『検察側の罪人』あらすじ・ネタバレ感想!木村拓哉と二宮和也の初共演作、対峙するふたつの“正義”は必見

出典:『検察側の罪人』公式ページ

エリート検事と、若手検事。それぞれの正義のぶつかり合い。

正義の剣に追い詰められたとき、一線を超える。

ポイント
  • 木村拓哉演じるエリート検事と、二宮和也演じる若手検事それぞれの“正義”
  • このミステリーがすごい!2014年版の8位になった雫井脩介の小説が原作
  • 時効制度や冤罪などの問題点を描いたミステリー

それではさっそく『検察側の罪人』についてレビューしたいと思います。

▼動画の無料視聴はこちら▼

『検察側の罪人』作品情報

『検察側の罪人』

出典:映画.com

作品名 検察側の罪人
公開日 2018年8月24日
上映時間 123分
監督 原田眞人
脚本 原田眞人
原作 雫井脩介「検察側の罪人」
出演者 木村拓哉
二宮和也
吉高由里子
平岳大
大倉孝二
八嶋智人
音尾琢真
大場泰正
谷田歩
酒向芳
矢島健一
キムラ緑子
芦名星
山崎紘菜
松重豊
山崎努
音楽 富貴晴美
土屋玲子

【ネタバレ】『検察側の罪人』あらすじ・感想


罪を洗い流す雨…そんなものはないからな

東京地検刑事部の本部係に所属するエリート検事・最上毅(木村拓哉)のもとに、検察教官時代の教え子だった沖野啓一郎(二宮和也)が配属されてきました。

研修での問答で沖野が印象に残っていたこともあってか、最上はこの若手検事に期待を寄せており、最初の仕事として闇ブローカーの諏訪部(松重豊)という男の取り調べを任せます。

立会事務官の橘沙穂(吉高由里子)とともに取り調べを行いますが、くえない男・曲者そのものの諏訪部に軽くあしらわれ「ベビーフェイス」だの「最上のポチ」だのと弄ばれ、取り調べの目的だった目撃証言を得られない沖野でした。

時を同じくして起きた老夫婦が殺害された事件。沖野はこの事件を任されます。

おそらく犯人の殺害動機は借金。夫婦の家から数十万単位の現金がなくなっていたことや、何人かにお金を貸していたことが裏付けられる借用書から割り出されます。つまりこの事件は強盗殺人、死刑を求刑するに値する事件です。

沖野の報告を聞きながら容疑者リストを眺める最上の目が、松倉重生(酒向芳)という一人の男の名前をとらえました。

それは忘れもしない23年前に起きた事件、最上が大学生時代に過ごしていた寮の管理人である久住夫妻の一人娘・由季が暴行された末に絞殺されるという事件の容疑者だった男。

決め手となる証拠もなく、当然松倉自身が犯行を自供するはずもないままに事件は時効を迎え、寮で最上に懐いていた由季の未来を残酷なまでに奪った男はのうのうと今日この日まで生きていたのです。

あのとき晴らせなかった無念を、この老夫婦殺害事件に被せて松倉を犯人として法のもとに裁く。

その道筋を描いてしまった最上は、検事としてではなく一人の人間として“正義”を振りかざします。

エリート検事の暴走

最上には丹野(平岳大)という親友がいます。

大学生の頃に同じ寮で過ごしていた同期の一人で、現在は政治家の男なのですが収賄容疑で東京地検の取り調べを受ける可能性が高く、そんな丹野と最上は密会を繰り返していました。

老夫婦殺害事件に関して警察側にも松倉の過去を知る者がいて、久住由季の事件より過去にも女性暴行殺害に関わっていたこと、その時は事件の結末として自殺した松倉の兄が犯人ということになったことが明らかになります。

