『殺人の追憶』あらすじ・ネタバレ感想!実在の未解決事件に着想を得た重厚な韓国サスペンス

『殺人の追憶』

出典:U-NEXT

2019年のカンヌ国際映画祭では、『パラサイト 半地下の家族』でパルムドールを受賞し、更に2020年のアカデミー賞では4冠に輝いた韓国の鬼才ポン・ジュノ監督。

『パラサイト』と同じく、ポン・ジュノ監督とソン・ガンホの主演で制作された『殺人の追憶』は、韓国映画史に残る紛れもない傑作です。

ポイント
  • 背景にあるのは混沌とした1980年代の韓国社会
  • 掴み切れない犯人に翻弄され続ける刑事たちの姿を描く
  • 答えのない事件からポン・ジュノ監督は私たちに何を伝えたか?

それではさっそく『殺人の追憶』をネタバレありでレビューしていきたいと思います。

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『殺人の追憶』作品情報

作品名 殺人の追憶
公開日 2004年3月27日
上映時間 130分
監督 ポン・ジュノ
脚本 ポン・ジュノ
シム・ソンボ
出演者 ソン・ガンホ
キム・サンギョン
パク・ヘイル
音楽 岩代太郎

【ネタバレ】『殺人の追憶』あらすじ・感想


実在の事件を基にしたフィクション

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殺人の追憶』を初めて観たとき、こんなにも恐ろしい映画は観たことがないと感じたことを鮮明に記憶しています。

韓国映画独特の逃げ場のない鬱屈とした雰囲気、常に怒声が飛びかう画面

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私は、『殺人の追憶』が韓国映画との出会いでしたが、今まで観てきた欧米の映画には持ちあわせていない独特の閉塞感に、ただただ圧倒されるばかりでした。

本作は、1986年から1991年にかけて韓国で起きた華城連続殺人事件から着想を得て制作された作品です。

1980年代の韓国は、まさに「秩序」をめぐる動乱の時代でした。

韓国軍の指導部が権力の座につくことに抵抗し、民主主義を守ろうとする大規模な抗議運動が全土で広がったのです。

1980年5月には、いわゆる「光州事件」が勃発。

デモの中心地となった光州で軍が民衆に発砲し、数百人が死亡したと言われています。

犠牲者の人数は今でも正確には明らかになっていません

『殺人の追憶』では、警官が容疑者に暴力を加える様子や、警察署の前で人々が暴力的な組織体質に抗議活動をする様子も映し出されています。

それがまさに、1980年代の韓国をとらえた様子であると言えるのです。

「未解決事件」というテーマで作品をつくる上では、犯人が特定されないということが物語を緊張感のないものにしてしまう可能性があります。

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なぜなら、物語の着地点を「犯人が誰か」という結末に落とし込むことができないからです。しかし、『殺人の追憶』は、どうしても掴みきれない犯人に惑わされ続ける人々と、その葛藤を描くことによって、私たちの注意を決して逸らすことがありません

観客の視点を逸らす容疑者の描き方

殺人の追憶』では、主に2人の刑事の視点を主軸として物語が進んでいきます。

ソン・ガンホ演じる主人公のパク・トゥマンは、韓国の農村地域のベテラン地元警察。

パク刑事を中心として、連続殺人の捜査チームが組まれますが、なかなか状況は進展しません。

そこへ、ソウル市警から若い刑事ソ・テユンが赴任してきます。

直情的な性格のパク刑事と、冷静で荒ぶったやり方を嫌うソ刑事。

この正反対の2人がタッグを組んで捜査に当たることになるのです。

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『殺人の追憶』の中で、第一の容疑者としてパク刑事らが目をつけるのは、グァンホと呼ばれる知的障害を抱える男性。

物語の序盤から、グァンホに対する取り調べが行われ、刑事たちは彼をもっとも有力な容疑者候補として捜査を進めます。

いち早く犯人を検挙したい刑事たちは、時に暴力を加えながら、グァンホに対して自白を強要します。

その様子は異様であり、警察の権限が乱用されていると思わざるを得ません。

グァンホが知的障害を抱えていることを逆手に取り、何とか事件の供述を取ろうとするのですが、肝心の犯行の経緯についてグァンホが詳細に語ることはありません。

第二の容疑者となったのは、村に住む中年の男性。

彼には病気で弱った妻と、小さい子どもたちがいます。

刑事たちはまたしても、家庭の不満を理由にして彼が犯行に及んだと仮定し、拷問まで加えながら供述を強要します。

ここでも彼が犯人であるという有力な証拠は一切なく、事件はますます迷宮入りしていくのです。

そんな中、第三の容疑者として現れるのがパク・ヒョンギュという若い男性です。

実は一連の殺人が行われる時間帯には、ラジオ番組に同じ楽曲がリクエストされており、その葉書を送っていたのがパク・ヒョンギュでした。

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『殺人の追憶』では、この若者が事件に直結するもっとも有力な犯人候補として描かれています。

