2010年に公開された『ヒックとドラゴン』は、同じ年に『トイ・ストーリー3』が公開されたため、アカデミー賞の長編アニメ映画賞は惜しくも逃しましたが、世界中で熱烈なファンを生んだ作品でした。
2015年には続編『ヒックとドラゴン2』が製作されたものの、何と日本では劇場未公開。
前作の興行収入が日本では振るわなかったからです。
完結編である今作『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、ファンの署名活動の成果もあったのか、再び全国劇場公開されることが決定。
ヒックという少年の成長と、無二の相棒となったドラゴンのトゥースや家族との絆、仲間たちとの友情、ドラゴンという違う種族との共生、集団のリーダーであることの責任など、様々なテーマをシリーズを通して丁寧に描いてきた『ヒックとドラゴン』。
そんなシリーズの集大成として、これ以上ない最高の完結編が『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』です。
- 革新的な技術「ムーンレイ」を使ったCG映像が、ため息が出るほど美しいです。
- シリーズの締めの作品として、これ以上は考えられない結末が待っています。
- 子供たちはもちろんのこと、大人も楽しめるアニメーション映画のまさに傑作シリーズです。
それでは完結編『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』をネタバレありでレビューしていきます!
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目次
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』作品情報
作品名 | ヒックとドラゴン 聖地への冒険 |
公開日 | 2019年12月20日 |
上映時間 | 104分 |
監督 | ディーン・デュボア |
脚本 | ディーン・デュボア |
原作 | クレシッダ・コーウェル |
出演者 | ジェイ・バルチェル アメリカ・フェレーラ ケイト・ブランシェット ジェラルド・バトラー F・マーリー・エイブラハム クレイグ・ファーガソン |
音楽 | ジョン・パウエル |
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』あらすじ
前作『ヒックとドラゴン2』から1年。
バイキングの長となったヒックは、人間に捕えられているドラゴンたちを仲間と協力して助け出し、バーク島へ連れ帰っていました。
しかしそのことでバーク島ではドラゴンたちが溢れかえり、まさに定員オーバーという状態に陥ってしまいます。
この先どうすればいいのか考えるヒックは、亡き父・ストイックが子供の頃話してくれた、ドラゴンの聖地の話を思い出します。
この世界の果てにあるという、ドラゴンの楽園のことです。
その頃、最強のドラゴンハンターであるグリメルは、ヒックの相棒のドラゴンで希少種のナイトフューリーであるトゥースを殺すため、捕らえていた白いナイト・フューリーのメスを囮にしようと考えていました。
やがてトゥースは森で出会った、白いナイト・フューリーことライト・フューリーに恋をしますが、ヒックの存在を知った彼女は飛び去ってしまいます。
グリメルが島へやって来るに至って、ヒックはバーク島がもはや安全ではないと悟り、バーク島の住民とドラゴン全員で幻の地ドラゴンの楽園を目指す旅に出発します。
旅の途中ヒックたちが一時だけと腰を落ち着けた島で、トゥースは再会したライト・フューリーと少しずつ距離を縮めていきます。
ライト・フューリーとトゥースの後を追い、人間が住むことのできないドラゴンの「隠された王国」に辿りつくヒックと恋人のアスティ。
そこでトゥースこそがドラゴンたちの王であることを、ヒックは悟るのでした。
ヒックとトゥース、固い絆で結ばれた二人の運命は?
迫りくる追手から、ヒックたちはドラゴンを守れるのか。
ドラゴンと戦っていたバイキングが共生の道を選んだ先に辿り着いた、物語の結末とは。
人間とドラゴンは、共にいることが本当の幸せなのか。
ついに完結する『ヒックとドラゴン』シリーズの最新作!