捜査は各方面から松倉の犯行であるという線を濃厚にして動き出し、最上は闇ブローカーの諏訪部から情報を得て、別件にて松倉を逮捕し勾留しました。

この勾留期間に検察側での取り調べを担当することになったのは沖野。

本来逮捕された件ではなく、老夫婦殺害の容疑者として自供を促すよう責めていきます。

松倉の少年時代、兄が犯人ということになっている事件のことを皮切りに、久住由季の事件。

最上は別室からモニタリングし、松倉が感情的になるように責め立てるよう沖野に指示します。

指示される通り激しく尋問する沖野に対して、松倉はついに由季の事件の犯人は自分だと言いました。

由季は少年時代に犯した少女に似ていたと、その時のことを思い出して興奮のままに犯行に至ったと自供したのです。

それでも老夫婦の件に関しては、やっていないの一点張り。

その頃、松倉同様に重要参考人として名前が挙がっていた弓岡という男が、居酒屋の席で隣り合った男に事件の顛末を事細かに自慢するように喋っていたという情報が入ってきます。

最上は同期の友人たちと、凶悪犯罪であるにも関わらず“時効”という縛りの元に罪に問われることなく生きている松倉に対して、今もなお「正義の鉄槌」を下すことができないことを悔やみます。

その同期の友人の一人である丹野は、疑いをかけられている収賄に関して自身の政党と政権の不正を暴こうとしていたのですが、罠にはめられ四面楚歌状態でした。

身をひそめていたホテルから罠にはめた側の人間である妻に電話をし、そのまま会話の最中に窓から飛び降りて命を絶ちました。

丹野の死を知る前から最上は止まれないところまできてしまっていましたが、松倉の自供・捜査が弓岡の線に移りそうな状況。さらに親友の自殺という衝撃的な出来事が暴走を加速させたように思います。

諏訪部とコンタクトをとり、自動車と拳銃を用意させ、ラブホテルで掃除のアルバイトをしていた弓岡を連れ出します。

隠れる場所は用意してある、その間の金についても保障すると嘘をついて。

弓岡の自宅に放ってある凶器や証拠となるものを回収したのち山の中へと車を走らせ、身を隠す場所についたと安心して荷物を運び出す弓岡を殺害、土の中に埋めきった頃には夜が明けていました。

正義と対峙するのは、また別の正義

最上がこじつけるように自らの描いた道筋を推し進めていく一方で沖野は、松倉の取り調べを進めるなかでなにか違和感のような引っ掛かりを感じるようになっていきます。

諏訪部とコンタクトをとり不穏な動きをみせていたことは、それを教えてくれた橘とともに弓岡のいるラブホテルまで追跡したのでわかっています。でもそのときは真実を目撃したわけでもなければ最上を見たわけでもなく確信に至れず。

ただ容疑者として松倉のほかに挙がっていた弓岡の突然の失踪、そののちに突然“匿名の通報”により河原で見つかった松倉が犯人であることを指し示すかのような凶器。

凶器を処分するために河川敷まで行ったならそのまま川に投げ捨てればいいのに、なぜわざわざ見つかるような場所に捨てたのかなど疑念が次々と浮かんできます。

その違和感を最上に対して率直にぶつけると「そういうことを疑いだしたら物証なんて何ひとつ意味をなさなくなる。物証中の物証が出てきたのに立件を見送るなんて検事としての役目を放棄するようなものだ。検事でいる意味がない」というような意味合いの言葉を投げつけられ、その言葉が引き金になったかのように沖野は検事を辞めてしまいます。

そして松倉の国選弁護人である小田島の事務所へ赴き、自分が事件の担当検事の一人であったことを申告し、真相を突き止めて松倉の無罪を証明したいと言ったのです。

検事最上と弁護側に回った沖野、双方が水面下でそれぞれの正義を貫くために奔走するなかで、弓岡の容疑があっけなく認められることが起こります。

それにより松倉は無罪、小田島を含む弁護団では釈放を祝うパーティーが開催されます。

沖野は橘と、検事だったころに取り調べで罵声を浴びせてしまったことを謝りに行きましたが、松倉と顔を合わせると逆上されてしまいます。

ヒートアップした松倉は勢いまかせに橘を突き飛ばし、パーティー会場にいた人々からの視線に気まずくなってそのまま外へ飛び出しました。

夜の街の一角、賑わう人たち、流れる音楽に先ほどまでの浮かれ気分を取り戻す松倉。追いかける沖野。そこへ突っ込む一台の車。白い車は松倉をめがけて一直線、そのまま轢き殺して停車。

