世界中でカルト的人気を誇る『ムカデ人間』シリーズ3作目で最終章ということだけでも話題性十分な作品ですが、今回は500人のムカデ人間という謳い文句で注目を集めた『ムカデ人間3』。
以前のシリーズで主役だった2人を主要キャラクターに迎えて、また新しい『ムカデ人間』ワールドを確立した愛すべき問題作です。
- 『ムカデ人間2』よりもグロテスクさは控えめ
- あの主人公たちにまた会える!
- 前代未聞の500人によるムカデ人間
それではさっそくシリーズ完結の『ムカデ人間3』をネタバレありでレビューしたいと思います。
目次
『ムカデ人間3』作品情報
作品名 | ムカデ人間3 |
公開日 | 2015年8月22日 |
上映時間 | 102分 |
監督 | トム・シックス |
脚本 | トム・シックス |
出演者 | ディーター・ラーザー ローレンス・R・ハーヴェイ タイニー・リスター・Jr. エリック・ロバーツ ブリー・オルソン 北村昭博 |
音楽 | ジェームズ・エドワード・バーカー |
【ネタバレ】『ムカデ人間3』あらすじ・感想
グロさは前作よりも控えめ!
『ムカデ人間』シリーズの3作品目。
前作の『ムカデ人間2』は、国によっては上映禁止になるぐらい過激な内容でしたが、過激さやグロさという点では『ムカデ人間3』は比較的マイルドになっています。
斎藤あやめ
ただし『ムカデ人間3』でも、暴力的な描写や血が飛び交うシーンなども多数あります。
そういったものが苦手な人だと思わず目を背きたくなるでしょう。
特に、ボス所長が受刑者の睾丸を切り取るシーンなどは、男性にとって身の毛もよだつ思いになるでしょう。
しかも、ボスはその切り取った睾丸をミディアムレアにして食べてしまうのですから、たまったものではありません。
斎藤あやめ
この描写により、ボスの卑猥で粗野な人間性が観客に嫌になるぐらい伝わるようになっています。
前作にあった排泄物や、顔が分からなくなるぐらい殴られた死体や、踏み潰される赤ん坊といった視覚的にグロテスクなシーンは少ないとはいえども、精神的にキツいシーンが多くあります。
もちろん前作でも暴行シーンが多数あり、性行為のシーンもありましたが、モノクロということもあり生々しさには欠けていました。
またその他にショッキングなシーンが多かったため、そういったシーンの衝撃が薄らいでしまったということもあるでしょう。
斎藤あやめ
『ムカデ人間3』は前作と違い全編カラーで、かつ暴行の1つ1つ、そして流れる血の一滴までもが実に生々しく画面に映し出されます。
ボスの残忍な暴行シーンもなかなか酷いものですが、受刑者の切り取った睾丸や割礼された女性器を乾燥したものを食べたりと劇中のいたるところでクレイジー振りを発揮しています。
斎藤あやめ
残忍な描写もさることながら、主要な登場人物が全員どこかおかしいというのも、この映画の胸糞悪さの1つと言えるでしょう。
主人公のボスは言うまでもなく、彼の会計士であるドワイトや医師免許がないドクター・ジョーンズ、そして本人役で登場するトム・シックス監督など、ぶっ飛んだキャラクターしか出てきません。
終盤までボスを非難し、まともに見えていた州知事でさえ、何を考え直したのか最後の最後にとんでもないことを言い出します。
唯一まともだったのは、ボスの秘書であるデイジーでしょうか。
ボスから性奴隷のように扱われても従うのは、父親が釈放された恩があるという事実を知ると、彼女の境遇に同情すら感じます。
斎藤あやめ
そして、この映画の恐ろしいのが、映画終盤にボスとドワイトのアイディアが正しいのではないかと思ってしまうところです。
500人もの受刑者をムカデ人間にして繋げる、しかも死刑囚や無期懲役の受刑者は手足を切断したムカデ人間にするなんて、州知事の言葉の通り「人権侵害」以外のなにものでもありません。
しかし、受刑者をムカデ人間にすることで、確かにボスとドワイトが抱えている問題は解決できるのです。
2人が州知事に、いかに自分たちのアイディアが理にかなっているかを説明をするシーンでは、観ているこちらも思わず納得してしまうくらいです。
斎藤あやめ
過去の『ムカデ人間』シリーズ主役2人が全くの別人を演じている
『ムカデ人間3』では、『ムカデ人間』でハイター博士演じたディーター・ラーザー、そして『ムカデ人間2』でマーティン役だったローレンス・R・ハーヴィーがメインキャラクターとして出演しています。
斎藤あやめ
とは言っても、今回の作品では前作と全く異なるキャラクターを演じているので、その違いを比べるのも楽しいものです。
