全米の各映画賞で観客賞を総ナメした魂を震わす家族の物語。
社会の片隅で家族になったゲイカップルとダウン症児の実話を描く号泣必至の人間ドラマ作品です。
- 1970年代アメリカで実際にあった話をもとにした感動の物語。
- ダウン症の俳優アイザック・レイヴァのピュアな演技に涙。
- ルディを演じたアラン・カミングの歌声が素晴らしい。
- 家族とは?子供の幸せとはなにかを考えさせられる。
それではさっそく『チョコレートドーナツ』をレビューしたいと思います。
目次
『チョコレートドーナツ』作品情報
作品名 | チョコレートドーナツ |
公開日 | 2014年4月19日 |
上映時間 | 97分 |
監督 | トラヴィス・ファイン |
脚本 | トラヴィス・ファイン ジョージ・アーサー・ブルーム |
出演者 | アラン・カミング ギャレット・ディラハント アイザック・レイヴァ ドン・フランクリン ジェイミー・アン・オールマン フランシス・フィッシャー グレッグ・ヘンリー クリス・マルケイ |
音楽 | ジョーイ・ニューマン |
【ネタバレ】『チョコレートドーナツ』あらすじ・感想
肝っ玉母さんルディが魅力的
1979年、アメリカ・カリフォルニア。
シンガーを夢にみるルディは、ショーパブでショーダンサーとして働いて、生活費を稼いでいます。
ある日、店に客として訪れた弁護士のポールと、お互いひとめぼれ。
恋に落ちてしまいます。
rara
ルディの隣には、マルコというダウン症の少年が母親と2人で暮らしています。
母親はドラックをやっていて、マルコを1人で家に置いたまま男と出かけてしまうような生活をしています。
ルディはマルコのことが気がかりでたまりません。
そんなとき、マルコの母親が薬物所持で逮捕され、マルコは施設に入れられることになってしまいます。
マルコが施設をぬけだし家に帰ろうと徘徊していることにルディは心を痛め、ポールの助言でマルコの緊急監護権を求める訴えを起こすのです。
要するに母親が出所してくるまで、マルコの面倒はルディが見ることを認めさせる訴えです。
ルディとポールの関係は秘密のままでしたが、ルディは監護権が認められ、ルディとマルコとポールは、一緒に暮らし始めることになりました。
rara
夕食に大好きなチョコレートドーナッツを食べたがるマルコに「ドーナッツは体に悪い」「野菜を食べろ」と言ったり、寝る前に即席のお話を聞かせてあげたり、お母さんそのものです。
マルコの通う特殊学級に、初めて3人で訪れた時のエピソードもそうです。
特殊学級の先生はマルコが早く慣れるよう、ルディたちに帰ってと促すのですが、ルディは不安そうに「マルコはいいけど私は?」と言うのです。
rara
明るい肝っ玉母さんルディと、ちょっと気弱だけどやさしい父親がわりのポールと暮らし始めて、マルコはどんどん笑顔が増えていきます。
ルディはポールからのプレゼントの録音器具を使い、自分の歌のデモテープを送り始めます。
ルディの歌をバックに、3人の生活を撮ったホームビデオが流れるシーンがあるのですが、本当に普通の幸せな家族にしか見えません。
rara
けれど人生はおとぎ話のようにはいきませんでした。
誰のための審理なのか?