運転席から出てきた高齢者ドラーバー風の男性は「ブレーキとアクセル間違えたかなぁ」みたいな、とぼけたことをぽつりと漏らしました。

一瞬の出来事に呆気にとられる沖野の横をすれ違っていく女性、それは諏訪部が手配した運び屋の女でした。

数日後、最上は沖野を祖父の別荘に招き、そして自殺した丹野が遺したメッセージを見せます。政治と企業が結託して日本を戦争国家にしようとしている、そんな内容でした。

ともにその裏を暴き戦おうというようなことを沖野に伝えますが、沖野は断り別荘を去ります。

外に向かい階段をおりる沖野、ベランダから外を望もうと階段をのぼる最上。この二人がこのさき交わることはないというのを暗喩しているような場面でした。

有名アイドルの共演で話題性を狙っただけじゃない!

特にアイドルに興味のない人たちからしてみれば、今作が初共演となった二人に対しても「事務所の力での共演でしょ?はいはい」くらいのものだと思います。が、それだけで興味をもたずに観ないままにしてしまうのはもったいない!

キムタクって何の役でも“キムタク”だよね~なんて言葉は木村拓哉のファンというわけでもない私ですら、これまでに何度か見たり聞いたりしています。事実そうかもしれない。

ただ、今作の最上毅という役は、私が思うに木村拓哉がこれまで求められてきた役とは違っていて。

悪い言い方をしたらきっと誰がやってもそこそこ演じられる役柄だと思うんです。

キラキラしたカリスマでもなければチャラいイケメンでもなくて、めちゃくちゃ仕事のデキるエリート検事ではあるけれど私生活では妻とセンテンスの会話もなく、妻の連れ子とも“血のつながらない父と連れ子”以上の関係にならない、何だか寂しい、虚しい男。

過去の事件に囚われ続けて復讐の鬼になってしまう、そんな役を木村拓哉が演じたことに意味があったなと思いました。

対峙する若手検事、沖野啓一郎を演じた二宮和也は今作で第43回報知映画賞の助演男優賞と、第42回日本アカデミー賞の助演男優賞を受賞しています。

心酔するほど尊敬している先輩検事が罪を犯したことに気づいてしまい、司法のルールブック上は“罪”でしかないその事実の証拠を掴むべく奔走するなかで、どんどん消耗していく沖野のやつれ具合や、くたびれた雰囲気がやけにリアルです。

また沖野の立会事務官である橘沙穂と、弓岡の居場所を突き止めラブホテルに潜入した場面では部屋の中のアダルトグッズに驚いていたり、退出の際に料金を払うことを知らなくてあたふたしたりするといった些細なシーンでも「この人もしや童貞なのでは?」と思うくらい自然な演技です。

私は割とそういう細かいところにグッときてしまう方なので挙げる場面が独特すぎるかもしれませんが、公開時のテレビコマーシャルでもよく流れていた松倉の取り調べのシーンの怒号も圧巻です。

私は二宮和也の怒鳴る演技がとても好きなので、取り調べの場面で沖野が松倉の肩越しに写真を一枚一枚くしゃくしゃにしていくあたりからヨダレが止まらない勢いでたまらなかったです。

わきを固める出演者たちのドンピシャ感

本作を語るにあたって外せないのは、松倉重生を演じた酒向芳です。

ほかの役者さんだったらここまで生理的嫌悪感を抱かなかったと思うほどの名演、怪演?です。

画面から漂ってくる不潔さ、おどおどしていたかと思えば開き直ったように過去の事件を語りだすときの気味の悪さ、沖野検事の怒号にママー!と泣き叫ぶ気持ち悪さ。満点。

ちなみに沖野を煽るように口をパッ!と鳴らす音は酒向芳本人が出した音だそうです。

ついでに言うと沖野のパッ!も、酒向芳の音だそうです。二宮和也はうまく音が出せなかったとか。

松倉とともに容疑者として候補に挙がった弓岡嗣郎を演じた大倉孝二もまたドンピシャ。

あの身近にいたら絶対知り合いになりたくない感じ、自らの犯行を自慢げに話したりキレやすかったり図々しかったり…わかりやすいほどにクズ。観ていてウワァこいつ嫌いだわぁと素で思っちゃうくらいの演技でした。

