ディズニー歴代の珍作映画から学ぶ、名作を作るための条件とは?類似作と比較解説

出典:Amazon.co.jp

これまでに数多くの名作を世に送り出してきたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ。

第1作の1937年『白雪姫』から最新作の2021年『ラーヤと龍の王国』まで、全59作の長編の中には素晴らしい名作もあれば、脚本にツッコミどころの多い珍作もあります。

そんな珍作たちを知ることによって、名作はどういった点が優れているのか、名作が名作と称される決め手は何なのか、探ることができます。

この記事では珍作1作につき比較対象となる名作を1作ずつご紹介、珍作を通じて名作の素晴らしさを解説していきたいと思います。

ディズニーの歴代の珍作映画から学ぶ、名作を作るための条件

珍作1:『ジャングル・ブック』(1967年)

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ウォルト・ディズニー氏が携わった最期の長編作品であり、2016年に実写版が公開されたことでも注目を集めた作品ですが、ストーリーは微妙です。

主人公は、ジャングルに捨てられてオオカミに育てられた少年、モーグリです。

『ジャングル・ブック』

出典:IMDB

モーグリと動物たちはジャングルで平和に暮らしていましたが、人間に恨みを持つ凶悪なトラ、シア・カーンがジャングルに帰ってきたという知らせを受け、動物たちはモーグリを人間の住処に帰すことに決定。

「ジャングルに残りたい」と主張するモーグリを説得しながら、歌ったり踊ったりの逃避行、そしてシア・カーンとの決闘を経てジャングルに平和を取り戻すストーリーです。

『ジャングル・ブック』

出典:IMDB

ねお

全体的に緊張感の無さが気になります。

ゾウの行進のシーンなどは冗長に感じるし、一度モーグリを拐ったオラウータンとあっさり和解する流れもよく分かりません。

運良くシア・カーンを退けることはできますが、極めつけはラストです。

なんと、モーグリが偶然見かけた人間の女の子に惹かれて人間の村へ去っていくシーンで終わります。

『ジャングル・ブック』

出典:IMDB

ねお

あれだけ「ジャングルに残りたい」と言っていたのに、せっかくジャングルに平和が戻ったのに、今までのお話は何だったのか、と思わずにはいられません。

音楽は悪くないのですが、ストーリーにはいろいろと疑問が残ります。

名作1:『ターザン』(1999年)

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ディズニー作品の中で、ジャングルで動物に育てられた人間の代表例といえば「ターザン」でしょう。

動物たちの陽気なシーンや、ジェーンとターザンが心を通わせていくロマンチックなシーン、サボーとの決闘やカーチャックとの別れなどのシリアスなシーン、メリハリがあって良いです。

ねお

『ジャングル・ブック』と比較して、ジェーンとターザンが互いに惹かれあっていく過程が丁寧に描かれていることが重要です。この描写があるからラストシーンの説得力、感動が生まれるのです。
『ターザン』

出典:IMDB

また、突然現れた凶悪なトラ、シア・カーンと、ターザンの両親の命を奪った因縁のヒョウ、サボーとでは「敵」としての魅力的が段違いです。

決闘の重みがまるで違います

加えて、モーグリがシア・カーンに勝てたのは偶然の産物でしたが、ターザンはジャングルでの生活で鍛えた力でサボーを打ち倒したことも重要です。

『ターザン』

出典:IMDB

ねお

各シーンのメリハリ、恋に落ちていく過程、敵との因縁、これらが丁寧に描かれていることが「ターザン」を面白いと感じるポイントではないでしょうか。

珍作2:『コルドロン』(1985年)

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全ディズニー映画の中でワースト作品」などと酷評されるほどの失敗作として知られるディズニー25作目の長編アニメーション映画です。

騎士になることを夢見る少年が魔法使いのお姫様や妖精たちと協力しながら魔法の大壺「ブラック・コルドロン」を狙う魔王ホーンド・キングと戦う、さながら王道RPGのような物語ですが、残念な要素がたくさんあります。

