「諸君、私は戦争が好きだ」という人気コミックのキャラクターのセリフがありました。
ニコ・トスカーニ
特に第二次世界大戦(1939-1945)は近代における最大の事件と言っても過言ではなく、多くの映画やドラマの題材になってきました。
今回はその中でも実話をベースにした第二次世界大戦映画を取り上げてみたいと思います。
テーマ別に分類しています。
選出作ですが実話がベースであること、作品の出来、筆者の好みの3点で選出しました。
ニコ・トスカーニ
目次
- 1.第二次世界大戦の実話を扱ったおすすめ映画・ドラマ
- 1.1『トラ・トラ・トラ!』(1970)
- 1.2『父親たちの星条旗』/『硫黄島からの手紙』(2006)
- 1.3『バンド・オブ・ブラザース』(2001)
- 1.4『ザ・パシフィック』(2010)
- 1.5『史上最大の作戦』(1962)
- 1.6『ヒトラー 〜最期の12日間〜』(2004)
- 1.7『日本のいちばん長い日』(1967)
- 1.8『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017)
- 1.9『シンドラーのリスト』(1993)
- 1.10『戦場のピアニスト』(2002)
- 1.11『ハクソー・リッジ』(2016)
- 1.12『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)
- 1.13『ライトスタッフ』(1983):番外編
- 2.第二次世界大戦の実話を扱ったおすすめ映画・ドラマ:まとめ
第二次世界大戦の実話を扱ったおすすめ映画・ドラマ
『トラ・トラ・トラ!』(1970)
主な背景・真珠湾攻撃
日本時間の1941年12月8日未明。
日本海軍がハワイ、オワフ島真珠湾のアメリカ軍基地および太平洋艦隊を急襲しました。
作戦は成功し、アメリカ太平洋艦隊の戦艦部隊は戦闘能力を一時的に喪失しました。
ニコ・トスカーニ
この際の「全軍突撃セヨ」の暗号命令が「ト・ト・ト」、淵田美津雄(1902-1976)当時少佐が連合艦隊司令部に打電した2回目の暗号が「ワレ奇襲ニ成功セリ」を意味する「トラ・トラ・トラ」で映画のタイトルはここから来ています。
映画は当時最先端の特撮技術で撮影された真珠湾攻撃の場面をクライマックスにしていますが、上映時間144分の大半は軍人や政治家があーだこうだと議論している場面で構成されています。
映画のキモになっているのは真珠湾攻撃が実行されるまでの過程です。
作戦実行の決定打になったのはアメリカのコーデル・ハル国務長官(1871-1955)による事実上の最後通告となったハル・ノート(1941年11月27日に提示)です。
ハル・ノートの内容を思い切り煎じると「日本は日露戦争による権益と満州全土から手を引け」というもので、当時の日本政府からしたら受け入れがたいものでした。
これにより日米開戦が決定してしまいます。
もっとも当時の日本でも本当にアメリカに勝てると思っていたのはごく少数で、軍部にも山本五十六(1884-1943)のようになんとかアメリカとの開戦を回避しようとしていた人物もいました。
ニコ・トスカーニ
本作は日本側とアメリカ側で監督が分かれています。
日本側の監督は舛田利雄と深作欣二の共同。
ニコ・トスカーニ
大人の事情でクレジットされていませんが世界のクロサワは脚本にも関わっています。
▼動画の無料視聴はこちら▼
『父親たちの星条旗』/『硫黄島からの手紙』(2006)
主な背景・硫黄島の戦い
小笠原諸島の硫黄島を戦場とする硫黄島の戦いは1945年2月19日から1945年3月26日にかけて行われた太平洋戦争の戦闘の一つです。
太平洋戦線において最大規模の激戦になり、米軍の損害実数が日本軍の損害実数を上回った唯一の戦いです。
本プロジェクトで監督を務めたクリント・イーストウッドはこの歴史的事実を題材に日米双方の視点から全く別の映画を作りました。
ニコ・トスカーニ
『父親たちの星条旗』はイーストウッドらしい大人の渋みを感じさせる作品です。
戦闘シーンもありますが主要なポイントはそこではなく、主人公たちがアメリカに帰国する場面です。
有名な「硫黄島の星条旗」(6人の米兵が摺鉢山の頂上に星条旗を建てる写真)に映ったことで英雄として戦時国債のキャンペーンに駆り出される兵士たちが苦悩する描写はイーストウッドらしい渋い大人のドラマに着地しています。
ニコ・トスカーニ
日本側視点でほぼ全編日本語で撮影された『硫黄島からの手紙』はもっとストレートな戦争映画の作りになっています。
『プライベート・ライアン』を彷彿させる戦闘描写は容赦なくリアルで、激戦の記録を間近で見ているような臨場感があります。
