売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていく映画『蒲田前奏曲』。
本作は、4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品です。
9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森ほかにて公開されることを記念し、舞台挨拶付き特別先行上映が開催され、出演の瀧内公美(『火口のふたり』)、福田麻由子(本作で、『女王の教室』で共演した伊藤沙莉と再共演)、和田光沙(『岬の兄妹』)、川添野愛(『パパはわるものチャンピオン』)及び、本作プロデュース、出演の松林うらら(『飢えたライオン』)が登壇し、本作に懸けた想いや撮影の裏話などを語りました。
目次
『蒲田前奏曲』特別先行上映舞台挨拶レポート
- 日時:9月15日(火)
- 登壇者:瀧内公美、福田麻由子、和田光沙、川添野愛、松林うらら
- 場所:ヒューマントラストシネマ渋谷
冒頭の挨拶で、瀧内は「新型コロナウィルスの影響で、なかなか舞台挨拶に立たせていただくのが難しくて、他の作品でお客様にご挨拶ができず、悔しい思いがありましたので、本日は本当に嬉しく、ありがたく思っています」、福田は「公開日は25日でまだ先ですが、こうやって今日初めて映画館で作品を観ていただくのは幸せなことだなと改めて感じています」、和田は「映画館に足を運んでくださったこと、感謝します」、川添は「こうして皆さんとこの空間で共有できることを幸せに思います」と、コロナ禍の中で改めて感じた感謝を吐露。
最初の話題は、女優・黒川瑞季を演じた瀧内と同じく女優のマチ子役の松林が出演した、#MeToo、セクハラがテーマの第3番の『行き止まりの人々』。
本作は、松林が実際に体験した経験を基に、(『Dressing Up』で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の)安川有果監督が脚本を書いた作品。
松林は、「冒頭の私が演じるマチ子と近藤芳正さん演じるプロデューサーの喫茶店のシーンは、事実に基づいたシーンなので、ぜひ皆さんにも、その立場になったらどうかということを考えていただきたいです。」と話しました。
瀧内演じる黒川は、過去に嫌な目に遭った経験があり、その当事者である監督の開催する#MeTooに関しての映画のオーディションに参加するという設定。
瀧内は、「私自身は#MeTooやセクハラに関して普段から考えている人間ではないので、こういった題材についての映画をやらせていただくことが正しいのかを悩んだんですけれど、うららさんの想いを聞いて、作品と安川監督を信じて、自分のやれることはやろうと思って、うららさんの気持ちを大事に演じたつもりです。」と胸を張りました。
監督役を演じた大西信満とのオーディションシーンの撮影は、「劇中では対立する役柄だったんですけれど、現場では心強い存在で、常にシーンが上手くまとまるように仕向けていただいたように思います。」と感謝を述べました。
続いて、女子会がテーマの第2番の(長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSICLABグランプリ受賞、東京国際映画祭上映の)穐山茉由監督の『呑川ラプソディ』についての話に。
マチ子は売れない女優ですが、他の職業の子の方が目立っているという、松林が実生活の女子会で感じていることも描いた作品で、そのうちそれぞれの違った顔が見えてくるという作品。
婚約を発表する麻里役を演じた福田麻由子は、「私が演じた麻里は劇中で、『結婚することになった』と言うんですけれど、結婚が女性にとっての、自分にとっての幸せだという価値観を持っている女性です。この作品は社会の求める女らしさに疑問を投げかけるような作品だと思うんですけれど、その中では異質な存在だと思っています。ただ、この作品の素敵なところは、そういう麻里のような価値観を決して否定しないというか、『女なんだから強く生きていこうよ』というメッセージがあるわけでもなく、『それぞれの生き方があって、それぞれの選択があって』というフラットな作品なので、それが新しいと思いました。」と本作の魅力を分析。
