2020年に公開された『透明人間』は、ユニバーサル映画を代表するモンスター映画のリブート作品です。
主演を務めるのは『アス』にも出演している女優、エリザベス・モス。
- 『透明人間』は、1933年に公開された作品のリブート版
- 『ゲット・アウト』のプロデューサーと『ソウ』シリーズの監督リー・ワネルが製作に携わった
- 襲う側ではなく「襲われる側」の視点で描く新たな『透明人間』
マルコヤマモト
目次
『透明人間』作品情報
作品名 | 透明人間 |
公開日 | 2020年7月10日 |
上映時間 | 122分 |
監督 | リー・ワネル |
脚本 | リー・ワネル |
出演者 | エリザベス・モス オリバー・ジャクソン=コーエン オルディス・ホッジ ストーム・リード ハリエット・ダイアー マイケル・ドーマン |
音楽 | ベンジャミン・ウォルフィッシュ |
【ネタバレ】『透明人間』あらすじ・解説
1933年版『透明人間』とは
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モンスター映画の透明人間のイメージを植え付けた包帯グルグル巻の姿で登場し、包帯を取るとまさかの顔がない…という姿にたくさんの人が衝撃を受けました。
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気になるストーリーですが、1933年版の主人公は野心に燃える若き科学者のグリフィン。
姿が透明になる薬「モノケイン」を発明したグリフィンは、自分の姿を透明にできる代わりに、薬の副作用として凶暴な殺人鬼へと変貌してしまうのです!
しかし殺人や暴行を繰り返すグリフィンは、モンスターとして街の人々に追い詰められることに…。
そして、納屋に追い詰められたグリフィンは警察によって火を放たれ、瀕死の重傷を負ったのちに亡くなり、死んだ途端に「モノケイン」の効果が消えて本来の姿に戻る…という物語でした。
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他にも、透明人間と言えばいたずらや良からぬことを考えるなど、これまで様々なテーマで描かれてきた題材です。
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2020年版は透明人間に「襲われる側」が主人公
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しかも、恋人のエイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)と寝ているベッドからこっそりと抜け出し、あたふたと家の外に逃亡する様子が冒頭に描かれます。
セシリアは車でやってきた妹のエミリー(ハリエット・ダイアー)と落ち合い、逃亡を図ろうとしますが追いついたエイドリアンがセシリアを連れ戻そうと車の窓ガラスを素手で割るものの、車は走っていってしまいます…。
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そして、友人で刑事のジェームズ(オルディス・ホッジ)と娘のシドニー(ストーム・リード)のもとに身を寄せたセシリアは、玄関先にある新聞受けから新聞を取ってくることもできないくらい、外に出ることを恐れるようになりました。
しかしある日、妹のエミリーがジェームズ宅にやってきてエイドリアンが自殺をしたことを告げます。
セシリアはエイドリアンが自殺をするはずがないと皆の前で言いました。
そして、彼ほど優秀な科学者ならば自殺を偽装するくらい容易であること、そして今でも自分を見張っているのではないかと考えていたのです。
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エイドリアンの自殺を機に、セシリアは彼との間にあったすべてのことを話しました。
エイドリアンは自分以外の他人も自分の思うままに支配しようとするソシオパスだったのです。
もちろんセシリアに対しても、服の色から形、話し方、考え方まで自分色に染めようとしており、さらにエイドリアンは子供を持つことを強く望んでいました。
しかし、子供ができることでエイドリアンから逃げられなくなると考えたセシリアは、内緒で避妊薬を飲んでいたのです。
そしてセシリアのもとに、エイドリアンの兄のトム(マイケル・ドーマン)からエイドリアンの財産相続についての手紙が届きます…。
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死んだはずの恋人が透明人間に?
