黒沢清監督おすすめ映画13選!ジャンル映画の巨匠のヴェネチア映画祭・銀獅子賞受賞への道のりも解説

黒沢清監督おすすめ映画10選!ホラー巨匠のヴェネチア映画祭・銀獅子賞受賞への道のりも解説

出典:IMDB

2020年のヴェネチア国際映画祭にて『スパイの妻』で銀獅子賞・監督賞を受賞した黒沢清監督。

その実績から、“もう一人のクロサワ”と呼ばれる黒沢清監督のこれまでの経歴をおすすめの作品を13作挙げながら辿っていきたいと思います。

黒沢清監督おすすめ映画13選

『CURE』

一見すると、全く関連性がないように見える殺人事件。

しかし、遺体に共通してX字の傷が残されるという奇妙な共通点がありました。

刑事の高部は捜査を進める中で記憶を失い彷徨い続ける謎の男の存在を知ることになります…。

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サイコサスペンスが世界的にブームになっていた中で発表された作品で、ドライなタッチが貫かれていて、唐突な暴力描写など強烈な印象を残します。共演の萩原聖人の演技にも注目です。黒沢清監督自身が手掛けた小説もあります。

学生時代から自主映画を作り始め、カルトクラシック映画『太陽を盗んだ男』の現場でプロの映画製作に触れ、ピンク映画で商業デビューした黒沢清監督。

太陽を盗んだ男

(C)1979 東宝/フィルムリンク・インターナショナル

伊丹十三と組んだ『スウィートホーム』では製作の方向性に関して軋轢が生まれ、最終的に裁判沙汰も経験、しかし、幸いにも黒沢清監督はオリジナルビデオという活躍の場を得ることになります。

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1998年のVシネ『蛇の道』『蜘蛛の瞳』は香川照之哀川翔といったその後、黒沢作品の常連となる俳優が出演しています。

そんな、黒沢清監督の名前が一躍、世界的に知れ渡ったのがこの、1997年の『CURE』でした。

その後、黒沢作品の常連となる役所広司を主演に迎えたサイコ・スリラーで、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』の優れたフォロワー作品として、国際的に高い評価を浴びました。

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主演の役所広司は当時、『Shall weダンス?』や『うなぎ』などで一気に映画スターとなっていた時期で『CURE』でも東京国際映画祭・最優秀男優賞を受賞しました。
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『回路』

CURE』の直後に撮った『カリスマ』はカンヌ国際映画祭された黒沢清監督はこれらの実績を基に改めてメジャー体制のホラー映画『回路』を2001年に監督します。

現実世界では爆発的にインターネットが広がり始めています。

一方であの世(=霊界)では死者の魂が、その許容量を超え、死者が現実世界にあふれ出てきました。

さらにインターネットを介して霊界と現実が繋がってしまったことで世界が徐々に崩壊していきます…。

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実は意外と少ない黒沢監督による純然たるホラー映画、本作はカンヌ国際映画祭に出品されると故草批評家連盟賞を受賞するという快挙を成し遂げ、以降黒輪監督は国際映画祭の常連となっていきます。
『回路』

出典:IMDB

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『回路』は2006年には『パルス』としてアメリカでリメイクされ、ワンカットで女性が飛び降り自殺をするというショッキングなシーンは、こちらでも踏襲されています。公開時には黒沢監督は“ゴッド・ファーザー・オブ・Jホラー”とまで呼ばれています。
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『アカルイミライ』

漠然として苛立ちを抱えながら生きる青年・雄二。

同僚の守だけが唯一、雄二を制御できましたが、会社の社長を殺したとして守が逮捕されてしまいます。

守が刑務所で自殺したことで、雄二は制御を失い始めます…。

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当時の注目の若手キャストが揃ったことと渋谷を中心としたミニシアターブームとの相乗効果もあり、スマッシュヒットを記録しました。キーアイテムのクラゲの美しさなど映像派としての黒沢清監督の一面を知ることができます。

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オダギリジョーの映画初主演作となった『アカルイミライ』はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され、黒沢清監督はここから海外映画祭の常連となっていきます。
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『叫』

東京湾で手口が共通した殺人事件が発生。

刑事の吉岡は捜査を進めますが、現場には彼の指紋やボタンが残されていました。

そして、吉岡の前に赤い服の女の幽霊が現れ、彼を混乱に陥れていきます…。

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ホラー映画連作企画“Jホラーシアター”の第4弾として製作されました。ホラー映画としての要素もたっぷりありますが、その一方で神経をキリキリと絞めつけられるような感触のある、サイコサスペンスとしての一面もあるように感じます。
黒沢清

