2011年マンガ大賞に輝いた、羽海野チカ原作の将棋を題材としたマンガを映画化した作品。
『3月のライオン 前編』が大ヒットを記録して、続編となる『3月のライオン 後編』にも注目が集まりました。
- 開始30分から将棋の神様・宗谷と主人公・桐山の対局が…固唾をのむ展開
- ストーリーの緊張と緩和の連続に一喜一憂…笑って、泣いて、感動して、映画の素晴らしさがギッシリ詰まった作品
- 登場人物ひとりひとりのキャラクターが丁寧に描かれ、マンガのファンが「ありがとう!」とお礼するほどの出来栄え、「初めて観たいと思える実写版映画」と絶賛された映画
- 後半終盤はオリジナルエピソード!映画でしか見られないストーリーは見逃せない!!
- もっと続きが見たい!!そう思わせるエンディング
それではさっそく『3月のライオン 後編』をレビューしていきたいと思います。
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『3月のライオン 後編』作品情報
作品名 | 3月のライオン 後編 |
公開日 | 2017年4月22日 |
上映時間 | 139分 |
監督 | 大友啓史 |
脚本 | 岩下悠子 渡部亮平 大友啓史 |
原作 | 羽海野チカ「3月のライオン」 |
出演者 | 神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮 伊藤英明 豊川悦司 高橋一生 |
音楽 | 菅野祐悟 |
主題歌 | 藤原さくら「春の歌」 |
『3月のライオン 後編』主要キャスト
神木隆之介 / 役:桐山零
- プロ棋士六段・B級2組所属。18歳、私立駒橋高校に通う高校生。
- 中学生で史上5人目のプロ棋士、棋風は居飛車も振飛車も指すオールラウンダー。
- 9年前、零の小さいころに両親と妹と死別、天涯孤独となったが、父の友人のプロ棋士・幸田柾近(豊川悦司)の内弟子として引き取ってもらい育ててもらう。
- しかし、棋士としての才能ゆえに、幸田家の子供たち・幸田香子と幸田歩と折り合いが悪く、幸田家にいられなくなる。
- 1年遅れで高校へ進学しているため、友達もいなく、なかなかクラスにも馴染めず「屋上飯」している。
- 川本あかり(倉科カナ)と出会い、川本家の家族と触れ合うことにより、棋士としても人としても少しずつ成長している。
加瀬亮 / 役:天才・宗谷冬司名人
- 名人に在位する天才プロ棋士。
- 相手の得意戦法を受けて立つのを好み、あらゆる戦型を指しこなすオールラウンダー。
- 中学生でプロになり、史上最年少の名人位、七冠独占という偉業を成し遂げている。
- モデルは「全盛期の谷川浩司九段と羽生善治永世七冠を足して2で割っていない」キャラクター設定。
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後編では孤高の天才・宗谷冬司がたくさん登場し、宗谷冬司がなぜ人との会話の波長が度々かみ合わないか?という理由が明らかになります。
高橋一生 / 役:林田先生
- 零が通う私立駒橋高校の教師、将棋好き。
- ひとり「屋上飯」する零のもとに、いつも特大サイズのカップラーメン片手に現れ会話。
- 自然に零の本音を引きだしていき…将棋のこと、プライベートなこと、相談にのります。
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豊川悦司 / 役:幸田柾近
- プロ将棋棋士八段、全盛期を過ぎB級2組に所属。
- 桐山零の師匠であり養父。折に触れ零のことを気にかけている。
- 実子の長女・香子と長男・歩を弟子として育成していたが、二人に勝負の世界で生きていく資質が無いと感じ、奨励会をやめさせる
有村架純 / 役:幸田香子
- 仕事は派遣社員で転々としている。
