『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督、『魔法少女まどか☆マギカ』の虚淵玄、『十二人の死にたい子どもたち』の冲方丁、ProductionI.Gの塩谷直義らが手掛け2012年からスタートしたSFクライム・アニメーション『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ。
2012年の第1期スタート以降第3期までのテレビシリーズと、4本の長編映画が製作されてきました。
また舞台化やドラマCD化、ノベライズやコミカライズとその世界は拡大し続けています。
そして『PSYCHO-PASS サイコパス』第3期の完結編『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』が公開されました。
村松 健太郎
今作『PSYCHO-PASS 3 サイコパス FIRST INSPECTER』は第3シーズンの最終話(8話)から直結する物語になっていて、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの予備知識と『PSYCHO-PASS サイコパス』第3期のストーリー概要は把握しておかないと話についてこれない作りになっています。
そこで、今回はシリーズ全体の世界観の説明から、第3期のこれまでのストーリーをまとめていきます。
目次
『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの基本情報まとめ
『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの世界観
今から約100年後の日本、新自由主義経済のゆがみから貧富の格差が拡大、情勢が悪化した世界。
日本はエネルギー問題と食糧問題を自身の国土の中だけで確保することに成功をおさめ、2070年代には世界で唯一の法治国家として体制を維持すると同時に、事実上の鎖国状態に入っています。
この日本を支えるのが包括的生涯福祉支援システム・シビュラシステム。
このシステムはサイマティックスキャン(ハイレベルな生体認証)で得た国民の精神状態を科学的に分析して“サイコパス”と呼ばれる数値にして国民を識別、職業から結婚、健康維持などあらゆる面で可能性を予知、先行して管理監督するものです。
『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズのストーリー
2012年から放映が始まった物語の舞台はこのシビュラシステムが導入されてから約30年後の世界です。
シビュラシステムにより、人間の犯罪はサイコパスのパラメーターの一つ“犯罪係数”の測定で犯罪を犯す前に対処が可能になります。
結果、従来の警察組織は解体され、あらためて厚生労働省内部の公安局に刑事課が設立されました。
村松 健太郎
刑事課には犯罪係数によってその形状を変形させて、殺傷能力を換える特殊装備“ドミネーター”が支給されています。
ドミネーターの使用に関してもサイコパスへの負荷(色相と呼ばれる基準の悪化)が考えられるため、刑事課はサイコパスがクリアな監視官と、犯罪係数が高く潜在的に犯罪者になる可能性のある人間“潜在犯”から適正診断によって選ばれた執行官との分業制となっています。
常守朱の部下となる執行官には元監視官の狡嚙慎也がいました。
そして常守朱と狡嚙は同僚の宜野座伸元らとともに多くの犯罪者を追う中でシビュラシステムの真実に迫っていくことになります。
『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズのシビュラシステムについての情報
シビュラシステムの真実とは犯罪行為を行っても色相を悪化させることのない特異な存在“免罪体質者”の脳を取り出しユニット化して並列化した生体コンピューター化したものだということでした。
シビュラシステムは判別不能な存在を内側に取り込む形で、システムを成長させていき、より完璧な存在となっていきます。
ドミネーターの判断もまたこのシビュラシステムによるものですが、その一方で人間の”更生”については考慮しないこともあり、真実を知った常守朱らとしばしば対立することになります。
また、生体デバイス(ヒューマノイド)として公安局局長の禾生壌宗が意思表明を行っています。
村松 健太郎
『PSYCHO-PASS サイコパス』第3期の振り返り
村松 健太郎
これまで2つのテレビシリーズと5つの長編映画が制作されてきましたが、第3期で大きな転換点を迎えます。
日本は鎖国を止め、外国からの移民を認めます。
また刑事課では常守朱が前局長を殺害してしまい収監されています。
また、彼女の同僚であった狡嚙や宜野座は外務省行動課の花城フレデリカの元に異動、刑事課は朱の部下だった霜月美佳を課長とする新体制が築かれています。
ここに新人監察官として慎導灼とロシア系移民の炯・ミハイル・イグナトフが赴任してくるところから第3シーズンが始まります。
村松 健太郎
2人はこの事件には大きな何かが隠されていると感じており、刑事になることで真相に近づこうとしていました。
そして彼らはシビュラシステムの影で“ビフロスト”という社会をゲームに見立てる組織の存在を知ることになります。
ビフロストはプレイヤーの“コングレスマン”、計画を実行する“インスペクター”、そして末端の“狐”によって構成され、シビュラシステムの及ばない範囲内で密かに犯罪を画策、これを多額の賭け事の対象とするゲームを行っています。
このビフロストの“ファーストインスペクター(FIRSTINSPECTER)”の梓澤廣一は多くの人間を駒として使い、誰一人犯罪を犯しているという認識を持たせずに犯罪を完成させるプランメーカーであり、コングレスマンの座を目指す野心家であり、さらにはかつては慎導灼の父親の部下でもあった人間。
そんな梓澤が元監視官で今も刑事課に協力している六合塚弥生を襲撃して彼女のIDを奪い公安局に向かいます。
村松 健太郎
『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』作品情報
作品名 | PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR |
