『3月のライオン 前編』は、2011年マンガ大賞に輝いた、羽海野チカ原作の将棋を題材としたマンガを映画化した作品です。
自分の殻を破るときに誰もが通る葛藤の時期を描いた青春物語で、観てて胸がガッと熱くなります。
- 漫画ファンも納得のドンピシャキャスト!アニメ化に続き、映画化に沸いた作品
- 棋士の先崎学が監修。パチンという駒音が心地よく、将棋が分かる人も分からない人も楽しめるストーリー
- 将棋は頭のスポーツ、人間の精神の美しさと複雑さを見事に表現
- 『るろうに剣心』も撮ったマンガ原作の魔術師・大友啓史監督
それではさっそく『3月のライオン 前編』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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『3月のライオン 前編』作品情報
作品名 | 3月のライオン 前編 |
公開日 | 2017年3月18日 |
上映時間 | 138分 |
監督 | 大友啓史 |
脚本 | 岩下悠子 渡部亮平 大友啓史 |
原作 | 羽海野チカ |
出演者 | 神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮 伊藤英明 豊川悦司 |
音楽 | 菅野祐悟 |
主題歌 | ぼくのりりっくのぼうよみ「Be Noble」 |
『3月のライオン 前編』キャスト情報
神木隆之介 / 役:桐山零
- プロ棋士五段・私立駒橋高校に通う高校生。
- 棋風は居飛車も振飛車も指すオールラウンダー。中学生で史上5人目のプロ棋士となる。
- 9年前、零の小さいころに両親と妹と死別、天涯孤独となったが、父の友人のプロ棋士・幸田柾近(豊川悦司)の内弟子として引き取ってもらい育ててもらう。
- しかし、棋士としての才能ゆえに、幸田家の子供たち・幸田香子と幸田歩と折り合いが悪く、幸田家にいられなくなる。
- 川本あかり(倉科カナ)と出会い、川本家の家族と触れ合うことにより、棋士としても人としても少しずつ成長していくようになる。
豊川悦司 / 役:幸田柾近
- プロ将棋棋士八段、全盛期を過ぎB級2組に所属。
- 桐山零の師匠であり養父。折に触れ零のことを気にかけている。
- 実子の長女・香子と長男・歩を弟子として育成していたが、二人に勝負の世界で生きていく資質がないと感じ、奨励会をやめさせる。
- 過去にタイトル戦で宗谷冬司名人(加瀬亮)と対戦、破れている。
有村架純 / 役:幸田香子
- 仕事は派遣社員で転々としている。
- 父の下でプロ棋士になる事を夢に励んでいたが、無理やり奨励会を辞めさせられ夢を絶たれる。
- 全ては零のせいだと思ってずっと根に持っている。
- プロ棋士・後藤正宗(伊藤英明)九段と不倫している。
染谷将太 / 役:二階堂晴信
- 棋士・居飛車党。超絶お金持ち。
- 桐山零のライバルであり心友だと自負している人物。
- 島田開(佐々木蔵之介)の弟弟子で研究会に入っている。
- 病弱で難病もちであり、病気と一生付き合っていかなければならない。
- なにかと零に関わってくる熱い男。零に対しての言葉が度々素敵で、名言メーカーである。
佐々木蔵之介 / 役:島田開
- 棋士A級八段、居飛車党、宗谷名人の同期、二階堂の兄弟子。
- 努力を積み重ね実力をつけてきた粘り強い棋風。勝つ将棋というより負けない将棋を指す人。こういうタイプとの対局は長期戦。
- 将棋の駒で有名な山形県出身、地元の期待に応えようと奮闘している。
- ずっと胃痛もち…対局の際は、大抵対戦相手だけでなく「胃痛」とも戦っている
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伊藤英明 / 役:後藤正宗
- 棋士A級九段、本格居飛車党。
- じっくり堅く囲って重たい一撃を狙って指す、重厚な棋風。
- 第73期名人戦で宗谷冬司名人(加瀬亮)と対戦、負けている。
- もう一度宗谷と戦いたいと必死に次を狙っている。
- 幸田香子と不倫中。奥さんは入院しており、病状はもう回復が望めない状態にある。
加瀬亮 / 役:天才・宗谷冬司名人
- 名人の在位する天才プロ棋士。
- 相手の得意戦法を受けて立つのを好み、あらゆる戦型を指しこなすオールラウンダ―。
- 中学生でプロになり、史上最年少の名人位、七冠独占という偉業を成し遂げている。
- モデルは「全盛期の谷川浩司九段と羽生善治永世七冠を足して2で割っていない」キャラクター設定。
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倉科カナ / 役:川本あかり
- 夜道の灯りで気分が悪くなった零を自宅へ連れ帰り、零との介抱したことから交流がはじまる。
- 亡くなった母の代わりに家事を切り盛りし、妹たちの面倒を見ている。
- 昼は祖父・相米二(前田吟)の経営する三日月堂で働き、夜は伯母・美咲のお店でホステスをしている。
- 痩せたものを「ふくふく」にぽっちゃりさせるのが好き。
清野果耶 / 役:川本ひなた