- プロ棋士・後藤正宗(伊藤英明)九段と不倫している。
- 父の下でプロ棋士になる事を夢に励んでいたが、無理やり奨励会を辞めさせられ夢を絶たれる。
- 全ては零のせいだと思ってずっと根に持っている。
染谷将太 / 役:二階堂晴信
- 棋士・居飛車党。超絶金持ち。
- 桐山零のライバルであり心友だと自負している人物。
- 島田開(佐々木蔵之介)の弟子で、零と同じ研究会に入っている。
- しかし、病弱で難病もちであり、病気と一生付き合っていかなければならない。
- なにかと零に関わってくる男。零に対しての言葉がアツく、名言メーカーである。
佐々木蔵之介 / 役:島田開
- 棋士A級八段、居飛車党、宗谷名人の同期、二階堂の兄弟子。
- 努力を積み重ね実力をつけてきた粘り強い棋風。勝つ将棋というより負けない将棋を指す人。こういうタイプとの対局は長期戦。
- 将棋の駒で有名な山形県出身、地元の期待に応えようと奮闘している。
- ずっと胃痛もち…対局の際は、大抵対戦相手だけでなく「胃痛」とも戦っている。
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伊藤英明 / 役:後藤正宗
- 棋士A級九段、本格居飛車党。
- じっくり堅く囲って重たい一撃を狙って指す、重厚な棋風。
- 第73期名人戦で宗谷冬司名人(加瀬亮)と対戦、負けている。もう一度宗谷と戦いたいと必死に次を狙っている。
- 幸田香子と不倫中。奥さんは入院しており、病状はもう回復が望めない状態にある。
倉科カナ / 役:川本あかり
- あかりが夜道で気分が悪くなった零を自宅へ連れ帰り、零との介抱したことから交流がはじまる。
- 亡くなった母の代わりに家事を切り盛りし、妹たちの面倒を見ている。
- 昼は祖父・相米二(前田吟)の経営する三日月堂で働き、夜は伯母・美咲のお店でホステスをしている。
- 痩せたものを「ふくふく」にぽっちゃりさせるのが好き。
清野果耶 / 役:川本ひなた
- 辛いことがあっても、家族の前で泣きごとを言わないといういい子。
- 泣きたいときも誰にも見えないところで泣く。
- 明るくて元気で、妹をとても可愛がっている。
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新津ちせ / 役:川本モモ
- 川本家の末っ子。皆に愛され、とにかくとても可愛い。
- 新津ちせちゃんは『君の名は。』の新海誠監督の娘!
- 本当に可愛すぎのモモ、観ているだけで幸せになります。
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『3月のライオン 後編』あらすじ・感想【ネタバレなし】
宗谷名人(加瀬亮)という男
線が細く、風が吹いたらフラ~っと倒れて消えてしまいそうな宗谷冬司(加瀬亮)。
しかし、ひとたび駒を掴むと草食な見た目とは違う、地に足の着いた指し筋で戦ってきます。
「宗谷と戦った人間にはよくあること…真実を暴かれ、自分が気づかなかった心の弱さや自信のなさ、恐怖心を突きつけられる。本当の自分の姿に容赦なく向き合わされ、自分を一度バラバラにして再構築が必要になる」と、みんな口々に言います。
対局が終わってからも、後遺症のように人にダメージを与えてしまう将棋を指す「宗谷冬司」という棋士にどんどん興味が湧いてきます。
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「勝つことを忘れたら一瞬で吹っ飛ばされる」
宗谷の見えない迫力をぜひ感じてみてください。
はじめからクライマックス?!宗谷vs桐山零の記念対局!
後編のしょっぱなから、記念対局として夢の対局が待っています!!
それは、将棋の神に愛された男・宗谷冬司vs未知数の逸材・桐山零(神木隆之介)。
中学生同士でプロになった天才同士のドリームマッチ!
