『ネクタイを締めた百姓一揆』河野ジベ太監督オフィシャルインタビュー解禁!新幹線の駅の設置を実現した実話

『ネクタイを締めた百姓一揆』河野ジベ太監督オフィシャルインタビュー解禁!新幹線の駅の設置を実現した実話

「請願駅」とは、地方自治体・地元住民・新駅周辺企業等の要望により開設された鉄道駅のこと。

『ネクタイを締めた百姓一揆』は、実在する岩手県の新幹線請願駅「新花巻駅」の設置を巡る、14年間の物語。

1971年(昭和46年)10月に日本国有鉄道(国鉄)が発表した東北新幹線基本工事計画には設置予定として名前のなかった「新花巻駅」が、市民運動の末、1985年(昭和60年)3月に開業するまでの奇跡の逆転劇を、労働組合の隆盛から国鉄分割民営化へとつながる時代を背景に描いた群像劇です。

新幹線のみならず、昭和の物的インフラ整備に懸けられた想い。

そこには様々な人々・地域の思惑があり、それが地域を支えてきました。

「駅」言わば「街作り」に全力を尽くした人たちの、実話に基づいた青春物語。

昭和の時代に決定事項を覆した「不屈の精神」は、令和の時代を生きる私たちの勇気の源になるにちがいありません。

地元・岩手県の5つの映画館での先行上映を経て、この度、11月6日(金)よりアップリンク渋谷にて公開されることが決定。

脚本・監督・編集を担当した河野ジベ太のオフィシャルインタビューが届きました。

本作の岩手での公開により、地元で広まっていた新幹線の駅が花巻駅の近くにない理由についての誤解も解けたというエピソードなどを話しています。

『ネクタイを締めた百姓一揆』河野ジベ太監督 オフィシャルインタビュー解禁

『ネクタイをしめた百姓一揆』

−−本作の企画の経緯をお教えください。

河野ジベ太監督(以下、河野監督)「本作企画の高橋修さんから、新花巻駅の設置の経緯を映画にしたいという企画書を頂きました。」

−−「新花巻駅」の設置を巡る話は以前から知っていたんですか?

河野監督「私は知らなかったです。私より1歳上の昭和45年生まれの企画をした高橋さんご自身も、図書館に置いてあった原作本を見て初めて知ったそうです。この辺の世代は皆知らなかったんです。ですので、皆今回初めて知ってびっくりして、盛り上がりました。」

−−原作本の「新花巻駅物語り」はそのまま映画化したんですか?

河野監督「原作は、市民会議の方々中心に描かれていて、地元の武勇伝的色合いが濃かったんです。原作で描かれている方々のキャラクターは立っていて面白かったんですが、描かれていない部分を描いたら、もっとスケールが大きい話になるんじゃないかと思い、その部分を調べていきました。」

−−実在の人物で、映画化にあたり取材に行けた方はいらっしゃいますか?

河野監督「市民会議メンバーの近くで一緒にいて原作本を書かれた渡辺勤先生はご存命なので、何回もお話を伺いました。駅が開業してから、渡辺先生が医師会の会報に市民会議の活躍を連載されていたそうなんです。それをまとめて自費出版されました。それぞれのキャラクターだったり、熱い想いをすごくわかっていた方だと思います。
本作で描かれている地権者代表のスギヤマさんという方には、モデルがいます。原作には出てこないんですけれど、実際当時の地権者の会長さんでした。その方には取材もできましたし、沼に住んでいるショウゾウさんという方もご存命なので、お話を聞かせていただきました。
市民会議メンバーでカンノという女の子がいますが、実際は男性なんです。その方にもお話を伺いましたし、市役所の若手職員だった方なども取材しています。青年会議所の方からもいろんなエピソードをお聞きして、盛り込むことができました。」

−−最初の基本戦略「線路予定地の土地を国鉄に売らないこと」に協力的でなかった地権者の方とは実際に話す機会はありましたか?