(C) 2006「叫」製作委員会

前年の日韓合作ホラー『LOFT』に続いて製作された『』はヴェネチア国際映画祭で上映されるなど、黒沢清監督は海外から常に新作が待ち望まれる日本人監督の一人となっていきます。

『トウキョウソナタ』

都内で暮らす佐々木家。

夫婦と3人の子供の5人家族の普通の家庭のようでしたが、それぞれ家族にも言えない秘密を抱えていました。

そして、父親の竜平が会社を解雇されたことから物語が動き始めます…。

黒沢清

(C)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会

2008年の香川照之小泉今日子が出演したある一つの家族を描いた『トウキョウソナタ』は黒沢清監督にとっては今までにない非ホラー・非サスペンス映画で、新境地を開拓した作品でもありました。

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『トウキョウソナタ』はカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門審査員賞受賞し、同作はその後の海外の映画祭・映画賞で受賞を重ねました。

『贖罪』

黒沢清

(C)2012 WOWOW (C)2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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長編映画は『トウキョウソナタ』から約5年の空白期間ができますが、その間の2011年に “罪の意識”をテーマにした湊かなえ原作の同題小説をWOWOWでドラマ化した『贖罪』を監督しています。

ある町に転校してきたエミリ。

地元の小学生の少女4人はエミリと仲良くなりますが、夏休みのある日の午後、彼女たちはエミリの死体を発見します。

彼女たちは犯人を見ていましたが、その顔を思い出すことができませんでした。

それから、15年後、大人になった少女たちが抱き続けてきた罪の意識と、エミリとエミリの母に対する償いが、さらなる悲劇を呼びます…。

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この頃から、従来のサスペンス・ホラー描写だけでなく、ドラマ性が深まった作品が続くようになります。
黒沢清

(C)2012 WOWOW

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小泉今日子蒼井優安藤サクラが揃った『贖罪』はその後、再編集されてヴェネチア国際映画祭で上映され、日本国内でも劇場公開もされました。

『贖罪』で女性たちの物語を描いたこともあってか、2010年代に入ると黒沢監督作品の中で女性がより大きな存在になっていきます。

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黒沢監督自身『スパイの妻』での受賞後のインタビューで「(女性がメインなる作品が増えたことは)自然にそうなった。困難な社会で、先が見えず、個人の上に社会がのしかかっている。社会にのみこまれず、自分を保ち続けることができるキャラクターはどうしても女性になってしまう。日本映画の女優の層がとても厚いという実感もある」と語っています。

回路』や『LOFT』、『』でもヒロインの占める割合は多かったのですが、やはり節目は『贖罪』だったと思います。

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『リアル~完全なる首長竜の日~』

浩市は一年前に自殺未遂を起こし、意識不明のまま眠り続ける恋人の敦美の意識に最先端医療技術の“センシング”で直接、潜り込みます。

意識の中で邂逅を繰り返す浩市と敦美。

やがて、現実と仮想の世界の境界線が崩れ始めていきます…。

黒沢清

(C)2013「リアル 完全なる首長竜の日」製作委員会

綾瀬はるか佐藤健のW主演となった『リアル〜完全なる首長竜の日〜』は映画としては久しぶりのサスペンス・ミステリージャンルの作品であると同時に、久しぶりに邦画メジャーの東宝配給作品と言うこともあり大掛かりなSF要素もふんだんに取り込んでいました。

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久しぶりにメジャー体制下で製作されたこともあってSF的な要素を大きく取り込んだ大作で、アジア圏でも公開されました。フルデジタルで撮影されただけに今までの黒沢清監督作品の中でも、ぎょっとするような映像表現が続いてます。初めて見たときにはメジャー体制の下でも実験性を忘れていないのだなぁと感じました。
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『Seventh Code』

もともとは2014年の前田敦子の同題楽曲のPVから派生した作品です。

秋子は東京から、かつて一度だけ出会った男・松永を追いかけてロシア・ウラジオストクまで来ます。

しかし、再会した松永は秋子を覚えておらず「人を信じるな」という言葉だけを残して立ち去ってしまいました。

ある日、秋子は松永が現地のマフィアと関わりを持っているらしいという情報を耳にします…。

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前半はロードムービー&異文化交流系を絡めたラブストーリーと思わせますが、後半はサスペンスアクションになっていて60分台の上映時間の中に、様々な要素がギュッと詰め込められていました。ラストの活劇パートには驚かされます。
黒沢清

(C)2013 AKS

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前田敦子はその後も2017年の『散歩する侵略者』、2019年の『旅のおわり世界のはじまり』そして、製作中止になった日中合作映画『一九〇五』でもキャスティングされていました。

