長寿人気シリーズである『007』シリーズの最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が2020年4月10に日本公開予定だったところ、コロナウィルスの影響で日本公開は11月20日にリスケとなりました。
公開延期になった『007』最新作ですが、ダニエル・クレイグは今作で2006年以来演じてきたジェームズ・ボンド=007引退を表明しています。
過去のジェームズ・ボンド俳優を振り返ると全員遅くとも50代で引退しているのでクレイグも50代の今が潮時と考えたのでしょうね。
ニコ・トスカーニ
近年だとクレイグは興行・批評の両面で成功した『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)で私立探偵ブノワ・ブランを演じ評判になっています。
同作はライアン・ジョンソン監督が続編の計画をしており新たな当たり役になるかもしれません。
50代を過ぎてベテランの域に入った俳優としては、一つ年上で同じくイギリス人のジェイソン・ステイサムは50を過ぎてもバリバリにアクションをやってますが、彼みたいのは例外として、年相応の良い役を得たのではないでしょうか。
と、少々話が脱線しましたが今回はシリーズ第25作である『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開に備えて『007』シリーズの歴史を振り返ってみようと思います。
目次
『007』シリーズとは?
『007』シリーズ基礎知識
過剰にお節介な気もするのですが、「そもそも『007』シリーズとは何なのか?」をシリーズを振り返る上で言及しておかなければならないでしょう。
『007』はイギリスの作家イアン・フレミング(1908-1964)のスパイ小説、およびこれを原作とするスパイ映画シリーズのことです。
原作小説の第一作は1953年に発表された「007/カジノ・ロワイヤル」ですが、権利の関係でしばらく映画化されず最初の映画化作品となったのは原作シリーズでは第6作目の『007 ドクター・ノオ』(1962)でした。
同作は製作費100万ドルという今では考えられないほどの低予算で制作されましたが、5,900万ドルもの興行収入を計上し、以降『007』はドル箱プロジェクトに進化します。
ジェームズ・ボンド=007を演じたショーン・コネリーは一躍大スターになり、計6作品でボンドを演じています。
フレミングが残した007シリーズは長編12本と短編集2本ですが、ドル箱プロジェクトになったシリーズが簡単に終わるはずもなく原作のストックが尽きた途中からは原作の世界観を踏襲したオリジナルになっています。
以降、俳優が年を取るごとに定期的にシリーズはリブートされ、ショーン・コネリー、ジョージ・レーゼンビー、ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン、ダニエル・クレイグの累計6人がジェームズ・ボンドを演じています。
ニコ・トスカーニ
ちなみに豆知識ですが『007』シリーズが初めて「映画化」されたのは1962年でも、「映像化」されたのは原作シリーズ第一作が発表された翌年(1954年)まで遡ります。
アメリカの大手放送局CBSがわずか1000ドルで「007 カジノ・ロワイヤル」の映像化権を買い取り、『クライマックス!(Climax!)』という一時間枠のテレビドラマになっています。
放送当時は大して評判にならなかったようですが、いまや同作はマニア垂涎の貴重映像となっており入手困難状態のようです。
調べても視聴方法がわからなかったので筆者も未見ですが、アメリカの放送局で放送するにあたりジェームズ・ボンドがアメリカ人に設定変更されているそうです。
ニコ・トスカーニ
なお、正当なシリーズ外の映画化作品として『007 カジノ・ロワイヤル』(1967)があります。
こちらはフレミングの原作を大胆にアレンジしたコメディーで、ピーター・セラーズ演じるイブリン・トレンブルというキャラクターに主人公が交代しています。
ジェームズ・ボンドも脇役として登場し、『旅路』(1958)などで知られるイギリスの名優デヴィッド・ニーヴンが演じています。
イアン・フレミングとジェームズ・ボンド