『コルドロン』

出典:IMDB

ねお

主人公の少年ターランは騎士になることを夢見ているものの、何の努力もしていません。

中盤で魔法の剣を手に入れたのも単なる偶然、ホーンド・キングを倒したのも偶然、結局なにも成し遂げず、成長せず、映画が終わります。

他も魅力がないキャラクターばかりです。

魔法使いのお姫様の能力は「光の球を操れる」のみで初登場時しか役に立ちません。

序盤で仲間になる不思議な生き物、ガーギは何やら思わせぶりなセリフを残しますが、特に意味はありません。

本作の「ラスボス」ホーンド・キングは恐ろしい雰囲気ですが、雰囲気だけで特に何もせずターランに蹴られた勢いで「ブラック・コルドロン」に吸い込まれて死亡します。

『コルドロン』

出典:IMDB

ねお

RPG的な面白そうな要素を散りばめ、個性的なキャラクターや伏線らしきセリフを出しつつ、回収も進展もないままダラダラと虚無感が流れていく、これ以上ない珍作です。

名作2:『ヘラクレス』(1997年)

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ねお

私の記事に度々登場する名作『ヘラクレス』。

ギリシャ神話を題材に、ゼウスの子ヘラクレスが真のヒーローになるまでの成長と戦いを描いた映画です。

王道RPGとまでは言えませんが、大切な人たちのために強大な悪と戦う王道ヒーローものの要素を持っています。

『ヘラクレス』

出典:IMDB

死者の国の神ハデスの企みにより、神々の国から地上へ落とされ人間界で育てられたヘラクレスは自分が神の子であると知り、神に戻るための修行に励みます。

相棒のペガサス、数多くの英雄を鍛えた半人半獣の精霊ピロクテテスとともに、ハデスが次々と送り込んでくる怪物との戦いの中で成長を遂げていきます。

ハデスも怪物を派遣するだけでなく、ゼウスを抑え込むほどの圧倒的な力を持ち、さらにコミカルで憎めないところもある魅力的な敵キャラクターです。

ハデス

出典:IMDB

ねお

主人公の努力と成長、圧倒的な強さを見せる敵、そして敵味方に限らず魅力的なキャラクターたちが交わる物語、これらの条件を満たしているからこそ『ヘラクレス』は名作なのだと思います。

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珍作3:『チキン・リトル』(2005年)

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ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオとしては初となるフルCG長編アニメーション、世界初のデジタル上映による3D映画としても話題になりましたが、今も語り継がれているとは言えません。

理由はやはり、映画そのものの酷さだと思います。

チビのニワトリの男の子、チキン・リトルはかつて「空が落ちてくる!」と大騒ぎして街を混乱させ、結局何も起きず「空のカケラ」も見つからなかったことから、町中の動物たちに嘘つき呼ばわりされ、学校ではいじめを受けています(酷い…)。

チキン・リトル

出典:IMDB

ある日、リトルの前に再び「空のカケラ」が落ちてきますが、なんと「空のカケラ」はUFOの一部で、今度は友達のフィッシュを乗せたまま空に戻ってしまいます。

汚名返上のため、いじめられっ子の仲間たちとともに謎のUFOを巡る冒険へ!

ねお

以上があらすじですが、とにかくいじめを受けるリトルが可哀想です。
『チキン・リトル』

出典:IMDB

父子家庭であることが示唆されますが、その父親すらリトルを嘘つき扱いし信じない、期待しない、と最悪です。

最終的には親子で力を合わせますが、結局リトルに謝罪することはありませんでした。

リトルの友達がいじめられている理由も容姿や、臆病な性格や、体型や、言動などであり、酷いです。

チキン・リトル

出典:IMDB

そのいじめ加害者たちが反省することもなく、街を滅ぼそうとしていたUFOの宇宙人とは一瞬で和解し、さらには唐突に露骨な恋愛描写まで入れてくるので、感動も何もありません。

ねお

先進的な映像以外の要素はいろいろと酷い珍作です。

名作3:『ズートピア』(2016年)

『ズートピア』

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

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ねお

フルCG、動物たちが暮らす街が舞台、ということで『チキン・リトル』の比較対象は『ズートピア』がふさわしいでしょう。

他作品と比較するまでもなく名作ですが、圧巻の映像美という点では10年以上フルCGアニメに挑んできたディズニーだからこそ、『チキン・リトル』のような作品があったからこそ、と言えるかもしれません。

新時代の価値観を盛り込んだサスペンス調の警官バディものですが、かなり直接的な人種差別の描写があり、差別的な発言をした主人公ジュディの内省と価値観のアップデートが丁寧に描かれています。

『ズートピア』

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

ねお

『チキン・リトル』でリトルたちをいじめていた動物たちの加害性は完全に放置されており、この時点で差は歴然。

また、ジュディとニックは「男女だから」と安易に恋愛に発展しない関係性が素晴らしく、終盤に何の脈略もなく恋愛要素をぶち込んできた『チキン・リトル』とは天と地ほどの差があります。

『ズートピア』

(C)2016 Disney. All Rights Reserved.

