【戸塚純貴インタビュー】『ケアニン~こころに咲く花~』を演じる想い「介護のやりがいを知ってもらいたい」

【戸塚純貴インタビュー】『ケアニン~こころに咲く花~』を演じる想い

(C)ミルトモ

2017年に公開された映画『ケアニン~あなたでよかった~』は、介護福祉士から多くの反響が集まり、介護施設を中心に1,000回以上の上映会が開催されるなど大好評でした。

そして3年が経ち、満を辞して続編となる『ケアニン~こころに咲く花~』が2020年4月3日(金)より全国順次公開となります。

前作の3年後が舞台となっている今作は、介護福祉士として成長した戸塚純貴演じる大森圭が、地方の小規模多機能型施設から特養(=特別養護老人ホーム)という大きな施設に移り、再び介護士としての苦悩やジレンマにぶつかります。

今回は、『ケアニン~こころに咲く花~』の公開に先駆けて、主演の大森圭を演じる戸塚純貴さんにお話を伺いました。

【戸塚純貴インタビュー】

【戸塚純貴インタビュー】

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「3年ぶりに大森圭を演じられるのは大きな喜び」

−−前作『ケアニン~あなたでよかった~』から3年経っての続編となりましたが、3年ぶりに続編が決まったときはどう思われましたか?

戸塚純貴(以下、戸塚)「非常に嬉しかったです。第1弾をやった時にプロデューサーの山国さんと、監督はじめスタッフみんなが“介護を題材にした作品も少ないし、伝えたいメッセージがたくさんあるのでこれからも続けていきたいね!”っていう話をしていたので、熱い想いがすごくあったんです。

第1弾でたくさんの上映会を開催していただいて、介護職を実際にやられている方とか、実際に施設を利用されている方とか、そういう人たちからありがたい声をいただき、本当に多くの人に支えられて第2弾ができると感じたので喜びも大きいです。今作では色々な人たちとかの期待を背負って、今まで以上に責任を持って演じなければいけないんだなと身の引き締まる思いになりました。」

−−今作では前作から3年後という舞台で、大森圭の介護士としてのキャリアや仕事に対する想いも全然違う立ち位置で演じられてると思うんですけど、何か「変化をつけよう」と意識して演じられましたか?

戸塚「大森圭が3年後に転職した特養(=特別養護老人ホーム)は、全国的にも老人ホームの形態として多いんです。なので、大森圭自身が成長したことといえば、介護士のスキルや熱量はもちろん上がっているのですが、結局今までやってきたことが通用しなかったり、自分の思っていることが上手く実現できなかったりっていう苦悩に直面します。そういう意味では前作とあまり変わらない気持ちがあったので、続編とは言いつつも見てくださる方も新しい気持ちで見れるように演じました。」

【戸塚純貴インタビュー】

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−−3年という空白の期間がありましたが、戸塚さん自身の中に大森圭という人物をすんなりとインストールできましたか?

戸塚「実は撮影前に、前作『ケアニン~あなたでよかった~』でお世話になった小規模多機能型施設に遊びに行ったんです。そしたらスタッフさんが僕を見つけるなり、「早く!何してんの?」と言いながら「竹切りに行くよ」と連れられて、みんなで流しそうめんをやったんです。近くの山に行って、流しそうめん用の竹を切って、丸筒を作ってという作業を手伝わされて(笑)

お昼時になったら「ちょっとご飯作ってくれる?」と言われ、肉じゃがを作ってあげて、利用者さんに食べてもらったんです。まるで前作のストーリーが現実で続いてるかのような対応をしていただいたことが僕の中ではすごく嬉しくて。その時に大森圭が自分の中に戻ってきたなぁと感じました。」

−−そこで当時の記憶が蘇ったということですね。

戸塚「そうですね。その施設にトメさんっていうおばあちゃんがいて、夏祭りでミサンガを作っているんです。それを一個くれたのが嬉しくて、なので今作『ケアニン~こころに咲く花~』ではミサンガをつけて出演してるんですけど、前作で働いていた場所のおばあちゃんから貰ったものをつけて新しいところで働くという繋がりになっています。もともと衣装にはなかったんですけどね。すごく温かい出来事が撮影前にあったことは演じる上で大きかったです。」

戸塚純貴が感じる介護のやりがい、社会的意義とは

−−前作の舞台挨拶の際に、介護職を演じる前と後で介護職に対するイメージが変わって「楽しそう」とおっしゃっていたのが印象的でした。戸塚さんが考える、介護職ならではの楽しさ・やりがいはどのような点でしょうか?

