思いを寄せる相手の心が可視化されて目の前に現れたとして、それは本当の相手の心なのか?
それとも相手に焦がれる自分の願望なのか?
それとも全く別の思いもしない、誰かの心なのか?
「もしも心を可視化できたら?」という着想から始まり、SF的要素と恋愛感情を掛け合わせ、観客の認識を静かに揺らす、不思議な「心」の恋愛映画『メカニカル・テレパシー』。
本作は、大阪を拠点に、2004年より映像制作者の人材発掘を行っているシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)の第13回助成作品で、第12回大阪アジアン映画祭インディ・フォーラム部門及びアメリカのThe Philip K Dick Science Fiction Film Festivalに正式上映され、日本芸術センター第10回映像グランプリでは優秀映画賞を受賞しました。
主人公・真崎役は、AbemaTVの恋愛リアリティーショー「さよならプロポーズ2」の吉田龍一が、繊細且つ静かな強さを持つ演技で揺れ動く心を表現します。
信念を持ち続けながらも、時折見せる弱さが魅力的な研究者・碧役に白河奈々未、本人の心の可視化なのか、碧の願望の可視化なのか、微妙な演技で観客をも惑わす夫・草一役に『ハッピーアワー』の申芳夫、真崎に思いを寄せ、真崎に重要なことは何かを訴えるアスミ役に伊吹葵、理事長役に宝塚歌劇団の元星組娘役スターの青山雪菜。
その他、同僚・水沢役に、俳優業の傍ら監督としても活躍する石田清志郎など、CO2俳優特待生に選ばれた関西出身の注目の才能が顔を揃えました。
この度、アップリンク渋谷の初日舞台挨拶に、主演の吉田龍一と五十嵐皓子監督が登壇し、SF恋愛映画の製作の裏話を語りました。
また、映画監督の大工原正樹と万田邦敏、脚本家・映画監督の高橋洋、大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクターの暉峻創三からの応援コメントも届きました。
目次
『メカニカル・テレパシー』初日舞台挨拶レポート
日時:10月9日(金)21:00~21:15頃
登壇者:吉田龍一、五十嵐皓子監督
場所:アップリンク渋谷
本作は、”心を可視化する機械”を巡る3人の男女の物語。
”心を可視化する機械”というアイデアを思いついた経緯を聞かれた五十嵐監督は、「心を可視化する方法は、抽象的に表現するだとか色々な表現方法があると思うんですけれど、今回映画を撮るにあたって、役者さんが一人二役で”心”と”体”と2つのキャラクターを演じることで心の可視化を描ければと思って、”心は何か”というテーマにアプローチしようと思ったのがきっかけ」と話しました。
“心を可視化する機械”を登場させて、何を描きたかったのかと問われた五十嵐監督は、「心というのはわからないもので、自分が何をしたいのかだとか、相手が何を望んでいるかだとか、わからないことばかりなんですけれども、”そのわからないものをあるがままに見つめて、自分が何を選んで、何を言葉にして、どう行動するかというのが大事”だというのを描こうと思いました」と説明。
吉田龍一は、真崎自身と真崎の心が可視化されたバージョンの両方を演じ、混乱しなかったか聞かれ、「真崎の一部分の感情だったり、エゴであったり、欲であったりというのがもう一人の真崎かなと思い、演じました」と語りました。
吉田は、公開にあたって久しぶりに本作を観たそうで、「4年前観た時と捉え方・感じ方であったり、僕が覚えていた印象と全然違ったことにびっくりしました。4年の間で母が亡くなったんです。かけがえのない命と向き合った時に、気づくことがめちゃくちゃあったんです。それを経て今の自分がこの作品を見た時に、(本作は)人のあり方というか、科学のあり方というか、そういうものが投影されていて、人の欲であったりエゴであったりが垣間見えました。ラストシーンで情景を感じた時に、『人やなー』とか『人生ってこういうことなのかなー』って感じて、涙してしまいました」と途中お母さんを思い出し、言葉に詰まる場面も。
