『ゲーム・オブ・スローンズ』や『チェルノブイリ』を手掛けたHBOが2019年に新たに発表したドラマが『ウォッチメン』です。
『LOST』や『LEFTOVERS/残された世界』のデイモン・リンデロフが企画・製作総指揮・脚本を手掛けた全9話のドラマシリーズです。
ドラマ自体はオリジナルストーリーですが、アラン・ムーアとデイブ・ギボンズが原作を手掛けた伝説的なグラフィックノベル「ウォッチメン」に基づいた話になっています。
そのため、映画『ウォッチメン』以上に原作グラフィックノベルについて知っておかないと分からない部分が多いので、記事の中盤では見るまでに知っておきたいことを挙げていきます。
目次
海外ドラマ『ウォッチメン』あらすじ【ネタバレなし】
『ウォッチメン』はじまり
ドラマ『ウォッチメン』の舞台は基本的にオクラホマ州タルサという街だけで展開されます。
回想シーンなどでは別の土地も描かれますが、物語の本筋はこのタルサと言う街から一歩も外を出ません。
村松 健太郎
舞台が限定される一方で時間軸が大きく前後することで物語に深みと幅が加わっています。
ドラマの冒頭は1921年のタルサ。
実際に起きた“タルサ暴動”と言う事件から物語が始まります。
当時のタルサは経済的に成功を収めた黒人たちの街“ブラック・ウォールストリート”として栄えていました。
そこを『ブラック・クランズマン』にも登場している白人至上主義団体”KKK”が襲撃、地元の黒人たちを文字通り虐殺するという事件が起きます。
この虐殺のシーンは銃撃・爆撃シーンもかなりエグさを込めて描かれています
村松 健太郎
1921年と言うと「ウォッチメン」においてヒーローが登場する15~20年ほど前であると同時に、2019年から見て約100年前と言うことになります。
デイモン・リンデロフはこのアメリカの歴史の暗部といも言える出来事を物語の根底に置きます。
そして、2019年。
リベラルなロバート・レッドフォード大統領の長期政権の影響で、マイノリティに優しい世界になる一方、それに反発する極端な白人至上主義者集団が危険な活動をするようになり、社会の中で対立と分断が進んでいます。
現実のトランプ政権下の現在のアメリカでも対立と分断が進んでいますが、トランプ大統領は極端な保守主義的な立場の政治家です。
村松 健太郎
ウォッチメンというヒーローの秘密
オクラホマ州タルサの警察官たちは、白人至上主義組織“第7機兵隊”が40軒もの警官の自宅を襲撃した“ホワイト・ナイト”と呼ばれる事件が起きて以降、素顔を隠すためにマスクをつけて任務にあたっています。
村松 健太郎
主人公のアンジェラはこの事件の後に、表向きは警察を辞めベーカーリーを営んでいますが、黒覆面のシスター・ナイトとして警察官として戦い続けています。
仲間の刑事たちも皆・マスクをつけて、表向きは警官であることも隠しています。
一方、“第7機兵隊”のメンバーはロールシャッハのマスクをつけて、過激な活動を続けています。
原作「ウォッチメン」でもロールシャッハは極右で排他的なキャラクターとして描かれていましたが、最期は自身の正義に殉ずるというヒーロー的なラストを迎えています。
しかしドラマではキャラクターの負の部分だけが受け継がれて白人至上主義者たちの顔を隠しています。
300万人の大量殺人を犯した男オジマンディアスことエイドリアン・ヴェイトは西洋風の古城で奇妙な暮らしをしています。
Dr.マンハッタンは火星で隠遁生活を送っていて、2代目シルクスペクターは今ではFBI捜査官として働いています。
そして、唯一顔を隠さないでいた警察署の署長ジャッド・クロフォードが何者かによって殺害されたことから物語が大きく動き始めます。
それは100年に及ぶタルサとアメリカ、そしてヒーローの秘密に迫っていきます。
海外ドラマ『ウォッチメン』原作解説
「ウォッチメン」概要
1986年にイギリス人アラン・ムーアとデイブ・ギボンズによって生み出されたコミック=グラフィックノベルが「ウォッチメン」です。
それまでの子供向けと言うコミックのイメージを一新したこの作品は、コミックのアカデミー賞と呼ばれる“アイズナー賞”を受賞し、1988年にはSF作品に対して贈られるヒューゴー賞を受賞。
さらには、2005年には“タイム誌”が選ぶアメリカの長編小説100の中に唯一コミック(グラフィックノベル)から選ばれた記念碑的作品です。
村松 健太郎
舞台は1985年のアメリカ。
ウォーターゲート事件がもみ消され、ベトナム戦争はアメリカの勝利で終わり、ニクソン大統領が異例の3期目を務めているという“IFの世界”を描いています。
村松 健太郎
原作版「ウォッチメン」あらすじ・結末
村松 健太郎
1930年代のアメリカ、マスクを被り自警活動を行う“ヒーロー”同時多発的に登場します。
その後、彼らはヒーローチーム“ミニッツメン”を結成、彼らはアメリカの国威発揚の材料としてマスコミに取り上げられるようになります。
第二次世界大戦後、次世代のヒーローたちが新たなチーム“ウォッチメン”を結成します。