シリーズ1作目『ムカデ人間』では、ノーブルで静かな狂気を漂わせていたハイター博士を演じたディーター・ラーザーですが、今作では正反対のタイプであるビル・ボスを好演しています。
斎藤あやめ
ドイツ系アメリカ人ということもあり「ナチ野郎」と度々比喩されることが多いボスですが、受刑者に対する態度や行いは、まさにナチスそのもの。
しかし、物語が進むに連れて、その実態は承認欲求を満たそうとしているだけの小心者だということが分かります。
受刑者のイタズラ電話に怯え、反乱があった際には誰よりも早く逃げ出す姿は小心者以外の何者でもありません。
特に自分が見ている夢の中で、受刑者に襲われた時に泣いて詫びる場面などは、彼の本質を表していると言えるのではないでしょうか。
そんな小心者のボスの承認欲求は、州知事が「刑務所ムカデ人間」を認めた時に満たされます。
結局、最後はボスの勝利で物語は終わります。
斎藤あやめ
シリーズ史上、もっともグロテスクと名高い『ムカデ人間2』の主人公マーティンを演じたローレンス・R・ハーヴィーは、今回は気弱な会計士・ドワイトとして出演しています。
一言も言葉を発さなかった前作と違って、今作はよく話しています。
斎藤あやめ
また外見もチョビ髭でスーツ姿なので、前回のような薄気味悪さも感じられません。
どちらかというとボスの行為にあからさまに不快感を見せるドワイクは、観客目線に近い立場と言えるでしょう。
しかし、彼もまた普通の人間とは違います。
『ムカデ人間』シリーズのファンであるドワイトは、受刑者を「ムカデ人間」にするアイディアに頑なに持ち、何度もボスに提案しようとします。
斎藤あやめ
そして、ムカデ人間の計画が進むにつれて、ドワイトの表情が生き生きしてきて、その表情はどこか前作のマーティンに通じます。
「ムカデ人間」に対する執念は凄まじいものですが、それ以外のドワイトは実に普通の人間です。
ボスに、デイジーを愛していることを伝える場面などは胸に訴えかけるものがあります。
だからこそ、ラストのムカデ人間にされたデイジーの手を握るシーンは、ちょっと切なくなるぐらいです。
斎藤あやめ
また、これは本人か不確かですが『ムカデ人間2』に出演していた役者さんたちに似ている受刑者も何人か見つけることもできました。
ボスのドワイトも含めて、過去の作品に出ていた出演者や監督自身が『ムカデ人間』について、劇中でいろいろと語っているのも興味深いです。
斎藤あやめ
3作品とも話に繋がりがあるわけではありません。
その為、過去の作品を観ていなくても楽しめますが、過去の作品2本を先に観ておくと楽しみが倍増するのでおすすめです。
過去2作品に比べて盛り上がりには欠ける
正直なところ『ムカデ人間3』は、過去の2作品に比べると盛り上がりには欠けます。
前作2作品がテンポがよく、特に後半30分前後からは観客をハラハラさせるストーリー展開だったのに対して、この作品は少々テンポがゆっくりです。
斎藤あやめ
強いて言えば、州知事がボスとドワイトのアイディアを受け入れるか、そして州知事が去った後のどんでん返しが見どころと言えば見どころでしょう。
斎藤あやめ
アップの場面などでは生身の人間を使っていますが、人数が多すぎて「ムカデ人間」のビジュアルのおぞましさが半減してしまったようにも感じました。
テンポや緊迫感に欠けるものの「500人のムカデ人間」以外はストーリーが現実的である点や、主人公が最後に勝ち残る点は過去の2作品にはなく、この映画の魅力の要因でもあります。
また舞台をアメリカにしたのも興味深いところです。
斎藤あやめ
ですので、過去2作品はどこかヨーロッパテイストな雰囲気が伺えます。
今作では劇中アメリカ国旗や国家が流れ、ラストにはアメリカのシンボルである鷲が空を飛ぶぐらいアメリカ色が強いです。
だからと言ってアメリカに好意的というわけでなく、逆にアメリカへのアンチテーゼのようなものすら感じさせられます。
『ムカデ人間3』まとめ
以上、ここまで『ムカデ人間3』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- グロテスクさは半減しているものの徹底的に「エロ・グロ・ナンセンス」
- 過去シリーズ出演者たち、そして監督が熱演
- テンポや緊迫感は過去2作品の方がある
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