映画で主人公になっている栗林忠道(1891-1945)中将はゲリラ戦に徹することで圧倒的に物量に勝る米軍に対し長期戦に持ち込むことに成功しましたが、アイルランド独立戦争、ベトナム戦争、キューバ革命など歴史を振り返ると数的不利な側が勝利した戦いは多くがゲリラ戦であり、「戦法」という面でも歴史の勉強になる映画です。
ニコ・トスカーニ
日本の文化や精神性の描写においてもほとんど違和感がなく完璧に近いです。
日本語がまったくわからないイーストウッドが「日本映画」と主張しても違和感のないほど日本人の精神を日本語の映画で描いて見せたのは凄いとしか言いようがありません。
ニコ・トスカーニ
ほぼ全編日本語でありながらアメリカ本国でも非常に高く評価され、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞の候補になりました。
▼動画の無料視聴はこちら▼
『バンド・オブ・ブラザース』(2001)
主な背景・ヨーロッパ戦線
原作は歴史家スティーヴン・アンブローズ(1936-2002)のノンフィクション作品。
イギリスの公共放送局BBCとアメリカのケーブル局HBOの共同で製作費1億2,000万ドルという超破格の規模で制作され、非常に高い評価を受けました。
アメリカ陸軍第101空挺師団第506歩兵連隊第2大隊E中隊の面々を主人公にした群像劇的作りになっています。
舞台となっている背景はヨーロッパ戦線で、E中隊の訓練から対ドイツ戦勝利・終戦までが描かれています。
ニコ・トスカーニ
第二次世界大戦はドイツ軍のポーランド侵攻(1939)により、イギリス、フランスが宣戦布告したことから開始されました。
1944年、連合国軍がフランスのノルマンディーに上陸。
200万人を超える大兵団が参加したノルマンディー上陸作戦(正式名称はオーヴァーロード作戦)は「史上最大の作戦」と呼ばれており、この作戦は戦局を大きく動かすことになります。
『バンド・オブ・ブラザース』は1話目が訓練の場面で、2話目がノルマンディーという構成になっており、ノルマンディーからヨーロッパ戦線終了までが各登場人物の目線を通して描かれています。
監督は各話持ち回りですが製作総指揮はスティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクス。
ニコ・トスカーニ
各話冒頭にインタビュー映像が挿入されていますが、インタビューに登場するご老人たちはドラマに登場するE中隊の軍人たちご本人です。
ニコ・トスカーニ
- Amazonプライムビデオ(https://www.amazon.co.jp/Prime-Video/)/ 見放題 / 30日間無料
『ザ・パシフィック』(2010)
主な背景・太平洋戦争
『バンド・オブ・ブラザース』の製作総指揮スティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスが続投。
同じくケーブル局のHBOが制作した全10話のテレビ・ミニシリーズです。
ニコ・トスカーニ
背景は太平洋戦争です。
太平洋戦争は第二次世界大戦の局面の一つで、1941年に日本軍がイギリス領マレーに侵攻したことで始まりました。
その後、日本のポツダム宣言受諾(1945年)による全面降伏で終戦するまで太平洋(ミクロネシア、メラネシア)、北東アジア、東南アジア、オセアニア、インド洋、アフリカ(マダガスカル)、アリューシャン諸島で激戦が繰り広げられました。
『ザ・パシフィック』ではガダルカナルの戦い(1942-1943)、ペリリューの戦い(1944)、硫黄島の戦い(1945)、沖縄戦(1945)が描かれています。
群像劇要素が強かった『バンド・オブ・ブラザーズ』に対して『ザ・パシフィック』ははっきり3人の主人公がいます。
ロバート・レッキー(1920-2001)、ユージーン・スレッジ(1923-2001)、ジョン・バジロン(1916-1945)です。
本作は戦後、新聞記者となったレッキーの著作「南太平洋戦記 – ガダルカナルからペリリューヘ」、生物学者・作家になったスレッジの著作「ペリリュー・沖縄戦記」と戦死したバジロンの記録をもとに構成されています。
ニコ・トスカーニ
寒冷な気候のヨーロッパに対してアジアは高温多湿な地域が多く、登場人物が渇きに悩まされる場面が度々見られ演出は『バンド・オブ・ブラザーズ』のコンセプトを引き継いでいますが、はっきり差別化された単体でも楽しめる作品に仕上がっています。
ニコ・トスカーニ
