2003年に公開された、クエンティン・タランティーノ監督の話題作、『キル・ビル』の続編。
クエンティン・タランティーノ監督はもともと1作にする予定だったそうですが、『キル・ビル Vol.2』では前作とまったく趣の違う作品に変化しています。
- 『キル・ビル』では日本で大暴れしたザ・ブライドのさらなる復讐の物語
- 1作目とはまるで違うキャラクターの深部に迫った作品に
- 今作もタランティーノ監督の映画愛あふれるオマージュが満載!
マルコヤマモト
目次
『キル・ビル Vol.2』作品情報
作品名 | キル・ビル Vol.2 |
公開日 | 2004年4月24日 |
上映時間 | 136分 |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
脚本 | クエンティン・タランティーノ |
出演者 | ユマ・サーマン デビッド・キャラダイン ダリル・ハンナ マイケル・マドセン パーラ・ヘイニー=ジャーディン ゴードン・ラウ マイケル・パークス ラリー・ビショップ ヘレン・キム サミュエル・L・ジャクソン |
音楽 | RZA ロバート・ロドリゲス |
『キル・ビル Vol.2』あらすじ【ネタバレあり】
ザ・ブライドとビルの過去
自分を壮絶なリンチで苦しめた挙げ句、お腹の子供のを奪った「毒蛇暗殺団」の5人に復讐をするため、ザ・ブライド(ユマ・サーマン)は東京へ。
刺客の1人でヤクザ界のトップに立つオーレン・イシイ(ルーシー・リュー)と、ヴァニータ・グリーン(ヴィヴィカ・A・フォックス)への復讐を果たしたザ・ブライドの残る標的はこの3人。
オーレン・イシイヴァニータ・グリーン- バド
- エル・ドライバー
- ビル
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アメリカ、テキサス州エルパソの協会で、ザ・ブライドは婚約者や友人たち、ピアノ奏者(サミュエル・L・ジャクソン)とともに結婚式のリハーサルを行っていました。
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「毒蛇暗殺団」を何も言わずに脱退したザ・ブライドは身分を隠してエルパソに滞在し、レコード屋で働くトミーと結婚する予定だったのです。
身重のザ・ブライドが空気を吸いに外へ出ると、教会の外にはビル(デビッド・キャラダイン)の姿がありました。
自分の名前をアーリーンと偽り、ビルを父親として婚約者・トミーに紹介するザ・ブライド。
結婚式のリハーサルが信仰されるなか、あの悲劇が起きたというわけです。
「こんな顔にされても、俺はお前を愛しているマゾだ。キドー…。」
ボロボロになったザ・ブライドにとどめを刺す前にビルはこう言いました。
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バドへの復讐
次の標的、バド(マイケル・マドセン)が生活するトレーラーへ向けて車を走らせるザ・ブライド。
ビルは弟であるバドの元を訪れ、じきにザ・ブライドがやってくることと彼女が服部半蔵の刀を持っていることを伝えます。
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バドもかつて半蔵の刀を持っていましたが、クラブの用心棒として働く今では必要なく、ビルには刀を売り払ってしまったと言いました。
その後、クラブへ出勤したものの勤務態度が悪くクビを言い渡されてしまったバド。
トレーラーへ戻ると、すでに忍び込んでいたザ・ブライドの気配を感じ取っていました。
そして、真正面から突入しようとしたザ・ブライドめがけ、ズドンとライフルで撃ち抜いたのです!
しかし、ザ・ブライドが受けたのは「岩塩」でできた弾で、ダメージは大きいものの死に至らしめる効果はありません。
バドは、兄であるビルを捨てたザ・ブライドを最も残酷な方法で殺す計画があったのです…。
それは、彼女を棺桶に入れたまま生き埋めにすることでした。
懐中電灯だけを与えられて墓地の地中に埋められたザ・ブライドは、過去に行ったパイ・メイ(ゴードン・ラウ)の修行のことを思い出していました。
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ザ・ブライドとビルが仲良かった頃、ビルから中国の伝説の道士、パイ・メイと彼の秘技である「五点掌爆心拳」についての話を聞きます。
「五点掌爆心拳」は、指先で相手の身体の5つのツボを狙い撃つもので、この拳を受けたものは5歩あるくだけで心臓が破裂して死んでしまうというのです。
そして、ビルは年老いたパイ・メイのもとにザ・ブライドを弟子に出すことを決めたのです。
白い紙に長い髭、いかにも香港映画に登場する道士という格好をしたパイ・メイとザ・ブライドの厳しい修行の日々が始まりました。
コミュニケーションが取れず、苦労したものの次第に心を通わせた2人は、カンフーの修業に励みました。
そして、その時に打ち続けた拳を思い出して、ザ・ブライドはパイ・メイに教わった鷹爪拳で棺桶の上板を突き始めたのです!
