ファンタジーアニメ・映画ドラマに出てくる魔法、呪術などのモチーフを解説!どんな背景や意味があるのか?【西洋編】

ファンタジーアニメ、映画に出てくる魔法、呪術などのモチーフを解説!どんな背景や意味があるのか?

出典:U-NEXT

魔術、魔法、呪術などファンタジーに登場するモチーフ(西洋編)ということで、この分野は一冊どころか数冊の本が書けてしまうほど広範にわたる範囲をカバーしています。

とはいえ、これは映像メディアに関連する記事であり、オカルティズムの歴史に関する記事ではありません。

ですので、できるだけ高頻度で映画、テレビドラマ、アニメに登場するオカルトな事物に絞って解説していきます。

ファンタジーアニメ、映画、ドラマに出てくる魔法、呪術などのモチーフを解説【西洋編】

魔術、魔法、呪術って何?

魔法、魔術、呪術、妖術…などなど、超自然的な力を指す単語は複数あります。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

さて、これらの違いって何でしょうか?

ぶっちゃけ、超大雑把に言うと全部一緒です。

が、一応、多少違うものとして分類されることがあります。

まず、「魔術」と「魔法」はどちらも英語の”magic”の訳語です。

魔法

出典:Wikipedia

「奇術」も「手品」も英語では”magic”ですがそれは置いておき、近代日本誕生に際してそれまで存在していた「魔法」「妖術」「妖術」「呪術」などの訳語を”magic”に充てたことで、この表現が定着しました。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

ちなみに”magic”はゾロアスター教の祭司である「マギ」に由来します。

それゆえに「魔法」「魔術」は西洋史の文脈で用いられる場合が多いです。

とはいえ、創作者の想像力は無限大です。

作品によってはこれらを別物としてカテゴライズした設定を採用しているものもあります。

その例が『Fate』シリーズと『魔法使いの嫁』です。

全く別ユニバースの作品なので、世界観は大きく異なりますが、両者ともに「魔法は魔術の上位互換である」であるという設定になっていますね。

『魔法使いの嫁』

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『Fate』シリーズの方がだいぶ前に世に出ていますので、『魔法使いの嫁』のヤマザキコレ氏は『Fate』シリーズから影響を受けたのだと思います。

もう一つの「呪術」ですが、これは宗教人類学の分野において「原始的な魔術、魔法」として分類される場合があります。

「魔法」または「魔術」と呼ばれているものは、ギリシャ、ローマの哲学、ルネッサンスの文化などの影響を受けて呪術が洗練されたものです。

「呪術」はもっと原始的で、異なる地域でも大枠が変わりません。

原始文明で、世界各地に多神教によるアニミズム信仰が生まれました。

例えばですが、最も古い文明であろうメソポタミア文明には、ティアマトによる創世神話があります。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

神によって世界が形作られたというよくあるアレですね。

このような創世神話は世界各地にあり、我が国におけるイザナミとイザナギ、ハワイの創世神話クムリポ、旧約聖書による天地創造など創世神話は大枠の部分が大体同じです。

イザナミ、イザナギ

出典:Wikipedia

人間の考えることなので似てくるのは当然ということですね。

同じように、呪術も地域の違いに関係なく似たものが見られます。

よくあるパターンが、人形を使った呪術です。

日本だと呪いに使う人形は藁人形のイメージですが、ヨーロッパでは蝋人形が用いられていました。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

素材の違いはあれど、相手に似せた人形に釘を打ち込む作法は同じで、結局、神話も呪術も人間が考えたものである以上、どうしても似てくるということですね。

呪術と言えば、映像化で話題沸騰中の『呪術廻戦』では、登場人物の一人である釘崎野薔薇が藁人形と五寸釘を用いる呪術を使っていましたね。

モチーフは原始呪術をもとに江戸時代に広まった丑の刻参りでしょう。

丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ち込む丑の刻参りは原始呪術の特徴を色濃く残したもので、わが国では最も有名な例ではないでしょうか。

藁人形

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なお、呪いで本当に相手が亡くなったとして殺人罪にはなりませんが、