【ネタバレ】『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』感想
『ヒックとドラゴン』シリーズについてのおさらい
『ヒックとドラゴン』の原作は、世界の約30ヶ国で翻訳されている大人気の児童文学です。
バイキングの言葉で書かれたヒックの自伝を現代の言葉で訳したという設定の物語で、2003年に第1作が出版され、2015年に全12作で完結しています。
著者はイギリス出身のクレシッダ・コーウェル女史。
大学でグラフィック・デザインやイラストレーションを学んだ彼女は、『ヒックとドラゴン』シリーズのイラストも自ら手掛けています。
実は原作というより、世界ではヒックとトゥースの名前は違っているんです。
ヒックは本当ならhiccup。ヒッカップ、しゃっくりの意味です。
日本ではしゃっくりの擬音がヒックでもあるので、おそらく発音しやすくて覚えやすい名前に変えたのでしょう。
トゥースはトゥースレスが正しい名前。
歯なし、だからトゥース「レス」なんです。
日本では語呂が良かったからトゥースになったのかなと思いますが、意味が実は真逆なんですね。
くりす
『ヒックとドラゴン』の物語は、長きにわたってドラゴンと戦ってきたバイキングの一族が暮らすバーク島が舞台となっています。
ヒックは最強のバイキングであり族長でもある、ストイックの一人息子。
しかし何とも貧弱で戦いに向かない体格と、皮肉屋で変わり者扱いされる性格のため、ドラゴンの襲撃を受ける度に邪魔者扱いされていました。
何とかみんなに認められたいヒックは、ある日自ら作った武器を使い、もっとも危険とされるドラゴン種ナイト・フューリーを捕えることに成功します。
ドラゴンを殺せば、みんなに、父親に認めてもらえる。
そう思っても、どうしても自らが傷付けたドラゴンにとどめを刺すことができないヒック。
やがてヒックはナイト・フューリーに「トゥース」と名付け、尾翼に負わせた傷のため飛べなくなった彼を再び飛べるようにするための訓練を始めます。
少しずつ近付いていく一人と一匹の距離。
ヒックはトゥースと過ごすうちにドラゴンの習性に詳しくなり、仲間たちとのドラゴン訓練に応用することで次第に周囲から認められるようになっていきます。
トゥースと触れ合ううちに、ドラゴンは敵だと言うバイキングの意識を変えていけたらと考えるようになるヒック。
そしてドラゴンが島を襲う本当の理由も知ることになります。
やがて起こるべき事態が発生し、ヒックとトゥースも否応なしに戦いに身を置くことになるのですが、一人と一匹の勇気と犠牲の上で迎えた結末はほろ苦さも含みつつのハッピーエンド。
バーク島で暮らすバイキングは、敵であったドラゴンと共生する道を選び、ヒックもトゥースと共にいられるようになります。
親の期待に応えられず押し潰されそうになっていた心優しい少年ヒックは共感しやすいキャラクターで、だからこそクライマックスでのヒックの姿には胸が熱くなったものでした。
エンディングではヒックは左足を失くしたものの、父親とわかり合い、相棒とずっと一緒にいられるようになり、アスティという彼女もできます。
『ヒックとドラゴン』の1作目はまさに完璧な脚本で、子供たちだけでなく大人にも大切なことがてんこ盛りな素晴らしい物語に仕上がっています。
くりす
そんなヒックとトゥースの5年後を描いたのが、シリーズ2作目である『ヒックとドラゴン2』です。
バーク島ではドラゴンと人間が平和な生活を送っていました。
そんな時、死んだと思っていた母親ヴァルカと再会するヒック。
ヴァルカはヒックが赤ん坊の頃、ドラゴンと人間はわかりあえると考えていて、そのことが原因で夫であるストイックと決別することになったのでした。
ヴァルカはずっと、ドラゴンたちと一緒に生活していたのです。
ヒックはバーク島も父も変わったとヴァルカに伝えます。
両親はついに再会を果たし、家族はもう一度一緒にいられるようにります。
しかしそれも束の間のことで、世界を支配しようと企む男と彼に操られている巨大な竜の魔の手が迫ってきていて―。
ヒックの母親との再会や、明確な敵が現れること。
トゥースが操られてしまいヒックを襲おうとするなど、目が離せない展開が続くシリーズ第2作目はヒックにとってあまりにも辛い別れも描かれています。
1作目と同じで、やはり完璧なハッピーエンドではないラスト。
そして3作目の完結編に向けての作品でもある、そんな物語でした。
くりす
テレビシリーズは6シーズンあるので、たっぷり『ヒックとドラゴン』の世界を堪能できますよ。
ドリームワークスの新技術「ムーンレイ」で作られた、美しすぎる映像はため息もの
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は脚本も世界観もそして音楽も素晴らしいのですが、進化したCG技術で作られた映像がとにかく凄いのです!
ドリームワークス・アニメーションが開発した新しいCG技術ツール「ムーンレイ」は、現実でどのように光が反射するかをアニメでも緻密かつ迅速に計算可能にしたシステムとのこと。
この革新的なツールの開発によって、炎や光の複雑で繊細な表現がより楽しめるようになりました。
ドラゴンの瞳の美しさ、炎のゆらぎ、雲の陰影など本当に素晴らしいです。
また、1作目ではワンショットにドラゴン8匹しか配置できなかったのに、今作では65,000匹のドラゴンが飛び交うシーンが実現。
作業効率も、格段と上がったそうです。
監督のディーン・デュボアも絶賛の技術で描かれるドラゴンの聖地の映像は、近年のアニメーション映画でも最高峰の出来。
くりす
大画面で観ると、もう本当にうっとりします。
もちろん前作から引き続き、ドラゴンの飛翔シーンは圧巻の一言。
鑑賞しているだけで、たまらない爽快感を味わえます。
頬に風を感じるほどの臨場感。
このドラゴンで飛ぶシーンだけでも『ヒックとドラゴン』シリーズを観る価値は充分にありますよ。
くりす