- 1908年にロンドンのメイフェア(ロンドン有数の高級エリア)に生まれる。
- 名門イートン校からサンドハーストの陸軍士官学校に進学。
- 銀行や問屋での勤務を経てロイター通信のモスクワ支局長を務める。
- 1939年から英海軍情報部(NID)に勤務。
- 第二次世界大戦中は諜報員として活動し、”Operation Ruthless”や”Operation Goldeneye”などの特別任務で指揮を執る。
- 母国語の英語の他にドイツ語、フランス語、ロシア語が堪能。
- スポーツ万能。
- 美食家で酒好きでプレイボーイ。
この経歴は原作で明らかになっているジェームズ・ボンドの経歴…ではなく、驚くなかれ原作者であるイアン・フレミングその人の経歴です。
「嘘だろ!?」とお思いになられた方が大多数だと思いますが、ジェームズ・ボンドは原作者自身の分身と言っても過言ではない存在なんです。
時代の流れでボンドが喫煙する場面は描かれなくなりましたが原作のボンドは一日70本も喫煙するようなヘビースモーカーで、これは原作者のフレミング自身がヘビースモーカーだったことに由来します。
ニコ・トスカーニ
『007』もドラマチックですがフレミング自身の半生も十分ドラマチックで、その半生は『ジェームズ・ボンドを夢見た男』(2014)というテレビシリーズになっています。
意外かもしれませんが原作第一作目の「カジノ・ロワイヤル」はディエップというフランスの小さな町の近郊にある(多分)架空の町、ロワイヤル・レゾーだけで物語が完結しており、現代の007シリーズに親しんだ我々からすると随分と地味な印象を受けます。
『007 カジノ・ロワイヤル』は2006年に初めて正当なシリーズとして映画化されましたが、映画のエピソードの半分ぐらいは映画のオリジナルです。
シリーズが進むにつれ、作品のスケールは肥大化しジェームズ・ボンドはどんどんスーパーマン化していきます。
ニコ・トスカーニ
なお、「リアルな諜報活動がどんなのか?」というと、これは一言で言うと「目立つな」です。
敵国に潜り込んで情報を盗んだり、偽の情報を流したりするわけですから当たり前ですね。
元CIA工作官のロバート・ベアが書いた『CIAは何をしていた?』および同書を原作にした『シリアナ』(2005)。
前述のジョン・ル・カレ原作の映画『裏切りのサーカス』(2011)あたりが実情を反映したものとして挙げられます。
また、作家イアン・フレミングの功績として見逃せないのが映画化もされた児童文学の名作「チキ・チキ・バン・バン」です。
血まみれの通俗文学作家で、人妻と不倫し、大酒飲みでヘビースモーカーで独身主義者だったフレミングですが、表面的なイメージに反して彼は子ども好きでした。
甥っ子や姪っ子にとっては「よく遊んでくれる面白くて格好いい叔父さん」で通っていたそうです。
フレミングは不倫の末に43歳でデキちゃった結婚していますが、一人息子のカスパー・フレミングを溺愛しており「チキ・チキ・バン・バン」は息子を寝かしつける為につづったものだったそうです。
ニコ・トスカーニ
ちょっと脱線しますが、フレミングの子供好きは作曲家のモーリス・ラヴェル(1875-1937)とイメージが重なります。
「ボレロ」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「水の戯れ」など音楽史に残る傑作を残したラヴェルは生涯独身でしたが、子ども好きで代表作の一つである「マ・メール・ロワ」は友人の子どもたちに献呈されています。
ニコ・トスカーニ
さらに蛇足ですが「ピーター・パン」の作者ジェームス・マシュー・バリー(1860-1937)も子供好きだったというエピソードが残っており、映画『ネバーランド』(2004)でその姿が描かれています。
原作のジェームズ・ボンド像
「灰色がかったブルーの瞳が、かすかに皮肉っぽくたずねかけるように落ち着いて見返してきた。決して一か所にとどまってくれない短い黒髪の一房が、右の眉毛の上でゆっくりとカンマの形を作った。右の頬に残る縦一直線の傷跡が、どことなく海賊めいた雰囲気を与えていた。」
出典:「007/カジノ・ロワイヤル」(創元推理文庫/白石朗・訳)
以上は「007/カジノ・ロワイヤル」でジェームズ・ボンドが鏡を見るシーンの引用です。
さて、この描写から歴代007の誰の顔が浮かんだでしょうか?