  • 深夜の神社に忍び込む=不法侵入罪
  • ご神木に五寸釘を打ち付ける=器物損壊罪
  • 「呪ってやる」と脅す=脅迫罪

に該当します。

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人を呪う行為自体が推奨されない行為ですが、丑の刻参りを実行するだけで犯罪になってしまいますので絶対にやめましょう。なお、このように対象に似せたものを用いる魔術を類感魔術と呼びますが、社会科のテストには出ないので憶えなくていいです、

他、よくあるパターンとして

  • 髪の毛、爪、血液、唾液など、呪いたい相手の体の一部を燃やす、煮る
  • 呪いたい相手の名前を書いて釘を打ち付ける、呪いの言葉を書く

というのも地域関係なく見られるパターンです。

前者のように髪の毛など体の一部を使う魔術を感染魔術と言いますが、これも社会科のテストには出ませんので憶えなくていいです。

名前についてですが、中国を初めとする東アジアの思想にいみなまたは忌み名と呼ばれるものがあります。

古代では故人を生前の名前で呼ぶことを避ける習慣がありました。

日本の文化はお隣の中国から多大な影響を受けていますが、仏教で故人に戒名という生前と違う名前を付けるのはこの忌み名の思想が基になっています。

古代ギリシャでは、陶器の破片に呪いたい人物の名前と呪いの言葉を書いて地中に埋める呪術があったそうです。

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夏目友人帳』では友人帳に描かれた妖怪の名前が存在を縛っているという設定になっていましたが、文化圏に関係なく名前は重要なものと見做されていたわけですね。

さて、少々長くなりましたがまとめるとこうなります。

  • 魔術、魔法、呪術、妖術は基本全部一緒で呼び方が違うだけ
  • 呪術は原始的な魔術、魔法と言う意味合いで使われる場合がある

西洋魔術の大雑把な歴史

以上のように、原始の魔術はどの文化圏でも似たようなものでした。

これが、時代が進み文化が洗練されるにつれて、魔術も変化していきます。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

…と、ここまで書いたところで筆者のスタンスを明確にしておきたいのですが、筆者は捻くれ者の懐疑論者なので魔術の効果を本当に信じているわけではありません。

あくまでも文化的な興味で調べただけですので、(いないと思うけど)この記事に書かれているようなことはマネしないでくださいね。

一部科学的な意味で危険なものも含まれますので一応、警告しておきます。

時代が進むにつれて人類は文化を洗練させていきました。

その過程で多くの神話体系、哲学、宗教、科学思想などが誕生しました。

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それらについて詳しく綴っていくと、筆者自身が気絶しそうになるためざっと重要なものを列挙します
  • 占星術…古代メソポタミアで誕生。国家や国王の未来を占うのに用いられた。後、エジプト、ギリシャに伝わる
  • 古代エジプトの魔術…死後の再生を目指す魔術。死者はいずれ肉体に帰ると信じ、肉体の保存技術(ミイラ)が進化した
  • 古代ギリシャ・ローマ・エジプトの密儀宗教…エレウシス密儀、ディオニュソス密儀、オルペウス密儀、イシス=オシリス密儀、ミトラ密儀、キュベレ密儀など。部外者には秘密の密儀に参加し特別な宗教体験をするもの
  • 古代ギリシャ・ローマの神秘思想…新プラトン主義、新ピタゴラス主義、グノーシス主義、ヘルメス主義など。どちらかと言うと哲学の思想

こうして時代が進むと、これらの派閥の中から重要な魔術師が誕生してきます。

その代表格が、ティアナのアポロニウス(紀元前一世紀ごろ)とシモン・マグス(一世紀ごろ)です。

アポロニウスはピタゴラス学派の聖人でエフェソス(今のトルコ)からペストを追い払った、吸血鬼ラミアを退治したなどの逸話を持つ人物です。

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吸血鬼退治の伝承は掃いて捨てるほどありますが、こんな大昔からあったんですね。

シモン・マグスはグノーシス派の魔術師で、幻術を使い、病をいやし、死者を復活させた逸話を持つ人物です。

シモン・マグス

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これらの古代思想が西洋魔術の基礎になっていますが、それが西洋で本流になるにはルネサンス(14世紀から16世紀ごろ)を待たなければなりません。

キリスト教が4世紀にローマの国教と定められたのに際して、キリスト教がこれらの思想を弾圧したからです。

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キリスト教からすればこれらは異教のものですので、存在を認められなかったわけですね。