見事棺桶を打ち破ったザ・ブライドは脱出に成功しました。
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エル・ドライバー VS ザ・ブライド
そしてバドのもとには、ザ・ブライドのライバルであるエル・ドライバー(ダリル・ハンナ)が訪れていました。
ブライドから取り上げた服部半蔵の刀を取引するために、大金を持って訪れたエル・ドライバーは、バドがザ・ブライドを生き埋めにしたことを聞いて驚きます。
しかし、エル・ドライバーには「宿敵であるザ・ブライドを自分の手で殺したかった…」という気持ちがありました。
金を受け取り大喜びするバドでしたがそれもつかの間、金の入ったケースに隠されていた毒蛇に噛まれて命を落とします。
そして、あたかもザ・ブライドがバドを殺したかのようにビルに連絡をしたのです。
半蔵の刀を手に入れて戻ろうとするエル・ドライバーに、ザ・ブライドがすかさず襲いかかります!
バドの狭いトレーラーの中で、2人は死闘を繰り広げます。
エル・ドライバーも過去、パイ・メイの修業を受けたことがあり、2人は鷹爪拳を使って戦いを繰り広げました。
エル・ドライバーの右目は不届きな行いをしたためパイ・メイにくり抜かれたことも明らかに。
そして戦いの最後、ザ・ブライドがエル・ドライバーの左目をくり抜きます!
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両目を無くし絶叫するエル・ドライバーを置いて、バドのトレーラーを去るザ・ブライドは、いよいよビルのもとへ向かいます…。
ビルとの最終対決…復讐の果てに
エル・ドライバーの車と、取り返した服部半蔵の刀を手に入れたザ・ブライドは、ビルの父親代わりを務めていた男のうちの1人、エステバン(マイケル・パークス)を訪ねてメキシコへ向かいます。
メキシコのアクナという町で売春宿を経営するエステバンは、すぐにザ・ブライドのことに気づきました。
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美しい金髪を持つザ・ブライドは、ビルの理想の女性だったと言うのです。
そしてすぐさまビルの居所を教えました。
ビルが居るという別荘にたどり着いたザ・ブライドは、銃を構えて忍び込みます。
そして彼女が扉を開いた時、死んだと思った娘が登場したのです!
B・B(パーラ・ヘイニー=ジャーディン)と名付けられた娘は、ビルとザ・ブライドの間にできた子供で、4歳になっていました。
ビルの話によると、リンチの後お腹から子供を取り出してその後、4年間育てていたということです。
妊娠をしなければザ・ブライドは、かつての恋人であったビルのもとで働き続けるつもりでした。
しかし、ビルとの子供ができたことでザ・ブライドには母性が芽生え、子供を守るためにビルのもとから黙って姿を消したのです。
ザ・ブライドの行動に対してビルは混乱し、見つけたと思ったら他の男と結婚するところだった…という嫉妬と怒りから襲撃したと告白しました。
娘が生存しているとわかっても、ザ・ブライドの復讐心はゆらぎません。
ビルとの対決が始まりザ・ブライドが繰り出したのは、なんとあの「五点爆心拳」だったのです!
