【坂口拓インタビュー】77分間ワンカットに挑んだ『狂武蔵』の撮影秘話、アクションへのこだわりを語る

【坂口拓インタビュー】77分間ワンカットに挑んだ『狂武蔵』の撮影秘話

(C)ミルトモ

1人vs400人。77分間ワンカットの長回し、ノンストップで斬り合うという驚異的なアクションが繰り広げられる『狂武蔵』がいよいよ2020年8月21日(金)より公開します。

日本のアクションシーンを牽引し、『狂武蔵』で前人未到とも言えるアクションを見せた主演の坂口拓さんにインタビューさせていただきました。

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坂口拓インタビュー

【坂口拓インタビュー】

(C)ミルトモ

−−さっそくですが、『狂武蔵』における「77分ワンカットでの斬り合い」は拝見して驚異的でした。撮影監督の長野康隆さんいわく、当初の予定では10分程度の尺だったところ、坂口さんの希望で長くしたとのことですが、その経緯を教えていただけますでしょうか。

坂口拓(以下、坂口)「もともと『剣狂-KENKICHI-』というタイトルで園子温監督と共同監督だったんですが、諸事情により映画がクランクイン前に潰れてしまったんですね。当初の予定では10分間だったんですけど、1年間リアルを追求して柔らかい刀で練習して…誰も僕の体に当てられなくなったら木刀に変えて練習していました。

それで機材を返す前に、「10分しか練習してないけど、長編にするには70分以上じゃなくちゃいけないから77分やるか(笑)」ってことでやりました。

スタッフの皆さんにも「映画は潰れちゃったんですけど機材返す前にやってくださるのであれば付き合ってもらえませんか?」と言ったら残ってもらえたので、じゃあ始めてみようかなという感じでした。」

−−そんな簡単に77分って決まっちゃうものなんですか?10分でも大変ですよね?

坂口「そうなんですよ。しかも自分も当初は監督という立場でもあったので、映画が潰れたことのショックの方が大きかったんですね。『剣狂-KENKICHI-』のプロデューサーが申し訳なさそうにしながら「最後に監督何か言いたいことがありますか?」と言ったときに、勝手に「77分やる」って口走ってたんです。すごく後悔してます(笑)」

【坂口拓インタビュー】

(C)ミルトモ

−−77分間の中で、明らかに(坂口さん演じる)武蔵のスピードについていけずに不意打ちのような形で頭を打たれている相手や、お腹を斬られている相手がいらっしゃいました。ああいったシーンは坂口さんが隙を見つけたからいかれてるんですか?

坂口「そうですね。」

−−77分の斬り合いに一切の台本はなく、その時の構え合った感覚でやっておられるんですか?

坂口「そうです、ルールはなしです。強いて言えば、相手側は「俺を殺しに来い」っていうのがルールですかね。あとはもうフリーです。」

−−では、一方的にやられた相手は言わば構えた瞬間に坂口さん演じる武蔵にひるんだということですね。

坂口「そういうことになりますね。これ面白い話なんですけど、たくさんの人間vs一人って、多数のほうが有利だと思うじゃないですか?でも、それは間違ってるんですよね。集団心理っていうのがあって、集団で戦う余裕があるから隙が生まれやすいんですよ。だから1vs1より攻撃を当てやすいんです。」

【坂口拓インタビュー】

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−−相手と向かい合ってて何秒間も動かずじーっと見合うシーンがあり、映像から伝わる緊張感が妙にリアルでした。1vs5で向かい合ってるのに、たった1人の武蔵のオーラにひるんでるのが伺えました。

坂口「リアルだからこそ、タイミングが掴めないんです。相手が斬りかかって来たときに反応しようと思っていたので、相手にはその雰囲気が伝わって、お見合いのような時間が自然と生まれちゃうんですよね。」

−−長回しだからこその余白の生まれ方ということですね?

坂口「そうです。つまり、普通のアクション映画だとそういうシーンがあったとしても省いてますよ。普通のアクション映画に【お見合いの時間】をつけたら「何でカットしないの?」ってなりますもんね。77分ワンカットだからこそですし、お互いの間合いの取り方やリアルな「やるか、やられるか」の空気感を楽しめると思います。」

−−台本がない中で、映画作品としての撮影、映り方に対しては戦いの中で決めはあったのでしょうか?