エイドリアンの遺書に書いてある内容の通り、セシリアが罪を犯さないという条件付きで、エイドリアンの自宅と膨大な遺産が相続されることに。
セシリアはついに自由を手に入れ、遺産の一部をシドニーの大学資金に充てるなど幸せな時間を過ごしていました。
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セシリアが目を離したすきに台所のコンロが燃え上がったり、寝ている間に毛布が勝手に剥がれたり、さらには何者かの視線を感じるようになりました。
視線の先には何も居ないはずなのですが、そこに確かに「居る」のです。
自分を追ってくる妙な視線の「存在」に気づいたセシリアは、ついにその視線と対峙することになり屋根裏に恋人のものらしきスマホと包丁を発見します。
そして、白いペンキを視線を感じる先へ向かってかけると、人型のようなものが浮かび上がり、どこかへ消えていったのです…。
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「エイドリアンが自殺をするはずがない」というセシリアの疑念は確信に変わりました。
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透明になったエイドリアンは、セシリア妹のエミリーに対し酷い内容のメールを送り、シドニーをセシリアが殴ったように見せかけジェームズの家から追い出し1人にしようとします。
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行く場所がなくなったセシリアですが、エイドリアンが生きている証拠を求めて2人が暮らした自宅へ戻りました。
そして、地下にあるエイドリアンの研究所で、エイドリアンが発明した透明人間になれる機械とスーツを見つけたのです。
セシリアはスーツの1つを自分のクローゼットに隠し、元の場所へ戻りました。
透明人間が起こす悲劇
エイドリアンが透明人間となり生きている事実を知らせるために、セシリアは妹のエミリーをレストランに呼び出します。
エイドリアンが攻撃してこないような人目のあるところで話をする必要があったセシリアが、エミリーに事実を伝えようとすると宙に浮いたナイフがいきなりエミリーの喉を裂いたのです。
そして、何が起こったのか全くわからないセシリアの手にナイフが収まりました。
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刑事であるジェームズが取り調べに応じますが、セシリアの言う見えない何かに対して誰も理解を示すことはありません。
心身の喪失があると認められたセシリアは、精神病院に入れられている間も何者かの視線を感じていました。
犯罪者となり心身の喪失があるセシリアは、遺産の入金を打ち切られてしまうことに。
しかし、エイドリアンの兄・トムが現れ、エイドリアンのもとに戻ることと、子供を生むことを条件に全部をチャラにするという契約書を差し出してきました。
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また、セシリアが避妊薬を飲んでいたことはエイドリアンにバレており、薬をすり替えられたセシリアはなんと、妊娠していたことが発覚したのです…。
セシリアは条件を飲むどころかトムを突き返し、カバンから密かにトムのペンを1本奪います。
そして、就寝時間が過ぎた頃、そのペンを使って自殺を図ろうとしますが、その行為は透明人間のエイドリアンをおびき出すための罠だったのです。
自殺を止めようとしたエイドリアンはセシリアにペンでスーツを傷つけられ、半分ほど可視化できる状態になってしまいます。
それを見た精神病院のスタッフや警備員たちが駆けつけるものの、圧倒的な力を持つエイドリアンに次々と倒されていきました。
しかし、エイドリアンはセシリアのことは直接傷つけようとはせず、周りの人間を消そうとします。
セシリアは家で1人待つシドニーのもとにエイドリアンが向かったと気づくと、すぐさまジェームズに連絡をし、自分もジェームズ宅へ向かいました。
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『透明人間』の結末
ジェームズ宅では案の定エイドリアンがシドニーを襲おうとしていましたが、シドニーは護身用に携帯していたスプレーを吹きかけ、透明人間を怯ませました。
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消化器を吹きかけてスーツを可視化し、ジェームズが持っていた銃を拾い何発も撃ち抜いたのです。
さて、透明人間の正体が明らかになろうというところで衝撃の事実が発覚します。
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セシリアはますます一連の事件がエイドリアンの仕業であることを確信、そして当のエイドリアンは自宅の倉庫で監禁された状態で見つかりました。
世間ではエイドリアンは兄にはめられた被害者ということになっています。
セシリアは意を決してエイドリアンのもとへ向かいます。
普段どおりに迎え入れられたセシリアでしたが、エイドリアンとのディナーの最中に化粧直しへ行くと言って席を外します。
セシリアが戻るのを待つエイドリアンでしたが、いつの間にかその横にはナイフが宙に浮いており、次の瞬間そのナイフがエイドリアンの手に収まると、彼の喉を勢いよく裂いたのです!
セシリアが化粧室から戻るとエイドリアンが首から血を流して倒れていました。
「一緒に食事をしていた彼が自殺を図った」とすぐさま救急隊に連絡したセシリアは、その場を去ります。
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外で待っていたジェームズは無線で状況の一部始終を把握していました。
そして、セシリアのカバンの中に、透明人間のスーツがあったことも…。
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『透明人間』感想
ホラーの名作を現代チックに上手くアレンジ!