「どこか違う世界で生きているように思える。まったく実感がわかない。盤を挟んで向かい合うなんて…」
こんな感じで、対局の決まった零はどこか現実味がなくふわふわ…二階堂(染谷将太)に「勝つことだけを考えろ!」と喝を入れられます。
幸田父(豊川悦司)が対局前に、零にかける言葉が素敵です。
「明日お前の前に座るのはただの人間だ。いいか。自分で作ったバケモノと戦うんじゃないぞ。それとな…楽しんでおいで」
この言葉には、父として…師匠としての幸田の愛情が込められていてグッと心が熱くなりました。
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「零しっかりして!」と思わず声をかけたくなります。
物語に入り込み、二階堂と同じ気持ちに。
宗谷冬司にバラバラにされてしまうんじゃないかと、零のことが心配になりますよね。
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記念対局のポスター案が気合いが入りすぎていて笑えます!
モノクロにしていたり、稲妻がはしっていたり…無駄にカッコよすぎのポスターたち、ぜひ注目して見てみてくださいね。
「いじめ」をどう乗り越えるか…とても大事なことのヒントが散りばめられている
中学3年生になった川本ひなた(清野果耶)が、クラスでいじめに遭ってしまいます。
理由は「いじめられていた子を助けたから…」というもの。
いじめの矛先がひなたに移行してしまったのです。先生も見てみぬふり。
ボロボロの格好で家に帰宅し、いじめが発覚…あかり(倉科カナ)とモモ(新津ちせ)、その場に居合わせた零。
家族に見せまいと川辺で泣くひなたを零が追いかけてきます。
ひなたはずっと耐えていたのです。
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「かばってたらあんたもやられるよって。みんなに言われた通りになっちゃった。ほんとはずっと怖かった…独りぼっちになるの…でも、後悔なんてしない!しちゃダメだ!だって…私のしたことは絶対に間違ってなんかいない!」
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後ろ向きになりそうな場面で、前を向く強さ。見習いたい!
零もこの言葉に衝撃を受けます。
「人はこんなにも時が過ぎた後で、全く違う方向から嵐のように救われることがある」
小学校の時にいじめられていた零が、遡ってひなたに救われます。
遅すぎることはない、いつ辛い出来事から脱することができるかは人それぞれなんだと気づかされました。
そんな中で、林田先生(高橋一生)の一言に納得させられました。
「100%の解決策なんてどこにもない。本人がどうしたいか聞いてみるといい」
丁寧に、鋭く、逃げずに描かれています。
どんな風にしてあげられる大人になりたいですか、観終えたとき心に残る大切なものがあるはずです。
外に子どもを作って出て行った自己中オヤジ(伊勢谷友介)現る
川村家に突然、父(伊勢谷友介)が帰ってきます。
外に子どもを作り出て行った父が、その親子と一緒に川村の家で暮らそうと言ってきます。
周りのことを考えない、自己中な父親の残念さがとめどなくセリフからあふれ…怒りを超え悲しくなります。
桐山零も憤ったのですが、3姉妹を想うがあまり…彼女たちの父親に言い過ぎて、3姉妹を傷つけてしまいます。
最悪な父を追い払おうとした桐山に、ひなたがひと言「零君…こんな人でも…私たちのお父さんなんだよ…」と。
零は川村家という心の支えを失ってしまいます…
周りの人間をさんざん振り回しといて、自分だけいつも幸せでいようとする父親の口車にのせられて、川村家の3姉妹はこのまま父と暮らすことになってしまうのか。
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そして、零はこのまま川本家と疎遠になってしまうのか…せっかく見つけた居場所を失った零は大丈夫でしょうか…。
もう将棋しかなくなった2人の対局
再度、宗谷冬司との対戦の切符をかけた…獅子王戦トーナメントの決勝。
後藤(伊藤英明)vs桐山零の戦いがはじまります。
後藤は直前に長く患っていた妻を亡くし、桐山は心の支えとなっていた川村家という癒しの場を失い、「将棋しかなくなった」2人の対局!
零は「将棋強くなるしか、僕はいる意味がない」と言い、後藤は「ようやく将棋に集中できる」と香子まで切り捨てました。
お互い並々ならぬ覚悟で迎える対局は、人生をかけた戦い。
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終局後、戦いの感想を後藤が零に「なかなか…強烈だった」と伝えます。
この後藤の一言が表す通り、白熱の戦局。
どちらが勝っているのか分からない状態で釘づけにされ、一手一手に一喜一憂してかなり見ごたえあります!
