現ヴィレAAAヴンダー艦長
赤木リツコ / 山口由里子
- 元NERV 技術開発部所属、E計画担当
- 現ヴィレAAAヴンダー副長
加持リョウジ / 山寺宏一
- 元NERV 主席監察官
- 『破』→『Q』までの空白の14年の間に死亡していた
碇ゲンドウ / 立木文彦
- NERV 最高司令官
- シンジの父
冬月コウゾウ / 清川元夢
- NERV 副司令
伊吹マヤ / 長澤美樹
- 元NERV本部オペレーター
- 現ヴィレAAAヴンダー整備長
日向マコト / 優希比呂
- 元NERV本部オペレーター
- 現ヴィレAAAヴンダーオペレーター
青葉シゲル / 子安武人
- 元NERV本部オペレーター
- 現ヴィレAAAヴンダーオペレーター
鈴原トウジ / 関智一
- シンジたちのクラスメイト
- 鈴原サクラの兄
- ニアサードインパクトを生き延び、現在28歳
- 医師をしている
相田ケンスケ / 岩永哲哉
- シンジたちのクラスメイト
- ニアサードインパクトを生き延び、現在28歳
- 農業が中心の村で何でも屋をしている
洞木ヒカリ / 岩男潤子
- ニアサードインパクトを生き延び、現在28歳
- トウジと結婚し、娘のツバメを出産
鈴原サクラ / 沢城みゆき
- AAAヴンダーに搭乗するシンジの管理担当医官
- トウジの妹
高雄コウジ / 大塚明夫
- AAAヴンダーのオペレーター
多摩ヒデキ / 勝杏里
- AAAヴンダーのオペレーター
長良スミレ / 大原さやか
- AAAヴンダーのオペレーター
北上ミドリ / 伊瀬茉莉也
- AAAヴンダーのオペレーター
- シンジに対して憎悪を抱いている様子
【ネタバレ】映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想・考察
今までの『エヴァ』に「落とし前」をつけた完結作
約25年に渡って広げてきた風呂敷を、丁寧に畳んだといえる『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。
物語は赤く荒廃したパリ市街地から始まります。
ヴィレの旗艦であるAAAヴンダーから、赤城リツコ率いる作業部隊が降下。
封印柱の復旧作業中にNERVのEVAによる妨害を受けますが、真希波・マリ・イラストリアスの乗る改8号機によってそれらを撃破します。
無事に復元作業を終えたパリ市街地は元の美しい姿を取り戻し、ヴィレは旧NERVユーロ支部に保管されていたEVA2号機の修理パーツと、8号機改造のための追加パーツを入手することに成功しました。
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その分、続くパートとのギャップも大きいのです。
続くパートとは、式波・アスカ・ラングレーが碇シンジ、アヤナミレイ(仮称)を連れ、赤い大地を放浪し、かつての同級生である相田ケンスケに救助されるシーンです。
『破』から『Q』の間に14年の歳月が流れていたと発覚しているので、同級生が大人の姿になっているのは当たり前なのですが、『Q』では状況が明かされていなかったため、ここからのシーンは驚きの連続でした。
ニアサードインパクトの避難民が暮らす“第3村”へ辿り着いたシンジたちは、ケンスケと同じく大人になった鈴原トウジ・洞木ヒカリ夫妻に歓迎され、彼らとともに第3村での暮らしを始めます。
レイ(仮称)は鈴原家でヒカリに挨拶を教わったり、まだ乳幼児である鈴原夫妻の娘の世話をしたり、村民に農作業などの仕事を教わったりと、今まで知る由もなかった生活を経て人間らしい感情や言葉を覚えていきます。
その一方で、シンジはアスカとともにケンスケの家で世話になりますが、罪の意識やショックから廃人に近い状態となっていました。
しばらくしてアスカに現状を責められたシンジは家出をし、第3村から離れてNERV第二支部跡地で孤独な時間を過ごすようになります。
そんな中でもシンジはレイ(仮称)やアスカに見守られ、ケンスケの手伝いをするうちに加持リョウジと葛城ミサトの息子に出会い、少しずつ生気を取り戻していきました。
そして、レイ(仮称)がLCLとなって死亡する瞬間を目の当たりにしたことで新たな決意を固め、NERVとの最終決戦に向けて準備を進めるヴンダーに戻るアスカに対し、自身も乗船すると志願します。
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レイ(仮称)が複製人間でありながら人間味を帯びていく様子や「もっと生きたい」という想いを抱く描写は、廃人と化したシンジとの対比にもなっており、シンジを奮い立たせるには十分すぎる前半戦となりました。
シンジとアスカがヴンダーに戻ってからは、従来のエヴァの世界観が帰ってきます。
物語はNERVを壊滅させる“ヤマト作戦”、そして“マイナス宇宙”と呼ばれる精神世界へと続いていきますが、最終決戦を前に挟まれるのがアスカの伸びた髪をマリが切ってあげるシーン。