メンバーは原子力実験の事故から帰還したことで、世界で唯一の本物の超人となったDr.マンハッタン、アレキサンダー大王や古代エジプトのファラオ・ラムセス2世に自分を重ねる超天才オジマンディアス、母親がミニッツメンのメンバーだった紅一点2代目シルクスペクター、ミニッツメンのメンバーに弟子入りしたナイトオウル2世、パラノイアで極右で原理主義的思想の持ち主と言う危険人物のロールシャッハ、そしてミニッツメンの最年少メンバーだったコメディアンの6人です。
やがて、国家にも属さず、法律にものっとらずに自警活動をするヒーローたちに不満の声が高まります。
“WHO WATCHES THE WATCHMEN(=誰がウォッチメンを見張るのか?)”が合言葉のようになり、やがて、マスクを被っての自警活動を禁じるキーン条例が施行され、彼らの活動は法律で禁じられるようになります。
オジマンディアスはその風潮を予見し、条例施行前にエイドリアン・ヴェイトと言う素性を公にし、自身のキャラクターグッズビジネスなどで大富豪となります。
条例施行以後、Dr.マンハッタンは歩く核抑止力として国家の研究機関に属し、コメディアンは政府の秘密工作員として活動することになり、2人はベトナム戦争に介入して、アメリカを勝利に導きます。
2代目シルクスペクターとナイトオウル2世は引退する一方で、ロールシャッハは殺人の容疑で追われながらも自警活動を継続します。
そして、米ソ冷戦の緊張が極限にまで高まった1986年、何者かよってコメディアンが殺される事件が起きます。
独自に事件を追い始めたロールシャッハはウォッチメンのメンバーに“何者かによってヒーロー狩りが行われている”、“さらにその先に大きな陰謀がある”と忠告をして回ります。
村松 健太郎
全ての事件の意図を裏で引いていたのはオジマンディアス/エイドリアン・ヴェイトでした。
オジマンディアスは米ソの冷戦への危機感から国家やイデオロギーを超えた普遍的な脅威を創出します。
通称“イカ”と呼ばれることになる怪物はニューヨークなどの世界の大都市で暴れ回り300万人の人間が犠牲になります。
真実を知りことを公にしようとするロールシャッハ、真実を知りうろたえるシルクスペクターとナイトオウル。
その様子を見ていたDr.マンハッタンは今更ことを公にしても得られるものはなく、オジマンディアスが作り上げた平和は保たれるべきだという判断を下します。
村松 健太郎
海外ドラマ『ウォッチメン』感想
『ウォッチメン』が原作「ウォッチメン」から引き継いだもの
ドラマ『ウォッチメン』の舞台は原作からの世界観を引き継いだ34年後の2019年のアメリカ。
原作のラストにあったとおりロバート・レッドフォードが1992年から大統領職に就いてから長い年月が流れています。
“イカ”への恐怖は今も人々の心に残っているうえに、小さな“イカ”が時折空から降ってきます。
Dr.マンハッタンは火星に移住し、ベトナムはアメリカに併合されていて、51番目の州となっています。
『ウォッチメン』のキャスト
『ビール・ストリートの恋人たち』でアカデミー助演女優賞を受賞したレジーナ・キングが主役のアンジェラ/シスター・ナイトを演じています。
また、35年後のオジマンディアス/エイドリアン・ヴェイトを『運命の逆転』でアカデミー主演男優賞受賞したジェレミー・アイアンズが演じています。
さらにカギを握る老人を『愛と青春の旅立ち』でアカデミー助演男優賞を受賞したルイス・ゴセットJr.が演じています。
村松 健太郎
また『アクアマン』のヤーヤ・アブドゥル=マーティン二世やドラマ『マイアミバイス』のドン・ジョンソン、3度のエミー賞に輝くジーン・スマートが34年後の2代目シルクスペクターとして劇中に登場します。
『ウォッチメン』感想
ドラマ『ウォッチメン』の見どころはなんといっても構成の巧みさでしょう。
村松 健太郎
また、原典である原作「ウォッチメン」についても大胆に踏み込んでいます。
村松 健太郎
ドラマ放映開始から全米でも話題を呼び、賛否両論、大きな議論の渦を生んだとのことですが、特に中盤以降の第5話、第6話はショッキングです。
そこから、一気にクライマックスへと流れる第7話から最終話までの3話はそれまで散りばめられた要素が一気に集約されていきます。
過去の存在とだけ描かれていたかつてのヒーローたちが、物語の本筋に大きく絡み合っていく展開はここまでヒーロージャンルの文体を取っていなかったドラマ『ウォッチメン』が一気に“ヒーローモノ”だったことを思い出させてくれてとても燃えます。
海外ドラマ『ウォッチメン』あらすじ・感想まとめ
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映画版記事の時にも書きましたが、原作「ウォッチメン」を読まずに済ますことはできないので、原作チェックは必須です。
映画との比較の時にはどうしても「原作に比べると…」という口調になりがちでしたが、ドラマ『ウォッチメン』関しては原作の世界観が拡がったように感じます。
村松 健太郎
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