ただし、こういったキリスト教以前の思想や儀式には一部残ったものがあり、中には世界的によく知られているものもあります。

ハロウィンの起源はサウィン祭というケルト民俗土着宗教の祭りで、キリスト教は一切関係ありません。

ハロウィン

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カーニバルは、ゲルマン民族土着宗教の祭りがキリスト教に吸収されたものです。

クリスマスが祝われる12月25日はイエス・キリスト(紀元前6年ないし紀元前4年ごろ-紀元後30年)の誕生日ではなく、もともとはローマのミトラ教の祭日で、イエス・キリストの誕生日がいつなのかは聖書にも歴史書にも明確な記述がありません。

紀元前後のエジプトで西洋魔術の代表格である錬金術が誕生しましたが、当然弾圧の対象になり、本拠はエジプトのアレクサンドリアから東ローマ帝国のコンスタンティノープル(今のイスタンブール)に移っています。

『錬金術』

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ルネサンスによってギリシャ、ローマの文化が見直され、西洋魔術は大きく進歩を遂げることになります。

錬金術

以上、前項で西洋魔術の大雑把な歴史をまとめたので具体例に入ります。

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しつこいですが上記した「ナントカ主義」「ナントカ密儀」を説明すると、筆者自身が気絶しそうになってしまうため、このくらいで勘弁してください。

錬金術は鉄や銅などの卑金属を黄金に変える(欲望丸出しの)魔術で、12世紀以降のヨーロッパで大流行しました。

タイトルから言うまでもない『鋼の錬金術師』、アニメにもなった人気コミック『からくりサーカス』では錬金術が非常に重要な要素として登場しましたが、それ以外にも様々な作品に登場する西洋魔術の代表格です。

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ただし、『鋼の錬金術師』に登場する錬金術は、ほとんど作者の荒川弘氏によるオリジナル。
『鋼の錬金術師』

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間接的なところだとテレビとOVAの二つの媒体でアニメ化された『HELLSING』に出てくる”The bird of Hermes is my name,eating my wings to make me tame.“(私はヘルメスの鳥、自らの羽を喰らい飼い慣らされる)は15世紀イギリスの錬金術師、ジョージ・リプリーの巻物に出てくる言葉です。

ジョージ・リプリー

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錬金術は占星術、ギリシャ哲学、ギリシャの神秘思想に、エジプトの治金術、染色術などの工芸技術が合わさって誕生したものです。

思想の根幹を成しているのはヘルメス主義で、ギリシャの神人ヘルメス・トリスメギストスの著したエメラルド板は錬金術の聖書として崇拝されています。

錬金術師にはオカルトなアプローチをする場合もあれば、科学的アプローチをする者もいました。

意外かもしれませんが、天文学者のティコ・ブラーエ(1546-1601)や、科学史上の偉大な発見をしたアイザック・ニュートン(1643-1727)は科学者であると同時に錬金術師でもありました。

アイザック・ニュートン

出典:Wikipedia

錬金術はオカルトの技であると同時に重要な化学の発見も生み出しています。

Dr.STONE』でも言及されていましたが、硫酸を発見したのはイスラムの錬金術師ジャービル・ブン・ハイヤーン(8世紀後半から9世紀、ラテン名ゲーベル)とアル・ラーズィー(9世紀)です。

中世初期はイスラム世界で錬金術が最盛期を迎え、その過程で多くの発見がなされました。

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錬金術(alchemy)、蒸留酒(alcohol)、蒸留器(alembic)など錬金術に関わる用語にalがつくのはalがアラビア語の定冠詞だからです。

からくりサーカス』に登場した、万能の霊薬アクア・ウィタエ(aqua vitae、ラテン語で「命の水」の意味)は錬金術の集大成という設定になっていましたが、設定の基になったのは13世紀の医学書に登場する薬の名前です。

その正体は…というと蒸留してアルコール濃度を高めたワインです。

ワイン

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飲酒が体に悪いことは今では常識ですが、中世世界においてアルコールは万病に効果があると信じられていたため、濃度を高めれば効果が上がるという思想だったようです。