坂口「本気では戦っているんですけど、職業病でやっぱり頭の中にカメラワークの意識は入ってました。でも劇中で1度だけ、自分を見失いましたね…。その時は完全に大振りで横に振っていたので当たっていたら大怪我したと思います。すぐに我に返って、ダメだ危ないって…。」

−−それは極度の疲労からでしょうか?

坂口「はい。皆に「お前らマジで殺しに来いよ」って鼓舞しすぎたせいでめちゃくちゃ来たんですよ。もう最初の5分で体力が0になったのと、指を骨折していて…。」

【坂口拓インタビュー】

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−−えっ、開始から5分でですか?

坂口「そうです、ぶっちゃけやれないわと思いました。77分を目標とした中で、5分ごとにコールをもらっていたんですが、指が折れて体力0になってた時に「あと72分!」って言われて、「おい、やれるかよそんなもん!どうやってやるんだ」って思いました(笑)」

−−その中で、驚異の77分間をやりきられました。最初の方は素早い動きで相手を仕留める戦闘スタイルでしたが、スタミナが減ってるはずの後半になるにつれて刀をクルクル回し始めたり、大胆な動きも多くなっていた印象です。あれは意図的にやられていたのか、それともアドレナリンが分泌されていたのですか?

坂口「アドレナリンは出ないです!アドレナリンなんか出ていたら、合戦上で死んでしまいますよ。頭は常に冷静なので、後半はもう疲れすぎて力が抜けて勝手に刀を回し始めたんです。そしたら今まで力で受けてきたのを「片手の円運動で捌けるじゃん」と気づきました。そこからまたスピードが上がってきて、その時は朝まで戦ってもいいくらいでした。3日くらい戦える感じです。」

−−では、戦いながらもリアルに成長しておられたと?

坂口「まさにそうです。いきなりズバーンとレベルが上がったんです。途中から自分の体を上から見ている感じになったので、後ろの人たちも見えてないのに斬り始めたりして、「あれ?俺強くなってる」みたいな感覚が強烈にありました。」

−−ゾーンに入られた最後の約20分をもう一回やってと言われたら、再現はできるものでしょうか?

坂口「今はもっと強いですよ。ゼロレンジコンバット(零距離戦闘術)のウェイブマスターになってしまったんで、9年前の77分より、(77分のシーンの前後に加えた)追撮したシーンの自分の動きが全然違いますもん。逆に今は、絡む側が無理なんじゃないですか?僕がやりたいって言っても、誰も付き合ってくれないと思います。ウェイブで脳天なんか叩いたら、振動で奥まで通りますから気絶しちゃうと思います。

もし、仮に『狂武蔵』が大ヒットして『狂武蔵2』をやるってなったら、自分のYouTubeチャンネル(「狂武蔵たくちゃんねる」)でライブ配信して24時間戦いますよ。最後は『サライ』の曲に乗せて(笑)」

−−あはは(笑)24時間付き合ってくれる相手はいますかね?

坂口「アクションマン500人くらい用意して、250人のローテーションで戦えばいいんですよ。自分だけは24時間戦ってたらいいじゃないですか(笑)」

−−『狂武蔵』の撮影にあたって、アクション監督として色々なアクションを手掛けられた経験は生かされた部分はありましたか?

坂口「絶対あると思います。俳優さんはアクションをやるってなると、お芝居に集中しますよね?その点、やっぱりアクション監督をやっていると、アクション監督としての脳もあるので芝居だけに没頭しなくなります。だからこそ、どれだけ激しいアクションをしてもケガ人を0で終えることもできるし、カメラの位置関係も頭に入ってるし、アクション監督脳は大いに生きていると思います。」

−−『狂武蔵』の撮影後に一度俳優業を退かれました。役者としてのモチベーションが完全燃焼してしまった退きなのか、どういった経緯なのかをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

【坂口拓インタビュー】

(C)ミルトモ

坂口「19歳でJAC(ジャパンアクションクラブ)に入ったんですけど、自分がやりたいアクションじゃなかったんですよね。なぜかと言うと、芝居はリアルなのにアクションに関しては全くリアルじゃないと感じたんです。芝居にはリアリズムを求めているのに、なぜアクションにはリアリズムが存在しないの?と19歳ながらに疑問に感じて、そこから自分はずっとリアルなアクション道に徹して生きてきました。要は、立ち回りを決めずにアクションをやるんです。