ここで語られるのは簡単にいうと、髪が伸びる=人間である証拠ということなのですが、“エヴァの呪縛”を受けて見た目年齢が変わらなくなった二人が交わす何気ないこの会話が、後の綾波レイ登場シーンに関わってきます。
初号機の中に眠っていたレイは、複製人間であるはずなのに14年の歳月を経て髪が伸びていました。
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一方、満を持して発動された“ヤマト作戦”は、碇ゲンドウの策略や冬月コウゾウの介入によって厳しい状況に陥ります。
アスカは激しい戦闘の末、自身と新2号機を使徒とすることで事態の解決を図ろうとしますが、新2号機が大破したことでアスカの前に“シキナミシリーズ”のオリジナルが現れ、LCLとなって崩壊してしまいます。
ここで明らかになるのが、シキナミシリーズの存在。
アスカは、自身がシキナミシリーズの複製人間であることを理解していたような発言をしています。
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アスカの場合、自身が複製体だとわかっているうえでの苦労はアヤナミシリーズとはまた違うものがあったと思いますが、「(アヤナミシリーズもシキナミシリーズも)シンジのことが気になるように設定されている」としながら、ケンスケと親しい間柄であることがわかります。
これは惣流だった頃には得られなかった愛情を、ケンスケに見出したものと思われます。
アスカはシンジに対して「ガキに必要なのは恋人じゃなくて母親」と発言したり、空白の14年を経て「私が先に大人になっちゃった」と呟いたりと、親からの愛を求めていた少女期を乗り越えて、愛を与える側でもある大人へと成長したことを仄めかしていました。
アスカとケンスケの関係がどのようなものか具体的にはわかりませんが、これらの発言から察するに、本当の意味でシンジに手を差し伸べるのは少年期の日常だけをともにしたレイやアスカではいけなかったと考えられます。
実際にその役目は『新劇場版』から登場したマリが担っていました。
冬月から「イスカリオテのマリア」と呼ばれていたマリですが、“イスカリオテ”はイエスを裏切ったユダ、“マリア”は聖母マリア、もしくはイエスに付き従ったとされるマグダラのマリアのことを表していると思われます。
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『エヴァ』シリーズはシンジとゲンドウという一組の親子を主軸に描かれてきましたが、今作ではゲンドウ・ユイとシンジだけでなく、加持・ミサトと息子、トウジ・ヒカリと娘など、親と子、大人と子供といった繋がりが色濃く描かれました。
第3村で描かれた日々の営みもそうですが、親から子へ、大人から子供へと生活が受け継がれていく様子は、他者とともに生きる人生そのものを表していたように思います。
孤独に陥りがちなシンジやゲンドウを通して、一人で生きなくてもいい、孤独を恐れなくてもいいと、語りかけてきているような気にさえなりました。
そして、「落とし前をつける」という言葉をトウジから受け取ったシンジは、自身なりの「落とし前」を見つけ出します。
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広げ過ぎた風呂敷を丁寧に畳んで、日々の営みの大切さを教えてくれた『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。
最後に、監督である庵野秀明を含め、すべての人が『エヴァ』と決別し、いつかまた再会できると感じさせる一言を、シンジが呟いていました。
「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」。
謎は必ず解決しないといけないのか
今作からはシリーズを通して明かされてこなかった謎や伏線をできるだけ拾い上げ、解き明かそうという意思が感じられます。
多くの人々が納得のいく物語、というと語弊があるかもしれませんが、今まで描いてきた『エヴァ』に希望を与え、未来を見せてくれるような展開となりました。
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そんな中、空白の14年間に起きた大きなトピックとして、加持の死亡、そして加持とミサトの間に息子が誕生したことが明かされました。
シリーズ内には加持のセリフで「君には君にしかできない、君ならできることがあるはずだ」というものがありますが、加持は自身のこの言葉に従うように、自らの命と引き換えにサードインパクトを止めたとされています。
同時に加持が種の保存にこだわっていたことがわかり、14歳となった息子は両親を知らないのにもかかわらず、加持と同じく栽培に精を出していることが判明します。
ミサトはシンジから息子の現状を聞き、安心したような表情を見せますが、最後は加持の気持ちを受け継いだかのように自らを犠牲に仲間たちを救いました。