11世紀末に始まった中近東への十字軍遠征により、イスラム世界で発展した錬金術がヨーロッパに伝わります。

12世紀中ごろには流行し始め、13世紀にはロジャー・ベーコン(1214-1294)、アルベルトゥス・マグヌス(1193-1280)、トマス・アクィナス(1225-1274)といった大学者が活躍します。

ヨーロッパでも『からくりサーカス』の舞台になったプラハは、とりわけ錬金術に熱心だった土地です。

16世紀後半に神聖ローマ帝国に即位したルドルフ二世(1552-1612)は政治的には無能もいいところでしたが、文化人としての教養は深く、芸術や学問を保護しました。

ルドルフ二世

出典:Wikipedia

特に熱心だったのが錬金術で、前述したティコ・ブラーエもルドルフの庇護を受けた一人です。

彼は主たる居城をプラハ城にしていたため、自然とプラハは錬金術が盛んな土地になりました。

その名残として、プラハ城内の黄金小路には錬金術師の工房を再現したものが展示されています。

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もちろん筆者、訪問済みです。
プラハ城

出典:Wikipedia

以降、中世・近世にかけて多くの高名な錬金術師がヨーロッパに誕生します。

ちなみにちょっと脱線しますが、実際に金を生み出すには超新星爆発並みのエネルギーが核分裂が必要です。

エジプトから始まった錬金術がアラビアで発展し、ヨーロッパでさらなる進化を遂げるわけですが、発展するとさらなる思想が登場します。

中世ヨーロッパ錬金術における集大成が、おそらく多くの人が名前ぐらいは聞いたことがあるであろう「賢者の石」です。

そう、『ハリー・ポッターと賢者の石』の賢者の石です。

賢者の石は別名、哲学者の石とも呼ばれ、黄金変成だけでなく不老不死も可能にする万能の石です。

石と呼ばれていますが、粉末状であったり、液状であったり形態はさまざまでした。

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原料は硫黄と水銀だったそうです。科学的には硫化水銀ですね。

中国には錬丹術という錬金術に似た魔術がありますが、錬丹術でも水銀は重要な存在でした。

不老不死を目指した秦の始皇帝(紀元前259-紀元前210)は水銀中毒で亡くなったという伝説がありますが、より正確には中国版賢者の石とも呼ばれている辰砂を口にしていたのでしょう。

秦の始皇帝

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キングダム』の始皇帝は政治と戦の場面しかほぼ描かれていませんが、こんなものにも手を出してたんですね…。

賢者の石と似たものも生み出されました。

恐らく最も高名な錬金術師であろうパラケルスス(本名:テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム 1493-1541)の考案したアルカヘストです。

パラケルスス

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アルカヘストは万物を融解し、第一質量に還元する物質です。

『からくりサーカス』に出てきた柔らかい石は、このアルカヘストを基に考案されたものでしょう。

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仮にそんなものが存在したら「どうやって保存するんだ?」という話になってしまいますが、『からくりサーカス』では人間の体内になら保存できる設定になっていましたね。

パラケルススは人工生命であるホムンクルスの生成にも成功したと言われています。

ホムンクルス

出典:Wikipedia

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『Fate』シリーズはじめ、多くの創作物に嫌と言うほど登場するアレです。

フィクションに登場するホムンクルスは普通に外に出て活動していますが、一説によるとホムンクルスはフラスコ内でしか生存できなかったそうです。

パラケルススは医学の進歩にも多少の貢献をした人物ですが、それ以上にオカルト分野で有名な人物です。

『Fate』に出てくるアゾット剣は、パラケルススが持っていたという伝説のある剣、または杖に書かれていた”Azoth”に由来します。

『鋼の錬金術師』に登場するヴァン・ホーエンハイムの名づけ元も、パラケルススの本名からでしょう。

『鋼の錬金術師』

出典:U-NEXT

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医学の進歩以上に、作家の創造に貢献してる感がありますね。

悪魔祓い(エクソシズム)

西洋魔術の大雑把な歴史でも触れましたが、初期西洋魔術は異教の要素を多分に含んでいたため、ヨーロッパのキリスト教化によって一度衰退しました。

ですが、キリスト教も多分に魔術的な要素を含んでいます。

その代表格がミサと悪魔祓いです。

キリスト教は良い魔術と黒魔術を区分していましたが、そもそも始祖であるイエス・キリストが悪魔祓いをした記述が新約聖書にあるので悪魔祓いは否定できませんでした。

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では、悪魔はキリスト教誕生以降の概念なのか?…と言うと違います。
悪魔