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透明人間になる側ではなく透明人間に襲われる側の視点で描く、斬新で現代風の設定になっていたことに評価が集まっています。
DVやモラハラ、そして日常にはびこる見えざる敵など、私たちの生活にも普通にありえる恐怖をここまで発展させる監督・脚本を務めたリー・ワネルの手腕に驚きます。
透明人間は、モンスターの中でも意外と地味な存在(ごめん!)だと思うのですが、立場や視点を変えることでこれだけの物語を作り上げられるということがわかり、リブート作品への可能性を感じました。
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かといって、1933年当時の特撮技術もその時代には革新的だったので、時代に沿った物語として変化させていくこともリブート作品の大事なところだと思いました。
観終わった後は正直モヤモヤした部分もあったのですが、1933年版の物語を調べたり他の方の感想を見ながら咀嚼して、なんとか理解に漕ぎ着けています。
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セシリアがスーツを脱がした時は「あ!トム!」とびっくりしたのですが、ゆっくり考えてみたところトムにそこまでの動機を感じませんでした。
セシリアに対しての直接攻撃ならばなんとなく動機は理解できますが、ジェームズとシドニーにそこまで憎悪ある?と逆に感じてしまったのです。
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エイドリアンのキャラクターや内面をあまり見せないということで恐怖感を煽っていたのかもしれませんが…。
いや、もしかしたらラストだけトムでほかはエイドリアンだったのかもしれません…DVモラハラソシオパス男の考えることは尋常じゃないということでしょう。
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SNSでのみんなの感想・評判
『透明人間』観た。面白い!モラハラ・DV被害者がいかに孤立しやすく「声」を無視されてしまうのか、といういまそこにあるが目には見えない恐怖と「透明人間」という古典的怪奇モチーフを繋げるリー・ワネルの脚本がお手本のような完成度。視線だけで映画を背負って立つエリザベス・モスの演技が圧巻。 pic.twitter.com/XUQSnbnJ9i
— セメントTHING 시멘트 (@cement_thing) July 11, 2020
『透明人間』感想。こ、怖ぇえええー!お、面白ぇえええー!これ脚本の出来がハンパないでしょ…!描かれていないことをいろいろと想像すると「ああっ…」と震える…!そして見えない敵とのバトルのアイデアと見せ方の素晴らしさよ…!ネタバレを踏まずに早く観よう!ホラー映画の1つの到達点。傑作! pic.twitter.com/tPx7yv8TwN
— ヒナタカ@映画 (@HinatakaJeF) July 10, 2020
カメラワークと音がまず、すごい良かった。
透明人間だから当然音は大事になるんだけどSE?BGM?もすごい良かったセシリア視線でしか描かれてないから、何がホントかは見る人によって意見が割れると思う
ペンキ?をぶっかけた所が個人的には1番怖かったな
ミッドサマーと同じ話しな気はしたかなぁ pic.twitter.com/nad0OVnv2m
— かっちゃん (@kacchan00662244) July 11, 2020
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恐らくですが、ストリングスから出される不気味な「ギィ~イ、ギィ~」という不快な音が、物語の不気味さや嫌~な感じを一層盛り上げてくれました。
また、日本では梅雨の時期の公開となり雨が鬱陶しかったのですが、『透明人間』の秋から冬にかけての秋雨のちょっと寒く湿った感じもいい雰囲気作りになっていたと思います。
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あと、意外と面白かったのに日本でのプロモーションがあまりなかったなぁ…という印象を受けました。
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『透明人間』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
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👁👁🌬< “ 透明人間 ” は存在するのに、
誰も信じてくれない‥‥セシリアの精神が徐々に狂気に苛まされいく本編映像を公開🎥
リー監督「セシリアには自分の中にある強さを見つけてほしいと思った」
🎬『#透明人間』絶賛公開中#見えるのは殺意だけ pic.twitter.com/et3NYs0Vv9
— 映画『透明人間』公式🖐絶賛上映中 (@toumei_ningenJP) July 10, 2020
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- DVやストーカーなど現代的な問題も取り入れ、被害者の視点で描くことで新たな物語を作り上げた
- 透明人間に追い詰められる主人公に観ている側も息が詰まりそうになる
- 絶妙なカメラワークとエリザベス・モスの一人演技がより一層恐怖を深める
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しかしながら、作り手や視点が変わればまるで違う物語をになってしまうという点で、映画製作における時代の変化を感じ、評価できるポイントもたくさんありました。
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今後、ユニバーサルが制作するホラー映画のリブート作品「ダーク・ユニバース」では、『魔人ドラキュラ』『フランケンシュタインの花嫁』『大アマゾンの半魚人』の製作が発表されているそうです。
一番新しい情報では、リー・ワネル監督が『狼男』のリブートについて、主演候補であるライアン・ゴズリングと交渉に入ったとのこと。
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