- 辛いことがあっても、家族の前で泣きごとを言わないといういい子。
- 泣きたいときも誰にも見えないところで泣く。
- 明るくて元気で、妹をとても可愛がっている。
新津ちせ / 役:川本モモ
- 川本家の末っ子。みんなに愛され、とにかくとても可愛い。
- かなり世間がざわつきました。本当に可愛すぎのモモ、観ているだけで幸せになります。
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【ネタバレ】『3月のライオン 前編』あらすじ・感想
白黒はっきり勝負のつく将棋の世界
主人公・桐山零(神木隆之介)が、将棋について語っている所があります。
「負けを悟った側は最後のひと言に向けて心を整理していく。勝った側は最後の一瞬まで読み違えることがないよう張り詰め続ける。だから対局直後は勝った方が激しく消耗している場合が多い…。」
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なかなか知ることのできない将棋の世界を疾走感たっぷりに覗かせてくれます。
「君は将棋好きか?」
幸田柾近(豊川悦司)が、家族を亡くしたばかりの幼い零(大西利空)に向かって問いかける言葉。
零は「はい」と、小さくか細く答えます。
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自分はホントは「将棋」を好きではない…ずっと反芻し、桐山零は悩んで、苦しみ、葛藤します。
「果たして、零は将棋を好きなのか?彼にとって“将棋”はどんな存在なのか?」
本作のひとつの大きな課題となっています。
印象的だったのは、プロ棋士になった桐山零(神木隆之介)が、がけっぷちの義父・幸田柾近と対局し勝ってしまうところ。
それにより幸田父は本選入りを逃してしまい、何とも言えない空気が漂います。
ガランとした空虚な部屋に帰宅した零がかけたラジオから「高校生の息子が親を殺害」というニュースが流れます。
ニュースを聞いて自分の状況にリンク…零は義父の「負けました」と言って頭を下げた姿を思い出し、動揺します。
自分が幸田柾近の棋士人生を終わらせた(死なせた)ことに罪悪感を感じ、苦しむ姿がそこにありました。
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師弟関係と親子関係、複雑に入り混じる中、自然に内容が理解でき、ストーリーにのめり込まされます。
朝、マンション前で掃除しているおばちゃんに挨拶や会釈することもないコミュ症の零、「将棋」のみの彼の人生。
そこからたくさんの人と触れ合い、嬉しくなって、ときに凹んで、胸にうずまくモヤモヤの答え探しをする日々。
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もがく中で、人と触れ合ったとき「みんなおれのせいかよーーっ他になにもないんだよ!将棋しかねぇんだよっ!」と思わず叫ぶ零は、心情に変化があったように見えました。
人の中で人は成長するということを実感させてくれる作品です。
二階堂晴信(染谷将太)の情熱
零に何かと関わってくる二階堂晴信(染谷将太)。
零に対して彼の発する言葉は金言が多いのです。
「攻めるだけじゃなくてちゃんと守れ!潔いのと投げやりなのは全然ちがうんだぞ!もっと自分の将棋を自分自身を大切にしろ!それができないのが、お前の伸び悩みの原因なんだ!」
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引っ越し祝いとして、誰も入ったことのない零の部屋にズカズカあがり、高級布団をプレゼント。
ガランとした空虚な部屋に暖かい羽毛を…二階堂の行動は、まるで「心閉じてんじゃねぇぞ!零!!」と言っているような気がしました。
零は二階堂の気持ちも背負って、新人戦決勝に挑みます!
男の絆と友情のドラマ、最高の友は最強のライバル。
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あったかい川村家
あかり(倉科カナ)に拾われ介抱してもらう、零。
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あかりたち姉妹は、おじいちゃんの「三日月堂」という和菓子屋さんを手伝いながら、みんなで協力し合って穏やかに生きています。
バチバチの勝負の世界で生きる零にとっての心のオアシスと言えます。
家の中の猫たちが自由にしている感じや、所狭しと物があるのに温かみを感じる室内は、零のマンションの部屋とは正反対。
画面すべてで感情を表現しているような気がしました。
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母を亡くした姉妹の存在は、家族を亡くした零にとって身近に感じ辛さが分かったはず。
この家族と出会い、一緒に食卓を囲むことで、将棋盤以外の居場所と失っていた家族のぬくもりを取り戻します。
香子役・有村架純の悪役っぷりが半端ない!