- Amazonプライムビデオ(https://www.amazon.co.jp/Prime-Video/)/ 見放題 / 30日間無料
『史上最大の作戦』(1962)
主な背景・ノルマンディー上陸作戦
原作はジャーナリスト、コーネリアス・ライアン(1920-1974)のノンフィクション。
『バンド・オブ・ブラザース』でも少し触れましたが『史上最大の作戦』はノルマンディー上陸作戦のみに触れています。
ノルマンディー上陸作戦は1944年6月6日に開始され同年8月30日のドイツ軍退却を以て連合国軍の勝利に終わりました。
戦地となったのはフランスのノルマンディー海岸。
連合国軍に関わったのは計15か国、総兵力は200万人。
落下傘部隊の降下、空襲、艦砲射撃、上陸艇による上陸作戦の合わせ技という連合国軍の物量を活かし、ナチス・ドイツの猛抵抗を押し切りました。
本作戦によりナチス・ドイツは多くの占領地を失い継戦能力を削がれることになります。
『史上最大の作戦』はアメリカ軍、イギリス軍、ドイツ軍、フランス軍、フランスのレジスタンス部隊にそれぞれ視点を分け、作戦全体を俯瞰するような作りになっています。
監督が3人おり、3人の監督がアメリカ、イギリス、ドイツのパートを分担して演出しています。
ニコ・トスカーニ
今見ると正直、古臭い部分が目立ちますが戦史の勉強にうってつけの作品です。
ニコ・トスカーニ
- music.jp(https://music-book.jp/)/ レンタル / 30日間無料
- TSUTAYA TV(https://www.discas.net/)/ レンタル / 30日間無料
『ヒトラー 〜最期の12日間〜』(2004)
主な背景・ベルリン市街戦
ヒトラーの秘書だったゲルトラウト・ユンゲ(1920-2002)の回想を土台に史上最悪の独裁者アドルフ・ヒトラー(1889-1945)最後の日々を描いた作品。
ヒトラーの人間的側面を描いた意欲作であり、何気にヒトラーをドイツ語圏の俳優(演じたブルーノ・ガンツはスイス人)がドイツ語で演じた初めての作品でもあります。
本作は紛れもなくヒトラーを主人公に描いた映画ですが、それと同時に敗戦国の悲惨な状況も描いています。
1945年4月23日、ソビエトは初めてベルリンの郊外に進入し同27日までにベルリンは完全に包囲されていました。
ニコ・トスカーニ
街中のあちこちが攻撃されベルリンは破壊された瓦礫の山に埋め尽くされていました。
本作はその悲惨な状況と完全に詰んだ状況で現実味の無い作戦を口にするヒトラーの狂気がシンクロする巧みな作りになっています。
ヒトラーは1945年4月30日に地下壕で自殺、翌5月1日に後任首相のヨーゼフ・ゲッベルス(1897-1945)が自殺。
5月8日にはカール・デーニッツ元帥(1891-1980)が連合国に無条件降伏し、ヨーロッパ戦線は終結します。
ニコ・トスカーニ
1940年代の録音はモノラル録音が主流でしたが、ナチスはステレオ録音の実験に乗り出しており時代を15年は先取りしたレベルの鮮明な録音が残されています。
ドイツの名ピアニスト、ワルター・ギーゼキング(1895-1956)はこの実験により戦中ステレオ録音(1945年)を残していますが、この録音には爆撃とも高射砲ともとれる音が収録されています。
▼動画の無料視聴はこちら▼
『日本のいちばん長い日』(1967)
主な背景・ポツダム宣言受諾
原作は半藤一利のノンフィクション。
ニコ・トスカーニ
第二次世界大戦は1945年8月15日のポツダム宣言受諾による大日本帝国の無条件降伏で終結しました、
本作は御前会議による昭和天皇と閣僚たちの日本降伏決議からポツダム宣言受諾を国民に知らせる玉音放送までの24時間を描いています。
戦争映画なのに戦闘シーンはゼロで、ほとんどが会議の場面。
未見にしわを寄せた男たちが侃々諤々の議論を交わしているという地味極まりない映画ですが、橋本忍の巧みな脚本と岡本喜八の技巧の限りを尽くした演出で全く退屈させられません。
ニコ・トスカーニ
そういえば、『シン・ゴジラ』には岡本喜八監督が写真のみ(生物学者の牧悟郎役)出演していました。
ニコ・トスカーニ
- Amazonプライムビデオ(https://www.amazon.co.jp/Prime-Video/)/ 見放題 / 30日間無料
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017)
主な背景・戦時下での政治
近代史上最も有名な政治家であろうウィンストン・チャーチル(1874-1965)を主人公にした伝記映画。
特殊メイクで本人そっくりになり切ったゲイリー・オールドマンはアカデミー賞の主演男優賞を受賞しました。