シリーズの着地点として完璧な、手放しのハッピーエンドではないけれどこれ以上ない結末。
『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』は、敵対関係にあった人間とドラゴンが共に生活するようになって6年後の物語です。
ヒックは立派な青年に成長し、偉大な父親とはまた違うリーダーシップで、島民をまとめあげるまでになっています。
しかしヒックは長として、いくつもの難問を抱えることになります。
増えすぎたドラゴン、そのドラゴンを狙うハンターたち、安全ではなくなった先祖代々暮らしてきたバーク島。
島ごとでの引っ越しを決意するものの、ヒックは最終的にドラゴンたちとの別れを決断します。
ヒックはこの世界はまだ「人間とドラゴンが共存出来る世界」ではないと認め、ドラゴンたちの安全、もちろん長として一族を守ることも考え、お互いが在るべき場所で生きることを決断するのです。
今いる場所からの旅立ち。
仲間や家族からの自立。
くりす
ヒックが考えたのは自分の幸せや願いではなく、かけがえのない相棒トゥースの、ドラゴンたちのこと。
ドラゴンが無事でいられること。
そして、いつの間にか自分は相棒の力に頼って依存していたかもと気付き、互いのために別れる決断をするのです。
別離は寂しく悲しいものでありながら、ヒックの決断はやはり正しいもので、仲間たちもみな家族のように過ごしてきたドラゴンたちとの別れを静かに受け入れます。
愛しているからこそその手を放すのです。
3部作の見本ともいえる、シリーズ完結編に相応しいラストです。
悲しいけれど、それだけではない優しい別離。
くりす
シリーズ通してディーン・デュボアが監督と脚本を手がけただけあり、続編にありがちな「物語のブレ」はありません。
一貫してヒックが成長していく姿がしっかり描かれていることで、別れは悲しいもののヒックの決断をファンも受け入れられるのです。
1作目、トゥースの尾翼を傷付けたヒックはラストで左足を失いました。
2作目では、操られた相棒から自分を庇った父親が命を落とすという悲劇にも見舞われます。
そうして辛い経験を乗り越え、一歩ずつ成長してきたヒックに訪れる愛するトゥースとの別れは涙なくしては観られません。
くりす
また素晴らしいのは、人間とドラゴンが別れた後も描かれていることです。
ヒックとアスティは結婚し、やがて子供たちが生まれます。
そしてその子供たちを連れドラゴンの聖地の近くへと船を出すのです。
ドラゴンがすべて消えたことで存在自体が伝説の生き物と言われるようになってきた世界で、ヒックはかつての相棒に再会します。
おそるおそる子供たちが伸ばした手のひらに、トゥースの鼻先が触れた瞬間、何とも言えない多幸感に包まれます。
そして、ヒックとトゥースの1作目の運命の出会い、3作目での別れのシーンを思い出してしまい、これが泣かずにいられようかという。
ヒックとトゥース、互いの家族が一緒に空を飛ぶシーンで物語は終わります。
くりす
さほど遠くない未来、ドラゴンと人間が共生できる世界がやって来るのではと思わせてくれる、世界のどこかにドラゴンがいるかもと思わせてくれる、そんな素敵な結末でした。
素晴らしいシリーズを作り上げてくれた製作陣と原作者に多大な感謝の気持ちを捧げたくなる、そんな『ヒックとドラゴン』完結編です。
ヒックとトゥースとはこれでお別れ、と思いきや。
実は映画のその後を描いた『ホームカミング』というタイトルのショートムービーが、公開されているのです。
その後というより、ラストシーンで再会する前のお話。舞台は新しいバーク島。
「スノーグルトグ」という、冬の祝祭日のお話です。
以前はドラゴンたちとお祝いしていた祭日ですが、新しい世代のバイキングにはドラゴンとの絆を知らなかったり忘れてしまっている者もいて、といった内容。
新しい世代のバイキングとはヒックの子供たちのことですね。
そんな中、トゥースの子供たちがこっそりニュー・バーク島にやって来てしまったり、気付いたトゥースが奥さんと子供の後を追ってきたりとファン必見のショートムービーです。
この『ホームカミング』とは別に、祭日のディナーを準備中のヒックとアスティの家の居間の様子を描いた短編も公開中。
ヒックの仲間たちやトゥースの家族も勢ぞろいで、可愛い&笑いしかない素敵な映像です。
くりす
ちなみに短編でもですが、本編でもヒックの仲間たちは、相変わらず最高でした。
特に双子のラフのシーンでは、笑いを堪えるのが大変。
本編予告から別れの予感がひしひしとしている中、明るい気持ちにさせてくれる貴重な存在でした。
くりす
なので、たまにでいいので『ホームカミング』のようなショートムービーを製作して、そこでヒックの仲間たちのそれからも描いてもらえるファンとしては嬉しい限りです。
『ヒックとドラゴン』という素敵な作品に出会えて本当に良かった!
『ヒックとドラゴン』まとめ
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ドリームワークスが開発した
CG技術<ムーンレイ>によって、
より驚異的な映像表現が可能になりました。『#ヒックとドラゴン 聖地への冒険』では一つのショットに、最高65,000以上ものドラゴンがいるシーンも❗️
壮大なスケールを映画館で体感して下さい pic.twitter.com/QDunNo8oKj— DWA公式@ヒックとドラゴン最新作公開中 (@Dreamworks_JP) December 21, 2019
以上、ここまで『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- ヒックとアスティ、トゥースとライト・フューリー、二組の恋模様も可愛い限り。
- トゥースの可愛さは3作通して最高でした。猫好きは間違いなくやられます!(でもモデルはヒョウ…)
- 鑑賞後、きっと自分だけのドラゴンが欲しくなるはず!
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