公開日 | 2020年3月27日 |
上映時間 | 135分 |
監督 | 塩谷直義 |
シリーズ構成・脚本 | 冲方丁 |
脚本 | 深見真 |
声の出演 | 梶裕貴 中村悠一 櫻井孝宏 大塚明夫 諏訪部順一 名塚佳織 佐倉綾音 沢城みゆき 日笠陽子 花澤香菜 本田貴子 関智一 野島健児 東地宏樹 堀内賢雄 宮野真守 |
音楽 | 菅野祐悟 |
映画『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』の主要声優・キャラクター
梶裕貴 / 役:慎導灼
公安局刑事課監視官、特A級メンタリストであり、高い身体能力と知能を併せ持った青年。
厚生労働省の職員だった父親の死の謎を追うために刑事の道を選ぶ、免罪体質者でもあります。
村松 健太郎
中村悠一 / 役:炯・ミハイル・イグナトフ
公安局刑事課の監視官でロシア系移民。
灼とは幼馴染でもありまた共通の友人でもある舞子・マイヤ・ストロンスカヤと結婚している。
村松 健太郎
堀内賢雄 / 役:梓澤廣一
ビフロストのファーストインスペクターであり、末端の人間“狐”を巧みに組み合わせて人間の犯罪係数に影響を与えずに犯罪をくみ上げるプランナー。
灼と父・篤志の元部下であり、ビフロストの最高位コングレスマンを目指していますが、その野望は更にその先を見据えています。
宮野真守 / 役:法班静火
ビフロストのコングレスマンで、その真の狙いはうかがい知れない部分があります。
炯と密かに通じて、策謀を張り巡らせます。
村松 健太郎
【ネタバレ】『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』あらすじ
梓澤は公安局に単身乗り込むと、先に送っていた仲間や留置場の犯罪者を使って公安局のシステムをハッキング、厚生省庁舎全体を占拠します。
占拠が済むと、護衛のため公安局に籠っていた都知事の小宮カリナの辞任を求めてきますが、これが本当の狙いとは思えません。
公安局の面々はバラバラの状態から何とか状況を打開するために動き出します。
ビフロストのコングレスマン代銀遙熙はメンタルAI装置“マカリナ”を政治活動に利用している小宮を殺させた後も、マカリナを存続させて、“非実在的市民”を誕生させることを狙い、梓澤を使っていました。
一時、梓澤に身柄を抑えられていた灼は小宮都知事、分析官の唐之杜志恩と合流。
外務省行動課の花城、狡嚙、宜野座、須郷徹平と期せずして合流した炯は外部から公安局庁舎に迫ります。
刑事課課長の霜月は廿六木天馬、雛河翔の2人の監視官とともに動き出します。
しかし、対抗するコングレスマンの法班静火は密かに炯と通じて、このプランを妨害、ビフロストでのゲームで代銀を追い詰めます。
多くの罠とブラフを乗り越えた灼は仲間たちのサポートを得て梓澤と1対1の対決に持ち込みます。
ついに対面した灼は梓澤と共にビフロストの正体とシビュラシステムの正体について語り合います。
ビフロストとはシビュラシステムのデバック(チェッカー)システムを改造したもので、永遠に富を生み出す仕組みを作り上げていたのです。
コングレスマンは犯罪を通してシビュラシステムの盲点を作り続けることが目的でした。
一方、シビュラシステムが人間の脳機能を拡張したものだと推測した梓澤は自分の能力はシビュラの一部になりうると考え、灼にシステムの中枢部に案内させます。
そこにはビブロストの拠点となる部屋もありました。
代銀を抹消した法班は真の目的であるビフロストの解体を実行します。
一方、梓澤はシビュラとの一体化を望みますが、必須条件である免罪体質でないことを理由に拒まれます。
シビュラに拒まれたことで梓澤は今までにないほどの焦りと戸惑いを見せます。
一方で、自分より劣っていると思っていた灼が免罪体質であり、シビュラの一部になり得ることを知ると大きなショックを受けてしまいます。
シビュラの一部になれないと知って死を望む梓澤に対して、ドミネーターを向けた灼は梓澤をあくまでも一犯罪者として逮捕することを選びます。
占拠事件後、法班静花はシビュラと取引をし、灼の任務継続、常守朱の釈放と復職を認めさせると、自身は新たに公安局局長に就任します。
遂に常守朱と対面を果たした灼と炯は、彼女が知っている自分たちの家族の死に関する真実を聞くことになります。
『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』感想とまとめ
『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』3月27日(金)2週間限定ロードショー
Amazon Prime Videoにて編集版を公開同日12:00頃から独占配信開始!予告解禁!!https://t.co/9kvZ4KqME0#pp_anime pic.twitter.com/9pAAuylvrl
— PSYCHO-PASS サイコパス 公式 (@psychopass_tv) March 19, 2020
複雑に積み上げた世界観と多くの隠喩・暗喩を含んだセリフの数々で熱烈なファンを獲得してきた『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ。
過去に4本の映画が公開されてきましたが、どれも番外編的なストーリーでした。
それに対して本作『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』は直前のテレビシリーズと直結した作品になっています。
村松 健太郎
上映時間が135分と長いこともあって、ファンサービス的な見せ場を用意しつつも、本筋のストーリーラインも分厚く、見ごたえのある作品になっています。
バディモノ・刑事モノとしての部分をより一層打ち出した第3シーズンですが、この『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』もその部分は変わりません。
また映画全体で見れば、『ダイ・ハード』的な限定空間でのミッション突破型のアクションサスペンス映画に仕上がっていて、キャラクターや事前のストーリーの予習が必要ではあるものの、ストレートに楽しめスクリーン映えする映画になっています。
村松 健太郎