『ミッドサマー』の北欧文化をネタバレ込みで考察!スウェーデンに本当にある?神話やバイキングも関連

『ミッドサマー』に出てくる北欧文化を考察!スウェーデンに本当にある?

出典:「ミッドサマー」公式Twitter

皆さんは北欧と聞いて何を連想しますか?

福祉国家?サンタさん?家具?サウナ?

色々あると思いますが、そんな北欧のイメージをガラッと変えてしまう怪作が現在公開中の『ミッドサマー』。

画面はきれいなんですが、日本でもこんな禍々しいポスターアートやイメージ画ができてしまうくらい内容はヤバいと評判です。

簡単に言ってしまうと『ミッドサマー』は基本プロットだけ見たら「若者が異国や僻地の田舎で調子こいてたらヤバい目に会う」といった『悪魔のいけにえ』やら『食人族』やら『ホステル』を連想するような内容なのです。

しかしそのやばい目に会う場所が幸福度ランキングでもたいてい上位にくる”北欧・スウェーデン”という点が斬新で話題を呼んでいます。

今回は『ミッドサマー』で扱われる北欧文化について書いていきます。

ある程度のネタバレは覚悟してお読みください。

※その前に『ミッドサマー』がどんな話なのかもっと詳しく知りたい方はこちら!

『ミッドサマー』あらすじ・感想!明るいのに怖い!トラウマ女子を巻き込んだ祝祭が始まる【ネタバレなし】

【ネタバレ】『ミッドサマー』の北欧文化・考察


ミッドサマー(白夜)とは?

地球は太陽への公転の垂線に対して地軸が23.4度ずれています。

なので北極圏や南極圏では1年のうちに”白夜”と呼ばれる太陽がずっと昇りっぱなしな時期があるのです。

北欧圏やカナダもその範囲で、『ミッドサマー』の舞台スウェーデンでは大体6~7月が白夜の時期ですね。

日本でも6月に日が一番長く出ている”夏至の日”がありますが、それの比ではないです。2時間ほど夜が来てあとはずっと日が出ています。

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そして、ずっと明るい場所が舞台ってホラーとしては斬新です。

こんなことを言うと北欧の人に怒られそうですが、ずっと日が照っている状態っていつもとは違う精神状態になってもおかしくない気がします。

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明るい場所じゃ眠れないって人もいるでしょうし。

おまけに逆に12月~1月はずっと日が出ない”極夜”になってしまい、北欧の人々は長い冬は家にこもりっきりになってしまいます。

ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』はそんな鬱屈した状況だからこそ北欧でデスメタルが流行っているということを描いていました。

もっと深刻な話をすると、あれだけ安心して暮らせる福祉国家なのに自殺率が高いんです。

世界標準では10万人当たり10.5人ですが、北欧5か国は

  • デンマーク 12.8人
  • フィンランド 15.9人
  • アイスランド 14人
  • ノルウェー 12.2人
  • スウェーデン 14.8人

というデータです。

寒さによる鬱屈が関係しているといわれています。

なので北欧の人々は短い夏の白夜がくるとここぞとばかりにバカンスにいそしみます。

アリ・アスター監督はスウェーデンのプロデューサーから依頼されて『ミッドサマー』を作ったのですが、そこでこの北欧の人々の白夜で浮かれる特徴をホラーにしようと発想したのがさすがです。

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実際のスウェーデンでも夏至を祝う6月の祭はあります。もちろんあんなことはしていませんが(笑)

『ミッドサマー』では貴重な夏を祝う祝祭という楽しそうな場所が地獄の様相を呈します。

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グロ描写も明るいので全部見えてしまいますし、何よりも明るい場所で異様なことが起きていると「これが日常で当たり前なんだな」という絶望感が増してゾクゾクしました(笑)

さらに不気味なのは、ずっと画面が明るい映画なのに太陽を直接映したカットが全くないんですよね。

この明るさが見せかけのものではないかと無意識に不安を煽るいい演出でした。

ちなみに『ミッドサマー』で行われている90年に一度の祝祭は9日間にわたって行われ、そして最後の惨劇に向かうのですが、夜のシーンがあまりないために「あれ今何日目?」と登場人物たちと同じくどんどん混乱していく感覚も面白いです。