最後に五十嵐監督より、「片思いで報われなかった思いだとか、自分の中で決着がつけられなかった思いだとか皆さん経験されていらっしゃると思うんですけれど、この映画を観ることでその気持ちを思い出したり、寄り添ったり、そういう時間が持てればと思ってこの作品を作りました。楽しんでいただけましたら幸いです」とメッセージが送られ、初日舞台挨拶は終了しました。
『メカニカル・テレパシー』応援コメント
映画監督 大工原正樹
シリアスな大阪人が静かに激しい愛を語る映画。
それだけで新しく感じました(他にもあったらゴメンなさい)。
「心が見えるようになる装置?なんだそりゃ!」な無謀なテーマに堂々と正面から挑む五十嵐皓子のねばり強い狂気が、最後は清々しく思えてくる怪作です。
映画監督 万田邦敏
不思議な映画だ。
そもそも心の可視化現象そのものが不思議なんだけど、いろいろな人の心が可視化して、登場人物たちにもそれが誰の心の可視化なのかがわからなくなってきて、迷宮化する。
「言葉にしなきゃダメだよ」という台詞は、まさに正解なんだけど、それを言っちゃあお終い。
言葉にならない、言葉にできない心の中は、やっぱり不思議。
脚本家・映画監督 高橋洋
よくパラレルワールドには「世界線」という言葉が出てくるが、この映画はひょっとしたら、今、私たちが生きるこの世界こそが無数の世界線に貫かれ交錯し合っていることを描いてるのではないだろうか?
それに近いことを、私たちは「人間には関係の数だけキャラクターがある」という言い方で認識しているわけだが、いや、事態はもっとややこしく、人物a、a’、a’’、a’’’…の世界線が交わる接点に人物Aは存在し、無数の可能性の局面を開示しみせているのでは?
そういう人間および人間関係の変容を『惑星ソラリス』や『ストーカー』のような大上段の設定ではなく、プチ近未来のちょっとしたデバイスが照らし出してしまうというアイデアがこの映画の魅力だが、当然ながらややこしい。
シンプルを旨とする映画の掟を平然と踏み越えて、映画史上かつてないと言いたいくらいややこしい。
覚悟して見てもらいたいが、いや、現実がほとんど近未来みたいに二重写しに見える今日のリアリティには、ふさわしいかも知れない映画なのだ。
大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター 暉峻創三
愛の物語なんて、とっくに語り尽くされたかと思っていた。
…が、どうやらそれは間違いだったよう。
始まるや一瞬たりとも目が離せなくなる、もっともピュアで、もっとも未来的な、恋愛映画の新境地。
『メカニカル・テレパシー』作品情報
出演:吉田龍一、白河奈々未、申芳夫、伊吹葵、青山雪菜、石田清志郎、時光陸、松井綾香、長尾理世、竹中博文、古内啓子(声の出演)
監督・脚本:五十嵐皓子
撮影:中瀬慧
照明:加藤大輝
美術:松本真太朗
衣装:蔭木いづみ
ヘアメイク:榎本愛子
音楽:宇波拓
録音:川崎彰人
音響:川口陽一
編集:和泉陽光・五十嵐皓子
VFX:守屋雄介
助監督:吉原裕幸
制作担当:清水美和・根本克也
配給・宣伝:アルミード
2018 / 日本 / カラー / 2.4:1 / ステレオ / 78分
公式サイト:https://mechatelemovie.wixsite.com/mechatele/
Twitter: @mechatelemovie
Facebook: @mechatelemovie
あらすじ
ある大学の研究室で、「心を可視化する機械」の開発が行われていたが、実験中に事故が起こり、開発者の三島草一(申芳夫)が意識不明のまま目覚めなくなる。
共同研究者で草一の妻の碧(白河奈々未)は開発を続け、草一の心の可視化を試みていた。
成果を出さない開発を疎ましく思う大学側は、機械の調査という名目で、真崎トオル(吉田龍一)を研究室に送り込む。
可視化された草一を目の当たりにする真崎。
果たして、真崎が目にした人物は、可視化された草一の心なのか、碧の願望が可視化されたのか?
徐々に碧に惹かれていく真崎は、本当に重要なことは何なのかということに気づいていく。
『メカニカル・テレパシー』は2020年10月9日(金)よりアップリンク渋谷にて公開中ほか全国順次公開!
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