戸塚「近い距離で、間に壁もなく人と人が向き合う仕事ってたぶん介護職ぐらいだろうなと思っていて。施設の利用者にはスイッチがあって、それが言葉では話さないけどケアをする人たちはその利用者が“何が好きなのか”や“趣味は何か”、“どういう人がタイプか”といった色々なカードを切りながら話しかけて反応してくれた時に、「ああこういうのが好きなんだ」とか「こういう話をした時にグンとテンションが上がったな」っていう瞬間を見つけるんです。

その瞬間が本当に尊くて、一番嬉しいと思うんですよね。今のご時世はSNSとかネットが進んでいる中で、変わらない人の向き合い方を肌で感じながらやっていく仕事はやりがいを感じます。」

−−前作から今作までの3年という時間経過はかなり時代が変化します。今作『ケアニン~こころに咲く花~』ではテクノロジーの進化による“効率化”という裏テーマも存在し、かなり「時代の変化」も捉えていると感じました。

戸塚「深いですね。素晴らしい観点です。」

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−−今作の舞台である特養のような大型施設では効率を求めるのも必然かもしれませんが、あえて逆走してアナログに人を大事にする大森圭の芯のブレなさがある種のメッセージとして込められているとも感じましたが、その点は演じられていかがですか?

戸塚「そこはおっしゃる通りすごく大事で、演じる上でも大切にしていた部分なんです。大森圭が持つ人との向き合い方とか芯のブレなさというのは絶対に変えちゃいけないと思いつつ、ただ特養のシステムに則らないことも実は間違ってたりするんです。

小規模施設は地域密着型でスタッフさんも制服を着てないし、利用者さんが家にいる感覚で過ごしてほしい、利用者さんが何かしたいなと感じたら手を出さずに見守るといった自立支援をする側面があります。しかし、特養は真逆で利用者が何かしたいなと思ったらすぐ手伝う、ご飯を食べる時間が決まっています。でもそこは小規模にはない利用者さんの数と、要介護レベルの高い人が集まっているから必要なことでもあるんです。

大森圭が時間をかけて一人一人と向き合う大切さと、今ある現状の中でできることを探すという捉え方がこの映画ではすごく大きなテーマになっています。難しい問題ですけどね。」

−−どちらも正解なんですよね、きっと。

戸塚「そうなんです。人数は多い分、効率的にやらなければいけない瞬間は出てきて然りですから。今作の舞台である特養は、老人ホームの形態として全国的に多い形なので同じ悩みを抱えている施設は多いと思います。

あと、老人ホーム内の話もそうですが、入居されるご家族の方にも今作ではフォーカスを当てているので、家族の向き合い方という視点でも色々な立場から共感いただける内容です。」

【戸塚純貴インタビュー】

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−−介護福祉業界そのものが、ずっと人手不足と囁かれています。そんな中で前作は介護士さんから「感動した」「勇気が湧いた」「頑張ろうと思った」などの反響が多くありました。そういった方が多くいらっしゃる中で、今作が持つエンターテイメント以外の社会的意義という点は、戸塚さんの中でどうお考えでしょうか?

戸塚「今作はすごく閉鎖的な白い壁があって…それを無くしたいっていうお話なんですけど、その壁があると地域の人たちが中で何が行われているかわからないんですよね。中で何が起こるかわからない=怖いに繋がって、その結果として介護職や老人ホームに対して閉鎖的なイメージを生んでいると思うんです。そういう意味で、今作は介護職の実態を知ってほしいという想いが大きいです。

たぶん知らないから抵抗があるし、人数低下にも繋がっていると僕は思っているので、この映画でやりがいのある仕事であること、閉鎖的だと言われている中で変えようとしている1人1人の想いがすごく詰まっています。そこをみなさんに感じていただければ、どこか介護に対しての認識だったりイメージ、考え方が変わるきっかけになるんじゃないかな。それがこの映画で伝えたいことだと思います。」

−−介護の世界を知らない多くの方にぜひ見てほしいですね。

戸塚「そうですね!まずは知っていただくことが大事なので、多くの方に届いてほしいです。」

−−本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

戸塚「こちらこそ、ありがとうございました。」

インタビュー・構成 / 佐藤 渉
撮影 / 白石太一

『ケアニン~こころに咲く花~』作品情報

【戸塚純貴インタビュー】

(C)ミルトモ

出演者:戸塚純貴、島かおり、綿引勝彦、赤間麻里子、渡邉蒼、秋月三佳、中島ひろ子、浜田学、小野寺昭、吉川莉早、鰐淵恵美、島丈明、坂本直季、牧口元美、松本若菜、細田善彦、小市慢太郎
監督:鈴木浩介
企画・原作・プロデュース:山国秀幸
主題歌:香川裕光「Wedding Day」
音楽:遠藤浩二
製作:「ケアニン2」製作委員会
配給:ユナイテッドエンタテインメント
共同配給:イオンエンターテイメント
(c)2020「ケアニン2」製作委員会

公式サイトhttp://www.care-movie.com/2/
公式Twitter@care_movie

あらすじ


小規模施設から大型の特別養護老人ホームに転職した介護福祉士の大森圭。

しかし、「多くの利用者に対応するため」という目的の元に、効率やリスク管理を優先する運営方法に、大きな戸惑いを隠せないでいた。

そんな中、認知症の老婦人・美重子が入所してくる。

美重子を自宅で介護してきた夫の達郎は、施設を信用できず、担当の圭にも厳しくあたる。

それでも、友人の美容師を施設に呼んで美容サロンを開催するなど、美重子や利用者のために奔走する圭。

しかし、その行動も職場のチームワークを乱していると上司や理事長から叱責されてしまう。

そんな折、圭は達郎のある「願い」を知ることになる―。

4月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開!

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