とにかく零を憎んでいる香子(有村架純)。
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幸田家にきたばかりの小さな零に、香子が言います。
「家族もない、友達もいない、家もない…ゼロってあなたにピッタリの名前。ほら、あんたの居場所なんてこの世のどこにも無いじゃない?才能もゼロだよ、あんたっ」
大人になって川村家と仲良くしているのを見て、香子が零に言った言葉…。
「また、他人の家族食いものにするんだ、得意だもんね!不幸ぶって人んちに踏み込んで家族をめちゃめちゃに壊すのが!」
とにかくひどい…この世の悪口の中でトップ5に入るであろう悪態。
本当にあの物静かな幸田の娘なのかと疑ってしまうレベル。
怒りもこみ上げますが、零に敵意を向けまくるのを見て可愛そうな気もしてきます。
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若手ナンバー1は誰だ?!新人戦
決勝まで進んだ桐山零。
対局するのは…かなりイカツいスキンヘッドの山崎順慶五段(奥野瑛太)。
異常な緊張感で対局が進んでいきます。一手ごとに息を飲む展開。
零は将棋を通して、相手(山崎)の葛藤を知ります。
めちゃくちゃ怖い容姿の山崎ですが、見た目とは裏腹に自らの将棋に限界を感じていたのです。
小刻みに震え、スキンヘッドの上の方から一筋の汗が流れ落ちたとき、終局が見えました…。
棋士たちは大抵ピンチになると、水を欲するようです。棋士が水を飲みはじめたら要チェックですよ。
指し筋=人間性がじわじわじわと出てきます。
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獅子王戦トーナメント
準決勝、島田開(佐々木蔵之介)と戦った桐山零。桐山は負けてしまいます。
島田の度量の大きな将棋に、零は目が覚め、多くを学びます。
最後「島田さん…研究会に入れてください」と言った零に、将棋に対する迷いはもうないように見えました。
決勝、島田開vs後藤正宗(伊藤英明)の戦い。
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対局のシーンは将棋が分からない人でも、棋士同士のバチバチの空気感がよく伝わってくるのでおもしろいですよ。
宗谷獅子王に挑戦できるのは一体どちらなのか…おやつタイム含め、ぜひ楽しんでみてくださいね。
最後、獅子王戦の勝者と宗谷との対局は神経戦。
対戦相手が宗谷に負けてしまう寸前…死地に一瞬かいま見えていた閃光のような活路・会心の一手が桐山には見えました。
なんと桐山は、宗谷と同じ絶妙な手に気づくのです!
宗谷と桐山のみが気づいた一手。それが意味するのは…!
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ぼくのりりっくぼうよみの「Be Noble」が素晴らしい
主題歌は、ぼくのりりっくぼうよみの「Be Noble」。
桐山零の頭の中を全部コトバに書き起こしたような歌詞と、耳障りがイイのにこびりつくようなサウンド。
悩みながらも前に進む零を曲の中でも表現されているので、歌詞がこの映画のエピローグのように感じられます。
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『3月のライオン 前編』まとめ
3月18日、前編の公開から1年。劇場で、Blu-rayや配信で、沢山の方に観てもらうことが出来ました。本当に有難うございます!少しずつ冬が去り春が訪れ、順位戦はいよいよ大詰め!な3月を、将棋、漫画、アニメ、映画とともにまた是非楽しんでいただけましたら!!#3月のライオン pic.twitter.com/0avlBUd4fF
— 映画『3月のライオン』 (@3lionmovie) 2018年3月18日
以上、ここまで『3月のライオン 前編』の感想を述べさせていただきました。
- 17歳プロ棋士が大人の世界(将棋界)で生きていく難しさ・孤独
- 家族ってどんなもの?と考えさせる
- 棋士対局、にらみ合いの「モグモグおやつタイム」に爆笑
- キャストの配役最高。神木隆之介が主演、本人も認めるオタクぶりが演技に活かされている
- 棋士にとって3月は勝負月…加えて季節の狭間「3月」という不安定な月の存在を「思春期」「将棋界」になぞらえている
- 主題歌に注目!ぼくのりりっくぼうよみの「Be Noble」、桐山零の気持ちとリンクしたような曲
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