福田と共演の伊藤沙莉は、松林も小学校の時に見ていたという2005年のドラマ『女王の教室』でも共演。
福田は、「『女王の教室』の3年後に『霧の火』というスペシャルドラマで姉妹の役を演じました。沙莉が妹でした。共演はそれ以来で、たまに会ったりはしていたんですけれど、小学校の同級生に久しぶりに会ったような感じで、何も変わらずそこにいてくれて嬉しかったです。」と嬉しそうに話しました。
女子会で唯一の既婚者・静役を演じた和田光沙は、「私、共演者の皆さんよりもだいぶ年齢が年上で、1回『大丈夫ですか、同級生役?』と聞いたんです。」と暴露。
「20代後半って、女の子って、『今の状況でいいんだろうか』って立ち止まって、『これからの自分の幸せってなんだろう』って考える時期があると思うんですけれど、そういう中で、結婚というものを一早く選択した静という役があって、またそれぞれ違う、キャリアを積んだ人だったり、結婚に憧れているという役があります。『呑川ラプソディ』では帆奈とまりっぺの対立が主軸になって話が進んでいくんですけれど、そこが浮き立つような役割ができるといいなと思いました。結婚という選択をした側の人間が持つ葛藤も表現することで、独身の人たちそれぞれが目立つようになるといいなと思いました。」と工夫を話しました。
現場の様子を聞かれた和田は、「完成した作品は女子同士のバチバチ感が出ていてびっくりしたんですけれど、現場はすごく和気藹々としていて、ずっと笑いながら撮影をしていました。」と振り返りました。
女子会でキャリアウーマン・琴子役を演じた川添野愛は、「全員個の強いパワーを持っている女子たちのグループなんですけれど、私の役は衣装は派手なものを着ているんですけれど、人間関係だと自分を押し出すというよりもバランサー役だったなと思っていて、こっこを演じるにあたって、ずっと俯瞰した目がありました皆それぞれ主張が強いので、間を取り持つ役割だなと思って現場にいました。」と話しました。
注目してほしい部分を聞かれ、川添は、「リアルにあることだと思うんですけれど、久しぶりに再会した女の子たちがまず近況トークでお互いどういう状況の中で生きているのか探り合いから始まり、どんどん皮がはがれていって、どんどん皆の本音が出てきます。表情だけでもわかるし、クスッと笑える面白いポイントかなと思うので、それぞれの人間っぽさを感じて欲しいです。」とアピール。
最後に松林は、「第1番『蒲田哀歌』は、(最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など国内外の注目を集める)中川龍太郎監督に、私の弟に彼女ができた時の嫉妬の話を基に、75年前の蒲田の空襲も絡めて描いていただきました。第4番『シーカランスどこへ行く』では、(最新作『叫び』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝き、第22回ウディネ・ファーイースト映画祭では大田原愚豚舎作品、渡辺紘文監督特集が組まれるなど独特のスタイルが評価を得ている)渡辺紘文監督に、東京中心主義を批判していただいています。みなさんは本作を東京で一番最初に見る一般のお客さんなので、ぜひSNSなどで本作について広めて頂ければと思います」と挨拶し、舞台挨拶は終了しました。
『蒲田前奏曲』概要
『蒲田前奏曲』は売れない女優マチ子の眼差しを通して、“女”であること、“女優”であることで、女性が人格をうまく使い分けることが求められる社会への皮肉を、周囲の人々との交わりを介在しながら描いていきます。
これを4人の監督が各自の手法でコミカルに描き、1つの連作長編として仕上げていった新しいタイプの作品。
監督には日本映画界の若手実力派監督が集結。
最新作『静かな雨』が釜山国際映画祭上映、東京フィルメックス観客賞受賞など、国内外の注目を集める中川龍太郎、長編デビュー作『月極オトコトモダチ』がMOOSIC LAB グランプリ受賞、東京国際映画祭上映の穐山茉由、『Dressing Up』(第8回CO2助成作品、OAFF2012)で日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞受賞の安川有果、最新作『叫び』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞に輝き、第22回ウディネ・ファーイースト映画祭では大田原愚豚舎作品、渡辺紘文監督特集が組まれるなどの渡辺紘文(大田原愚豚舎)が務めます。