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『岸辺の旅』

瑞希のもとに失踪していた夫・優介が、突然帰ってきます。

しかも優介はすでに「自分は死んでいる」と打ち明けます。

混乱する瑞希ですが、思い出の土地を巡る旅に出かけることに…。

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実は“夫婦”というモノが良く登場する黒沢作品、本作ではその部分がはっきりと出た作品になっています。そういう意味では『スパイの妻』とも共通する部分があります。
『岸辺の旅』

(C)2015「岸辺の旅」製作委員会/COMME DES CINEMAS

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深津絵里浅野忠信蒼井優による『岸辺の旅』はカンヌ国際映画祭・「ある視点」部門で監督賞を受賞しました。カンヌ映画祭では黒沢清監督作品が出品されることが多いですね。
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『クリーピー 偽りの隣人』

犯罪心理学者の高倉は、引っ越した先で隣人の西野と親しくなります。

しかし、西野の娘・澪がある日高倉に「西野は本当の父親ではない」と告げられます。

そして高倉は一家が忽然と消えた事件の存在を思い出します…。

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黒沢監督が久しぶりにシンプルなサイコサスペンス映画に帰ってきた作品で、夫婦、ひたひたと異常性に浸食される日常など“黒沢清印”のお馴染みの世界観がアップデートされて描かれています。ホラー、サスペンス作品が見たいという方には最適の一本です。
黒沢清

(C)2016「クリーピー」製作委員会

クリーピー 偽りの隣人』には西島秀俊竹内結子香川照之川口春奈東出昌大という豪華なメンバーが揃っているのも注目です。

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ニューヨーク・タイムスは本作の香川照之をこの年のアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるべき5人に選出しています。
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『散歩する侵略者』

鳴海の前に数日間行方不明だった夫の真治が、別人のようになって帰ってきます。

勝手に仕事辞め毎日散歩に出かけていく真治。

やがて真治は鳴海に自分は宇宙人で地球を侵略しに来たと語り始めるのでした…。

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日・仏・ベルギーの合作映画『タゲレオタイプの女』を経て、監督したこの作品は、もとは戯曲ですが映画ならでは大胆な脚色が冴える作品です。宇宙人のすることなので、こちらの感情移入を阻む唐突な行動が多く、これがまた不安感をあおります。
黒沢清

(C)2017「散歩する侵略者」製作委員会

散歩する侵略者』は長澤まさみ松田龍平長谷川博己が出演し、カンヌ国際映画祭に出品されました。

さらにそのスピンオフドラマで、後に再編集され劇場公開もされた夏帆染谷将太東出昌大による『予兆 散歩する侵略者』も発表しています。

黒沢清

(C)2017「散歩する侵略者」スピンオフ プロジェクト パートナーズ

 

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『旅のおわり世界のはじまり』

『旅のおわり、世界のはじまり』

(C)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

日本のバラエティ番組の取材のためにウズベキスタンを訪れた女性レポーターの葉子。

慣れない土地で戸惑うことも多いものの、現地コーディネーターや現地の人々との交流によって新しい世界を開き、成長していく姿を描きます。

黒沢清

(C)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

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再び前田敦子を起用した日本とウズベキスタンの合作映画で基本的に全編ウズベキスタンで撮影されています。『トウキョウソナタ』以来、約10年ぶりに非ホラー、非サスペンスジャンルの映画になりました。異文化の中に身を投じるヒロインの姿は、不思議なユーモアを感じさせます。
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『スパイの妻』

スパイの妻

(C) 2020 NHK, NEP, Incline, C&I

2020年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞・監督賞受賞作。

戦争の足音が確実に迫る神戸を舞台に、ある秘密を知ってしまった男と、その妻が国外脱出を図り、日本軍の暗部を告発しようとします。

2人は迫りくる憲兵の捜査の手をかいくぐり、無事に異国の地へと旅立てるのか…?

村松 健太郎村松 健太郎

サスペンス、ミステリー、夫婦、旅と言った黒沢清監督作品の特徴を多数併せ持った最新作です。二転三転するストーリーは先の読めない展開が続き、予想外のラストを迎えます。ヒロイン重視のスタイルはさらに重きを増してとうとうタイトルにまでなりました。

黒沢清監督おすすめ映画13選まとめ

黒沢清監督はジャンル映画にこだわり続けながら国際的な評価を受け続けるという、日本映画界でも稀有な存在となりました。

また、ジャンル映画への強い思いから、映画祭・映画賞の常連監督作品でありながら、素直に楽しめるエンターテインメント作品が多いことも特徴と言えます。

俳優からの支持も多く、複数の作品に出演している常連俳優も多数います。

また、映画の枠にこだわらずドラマシリーズもいくつか手掛けているのも特徴。

スパイの妻』も含めて、そのドラマが再編集&加工された作品が劇場公開されることも多く、作品が常に高いレベルでキープされていることを感じます。