物語は、田舎町のY字路で起きた少女の失踪事件。
残念ながら、その女の子は無惨な姿で発見されます。
残された家族、親友、そして犯人までもが、つらく悲しい日々を送ります。
- 『楽園』の根底にあるのは、人間心理の恐ろしさ
- 主演の綾野剛や杉咲花たちの演技力が光る
- タイトル『楽園』が持つ真の意味を考察
映画『楽園』は『悪人』や『怒り』で注目を浴びた作家、吉田修一による最新作「犯罪小説集」の中の<青田Y字路>と<万屋善次郎>という2編を組み合わせて構成されたヒューマン・サスペンスです。
それではさっそく映画『楽園』をレビューしたいと思います。
▼動画の無料視聴はこちら▼
目次
『楽園』作品情報
作品名 | 楽園 |
公開日 | 2019年10月18日 |
上映時間 | 129分 |
監督 | 瀬々敬久 |
脚本 | 瀬々敬久 |
原作 | 吉田修一 |
出演者 | 綾野剛 杉咲花 村上虹郎 片岡礼子 黒沢あすか 石橋静河 根岸季衣 柄本明 佐藤浩市 |
『楽園』あらすじ・感想【ネタバレなし】
もっとも怖いものは殺人事件ではなく、人間心理。
映画『楽園』が主題にしているのは少女の殺人事件でも、失踪事件でもありません。
本作がもっとも伝えようとしているのは、今の日本社会で他人を排他的に扱う風潮に対して間違っていると訴えている点です。
物語の主人公・中村豪士(綾野剛)がなぜ孤独に陥り、町の誰からも相手にされず、偏見に満ち溢れた閉鎖的な地域社会で生きなければいけなかったのか?
海外からの移民の子どもとして、日本に渡ってきた豪士にとって移住者への理解の乏しい田舎で過ごすには、普通の人よりも苦労が必要とされたわけです。
幼少期から友達もできず、孤独の中で生きてきた豪士に必要だったのは、人からの優しさだったのではないでしょうか?
豪士への何気ない気遣いや会話が彼の心を解きほぐし、正しい道へと導いていたに違いありません。
鈴木友哉
人への冷めた関心が、他ならぬ中村豪士という寂しい心を持った人間を作り出しているのです。
無関心だけでなく、差別的・排他的な行動が他人の心を傷つけるものです。
ただ、誰もが相手からの注目は浴びたいと心から感じているものでしょう。
この物語に登場する中村豪士が抱く寂寥感に少しでも寄り添ってあげれば、彼もまた誘拐殺人という犯罪に手を染めずに済んだはずです。
犯罪者を少しでも根絶するには、私たち一人一人が他人に対して優しく広い心を持つことを重要視しなければなりません。
役者たちの演技合戦が見られる至宝の邦画
本作『楽園』を観る上でのポイントは、出演者たちの演技力の高さであることも間違いありません。
冒頭で記述しましたが、『楽園』は原作の短編を2つ組み合わせた二部構成になっています。
後編パートで主役を演じられている佐藤浩市の演技力ももっともながら、前半パートで主役を演じられるている綾野剛の演技力は観るものを圧倒する凄まじさを感じます。
また、外国からの移民の青年という難役にも挑戦し、完璧なまでのパフォーマンスを身振りや表情で表現しています。
日本人にとって、海外移住者がどのような住環境で暮らしているのか、想像するのも容易ではないでしょう。
綾野剛は、そんな難易度の高い役柄をしっかり理解した上で、熱演されている点が本作『楽園』の見どころです。
鈴木友哉
また、主演の綾野剛だけでなく、彼を支える少女湯川紡を演じた杉咲花もまた難しい役柄を演じている点も見逃せません。
殺された親友と殺した男との間で、罪の呵責に追い詰められながら、事実を受け入れようとする女の子を体当たりで好演しています。
また、中村豪士の母親を演じる黒沢あすかも、準主役でありながら存在感のある演技力を披露してくれています。
本作『楽園』は、新旧問わず演者たちが繰り広げる演技合戦が、作品の中で一番の見どころであると言っても過言ではないのです。
映画のタイトル『楽園』が持つ本当とは?
映画の題名『楽園』には、一体どのような意味が含まれているのでしょう?
そもそも”楽園”とは何かを調べてみると「苦しみがなく、楽しさに満ち溢れた場所。パラダイス」となっています。
苦痛を伴わない世界は、誰もが憧れる社会で、そんな場所があれば行ってみたいと思うもの。
ですが、本当に“楽園”と呼ばれる場所なんて、世界中どこを探しても存在しないでしょう。
本作『楽園』が指す楽園とは、日本での暮らしのことを指しています。
鈴木友哉
ひと昔前には、田舎でのスローライフが流行していた時代もあったぐらい、都会から緑や田園が広がる在郷地域に移住したいと考えた方も少なからずおられたでしょう。
ただ、本作で描かれる“田舎”とは、偏見と暴力、村八分という私たちが憧れる理想とはかけ離れた概念で、至極現実的な物語設定に嫌というほど心が掻き乱されます。
しかし、地方に限らず、どこに行っても人からの嫌がらせは存在していて、嫉妬や恨みなど、負の感情が渦巻く限り、本作のようなドロドロした人間関係は根絶することはないに等しいのです。
鈴木友哉
ストーリーの終盤にて、中村豪士の母親が子供だった彼に諭すようなセリフがあります。
「日本に行けばより豊かになるし、あの国は楽園」と豪士を説得させる場面です。
彼もまた、日本への移住が“楽園”への一歩だと信じ込んでしまいます。
でも、実際は村八分に遭い、いじめられ、差別を受け、彼らが想像した夢とはまったく違う現実が待っていたのです。
鈴木友哉
引っ越し先、転校先、就職先、はじめての場所はどこにでもあります。
ここで必要になってくるのは、相手の心への歩み寄りでしょう。
楽園は、元からその場所にあるものではなく、自分から歩み寄り、譲歩し合い、助け合っていく。
いわば、楽園とは物質的なものではなく、精神的な局面を指しているのではないでしょうか?
鈴木友哉
アジア圏内の発展途上国に住む人間から見れば、日本は夢の国でもあり、言ってみれば“楽園”そのものです。
『楽園』まとめ
本作を観た各界の著名人からコメントが到着❕
本日ご紹介するのは、#品川ヒロシ さん(映画監督・お笑い芸人)のコメント✏️
ぜひ #映画楽園 ハッシュタグをつけてみなさんも感想をツイートしてくださいね。
⬇️そのほか著名人コメントはこちらhttps://t.co/Iy8cIV8CWH pic.twitter.com/czSGfNWoIN
— 映画『楽園』公式 (@rakuen_movie) October 22, 2019
以上、ここまで映画『楽園』について紹介させていただきました。
- 貧困国から見た日本は、果たして本当に“楽園”なのか?
- 海外からの移民という難しい役所を、綾野剛がすばらしく見事に演じているのはファン必見!
- 環境によって人間の心理はいとも簡単に崩れていく様がリアルに描かれている
▼動画の無料視聴はこちら▼