本筋のサスペンス&アクションだけでも『ズートピア』が最高に面白いのはもちろん、現実社会の延長にある繊細なテーマをエンタメに落とし込む手腕が決定的に違う2作品だと思いました。

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珍作4:『アナと雪の女王』(2013年)

『アナと雪の女王』

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ねお

日本でも社会現象になるほどの大ヒットを記録した作品であり、珍作と扱われることはほとんどありませんが、個人的にはいろいろと不満の残る作品でした。

王女の姉妹であるエルサとアナ、2人のディズニープリンセスが主人公です。

生まれつき氷の魔法を使えるエルサはかつて誤ってアナを傷つけてしまった経験から、城に閉じこもって暮らしていました。

エルサが女王に即位した日、隣国の王子と会ったその日に婚約を決めたアナと口論になり、エルサの魔法が暴走、心を閉ざすとともに魔法で建てた氷の城で1人で生きていくことを宣言。

『アナと雪の女王』

(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

魔法の暴走により永遠の冬に閉ざされた王国を救うべく、姉と和解すべく、奮闘するアナを中心に物語は進みます。

ねお

何よりの不満はアナの言動です。

ほとんどの問題はアナが発端となって起こったものであり、そのことを本人が自覚していません。

エルサが心を閉ざしたのはアナの前のめりな性格が原因として大きいです。

『アナと雪の女王』

(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

人の話を聞かない、人の気持ちを想像しようとしない、困った人です。

偶然出会った王子とその日に結婚を決めるのもかなり非常識だし、結局その王子に国を乗っ取られる寸前でした。

ねお

また、あの雪男は何だったのか、オラフとは何だったのか、などなど物語上の役割が不明な要素も多く、あまり面白い映画とは思えませんでした。

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名作4:『アナと雪の女王2』(2019年)

『アナと雪の女王2

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

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ねお

1作目に不満を持っていた私にとって、エルサの解放を描いた続編『アナと雪の女王2』は非常にエモーショナルでした。

アナの相変わらずの強引さにストレスを抱えて暮らしていたエルサは「不思議な声」に導かれて自身の魔法のルーツを巡る旅に出ます。

『アナと雪の女王2』

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

そして、自分の一部が「精霊」であることを知り、「精霊」として生きる道を選択します。

ストーリーはエルサの解放への過程だけに絞られており、エルサの旅に同行するアナやオラフ、クリストフたちはおまけ扱いという潔さ。

『アナと雪の女王2』

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

ねお

1作目からずっと抑圧されているエルサに感情移入している視聴者は、エルサがルーツを知り、覚醒していく過程に救いを感じるのです。曲の素晴らしさはもちろん、戦闘シーンに迫力があるので中だるみすることもなく、純粋に面白い映画です。

主人公に感情移入できる、カタルシスを感じられる、ということは映画に限らず「物語」において重要な要素なのだと再認識しました。

『アナと雪の女王2』

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

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ディズニーの歴代の珍作映画から学ぶ、名作を作るための条件:まとめ

『アナと雪の女王2』

(C)2019 Disney. All Rights Reserved.

以上、4つの珍作・名作をご紹介しました。

それぞれの「珍作に比べての名作の決め手」を振り返ってみましょう。

各シーンのメリハリ、恋に落ちていく過程や敵との因縁が丁寧に描かれていること

主人公の努力と成長、圧倒的な力を見せる敵、魅力的なキャラクターたちの交わり

現実社会の延長にあるテーマをエンタメに落とし込む手腕

感情移入できる主人公、抑圧された感情が解放されていく過程に感じるカタルシス

すべて珍作との比較によって浮かび上がってきました。

一見ありきたりに見えますが、これらの要素を持っていることは特別で優れていることなのではないでしょうか。

もちろんこういった普遍的な要素とは全く違う観点から、名作と称される作品も数多くあります。

ディズニーに限らず、自分が好きな作品の「名作の決め手」を知りたくなったとき、意外な珍作(=面白くない作品)にヒントが隠されているかもしれません。