女優のレベッカ・デモーネイが女性の妬み嫉みを見事に演じた『ゆりかごを揺らす手』。
本作は1992年の作品ですが、30年近くが経とうとする現在でも尚、視聴者を引き込ませる魅力があります。
幸せな一家が一人のベビーシッターにより崩壊の危機に陥っていくのです…。
- レベッカ・デモーネイの美しさに映える狂気的な演技が秀逸
- 女性脚本家だからこそ描ける女特有の妬みや苦悩についつい共感
- ラストにかけてヒートアップする女の闘い
男性はもちろん、特に女性に観ていただきたい作品です。
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目次
『ゆりかごを揺らす手』作品情報
作品名 | ゆりかごを揺らす手 |
公開日 | 1992年4月11日 |
上映時間 | 110分 |
監督 | カーティス・ハンソン |
脚本 | アマンダ・シルヴァー |
出演者 | レベッカ・デモーネイ アナベラ・シオラ マット・マッコイ アーニー・ハドソン ジュリアン・ムーア |
音楽 | グレーム・レヴェル |
【ネタバレ】『ゆりかごを揺らす手』あらすじ・感想
考えすぎず観られるストーリー
『ゆりかごを揺らす手』は、簡単にまとめると「女の復讐劇」です。
冒頭で女の目的がわかっているので、誰がこんなことを?といった、よくあるミステリーのような捻りはありません。
しかし、このシンプルなストーリーが特徴だと思います。
女がどのように幸せな一家を陥れるのか、家庭が徐々に崩壊していく様子を、私たち視聴者は第三者目線で観ることができるのです。
ペイトンが復讐に至った理由
まずストーリーの部分で説明しておきたいのが、なぜペイトン(レベッカ・デモーネイ)がクレア(アナベラ・シオラ)に復讐を迫ったのかということ。
クレアは産婦人科でセクハラを受け、その医師を訴えました。
大々的に報道され、医師は自殺してしまいます。
実は、その妻がペイトンだったのです。
しかもクレアと同時期に妊娠しており、ペイトンはショックで流産、子宮摘出を行い、たちまち夫もお腹の子も財産もすべて失ってしまいました。
報道で訴えた女の名前を知ったため、ペイトンという偽名を使い、ベビーシッターとしてクレア一家に復讐のため近づくことになります。
怖い女を演じるレベッカ・デモーネイ
『ゆりかごを揺らす手』で特に注目していただきたいのは、一家の妻に対して逆恨みから復讐に走るペイトンを演じたレベッカ・デモーネイです。
ペイトンが復讐者であることを私たち視聴者は理解していますが、作中で何も知らない登場人物たちはきっと“優しくて仕事ができる”、“気配り上手”そして何より❝容姿端麗❝という印象を受けると思います。
誰がどう見ても完璧な女性であるため、彼女が持つ狂気的な部分に気づく人はいないはずです。
だからこそ、いい人を装っていたペイトンが、初めて怒りと狂気をむき出しにしたシーンはとても印象的でした。
クレアは夫・マイケル(マット・マッコイ)の企画書を郵送しなければいけなかったのですが、カバンに入れておいたはずの書類が紛失してしまいます。
企画書を奪ったのはペイトンでした。
そして、企画書をトイレの個室でビリビリに破いてしまいます。
そこでスイッチが入ったのか、幸せな家族を見て感じた憎しみのすべてを扉にぶつけます。
無我夢中でトイレの扉を蹴っている様子が、本当に人を殺してしまうのではないかと思うくらいの迫力なのです。
ここまで感情としてほとんど出さなかった怒りが、初めて表面的な行動で見えて、より恐ろしく感じました。
終盤にかけてヒートアップしていく狂気を見事に演じたレベッカ・デモーネイは素晴らしかったです。
美人が狂い、性格が豹変していく様子は恐怖を感じますが、なぜかそこに品と美しさを感じてしまうのが不思議でした。
女性の心に絶妙に響く脚本
『ゆりかごを揺らす手』は男性目線だとどうなのかわかりませんが、女性から観ると共感してしまう部分も多かったです。
これには、脚本家のアマンダ・シルヴァー自身が女性であるということが大きく影響しているように感じました。
例えば、女性の立場からすると、当たり前に子どもを産めることや幸せな家庭を持てることが、実はすごくハードルが高いことだと思うのです。
だからこそ、クレアのように何かと幸せですアピールを出されると、なんだか少し鼻につくというか(笑)
言い方は酷いですが、そのように多少なりとも不快に感じてしまう女性は一定数いるはずです。
そういう意味で考えると、ペイトンに同情してしまいます。
自分は女性としての幸せを一瞬で奪われ苦しんだのに、訴えた側は何も知らず幸せそうに暮らしているだなんて。
しかし、当然クレアにも共感できます。
他人によって平和な家族が徐々に壊されていく恐怖や悲しみ、疎外感は計り知れないものだったはずです。
そしてもっとも重要なのは、クレアは何も悪いことはしていないというところです。
間違いなく悪いのはすべて、そもそもセクハラをしたモット医師なのに、逆恨みをするペイトンは間違っていますよね。
どちら側にも同情できるけど、どちらにも完全には同情しきれない。
これが本作のストーリーに引き込まれるポイントだと思います。
女性だからこそ描けた細かい心理描写に終始圧倒されました。
タイトル『ゆりかごを揺らす手』が持つ意味
ペイトンがモット医師の妻であることに気がついたクレアの友人マーリーン(ジュリアン・ムーア)は、その事実を伝えようとするもペイトンに殺められてしまいます。
事実を知った一家と、本性をさらけ出したペイトンはぶつかり合いました。
以前は一家の庭の手入れを手伝っていたものの、策士なペイトンに落とし込まれて止むを得ず一家を離れてしまったソロモン(アーニー・ハドソン)が助けに入り、クレアは無事一家を守り抜いたのです。
タイトル『ゆりかごを揺らす手』とは、作中にも出てきますがウィリアム・ロス・ウォレスの詩「ゆりかごを揺らす手は世界を支配する」から取ったものです。
母は偉大である、という意味が含まれています。
子や家族を守り抜くために奮闘したクレアと、子のためなら復讐だってできてしまうというペイトンの双方にマッチした、ふさわしいタイトルでしょう。
『ゆりかごを揺らす手』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、映画『ゆりかごを揺らす手』のレビューをさせていただきました。
- 第三者の視点で堪能することができる作品
- 女性二人の対比が見事に描かれた脚本が素晴らしい
- タイトルにもなった『ゆりかごを揺らす手』に刮目せよ
女性の復讐と聞くと、ネチネチしているかと思いきや、そんなことはなくさっぱり観られる作品です。ぜひご覧ください。
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