ビルはザ・ブライドがパイ・メイから「五点爆心拳」を学んでいたことを、この時初めて知りました。
そして、ビルはゆっくりと立ち上がり5歩あるくと、その場に倒れて息を引き取ったのです…。
こうして、ザ・ブライドの壮絶な復讐は幕を閉じたのでした。
翌朝、B・Bはテレビを見ており、ザ・ブライドはバスルームで泣きじゃくっていました。
「ありがとう、感謝します」
4年間娘を育ててくれたビルへの感謝の気持です。
そして、身なりを整えてB・Bと共に車に乗り込んで出発しました。
「母娘ライオンが再会し、密林に平和が戻りましたとさ」
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『キル・ビル Vol.2』感想:キャラの深部に迫った物語に変化
ザ・ブライドとビルの過去と愛の物語を描いた作品へ変化
1作目『キル・ビル』に比べると、血が吹き出えるような派手なアクションはなく、物語で魅せる作品に変化した『キル・ビル Vol.2』。
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マルコヤマモト
前作から残ったバドとエル・ドライバーへの復讐はもちろん、エンタメとして描かれる部分は多いです。
しかし物語のラスを迎える時、今作がラブ・ストーリーだったことに気づき、驚きます。
ビルへの「憎」から「愛」を覗かせる心情や、ユマ・サーマンの演技も素晴らしいからこその、ビルの最期のの物悲しさ…。
そして、死んだと思っていた娘が生きているとわかった時に変化する、ザ・ブライドのとまどいと内面の変化の描かれ方も良かったです。
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「ザ・ブライドは母親だったんだ…」ということで、物語への距離がグンと近くなったのです。
愛する子供の命に感謝して、平和に生きることができることの素晴らしさ…。
物語自体はハッピーエンドだったものの、母娘の行く末が本当に平和だったのかは、誰も知る人はいません。
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『キル・ビル Vol.2』でも映画愛溢れるオマージュが満載!
クエンティン・タランティーノ監督の、映画愛溢れるオマージュが満載で話題になった『キル・ビル』。
もちろん、『キル・ビル Vol.2』にもオマージュが満載…ということは、本編を見てれば誰でもわかりますよね。
今作では、特に香港映画やマカロニ・ウェスタン映画へのオマージュが満載。
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- エル・ドライバー / スウェーデン製のポルノ活劇『片目と呼ばれた女』へのオマージュ
- パイ・メイ / ショウ・ブラザース映画シリーズでロー・リェが演じた「白眉道人」へのオマージュ
- パイ・メイは当初タランティーノ監督が演じる予定だった
- パイ・メイの修行のほとんどはショウ・ブラザース映画へのオマージュ
- 墓場に生き埋めになったザ・ブライドが脱出するシーンはゾンビ映画の構図を用いている
- ザ・ブライドとエル・ドライバーの対決は『ジャッカス』へのオマージュ
- ビルが長い笛を吹くのは、デビッド・キャラダイン主演、1978年公開の『サイレントフルート』へのオマージュ
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物語に重きを置いているため前作に比べると少ないかもしれないですが、主題歌は相変わらず梶芽衣子の「恨み節」にするなどの徹底ぶり!
自分の好きな要素や作品を、オリジナル作品にどう詰め込むか…タランティーノ監督のマニアっぷりに続々させられます。
『キル・ビル Vol.3』まさかの続編がある?
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『キル・ビル Vol.3』と題されているものの、実はこの手の動画は全てファンが作ったマッシュアップ。
ザ・ブライドに殺されたヴァニータ・グリーンの娘・ニッキーが時を経て彼女に復讐するという内容が多かったです。
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続編について本当のところを言うと、『キル・ビル Vol.2』撮影中にユマ・サーマンが事故を起こしたことについて、事件を隠蔽しようとしたプロデューサー陣と対立していることから可能性が低いと考えられます。
ユマ・サーマンが車を運転する自信がなく断ったにもかかわらず、クエンティン・タランティーノ監督がスタントを立てずに運転させた結果、衝突事故を起こして負傷したということが原因。
しかし、事故の映像を公開したタランティーノ監督とユマ・サーマンは和解できているということです。
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『キル・ビル Vol.2』まとめ
マルコヤマモト
- アクションの派手さは『キル・ビル』より劣るが、その分物語が掘り下げられており胸に響く
- 『キル・ビル Vol.2』では主に香港のアクション映画へのオマージュが満載なのでファンは必見!
- 時間を経て1度観た作品を再び鑑賞すると、思いがけない発見があって面白い
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たくさん映画を見てきた経験値だけでなく、自分の人生と作品が重なり合うことで作品の見方が変わったり。
今まで全く理解できなかったクエンティン・タランティーノ監督作品との距離がちょっとだけ縮まった気にもなりました。
ザ・ブライドの復讐も無事終わり、母娘に平和な生活が訪れて本当にほっこり安心です。
マルコヤマモト
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