自分の中のアクションの定義は、思いやりとリスペクト。この両方があってケガをさせないという徹底があれば、映画の中ではどんな殺し合いをやっても良いと思っています。

ただそれの行き着く先として、結局「自分のこだわり」はスタントマンやアクションマンは理解しても、見ているお客さんは分かるのか?という話になり、他の俳優さんにもリスキーすぎて求められない。

アクション監督として俳優に求められないことを、何で俺が俳優の時だけそういうことをやってんだっていう究極の事例が今作『狂武蔵』なんです。だから、『狂武蔵』の撮影が終わった時に、誰にも求められてないことを突き通してもしょうがないなと思い、その一方で「自分のアクション道を極めたい」という想いも強かった。それが一度退いた理由ですね。」

−−9年経った今はもっと強くなったとおっしゃられてましたけど、9年間の過ごし方や強さを維持するために意識されていることはなんでしょうか?

坂口「ゼロレンジコンバットで肩甲骨を主体とした動きを作っているので、骨ですね。骨を大切にしています。筋肉は衰えますけど、骨はほぼ一生ものなので意識して動かすようにしています。」

−−食生活はいかがでしょうか?

坂口「なるべくお酒を飲んで過ごしてます。お酒を飲むと体が柔らかくなって、脱力しながら骨を動かすといつもより可動域が倍回ります。だからお酒を飲んで鍛えるという感じです。」

−−アルコールを摂取して鍛えるというのは聞いたことないですね。驚かれませんか?

坂口「本当ですよ、酒を飲むと可動域が本当に広がりますから。可動域が増すのと比例してスピードも増します。ちなみに、1秒で5発打てますよ。片腕です。人じゃなくて、獣だと思ってください。」

【坂口拓インタビュー】

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−−勉強不足で申し訳ございません。骨でスピードを出してるということですか?

坂口「骨です。肩甲骨を回し、その力を波のように伝えるということです。ただ、よく格闘家と比べられますが、それは筋違い。僕はあくまでもアクションの人間で、強さをアクションで表現したいというのが僕の理念なんです。」

−−ちなみに、現時点で日本の俳優さんでアクションに一目置いている方はいらっしゃいますか?

坂口「自分のアクション道であるリアリズムアクションは他にいないのでそこは置いておいて、アクションがうまい俳優さんはたくさんいます。『キングダム』で共演して、『狂武蔵』にも出演してもらっている山﨑賢人はうまいし、あとは横浜流星くんとかも動きが良くて面白いだろうなと思います。」

−−今作では宮本武蔵を演じられましたが、今後坂口さんが演じてみたい、もしくはアクション監督として撮ってみたい実在の人物の物語はありますか?

坂口「自分はないんですけど、例えば山﨑賢人が30代くらいになったら土方歳三をやってもらいたいですね。それをやるんだったら、僕はぜひアクションに携わりたいですね!

自分だったら、もうオリジナルで「坂口拓が侍だったら」っていう映画を作ります(笑)歴史上の剣豪に負けない強さにして、誰よりも強い侍をやります。皆が引いてしまうような刀技を見せつけます。」

−−本当に色々なお話をいただき、貴重なお時間ありがとうございました。

坂口「とんでもない。こちらこそ、ありがとうございました。」

インタビュー・構成 / 佐藤 渉
撮影 / 白石太一

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『狂武蔵』作品情報

『狂武蔵』

©2020 CRAZY SAMURAI MUSASHI Film Partners

出演:TAK∴(坂口拓)、山﨑賢人、斎藤洋介、樋浦勉
監督:下村勇二
原案協力:園子温
企画・制作:WiiBER U’DEN FLAME WORKS、株式会社アーティット
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイトhttps://wiiber.com/
2020年/91分/16:9/5.1ch

あらすじ


1604(慶長9)年、9歳の吉岡又七郎と宮本武蔵(坂口拓)との決闘が行われようとしていた。

武蔵に道場破りをされた名門吉岡道場は、すでにこれまで2度の決闘で師範清十郎とその弟伝七郎を失っていた。

面目を潰された一門はまだ幼い清十郎の嫡男・又七郎殿との決闘を仕込み、一門全員で武蔵を襲う計略を練ったのだった。

一門100人に加え、金で雇った他流派300人が決闘場のまわりに身を潜めていたが、突如現れた武蔵が襲いかかる。

突然の奇襲に凍りつく吉岡一門。

そして武蔵1人対吉岡一門400人の死闘が始まった!

『狂武蔵』は2020年8月21日(金)より全国ロードショー!

前売りチケットもwiiber.comにて販売中!

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