映画は1940年、第二次世界大戦の初期から始まります。
当時首相のネヴィル・チェンバレン(1869-1940)はドイツ、イタリアと宥和政策をとりますがドイツにノルウェー、ベネルクス三国への侵攻を許し、失策により辞任。
チャーチルが首相に就任します。
元よりチェンバレンの宥和政策に反対していたチャーチルは、ナチス・ドイツのロンドン空爆時にも国民を鼓舞し続け、国民も彼を支持しました。
利害の一致したソヴィエトとの軍事同盟、連合国共同宣言発表への合意など戦時下において的確な統率力を発揮し終戦まで陣頭指揮をとり続けます。
大戦後は1945年の総選挙で保守党が大敗し退陣するも、1951年秋の総選挙で再び首相に就任。
福利厚生を充実させて国民の憤懣を和らげました。
言語能力に優れた弁舌が巧みな政治家でもあり、あまり話題に上りませんが回顧録で1953年にノーベル文学賞を受賞しています。
ニコ・トスカーニ
▼動画の無料視聴はこちら▼
『シンドラーのリスト』(1993)
主な背景・ホロコースト
ニコ・トスカーニ
人類史上でも稀にみる最悪レベルの大虐殺で500万人以上が犠牲になったと推定されています。
反ユダヤ主義は決して近代に成立したものではなく、旧約聖書の出エジプト記もユダヤ人差別というバックグラウンドがあります。
ドイツでも反ユダヤ主義は古くからあり、宗教改革者として名高いマルティン・ルター(1483-1546)も反ユダヤ的思想の持ち主でした。
中世ドイツでは身分によって就業できる職種が差別されていましたが、ユダヤ人が就くことができたのは卑しい仕事と考えられていた金融業だけでした。
シェイクスピアの古典的名作「ヴェニスの商人」のシャイロックが金貸しなのもそう言った文化的背景に由来します。
しかしユダヤ人はたくましく、長年金融業に携わるうちに商売のコツと掴みネットワークを拡大させ巨万の富を得るものが現れました。
ニコ・トスカーニ
ホロコーストの舵取りをしたのは言わずもがなヒトラーですが、ヒトラーがもともと画家志望だったのは有名な話。
ニコ・トスカーニ
特定の民族だけを虐殺するなど冷静に考えると異常以外何物でもない事件ですが、もちろん良心に従いホロコーストに密かに抵抗した人もいます。
その最も有名な例が『シンドラーのリスト』で取り上げられたドイツ人実業家オスカー・シンドラー(1908-1974)でしょう。
シンドラーはナチスの強制収容所から自身の工場で雇用していた1,200人を救い出しました。
映画は相当な脚色を加えられており、間違いなくシンドラーは美化されていますが、映画としては名作の名にふさわしい出来です。
ニコ・トスカーニ
感傷的過ぎる点はあるものの、ゲットーの解体や収容所での理不尽な行いは容赦なくホロコーストという事件の異常な残虐性を描くことに成功しています。
ニコ・トスカーニ
第二次世界大戦では日本もドイツと同じ枢軸国側だったわけですが、日本にも密かにユダヤ人を救った人がいます。
外交官の杉原千畝(1900-1986)です。
戦時中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた杉原は外務省の訓令に反して避難を希望するユダヤ人に大量のビザを発給しました。
シンドラーも杉原も戦後は不遇をかこいましたが、共にイスラエル政府より「諸国民の中の正義の人」の称号を授与されています。
ニコ・トスカーニ
『シンドラーのリスト』は興行的にも批評的にも成功しましたが、感傷的過ぎる作りを批判する意見もありました。
ホロコーストのドキュメンタリー映画『ショア』(1985)を監督したクロード・ランズマンなどもその1人です。
ニコ・トスカーニ
▼動画の無料視聴はこちら▼
『戦場のピアニスト』(2002)
主な背景・ホロコースト
ホロコーストが題材の実話をもとにした劇映画で他に目立つものと言えばやはり『戦場のピアニスト』でしょう。
スピルバーグがユダヤ人として思い切り感情を込めた『シンドラーのリスト』に対して、ホロコーストを実際に体験したロマン・ポランスキーの視線はもっと冷めています。
かなりわかりやすいクライマックスのあった『シンドラーのリスト』に対して『戦場のピアニスト』はもっと冷めていてアンチクライマックス的な作りです。
ニコ・トスカーニ
ちなみに『戦場のピアニスト』で取り上げられたユダヤ系ポーランド人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(1911-2000)の長男クリストファー・W・A・スピルマンは歴史学者になっており、日本のいくつかの大学で教鞭をとっていました。