出典:Wikipedia

悪魔の概念はメソポタミアにすでに存在していました。

オカルトホラーの金字塔『エクソシスト』(1973)に登場するパズズはメソポタミア文明を築いたアッカド人の伝承に登場する悪霊の名前です。

『エクソシスト』

出典:IMDB

「デーモン」は「狂った」を意味する古典ギリシャ語、「サタン」はヘブライ語の「敵対者」、「デビル」は古英語(英語の原型になったアングロ・サクソン人の言葉)に由来します。

悪魔は様々な地域に存在する概念であり、キリスト教世界に限ったものではありません。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

キリスト教はユダヤ教から発祥しているので、恐らく成立の過程で元々あった思想をベースに、悪魔祓いも誕生したのでしょうね。

キリスト教における悪魔祓いの歴史は、始祖であるイエス・キリストから始まっているので、キリスト教誕生とほぼ同時に始まっているわけですが、公認され体系化された時期も非常に早いです。

3世紀には悪魔祓いを行う専門の職務、「祓魔師ふつまし」(エクソシスト)が設けられています。

三世紀のローマ教皇コルネリウスが残した記録によると、すでに当時のローマ・カトリック教会には52人のエクソシストがいたそうです。

悪魔祓いには作法があり、これも時代とともに変化しました。

エクソシスム

出典:Wikipedia

初期キリスト教の時代には「イエスの名において出ていけ」と命じるだけでした。

その後、祈りの言葉や、聖油を塗布する儀式が追加され、1614年にはローマ・カトリック教会が『ローマ典礼儀式書』を定めて、規定を設けています。

この規定は1999年に改訂されて、今も現役です。

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そう、「嘘だろ?」とお思いでしょうが、今でも悪魔祓いは現役で行われているんですね。

特に盛んなのがローマ・カトリックのおひざ元であるイタリアで、21世紀初頭まで教皇だったヨハネ・パウロ二世(1920-2005)も悪魔祓いを行った記録があります。

ヨハナ・パウロ2世

出典:Wikipedia

ロラモ・メンギは悪魔に憑りつかれた人の特徴を以下のようにまとめています。

  • それまで知らなかった言語を話す
  • 知らないはずの知識を口にする
  • 超人的な力の発揮
  • 司祭や神聖なものに対して嫌悪を示す
  • 深い憂鬱
  • 悪魔の助けを求める
  • ナイフやガラスの破片など異常なものを吐き出す

これらは『エクソシスト』で明確に描写されています。

『エクソシスト』のメリン神父(マックス・フォン・シドー)とカラス神父は聖水の散布、カソックの着用、十字架の使用などローマ・カトリック教会の規定に従って悪魔祓いを行っており、ウィリアム・フリードキン監督は本来リアリティを求められないオカルトホラーでも入念な調査でリアリズムを重視していることがわかります。

『エクソシスト』

出典:IMDB

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

『フレンチ・コネクション』(1971)でアカデミー賞を受賞したフリードキンはリアリズムの権化のような人で、そのこだわりぶりには凄味を感じますね。

また、長きにわたって放送された『スーパーナチュラル』は都市伝説を題材にしたテレビシリーズですが、全編を通じて悪魔との戦いが描かれていました。

『スーパーナチュラル』

出典:U-NEXT

劇中に登場するハンターたちは悪魔祓いの儀式をラテン語で行っていましたが、これは悪魔がラテン語を嫌うと言われているからです。

また、悪魔と取引をするシーンも多く見られましたが、中世ドイツのファウスト伝説を初め、悪魔と契約して魂と引き換えに才能や富を得る話は少なくありません。

『スーパーナチュラル』の舞台であるアメリカでも、ブルース歌手のロバート・ジョンソン(1911-1938)が早死にしたのは「十字路で悪魔に魂を売り渡して、その引き換えにテクニックを身につけたせい」という伝説が語られています。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