北欧のドラッグ&フリーセックス文化

ミッドサマー』はドラッグがかなり重要な要素を占めてきます。

後半は完全に『CLIMAX クライマックス』並みのバッドトリップ映画と言っても過言ではありません。

終盤は主人公ダニーたちは薬を盛られておかしな状態になっているのですが、それに合わせて画面がゆがんだり、幻覚が見えたり、BGMもおかしくなったりとそのトリップ感覚を観客に共有してきます。

ダニーが冒頭で自殺した妹の姿を森の木の形の中に見てしまう描写もあります。

薬って怖いなと思ってしまいますが、実際のスウェーデンはじめ北欧諸国もドラッグ大国として有名なんですよね。

ノルウェー以外は大麻は合法化されていますし、スウェーデンではコカインの使用者が急増しているというデータもあります。

『ミッドサマー』でも村に来たばかりなのにダニーの仲間のジョシュやマークが村の若者から大麻をもらって吸うシーンがありました。

そもそもダニーを誘った男たちが計画していたスウェーデン旅行の目的は、表向きは卒論のためとか言っていましたが、「ドラッグとフリーセックス」を楽しむためだったんじゃないかと思います。

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じゃないとチャラ男のマークがついてきている理由がわからないので。

ドラッグともう一つの理由として述べた「フリーセックス」ですが、これもスウェーデンのイメージとして有名です。

スウェーデンは売春が非合法な代わりに国民性としてみんなが性に開放的で、1日1時間はセックスをして、バーを出会いの場に使い、70歳を過ぎても60%以上の人が現役、という国なのです。

なので男たちはみんな北欧のコミューンの若い女の子たちとのあんなことやこんなことを期待していたと思います。

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ただ、確かに終盤にダニーの彼氏のクリスチャンはセックスできましたが、全然うらやましくない描写でしたね(笑)

スウェーデンでは女性の方から男性を誘うことも多いそうですが、ホルガ村の女子のアプローチ方法はちょっと常軌を逸してました。

何が起きるかは実は前半に出てくる外に飾られたタペストリーが示していたので画像を貼っておきますね。

ドラッグに関してもセックスに関してもなんだかほかの国と様子が違う北欧。

それは北欧の人々のルーツも関係しているかもしれません。

北欧神話とバイキング

そもそも北欧はヨーロッパの中でキリスト教が浸透するのが最も遅かった地域です。

それまでは何を信仰していたのかというと『マイティ・ソー』でおなじみ北欧神話です。

日本のアニメでもヨルムンガンド(北欧神話の巨大な毒蛇の怪物)やラグナロク(世界の終末の日)などの用語はよく出てきますね。

世界中の神話の中でも兄弟同士で殺しあったりと神々の戦いが多く血なまぐさい内容です。

そんな北欧神話を信じ、9~11世紀には一部の人々が勇猛なヴァイキングとしてバルト海で暴れまわってもいました。

ヴァイキング

出典:Wikipedia

ちなみに先ほどの北欧のドラッグ文化の解説に追記すると、北欧にはバーサーカー(狂戦士)という死を恐れず痛みを感じず戦い続ける兵士がいたという伝説があります。

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日本の漫画の『ベルセルク』もここから名前をとっていますね。

最近の説によるとバーサーカーたちは戦闘前に毒キノコやトリップ効果のある薬草を摂取して興奮状態の中で戦っていたのではないかと言われています。

そういう色んな近代化、キリスト教化される前の北欧の文化を守っているのが『ミッドサマー』のホルガ村です。

いろんな要素がありますが印象的な所を上げると

終盤でクリスチャンが熊の格好をさせられて燃やされてしまいますが、実際に北欧神話では熊は神聖な動物で守護霊として人を守る精霊が熊の格好をしているという言い伝えもあります。

バーサーカーもクマの毛皮を被って戦っていたりしたようです。

また、一度逃げ出したクリスチャンが自分と同じくホルガ村にやってきた大学生サイモンが納屋で恐ろしい拷問を受けているのを見つける場面もありました。

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ちょっと見せるのがはばかられる画像なのですが…。

これはバイキングが実際にやっていた、対象者の背中を切り開き、ろっ骨を取り除いて生きたまま肺を取り出すという恐ろしい拷問&処刑法です。

肺を外に取り出された姿がまるで鷲のようだということから”ブラッドイーグル”と呼ばれています。

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アリ・アスター監督の北欧文化への造詣の深さとそれをまんま再現して見せる狂気に脱帽です。