ルディとポールの関係が周囲に知られてしまい、ルディはマルコの監護権を取り消され、マルコはまた施設に入ることになってしまいます。
そしてポールは、勤めていた検事局をクビになってしまうのです。
現代のアメリカは同性愛者の人権が認められ、同性婚も珍しくありません。
しかし『チョコレートドーナツ』で描かれる1970年台は、まだ同性愛者に対する差別が激しい時代だったのです。
ルディとポールはカミングアウトして、マルコに対する永久監護権を得る審理を起こしますが、それはとても厳しいものでした。
マルコの代理人はルディとポールに対して、容赦ない質問を投げかけてきます。
rara
「同性愛者のカップルが子供を育てるなんてとんでもない」という意識ありきなのです。
とにかくルディとポールが、いかに親として失格かを探そうとするのです。
1番腹が立ったのが「マルコの前で女装したことはないか」と代理人がルディに尋ねるシーンです。
ルディは最初「ない」というのですが、ハロウィーンで女装したことを思い出し、正直にそのことを告げます。
すると代理人は「では質問の答えはYESだ」というのです。
ハロウィーンの仮装で1回だけ女装しただけなのに、子供の前で女装する人間というレッテルを貼られてしまうのです。
こんなことの繰り返しで、ルディとポールは次第に追い詰められていきます。
「なんの審理です?ゲイだの人形だのそんな話ばかりだ。これはマルコの審理です。」
rara
マルコのための審理なのに、周りの差別意識の押しつけのようになっていて、見ていて怒りがこみ上げてきました。
ハッピーエンドが大好きだったマルコ。でも…
ルディとポールは、マルコの監護権を求める審理で勝つことはできませんでした。
代理人側がマルコの母親の出所を早め、監護権回復の請求をしたのです。
本当の母親にはかなうわけがなく、ルディとポールの請求は棄却され、マルコは母親のもとに返されることになってしまいます。
マルコは母親の家に戻されるとき「ここは家じゃない」と言います。
マルコにとって家とは、ルディとポールと一緒に暮らしたあの場所なのです。
出所してさっそく男を連れ込んだ母親の前から、マルコは姿を消します。
マルコは3日間、ルディとポールと3人で暮らした家を探し歩き、そして死んでしまうのです。
「新聞記事を同封します。ご覧になってはいないでしょう。一面を飾る報道の影に小さく埋もれた記事です。
知的障害のあるマルコという少年が3日間家を探し歩いたまま、橋の下で1人死んだそうです。
みなさんはマルコと面識がなく、ご存知ないでしょうから少しだけお伝えします。
マルコは心の優しくかしこい楽しい子供でした。笑顔は周りを明るくしました。
チョコレートドーナッツに目がなく、ディスコダンスの達人でした。
寝る前の物語が大好きで、せがむのはいつもハッピーエンド。ハッピーエンドが大好きでした。」
ポールが監護権請求の審理に、関わった人たちに送った手紙です。
rara
マルコのことをよく知らない大人たちが勝手に決めた、子供の幸せとはこうあるべきだという思い込みの押しつけから、マルコは本当に自分を愛してくれる人から引き離され、大好きだったハッピーエンドとは真逆の、悲しい結末を迎えることになってしまいます。
日本でも子供の虐待で、悲しい事件が続いていますが、それも大人の勝手な価値観の押し付けが、悲劇を招いているような気がしてなりません。
rara
ダウン症の俳優、アイザック・レイヴァのピュアな笑顔が最高にかわいい。
『チョコレートドーナツ』の魅力のひとつは、ダウン症の少年マルコを演じるアイザック・レイヴァのナチュラルな演技です。
笑顔がとてもキュートなのです。
rara
アイザック・レイヴァ自身もダウン症で、障害を持つ人のための演劇学校に通っており、『チョコレートドーナツ』が初めての出演作になりました。
アイザック・レイヴァは、『チョコレートドーナツ』は人生で最高の経験だ。これからもっと多くの映画に出たいと語っています。
rara
ルディを演じたアラン・カミングの歌う「I Shall Be Released」が素晴らしい。
『チョコレートドーナツ』では、ルディを演じたアラン・カミングのパワフルな歌声にも惹きこまれました。
特にラストでルディが歌うボブ・ディランの名曲「I Shall Be Released」は、不当な差別から開放される日がきっとくるという希望にみちた力強い歌声でした。
「I Shall Be Released」の歌詞に出てくる「Any day now, any day now」は、『チョコレートドーナツ』の英語のタイトルになっています。
rara
『チョコレートドーナツ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
Happy birthday, Travis! 今日はトラヴィス・ファイン監督のお誕生日!おめでとうございます!そして、シューイチのせんべろコーナーでLiLiCoさんがまたまた『チョコレートドーナツ』をおすすめくださいました(^^) pic.twitter.com/AlAGAp7xhy
— 映画『チョコレートドーナツ』 (@donuts_movie) 2016年6月26日
以上、ここまで『チョコレートドーナツ』について感想を述べさせていただきました。
- 家族とは子供の幸せとはなにかを考えさせられる。
- ルディを演じるアラン・カミングの歌声が素晴らしい。
- ダウン症の俳優アイザック・レイヴァの笑顔に涙。