5月21日(金)より公開の映画『茜色に焼かれる』の見どころをネタバレなしでご紹介!
『町田くんの世界』(19)や『舟を編む』(13)など、独特の演出やテーマで人間ドラマを描いてきた石井裕也監督の最新作は、コロナ禍を生きる母子を描いたヒューマンドラマとなっています。
コロナの影響で苦しみながらも前に進もうとする人々を時にシリアスに、時にユーモアありで描く作品です。
特に尾野真千子演じる母親のキャラクターや価値観は、まるでパンク映画を見ているかのように感じる場面もありました!
2021年の今だからこそ見てほしい、本作の感動的な魅力に迫ります!
- 尾野真千子の優しくも激しい演技の数々
- コロナで人々が抱える怒りも赤裸々に描く
- 永瀬正敏のキャラクターに注目
それでは『茜色に焼かれる』をネタバレなしでレビューします。
目次
映画『茜色に焼かれる』作品情報
作品名 | 茜色に焼かれる |
公開日 | 2021年5月21日 |
上映時間 | 144分 |
監督 | 石井裕也 |
脚本 | 石井裕也 |
出演者 | 尾野真千子 和田庵 片山友希 オダギリジョー 永瀬正敏 大塚ヒロタ 芹澤興人 前田亜季 笠原秀幸 鶴見辰吾 嶋田久作 |
主題歌 | GOING UNDER GROUND |
映画『茜色に焼かれる』あらすじ【ネタバレなし】
コロナ禍となった社会に吞まれないように生きる1組の母子
7年前に夫(オダギリジョー)を不慮の事故で亡くした田中良子(尾野真千子)は昔から演劇が好きで、今も演技が上手なシングルマザーです。
良子は加害者側から賠償金は一銭も受け取らず、今はホームセンターのパートタイムと夜の仕事を掛け持ちしながら、生活費や一人息子・純平(和田庵)の学費、義父の入居する施設費、さらには夫の愛人の子どもに養育費まで払っていました。
時折、母の考えや行動が理解できない純平は学校でいじめにあいながらも、決してくじけることなく学校に通っています。
良子はコロナ禍のせいで経営していたカフェをたたまざるを得なくなるなど、社会に飲まれ続ける母子。
しかし、良子は同じ風俗店で働く女性・ケイ(片山友希)と、今までたまっていた社会や人々に対する不満をぶちまけあいます。
また、奇妙な友情で結ばれた2人とケイに一目ぼれした純平は、こんな世の中でも一瞬だけ笑顔になれるのでした。
どれだけ悲劇に襲われても絶対に手放さなかったものとは?
良子は義父の施設でリモートコンサートが行われていると知り、自分の一人芝居をリモートで披露する目標を持ちます。
さらに、偶然再会した中学の同級生に恋をした良子は彼とデートをすることに。
ケイに恋した純平も彼女とデートをしたい一心で、これまで乗れなかった自転車を必死で練習する日々。
やっとの思いで自転車に乗り、ケイに会いに行く純平ですが、ケイにはまだ誰にも言えない辛い秘密がありました。
さらに良子は中学の同級生に、自分が風俗で働いていたことを正直に告白しますが…。
そして純平をいじめるグループは、ついに自宅である公営団地までやってきて、彼らのせいで純平たちにさらなる苦難が降り注ぐことになります…。
母子にこれでもかと襲い掛かる悲劇の数々。
ヤマダマイ
映画『茜色に焼かれる』感想
尾野真千子の優しさと怒りが交互に現れる怪演
『茜色に焼かれる』の出演で、およそ7年ぶりに実写映画で主演を務めた尾野真千子さん。
本作では夫を亡くしたシングルマザーという役ですが、どんなに自分や仲間が不条理で辛い目に遭っても、「まあ、頑張りましょう」と優しく諭すシーンが非常に印象的です。
まさに母性の塊のような人物かと思いきや…7年前に夫をひき殺した加害者の葬式に顔を出したり、息子のいじめに対して無関心な担任教師には怒りをあらわにする場面もあります。
決して母性であらゆる物事を包み込むだけではなく、世の中の不条理なルールや、他人を思いやることを知らない相手には、とにかく強くぶつかっていく姿が強烈です。
良子もまた、コロナ禍によって苦しい生活や思いをしている1人であるため、彼女の怒りが私たち観客の怒りと重なる場面も多数あることでしょう。
ヤマダマイ
本作が示す「茜色」の意味とは?
映画『茜色に焼かれる』には随所で赤色が登場します。
良子の夫が事故に遭った場所には、真っ赤な柱。
良子が加害者側の弁護士から非難を受けたカフェにも、真っ赤な絵画。
純一が乗る自転車も赤色です。
ヤマダマイ
これは先にも書いた、良子や純平が抱える怒りを表していると考えられます。
カフェで受けた良子の仕打ち、純平が自転車に乗って会いに行った、ケイの悲しい秘密。
ヤマダマイ
過去には最果タヒの原作を実写化した『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(17)があるように、石井監督と「色」の関係性はとても印象的です。
コロナ禍の影響で不条理な思いをしている人の気持ちを色で表すのは、監督ならではの手法ともいえるでしょう。
永瀬正敏の演じる役と変化に注目してほしい!
ヤマダマイ
良子が務める風俗店の店長は人を雇う側であるゆえに、良子やケイに対してあまり同情的な意見や態度を見せません。
お店の女の子が「人生辛いことばかり」といって手首を切ると、彼女の心配ではなく「体に傷がついたら店で働けない=金にならない」ことを心配するような人物です。
良子もケイも、店長に対してあまりよい顔をしませんが、ストーリーが進むにつれて、良子が「ある行動」をとろうとするあたりから、店長の行動や態度が変わってきます。
良子がコロナ禍における他人とのやり取りについて「他人にルールを求めるのは難しい。自分がしっかりしていればいいでしょ」と話すシーンがあります。
これは映画に限らず、現実世界でも言えることです。
ヤマダマイ
映画『茜色に焼かれる』あらすじ・感想まとめ
#茜色に焼かれる#尾野真千子 #主演女優賞最有力 pic.twitter.com/7RVGhEO2xu
— 【公式】映画『茜色に焼かれる』 (@akaneiro_movie) May 16, 2021
- 7年ぶりの主演で怪演を見せる尾野真千子のすごさ
- コロナ禍のドラマをリアルに描くドラマ要素
- 永瀬正敏の役どころに希望を見出せる演出
以上、ここまで『茜色に焼かれる』をレビューしてきました。
コロナ禍で監督自身もかなり落ち込むことがある中、今だからこそ描きたい想いで誕生した本作。
この映画を通して、筆者自身も負けずに進んでいこうという気持ちを強く持てました。
また、こうしてつらい現実を知っている人ほど、他人を思いやる優しい気持ちを持っているものだと痛感できます。
今だからこそ見てほしいヒューマンドラマの傑作でした!
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