河野監督「はい。原作そのものは、市民会議を支えていた方が書いたので、主人公が市民会議の方たちなんです。地権者の方々がどう思っていただとか何をやったかは触れられていなかったので、地権者の方々は自分たちには色々な想いがあったということを伝える機会が今までありませんでした。今回、たくさんお話をしてくださいました。」

−−モデルの方と役名やキャラクターは同じなんですか?本作で描かれているエピソードは、どれくらい事実に基づいているんですか?

河野監督「実在する方に関しては同じです。キャラクターは、原作本にもよく描かれていたんですけれど、取材もしました。『あいつはこういうやつだったからな〜』と色々と情報が入ってきたので、できるだけ近くしました。実際のエピソードは、省いたり、3〜4回やったことを1回にしたりだとか、順番を変えたりとかはありますが、基本は、極力市民会議の事実に基づく形でやっています。タニカワ産業は、実際はもっと大きい会社だったそうです。」

−−国鉄の方たちのキャラクターについてはどうですか?

河野監督「原作にはない部分なので、後から調べていきました。「こういう物語にしたい」というのが出てきたので、人物に関してはそれに合うような形でキャラクターを作りました。国鉄の方にも取材したので、影響も受けていると思います。ソガワは私が思った当時の花巻駅職員をまとめた形の人物です。」

−−河野監督は1971年生まれとのことで、本作は、ちょうど生まれた年から始まる話です。1973年のトイレットペーパー騒動や1975年のスト権ストなどは小さい頃なので、覚えていないかと思いますが、何を参考に描かれたんですか?

河野監督「石油ショックなどは本やインターネットなどに情報があったので、だいぶ近い形にできているかと思います。スト権ストに関しては、当時国鉄で偉い立場でその後JR東海の発足と同時に取締役に就任された葛西敬之さんという方が書籍を残していらっしゃいます。『未完の「国鉄改革」』だとか『国鉄改革の真実』は、当局側から見た労働組合、国鉄改革なんです。『語られなかった敗者の国鉄改革』という労働組合の元幹部・秋山謙祐さんが書かれた本もありまして、そのあたりを徹底的に調べました。池田邦彦さんの『カレチ』という鉄道を描いた漫画もすごく参考になりました。」

−−駅や電車の撮影はどこで行ったんですか?

河野監督「営業をしているので、JRで撮影するというのは難しかったのと、雰囲気も当時とは全然違いますので、そのシーンそのシーンに雰囲気があったところを探してロケを行いました。3箇所使わせていただきました。最初に出てくる古い感じの駅の事務所は大迫バスセンターの事務所を使わせていただきました。前半の駅ホームは、三陸鉄道の久慈駅を使っています。最後の方の駅は、青い森鉄道三戸駅を使わせていただきました。撮影で使った電車は、三陸鉄道です。小さい電車も動かしてくださり、何回も戻って出発してとやって頂きました。」

−−本作に協賛された方々は「新花巻駅の知名度を上げたり、観光客に来て欲しい」という想いで協賛して下さったんですか?

河野監督「そうだと思います。「国鉄の決定を覆して逆転して掴み取った駅の話」というPRはしていたので、『この物語を残したい』という意義に共感して下さったんだと思います。それと駅ができたことに関して、間違った認識・誤解があったことも大きいと思います。『駅があっちにある理由は、東北本線の駅の近くに土地を持っていた地主さんが、土地を売らなかったからだ』という間違った認識がありましたが、国鉄は、地主が売るか売らないかを先に交渉してルートを決めるわけではなかったので、順番からしてありえないんです。先にルートを決めてから買収の交渉に入るんです。新花巻駅が東北本線からずっと離れたところにあるので、北上や盛岡に比べて不便なので、『新幹線の駅が花巻駅の近くにない』という部分が一人歩きしていて、『あっちに新幹線の駅が追いやられているのは、地主が売らなかったからだ』みたいな誤解がありました。本作の公開により、この誤解は解け、現在は地元でもこのように言う人はいなくなってよかったです。」

−−撮影で1番大変だったのはどの部分ですか?