最上に殺害される場面での弓岡が、やたらリアルで鮮明に脳裏に焼き付いています。

人を撃ったことも撃たれたこともないけど、こうなるよねっていう。死に直面する恐怖を感じて鳥肌が立ちました。

闇のブローカー、諏訪部利成を演じた松重豊は言わずもがなの名バイプレーヤーですね。

いかにも闇の世界の人、アッこわい人だっていう雰囲気。

沖野をからかうように弄ぶ場面や、最上には従順なところ、立ち振る舞いから何から凄いなぁと感じました。

好きなセリフは拳銃の調達を依頼した最上の手を触ってサイズを確認したあと、どこかへかけた電話での「突然だけど、今夜会えるロシア娘かイタリア娘いる?」です。

諏訪部の手配する運び屋の女を演じた芦名星は、出てくるシーンは少しなんですが存在感があって好きです。

昔から割と影のある役やミステリアスな役どころを演じることが多いようなイメージで、こと今作においてはその最たるものではないでしょうか。

出てくる人がみんなこうして魅力を書いていきたいところだけどあと一人だけ。

沖野の立会事務官役の吉高由里子。ヒロインの立ち位置になるんでしょうか。

この記事の次の項目でも書くように、原作と映画で橘沙穂のキャラクターが結構違っています。

映画版の橘沙穂は吉高由里子以外に適役はいないな、という印象です。

芯が通っていて強気で、狡知に長けているというか、あざといというか…本筋にはあまり関係のないところ、沖野と橘の関係での話にはなってくるけれど橘にも橘の正義があるんだろうなというのが伝わってきました。

でも友達にはなりたくない。

原作と異なる点

原作の作者は雫井脩介。

これまでに映画化された作品は『クローズド・ノート』『犯人に告ぐ』、そして今作『検察側の罪人』です。

監督・脚本をつとめたのは原田眞人。

これまで監督・脚本に携わった作品は多く『駆け込み女と駆け出し男』『日本のいちばん長い日』『関ヶ原』などがあります。

小説は上下巻あり、このボリュームをおよそ二時間の映画にするにはいろいろ端折らないとまとまらないだろうなぁとは思っていました。

何せ登場人物が多い。本筋の事件と、最上の同期である丹野議員の件、最上と諏訪部の関係性などそれぞれのエピソードもボリュームがあるので改変はやむなしだろうなぁ、と。

このネタバレあらすじを書くにあたっても、様々なことが同時進行なので割愛したところがいくつかあります。

なので、全貌は映画を観ていただきたいところです。

個人的に小説等が原作の映画は、監督や脚本家の二次創作だと思って観るので「おもしろければオッケー☆」って感じなのですが、今作は腑に落ちない改変が少しありました。

インパール作戦や白骨街道の強調だったり、橘沙穂のキャラクターだったり、結末だったり。

結末について言えば、原作では最上の罪は沖野によって暴かれ、最上が逮捕されて松倉は無罪。

映画では突然弓岡の共犯者?の証言で松倉は無罪になるけど諏訪部に始末され、最上は逮捕されず裁かれもしない。

これによってラストシーンで沖野が雄叫びをあげるところがあるのですが、そこの意味合いが全然違うんですよね。

おそらく原作の作者と、原作を読み取って映画化した人の主張したい物事の違いからこういうストーリー展開・結末になったのかなとは思いますが、個人的には原作通りのオチで観たかったです。個人的には。

『検察側の罪人』まとめ

以上、ここまで『検察側の罪人』について感想を述べさせていただきました。

要点まとめ
  • 対峙するふたつの“正義”
  • 木村拓哉と二宮和也の共演は必見!
  • あなたは最上と沖野どちらの視点で観ますか?

▼動画の無料視聴はこちら▼