悪魔は十字路に現れるという逸話があります。『スーパーナチュラル』でも描かれていましたね。

アイルランドでは妖精から才能を授けられると早死にする伝説があります。

『魔法使いの嫁』に登場したリャナンシーは、憑りついた男に詩の才能を授ける代わりに精気を吸い取る伝承があり、詩人が早死にするのは妖精に魅入られたからと言われています。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

ノーベル文学賞を受賞したウィリアム・バトラー・イェイツ(1865-1939)は早死にしてませんけどね…

悪魔祓いは創作物の主要題材であると同時に、後ろ暗い歴史でもあります

中世には悪魔的な所業に及んだという理由で「魔女」と名指しされ多くの人が処刑されました。

悪魔祓いの歴史と創作に登場するエクソシスト、特に『青の祓魔師』なんかは丸きりの別物ですが、そういう悲しい歴史があったことも覚えておきたいですね。

ルーン文字、タロットカード

この二つはまったくの別物ですが、一緒にカテゴライズしました。

理由はルーン文字タロットカードも、神秘的な要素が後付けされたものだからです。

ルーン文字は元々、ドイツ北部とスカンジナビア半島でアルファベットとして使用されていた、単なる生活のためのツールです。

ルーン文字

出典:Wikipedia

また、西側には伝搬しておりアイルランドやブリテン島にも記録が残っています。

11世紀ごろにスカンジナビアにキリスト教が伝わると、ラテン文字が一般化して使われなくなりました。

キリスト教が一般化すると、文字自体に魔力が宿る魔術的な文字と考えられるようになります。

ルーン文字は大っぴらに使えなくなり、魔術目的でこっそりと使われるようになります。

空の境界』の蒼崎橙子も『Fate』シリーズのクー・フーリンもルーン魔術を使っていますが、何のことはない、もともとはただの文字です。

魔女狩りの時代には、ルーン魔術を使った罪で多くの人が魔女として処刑されました。

魔女狩り

出典:Wikipedia

魔女の儀式のことをサバトと言います。

魔法少女まどか☆マギカ』に出てきた「ヴァルプルギスの夜」は北欧、中欧で4月30日に行われるお祭りの事で、魔女と結びつけられたのはキリスト教伝来で古来の習慣が異教の儀式になってしまったからです。

ヴァルプルギスの夜

出典:Wikipedia

「魔女」と呼ばれた人々や教義も、所詮は「キリスト教側から見た異端」に過ぎません。

17世紀のアメリカでは、悪名高いセイラム魔女裁判が起きており、200名近い村人が魔女として告発されました。

主要なところだとアーサー・ミラーの戯曲が原作の映画『クルーシブル』(1996)が、この事件を題材にしています。

タロットカードは現在では占いの道具ですが、元はただのカードゲームでした。

『タロットカード』

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現存する最古のタロットカードは15世紀に北イタリアで作成されたヴィスコンティ・スフォルツァ版ですが、当時のタロットはただのカードゲームのカードです。

どういう理由でか、後に占いに用いられるようになり、現代ではそっちのイメージが定着しています。

タロットのイメージは色々なところで見られますが、有名どころだと『ジョジョの奇妙な冒険』でしょうか。

『ジョジョの奇妙な冒険』

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第3部に登場するキャラクターのスタンド名は、多くがタロットカードのアルカナ(カードに描かれている寓意画)に基づいています。

フリーメイソン

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

ダン・ブラウン原作のロバート・ラングドン教授シリーズはじめ、色々なところに登場する人気者ですね。

フリーメイソンは、秘密結社として知られていますが、16世紀の創設当初はなんてことない、石工たちの組合(ギルド)だったらしいです。

今のイメージが定着したのは18世紀でヨーロッパの啓蒙主義に反発して魔術的な思想を好む人々が集まり、魔術的な秘密結社になった…と言われています。

フリーメイソン

出典:Wikipedia

実際のところ、フリーメイソンは活動内容を明かしており、日本の会員である高須クリニックの高須院長は活動内容を積極的に発信しています。

宗教、政治の話は厳格にNGで、実際はボランティア活動や交流会を行っているようです。

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事実は知ってみると「…何だ」って感じですね。

欧米では、孤児や寡婦を保護するメイソン・ホームの運営、病院や学校の建設も行っており、アメリカでは「フリーメイソンは慈善団体」というのが一般的なイメージらしいです。

ところで、フリーメイソンは陰謀論との関連でよく登場する組織です。

フリーメイソン

出典:Wikipedia

では、どう見ても健全な組織のフリーメイソンがなぜ陰謀論と結び付けられるようになったか?