こうして空白の14年間に起きた出来事が大きく物語を動かしていますが、そのすべてが明かされるわけでもなく、ほとんどが不明なままです。
そして、精神世界にて登場人物それぞれの魂の解放を描くパートでは、加持と渚カヲルが親しげに話している様子が描かれています。
ここで加持がカヲルを「渚司令」、カヲルが加持を「リョウちゃん」と呼んだことで新たな謎が浮かび上がりました。
二人の関係性と、カヲルの正体についてです。
渚カヲルは『新劇場版』におけるいくつかの発言から、シリーズ内をループしている存在だという説が唱えられてきましたが、実質この説は正しかったと言えそうです。
「シンジくん、今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」などのセリフからもわかるように、シンジの幸せを行動原理としていたようで、シンジが幸せになるまでループを繰り返すように動いていたと思われます。
カヲルは「ゼーレの少年」と呼ばれていたことからゼーレの切り札のような存在、加持はNERV職員でありながらゼーレともかかわりを持っていたことが明かされていました。
さらに、『Q』では空白の14年の間、ゼーレが沈黙を貫いたことが語られています。
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予告に使われた映像が実際に『Q』で使われた事実はなく、それが何を表していたのかは明言されていませんが、この予告で描かれたものが空白の14年の間に起きたことだとすると、加持がカヲルを「渚司令」と呼んだ理由が予想できます。
映像の中で特に注目したいのは、カヲルが司令服のような服を身に纏っていることです。
メタ考察にはなりますが、14年の間にカヲルがNERVやゼーレなどの組織で司令の地位に就いていたとするならば、加持との利害関係の一致から上司と部下の関係にあってもおかしくないと考えられます。
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『エヴァ』はシリーズを通して難解な点が多く、明かされたことでさえ理解に苦しむ場合が多いです。
そして、作品を観た人々に「あれは何だったのか」「これはどういう意味なのか」と考えさせてきました。
それらを楽しみの一つと捉えると、こうして完結作にも謎を残し、完全に答えを明かさないことで、最後まで考える楽しみを示してくれたように思えます。
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宇多田ヒカルと『エヴァ』
『新劇場版』シリーズは、宇多田ヒカルの主題歌なしでは語れません。
今作のエンドロールでは新曲の「One Last Kiss」とともに、『新劇場版』シリーズの第1作『序』に使用された「Beautiful World」をアレンジした「Beautiful World (Da Capo Version)」が流れ、シリーズ全体の主題歌とされました。
urara
歌詞一つとっても、きっと今までとは違った表情を見せてくれるはずです。
🎉本日3月10日、#シン・エヴァンゲリオン劇場版 テーマソング「One Last Kiss」を含むこれまでの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』に提供された宇多田ヒカルさん関連楽曲すべてを収録したEP/LP発売日です!
ジャケットは映画本編の原画を使用。どこのシーン(カット)か探してみてくださいね#HikaruUtada pic.twitter.com/6aWSQJ1tqX
— エヴァンゲリオン公式 (@evangelion_co) March 9, 2021
そんな主題歌ごと楽しみたい方には、IMAXでの鑑賞がおすすめ。
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映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』あらすじ・声優・ネタバレ感想・考察まとめ
【追告 B 公開】
『#シン・エヴァンゲリオン劇場版』
シリーズすべての音楽を担当する、鷺巣詩郎による楽曲「this is the dream, beyond belief…」に乗せて、劇中の戦闘シーンを中心に描かれた追告90秒を公開しました。#シンエヴァ pic.twitter.com/Bcoboxib5f— エヴァンゲリオン公式 (@evangelion_co) March 28, 2021
いかがだったでしょうか。
ついに「新劇場版」シリーズが完結しましたが、テレビアニメから考えると約25年の歴史を持つ作品なので、様々な想いを抱えてご覧になる方が多いことでしょう。
そんなシリーズの集大成である『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』。
ぜひ、劇場で形容しがたい鑑賞後の余韻に浸っていただきたいと思います。