河野監督「決起大会のシーンです。映画のためだけにエキストラとして来て頂くのが大変でした。決起大会のシーンには、400人ほどに集まっていただきました。実際の決起大会は2,000〜3,000人集まっていまして、それはできないとしても雰囲気を再現したい、妥協したくないという想いがありました。」

−−ジャズっぽい音楽に力を入れているように感じましたが、劇中の音楽はどのように制作したんですか?

河野監督「音楽を担当してくれたのは、SaturdayPlayerMeetingという岩手のバンドです。私は以前から県内で映像制作をしていたので、県内の音楽団体でいいところはないかなとチェックしていました。彼らが元々持っていた曲も使わせてもらって、映画の荒編集したものを渡して、書き下ろしても頂きました。」

−−門真国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞しましたが、見た方からはどのようなコメントをもらいましたか?

河野監督「『史実を元にした映画は脚本賞を受賞しにくいが、この映画はユーモラスな表現力が脚本を彩り、俳優を染める。ユーモラスであるからこそ、哀しさは増し、時の流れの非情さに胸を締めつけられる。快作。人の心の動きが丁寧に描かれた147分のスピーディな映画である』というコメントをいただけました。」

−−読者の方にメッセージをお願いいたします。

河野監督「この映画は、駅1つを設置するという大きな目標をめぐって、一人一人の想いがぶつかり合うような映画です。新しいこと、知らないことに対するチャレンジなので、回り道をして、失敗などもたくさんあるんですけれど、目標があるから前に進むんです。その中で、それぞれの立場の喜び、悲しみなど全部を飲み込んで前に進んでいく映画です。精一杯目標に向かうことの素晴らしさを伝えてくれる映画だと思うので、ぜひご覧ください。」

『ネクタイをしめた百姓一揆』

『ネクタイを締めた百姓一揆』作品情報

『ネクタイをしめた百姓一揆』

キャスト:金野佳博、千田秀幸、堀切和重、藤原俊春、小原良猛、佐藤正明、東海林浩英、小野智明、高橋広朗、穂坂栄一、高橋洋、菅原修ほか
脚本・監督・編集:河野ジベ太
プロデューサー・ラインプロデューサー:小原良猛
アソシエイトプロデューサー穂坂栄一、堀切和重、中村美紀、高橋省子、河野日登美、小岩悟、千田秀幸、高橋哲郎
企画・コプロデューサー・アソシエイトプロデューサー:高橋修
撮影:河野ジベ太、山田芳博、豊岡広伸
音楽:Saturday Player Meetingほか
配給・宣伝:アルミード
2020/2ch/JAPAN/DCP/147min
公式サイトhttp://shinhana-eiga.com/
公式Twitter: necktiecinema
公式facebook: shinhana.eiga

あらすじ

東海道新幹線の大成功から、新幹線が日本中で期待の的になっていた1971年(昭和46年)10月、日本国有鉄道(国鉄)は、東北新幹線基本工事計画を発表。

停車駅設置が有力視されていた岩手県花巻市の市民は大きく期待していたが、市の誘致運動の結果、発表された設置予定停車駅は一関、北上、盛岡。そこに花巻の名は無かった。

その上、線路も街の中心部を大きく外れていた。その時、数名の市民が立ち上がり、「東北新幹線問題対策花巻市民会議」を発足。

市民総決起大会を開催し、一市民の会議ながら、国鉄に直談判に行くなど、駅設置運動を始める。

一方、日本国有鉄道は赤字を抱えたまま解消できる算段もつかず、労働組合は暴走し、国民からの非難は大きくなるばかりであった。

そして勃発した「スト権スト(ストライキ権奪還ストライキ)」。

国鉄は大きな方向転換を迫られていた。

果たして、数十億かかるという予算の問題などを解決し、駅はできるのか?

時代に翻弄される国鉄を背景に描く、新幹線請願駅の1つ「新花巻駅」の設置を巡る14年間の物語。

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11月6日(金)よりアップリンク渋谷ほかにてロードショー

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