日本語が堪能で日本語で著作も残しています。
- Amazonプライムビデオ(https://www.amazon.co.jp/Prime-Video/)/ 見放題 / 30日間無料
『ハクソー・リッジ』(2016)
主な背景・良心的兵役拒否
良心的兵役拒否とは当人の良心に従い戦争への参加や兵役を拒否する行為の事です。
戦時下でこのような行動をとると非難されることもありますが、良心的兵役拒否を行いながら名誉勲章を授与された人物がいます。
それが『ハクソー・リッジ』で主人公として取り上げられているデズモンド・T・ドス(1919-2006)です。
ドスは戦闘行為こそ拒否したものの衛生兵として活躍し、敵・味方に関係なく多くの人を救護しました。
『ハクソー・リッジ』は沖縄戦での彼の活躍を描いています。
メル・ギブソンらしいデフォルメに一歩踏み込んだ大げさ演出の連続で、激しく脚色されていますが映画としては大変にドラマチックな仕上がりになっています。
ニコ・トスカーニ
ちなみに同時期にオーストリアで良心的兵役拒否を行ったフランツ・イエーガーシュテッター(1907-1943)はナチスに処刑されています。
彼の生涯はテレンス・マリック監督により『名もなき生涯』(2019)として映画化されています。
▼動画の無料視聴はこちら▼
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)
主な背景・戦時下での技術革新
戦争は悲劇ですが、その一方で技術の進歩をもたらしました。
インターネットの原型であるアーパネットが東西冷戦を背景に生み出されたものなら、コンピューターもまた第二次世界大戦を背景にしています。
現代のコンピューターはほぼ例外なくノイマン型コンピューターです。
ニコ・トスカーニ
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』で取り上げられたイギリス人数学者アラン・チューリング(1912-1954)もその1人です。
戦時中、ナチスはエニグマという強力な暗号装置を使用していました。
エニグマの作り出す複雑なスクランブルを解読する方法としてポーランド人数学者のマリアン・レイェフスキ(1905-1980)は電気計算機を使う方法を考案していました。
この方法は一定の成果を上げており、チューリングはその理論を推し進めて”bombe”と呼称される計算機を作り出しました。
電気式の計算機――黎明期のコンピューターです。
ニコ・トスカーニ
人類史上に残る功績を残したチューリングでしたが、晩年は不遇でした。
チューリングが同性愛者だったからです。
当時のイギリスで同性愛は犯罪でした。
1952年、自宅に泥棒が入ったことがきっかけで同性愛が発覚しチューリングは逮捕されます。
その翌々年の1954年、チューリングは青酸化合物により自殺しました。
まだ41歳でした。
チューリングがブレッチリーパークで行った暗号解読の仕事は国家機密であったため功績は長きにわたって封印され、功績が一般に知られるようになったのは1970年代以降です。
ニコ・トスカーニ
彼の功績は現代では高く評価されており、計算機科学におけるノーベル賞と言われる賞には「チューリング賞」の名前が冠されています。
▼動画の無料視聴はこちら▼
『ライトスタッフ』(1983):番外編
主な背景・戦時下での技術革新のその後
宇宙開発を題材にとった『ライトスタッフ』(1983)は間接的に戦争による技術革新の副産物を描いていると言えます。
『ライトスタッフ』に登場するチャック・イェーガー(1923-)は人類で初めて音速の壁を破った人物ですがイェーガーは第二次大戦中エースパイロットとして活躍した人物です。
ニコ・トスカーニ
アメリカ初の7人の宇宙飛行士(マーキュリー・セブン)は全員が元軍人でジョン・ハーシェル・グレン・ジュニア(1921-2016)とドナルド・スレイトン(1924-1993)は太平洋戦線で戦闘機、爆撃機のパイロットとして活躍しています。
そもそも戦後アメリカのNASAで技術的な中核を担っていたヴェルナー・フォン・ブラウン(1912-1977)は戦時中ナチスでV2ロケット(長距離弾道ミサイル)の開発責任者だった人物です。
ニコ・トスカーニ
▼動画の無料視聴はこちら▼
第二次世界大戦の実話を扱ったおすすめ映画・ドラマ:まとめ
以上、いかがでしたでしょうか?
第二次世界大戦は人類史上における大事件であり、歴史の勉強、あるいは教訓としても一度は勉強しておくべき事柄だと思います。
興味のある方も無い方も一度はこれらの作品に触れてみてはいかがでしょうか。
▼あわせて読みたい!▼