姥捨て崖”アッテストゥパン”

ミッドサマー』では劇中でもトップクラスにショッキングなシーンとして、中盤に老人が崖の上から飛び降り自殺をする場面があります。

これは”アッテストゥパン”という儀式で、コミュニティに協力できなくなった老人が自ら命を絶つという北欧神話の伝説に基づくものです。

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もちろんこんなことは実際の北欧ではやってません(笑)

冒頭で、精神を患い人生から逃げるように両親を巻き込んで自殺したダニーの妹のネガティブな自殺とは対照的なポジティブな自殺であり、それを見たダニーが一気に動揺し物語全体が転がり始めていく重要なシーンです。

『ミッドサマー』

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ホルガ村では自ら崖から飛び降りるのは72歳になった時と決まっており、そこで人生のサイクルを終えると劇中で語られています。

どうやら人生を植物の四季のサイクルで考える死生観を持っているようです。

72を4で割って、1~18歳までが芽の出る春、19~36歳が大きく育つ夏、37~54歳が収穫時の秋、そして55~72歳までが枯れて次の世代の種たちの養分となる冬。

そのためホルガ村での老人の自殺は”次の世代に命を分け与えること”と説明されています。

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このホルガ村流の人生サイクルで考えると、タイトルの『ミッドサマー』にも別の意味が生まれてくる気もします。

19歳から36歳までの夏が6~8月だとすると、夏至祭が行われている6月は人生で言うと19~24歳の時期で、ちょうどダニーの年齢と合致するのです。

『ミッドサマー』というタイトルはダニーが人生を決定づけるある決断をする時期のことも指しているのではないでしょうか。

アッテストゥパンに話を戻すと、崖から飛び降りる前に老人は手に傷をつけ、崖の上にある石碑に自分の血を塗りたくっています。

ここに書かれているのはルーン文字と呼ばれる北ヨーロッパでかつて使われていたゲルマン語をあらわす文字です。

最後にこの文字を簡単に説明します。

『ミッドサマー』に出てくるルーン文字の意味

”ルーン”とは「秘密」や「神秘」の意味。

ラテン文字が浸透するまでは北欧ではこの文字が使われていました。

アルファベットに似ているのですが、文字一つ一つに魔術的な意味合いが込められています。

ミッドサマー』でもルーン文字がいくつか出てきます。

先ほどの老人が血を付けた石碑には周りに4つの「×」マーク。これは「贈り物」もっというと「生贄」という意味があります。

そして真ん中には「R」に似た文字があり、意味は「旅」や「乗り物」「成長」です。「死の旅への護符」という意味もあります。

真ん中一番上は「A」の変形で「仲間」という意味があるのですが文字がひっくり返っています。

そして真ん中一番下は「P」の変形で「秘密や神秘」の意味です。

これから飛び降りて死ぬ老人は、神への「贈り物」であり、その死は「成長や新たな旅立ち」であり、そしてもうホルガ村の「仲間」ではなくなり「秘密や神秘」の世界に行くという意味でしょうか。

こんな風に読み解いていくとキリがありません。

ダニーやクリスチャンが終盤に着せられる服にもルーン文字があったり、ホルガ村の人々が一堂に会して食事をするテーブルもルーン文字「ᛟ」の形をしており、そこには「世襲、先祖代々の地、伝統、継承」といった意味が込められていたりと隅々まで考えられて配置されています。

アバターシライシ

ちなみに『ミッドサマー』のパンフレットは大変おしゃれなうえに、ルーン文字すべての解説も載っていて大変良心的でした。その他の北欧文化への言及もありますよ。

『ミッドサマー』の北欧文化・考察まとめ

いかがだったでしょうか。

アバターシライシ

私は正直北欧文化への造詣は深くないので今回の考察も導入編みたいなものになってしまいましたが、こうやって調べて後からさらに面白くなる仕掛けをアリ・アスター監督はしてくれています。

調べてからもう一回『ミッドサマー』を見ればより楽しめるかもしれません。

こうやって一粒で何度も楽しめる映画、『ミッドサマー』いち早く見に行くことをオススメします!

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