屋上飯のモグモグタイムは癒しの時間
屋上飯の場面は褒美タイム!
画面からマイナスイオンが出ているんじゃないだろうか…と感じるほど。屋上が出てくるとほっこり和みます。
友達がいない桐山零のひとり飯…孤独の象徴だった「屋上飯」は、いつしか林田先生(高橋一生)との大事な語らいの時間へと。
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最後「なんか僕…この屋上好きだなって」という零の表情が、屋上時間の大切さを物語っているんですよね!
「将棋は誰からも何も奪ったりしない」幸田柾近(豊川悦司)から出る言葉たちは人を暗闇から救うパワーを持っている
「将棋は誰からも何も奪ったりしない」
幸田父のセリフです。
この言葉が出たとき、幸田香子(有村架純)は変わりはじめます。
悪女から変化…香子は、腐りきっていた心の中にひとつあった「大事なもの」のもとに向かいます。
悪意の塊のような彼女にも、光があったことに感動します。
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悪役に徹していた有村さんの可愛げのある演技のギャップに、かなり心を持って行かれちゃいます。
そして、零と幸田柾近のこのやりとりにはポロっときました…。
幸田柾近「家に来ないかって誘った時のこと覚えているか?俺は今まで何度も、あのとき零は嘘をついたんじゃないかって…だけどもう、そんな心配なくなった。間違いないよ。お前は将棋が好きなんだ。そうでなきゃこんなに長くはやっていられない」
零「そうですね。好きです」
桐山零の思春期ドアが解き放たれた、爽やかな時間が流れます。
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ラストショットの山寺が圧巻!話題になった絶景は必見!
『3月のライオン 後編』は、映画公開と共にロケ地がとても話題になった映画でもあります。
零が住んでいた佃界隈や、岩手の御所湖、素敵な場所ばかり。
特にラストカットの山形県にある立石寺、通称・山寺の景色は息をのむ絶景で圧巻!
零が階段を一段一段登っていく様子が、大人の階段を昇っていくようでとても象徴的です。
しかも、上に待っているのは将棋の神の子と呼ばれている人…桐山零棋士の、険しくも明るい未来が見えました。
この映画を見て素晴らしい景観に感動し、実際に聖地巡礼に訪れた人も多かった山寺。
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スピッツのカヴァー「春の歌」がエンディングになったのには意味があった!
原作の羽海野チカさんがスピッツの「春の歌」を聴いたとき、『3月のライオン』の最初の世界が生まれたとまで言わしめた大切な曲が主題歌となっています!
カヴァーしているのは、スモーキーヴォイスの藤原さくらさん。
彼女の柔らかい声で香りたつアロマのような温かみのある「春の歌」は、映画の余韻を引き上げてくれますよ。
『3月のライオン 後編』まとめ
【絶賛公開中】
映画『#3月のライオン』後編は、原作コミックでは描かれていないオリジナルの展開も! #有村架純 さん演じる香子の物語もその一つ。ぜひ映画館で見届けてあげて下さい! pic.twitter.com/NrUZuH5Vrs— 映画『3月のライオン』 (@3lionmovie) 2017年5月25日
以上、ここまで『3月のライオン 後編』について感想を述べさせていただきました。
- 苦しみはいつまでも続かないと思わせてくれ、救われる!誰かのことばが必ず刺さります…まさに格言ムービー
- 将棋の所作が美しい、観ていると自然に将棋界の「いろは」が学べる
- 重めの家族問題が、時を経て雪が解けて春になるように穏やかに解決する、まさに3月の季節感覚
- 最後の絶景で完全に心洗われた気持ちに…山寺の緑の香りが立つよう、何気なく過ごしていた「3月」の存在を大事にしようと思った
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