『飢えたライオン』で主演を務め、舞台、TVドラマなどでも活躍する松林うららが自身の地元である蒲田を舞台にプロデュースし、自らも出演。
また、伊藤沙莉(『タイトル、拒絶』)、瀧内公美(『火口のふたり』)など、旬の俳優が名を連ねます。
9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、キネカ大森にて公開されるほか、10月16日(金)よりテアトル梅田(大阪)、京都みなみ会館(京都)、10月17日(土)より元町映画館(神戸)、シネマスコーレ(名古屋)で公開することが決定。
前売り券が1,500円で発売されています。
宣伝費支援の為のクラウドファンディングは、更なる公開館拡大を目指し、9月23日まで継続中。
クラウドファンディングページ:https://motion-gallery.net/projects/kamatapreludefilm/
『蒲田前奏曲』作品情報
出演:伊藤沙莉、瀧内公美、福田麻由子、古川琴音、松林うらら、近藤芳正、須藤蓮、大西信満、和田光沙、吉村界人、川添野愛、山本剛史、二ノ宮隆太郎、葉月あさひ、久次璃子、渡辺紘文
監督・脚本:中川龍太郎、穐山茉由、安川有果、渡辺紘文
企画:うらら企画
製作:「蒲田前奏曲」フィルムパートナーズ(和エンタテインメント、ENBUゼミナール、MOTION GALLRY STUDIO、TBSグロウディア)
特別協賛:ブロードマインド株式会社、日本工学院
配給:和エンタテインメント、MOTION GALLRY STUDIO
2020年 / 日本 / 日本語 / 117分 / カラー&モノクロ / Stereo
『蒲田前奏曲』あらすじ
第1番『蒲田哀歌』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:古川琴音、須藤蓮、松林うらら
オーディションと食堂でのアルバイトの往復で疲れ果てている売れない女優、マチ子。
ある日、彼氏と間違われるほど仲の良い弟から彼女を紹介されショックを受ける。
だが、その彼女の存在が、女として、姉として、女優としての在り方を振り返るきっかけとなる。
第2番『呑川ラプソディ』
監督・脚本:穐山茉由
出演:伊藤沙莉、福田麻由子、川添野愛、和田光沙、松林うらら、葉月あさひ、山本剛史
アルバイトをしながら女優をしているマチ子。
大学時代の友人5人と久々に女子会をするが、独身チームと既婚チームに分かれ、気まずい雰囲気に。
そこでマチ子は蒲田温泉へ行くことを提案する。
5人は仕事、男性のことなどを話し合い、次第に隠していたものが丸裸になっていく。
第3番『行き止まりの人々』
監督・脚本:安川有果
出演:瀧内公美、大西信満、松林うらら、吉村界人、二ノ宮隆太郎、近藤芳正
映画のオーディションを受けたマチ子。
セクハラや#metooの実体験やエピソードがあれば話すという内容だったが、皆、思い出すことに抵抗があり、上手く演じられない。
そんな中、マチ子の隣にいた黒川だけは迫真の演技を見せる。
マチ子は共に最終選考に残ったが…。
第4番『シーカランスどこへ行く』
監督・脚本:渡辺紘文(大田原愚豚舎)
出演:久次璃子、渡辺紘文
マチ子の実家は大田原にある。
大田原に住む親戚の小学5年生のリコは、大田原で映画の撮影現場にいる。
そこへとある映画監督が撮影現場の待機場所にやってきて…。
渡辺紘文監督ならではの視点で東京中心主義、映画業界、日本の社会問題についての皮肉を、お決まりの作風で描く。
『蒲田前奏曲』は2020年9月25日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷・キネカ大森、10月16日(金)よりテアトル梅田での公開!他全国順次公開予定!
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