フリーメイソン=陰謀の起源は深いようで全然浅く、遡るのは1826年です。

ニューヨーク州バタビアのロッジ(集会所)に所属していたウィリアム・モーガンがフリーメイソンの暴露本を出版すると宣言しました。

ところが同じ年にモーガンが契約を結んだ印刷所が火事になり、モーガン自身も負債が原因で逮捕されます。

後にモーガンは釈放されますが、何者かに拉致されて行方不明になり、彼の拉致に関わったとして6人の会員が逮捕されました。

この事件がフリーメイソン=陰謀の起源です。

もっとも、フリーメイソン会員がアメリカ建国に関わっているのも事実で、初代大統領のジョージ・ワシントン(1732-1799)を初め10人以上のフリーメイソン会員が大統領になっています。

フリーメイソンの大統領

出典:Wikipedia

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

ホワイトハウスの建設も1ドル紙幣のデザインもフリーメイソン会員たちで、アメリカ政府を操っている噂はあながち嘘とも言い切れません。

フリーメイソン内には高位の会員しか入れない秘密結社があり、その秘匿性も陰謀論者の心を揺さぶっているのでしょうね。

有名な西洋魔術師たち

最後に、創作物で見かける実在の有名な西洋魔術師に触れて締めくくりとします。

メーディア『Fate/stay night』シリーズ

メーディア

出典:Wikipedia

メディアとも表記されます。

ギリシャ神話に登場する魔女で、『Fate/stay night』のキャスターその人。

ニコ・トスカーニニコ・トスカーニ

眠りの魔法と若返りの魔法に長けていた伝承が残されています。
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アヴィケブロン『Fate/Apocrypha』

本名、ソロモン・ベン・イェフダー・イブン・ガビーロール。

11世紀スペインのユダヤ人魔術師で、『Fate/Apocrypha』に登場する黒のキャスターその人です。

女性型のゴーレム(ユダヤの伝説に登場する泥人形)を生成した逸話があり、劇中でゴーレムを用いているのはその逸話に由来します。

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ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ『空の境界』シリーズ

ハインリヒ・コルネリウス・アグリッパ

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ルネサンス時代を代表する魔術師(1486-1535)です。

『オカルト哲学』を初めとする著作は後世の魔術師に多大な影響を及ぼしました。

『空の境界』に登場するコルネリウス・アルバはアグリッパの子孫という設定です。

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アルバが黒いドーベルマンを使い魔にしているのは、アグリッパが黒い犬を使い魔にしていた逸話に由来します。
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ヨハン・ゲオルク・ファウスト

ヨハン・ゲオルク・ファウスト

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15世紀から16世紀にドイツに実在した…と言われている魔術師。

悪魔メフィストフェレスと契約したファウスト伝説のモデルになった人物です。

多くの文学作品及び、それを原作にした映像作品で題材になっています。

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ヤン・シュヴァンクマイエル監督の『ファウスト』(1994)は悪魔的な内容なので、気持ちの落ち込んでいるときは観ないことをお勧めします。
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サン・ジェルマン伯爵

サン・ジェルマン伯爵

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18世紀の魔術師。

ドリフターズ』ではオネエになってましたね。

『ドリフターズ』

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賢者の石で不老不死になっており、18世紀半ばの時点で「4,000歳」と自称していた逸話があります。

一説によると1784年にドイツで死去していますが、以降も1789年にパリで姿を見たとか、死後の筈なのに目撃談が多く残っています。

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フリーメイソンの会員だったらしいです。
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アレイスター・クロウリー

アレイスター・クロウリー

出典:Wikipedia

近代魔術の大家であり、恐らく20世紀以降(1875-1947)では最も有名な魔術師です。

とある魔術の禁書目録』に登場するアレイスター・クロウリーその人で、同作ではクロウリー本人が21世紀の現代まで生き残っている設定になっていました。

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以上、ファンタジーでよく見るオカルト設定を挙げてきました。

西洋魔術だけでも結構なボリュームになってしまったので、東洋のオカルト設定については稿を改めたいと思います。

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