最有力の容疑者とされる一方で、パク・ヒョンギュは取り調べの最中に、警察の悪しき体制を批判するような言動を刑事に浴びせます。

「拷問していることは子どもでも知っている。」と刑事に食いかかるのです。

その言い方は、殺人事件よりも警察に横行している暴力の方が悪であるかのような意味にも捉えられます。

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「無秩序な韓国警察が、この事件の解決を困難にさせたのだ。」というメッセージが込められたシーンではないでしょうか。

他に容疑者も現れず、パク・ヒョンギュをもっとも有力な犯人として的を絞っていく刑事たち。

同時に、知的障害を抱えたグァンホが、本当は事件の有力な目撃者だったのではないかということに気づきます。

ソ刑事とパク刑事は、グァンホに事件当時のことを再度尋ねようとしますが、自分が疑われていることに怯えたグァンホは逃走し、汽車にはねられてしまいます。

刑事たちは、有力な情報を持っていたであろうグァンホを皮肉にも自らの手で追いつめてしまったのです。

迷宮入りする捜査

ラストにかけて、事件は再び展開します。

ソ刑事はパク・ヒョンギュこそが一連の事件の犯人だと確信し、彼を家から引きずり出して問い詰めます。

雨の中、線路の上で対峙するソ刑事とパク・ヒョンギュのシーンは圧巻としか言いようがありません。

ソウルから田舎へやってきて、冷静に捜査を進めようとしてきたソ刑事は、初めて感情を露わにし、その怒りすべてをパク・ヒョンギュにぶつけました。

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事件が一向に解決できない焦り、そして理解のできない非人道的な犯人への怒り…すべてがこのシーンに詰まっています。

彼の怒りは、自らのふがいなさに向けたものでもあり、また警察全体の無力さに向けられたものでもあったでしょう。

そして、雨の中に立ち尽くす2人のもとにパク刑事もやって来ます。

手にはDNA鑑定の結果が書かれた紙が握られ、その結果はパク・ヒョンギュを犯人とは断定できないというものでした。

事件の犯人を追い求め続けた2人にとって、それは信じがたく、絶望的な事実でした。

「俺はもう分からない。飯は食ってるか、行っちまえバカやろう。」

パク刑事が絞り出すようにパク・ヒョンギュに浴びせたその言葉は、彼の虚無感を表したものに他なりません

ポン・ジュノが未解決事件を映画として切り取った手法とは

殺人の追憶』は、「犯人が誰か?」ということに重点を描いた作品ではありません。

むしろ、犯人の像を一心不乱に追えば追うほど、その本当の姿が掴みにくくなり、泥沼にはまっていく…そんな様子を徹底的に描いています。

残虐な犯行が起こったときに、人々は事件の背景と犯人の性格を結びつけて考えるようなところがあります。

本作で言えば、刑事たちはグァンホが知的障害を抱え、普段の挙動に怪しいところがあるとして、事件と結びつけて彼の行動を探っていくのです。

しかし、犯人の生い立ちや性格にとらわれて捜査が進んでいくなかで、事件は何事もなかったように淡々と続いていきます。

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この映画に私が感じる恐怖は、事件の犯人の人柄がまるで見えてこないところにあります。

事件が起きる日にラジオでかかる音楽、狙われた女性の服装など、犯行に関わる要因の特徴は徐々に共通点が見つかっていきますが、どんな人物が犯行に及んだのかは想像がつかないのです。

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まるで、犯人が人間ではないような、そんな気さえしてしまいます。

そして『殺人の追憶』のラストは、刑事を引退してサラリーマンとなったパク刑事と、ある少女の会話で締めくくられます。

迷宮入りした事件の現場に久々に訪れたパク刑事は、たまたま居合わせた少女から耳を疑うような事実を聞かされるのです。

このパク刑事と少女の会話は、まさに恐怖の揺り戻しでした。

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一旦は落ち着いたかと思った物語が、決して終わっていないこと。またこれからも終わることがないことを、身をもって体感させられるのです。私にとって、これほど脳裏に焼きついているラストシーンはありません。

『殺人の追憶』まとめ

実際に華城連続事件に関わった刑事たちにとっても、1980年代の韓国に生きた人々にとっても、この残虐な出来事は深く記憶に刻まれているのだろうと思います。

そして、ポン・ジュノ監督は未解決事件が人々にもたらした感情のうねりと、韓国社会そのものが抱えたひずみを私たちに見せつけました。

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私たちは『殺人の追憶』を通して、まさにこの時代の韓国社会が抱えた記憶そのものを追体験することになるのです。
要点まとめ
  • 2人の俳優が迫真の演技で魅せた焦燥感と虚無感
  • 誰が事件を迷宮入りさせたのか?韓国社会そのものの混乱を映し出す監督の手腕
  • 私たちも「追憶」しているのだと感じさせる完璧なラストシーン
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