ニコ・トスカーニ
ロジャー・ムーアの姿も浮かばなかったし、ジョージ・レーゼンビーの姿も浮かんできませんでした。
「比較的近い」と感じたのはショーン・コネリーで「近い」と感じたのはティモシー・ダルトンとダニエル・クレイグです。
原作のボンドは傷が似合うようなワイルド系の風貌で、少なくとブロスナンのようなツルっとした二枚目ではありませんし、ムーアのようなスマートなおじ様でもありません。
どちらかと言うと悪人面寄り(表現が悪い?)のダルトンやクレイグの方がよりイメージに近いです。
ボンドの風貌は歌手、作曲家、ピアニストのホーギー・カーマイケル(1899-1981)をモデルにしているとフレミング自身も認めていますが、残された写真で見るカーマイケルの風貌もツルっとしたハンサムではなく渋い伊達男といった感じです。
ニコ・トスカーニ
ハードボイルド小説の大家レイモンド・チャンドラー(1888-1959)はフレミングと交友があり、またフレミングの作品を評価していたそうですが、その事実からも原作の作風が伺えます。
『007』シリーズの方向転換
前項の原作のボンドと比べるとロジャー・ムーア時代のボンドは軽妙過ぎるし、ピアース・ブロスナンのボンドはスマートすぎ、ショーン・コネリー時代のボンドも洒落っ気がありすぎます。
ニコ・トスカーニ
ティモシー・ダルトン時代のボンドは二作品しか作られていませんが、ダルトン時代の『007』は荒唐無稽なスペクタクルだった前任者のムーア時代から大きく方向転換しており、ハードボイルドな作風に回帰していました。
特に『007 消されたライセンス』(1989)は親友のCIA局員フィリックス・ライターが麻薬組織に重傷を負わされ、ボンドが復讐にひた走るという映画版の007シリーズ(特にムーア以降)に親しんだ人にとっては「何の映画なの?」と困惑しかねないぐらいハードボイルドな作風になっています。
しかし故ダイアナ妃を初め原作を熟読したファンからは「原作にもっとも近いボンド」と評価されたものの、ダルトン時代のボンドは興行的に奮いませんでした。
その結果、イーオン・プロダクションズは再び方向転換し、ダルトンとはまるで対照的な「ハンサムすぎてオーディションに落ちた」こともあるブロスナンに配役変更されました。
ニコ・トスカーニ
そこからさらにダニエル・クレイグに配役変更され、『007』シリーズは再びハードボイルド路線に回帰しました。
これには時代の流れもあったのでしょう。
ニコ・トスカーニ
CIA特殊工作員のジェイソン・ボーンが活躍する同シリーズはジェームズ・ボンドからプレイボーイの要素を除いたようなハードボイルドサスペンスで、血なまぐさくてひたすらシリアスです。
映画の『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)とジェイソン・ボーンシリーズ三作目の『ボーン・アルティメイタム』(2007)が一年違いで公開され、双方とも興行・批評的に大成功したのも時代の流れなのではと感じます。
ニコ・トスカーニ
歴代『007』を振り返る
さて、長くなりましたが「『007』シリーズとは何か?」「ジェームズ・ボンドはもともとどんな人物像だったのか?」という前置きが済みましたので歴代の007を振り返って締めくくりたいと思います。
ショーン・コネリー時代
ショーン・コネリーは『007 ドクター・ノオ』(1962)で初登板。
一度降板し、『007 ダイヤモンドは永遠に』(1971)で一作だけ復帰して卒業。
記念すべき初代ボンドであり、今も根強い人気を誇ります。
ニコ・トスカーニ
古い映画の何が苦手かというと主に二点で
- 1.「演出が洗練されてない」
- 2.「アクションが素人臭い」
です。
まず1.ですが、古い映画は「大きく引くでも寄るでもない中途半端なサイズの画がダラダラ続く」というのが多いです。
ニコ・トスカーニ
この演出の洗練度においてはハリウッド映画やヨーロッパ映画よりも日本映画の方が…少なくとも1960年代ぐらいまでは進歩していたと思います。
2.ですが、古いアクション映画は中途半端な距離でボコボコ殴り合っているだけのものが多くアクションに流れや駆け引き、力関係が描かれていません。
この辺は演出というよりアクションコーディネーター(日本風に言えば殺陣師)がついていないのが理由だと思います。
ニコ・トスカーニ
映画を撮る人が研究のために古い映画を見るのは意義のある行為だと思いますが、普通に見る分には正直おすすめしかねます。
何だか悪口だらけになってしまいましたが、洗練されていない初期『007』はアナログでノスタルジーな雰囲気のある作品だとも思います。
ニコ・トスカーニ
とりあえずコネリー時代のボンドなら『007 ゴールドフィンガー』(1964)、『007 サンダーボール作戦』(1965)あたりがお勧めです。
この辺りに「荒唐無稽なスパイアクション」という『007』シリーズに対するイメージの原型があります。
なお、コネリーは正式なシリーズ作品ではないものの『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983)でもボンドを演じています。
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ジョージ・レーゼンビー時代
『女王陛下の007』(1969)一作のみ。
ジョージ・レーゼンビーはオーストラリア出身で歴代007唯一のヨーロッパ外出身者。
ニコ・トスカーニ
ところでボンドの年齢ですが、原作でははっきりした描写は無いものの恐らく1920年代生まれだろうと目されているので「カジノ・ロワイヤル」のころは20代後半から30代前半ぐらいだったと考えられます。
彼以降、ダニエル・クレイグが30代でボンドに就任するまで40代の俳優が3人続きますがボンドが20代でも30代でも原作のイメージには反しないことになります。
レーゼンビーは撮影現場でトラブルメーカーだったにもかかわらずギャラアップを要求したため、1作で降板。
ニコ・トスカーニ
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ロジャー・ムーア時代
史上最年少のボンドの後は最高齢のボンド。
後任になったロジャー・ムーアは初代のコネリーよりも3つ年上で就任当時すでに46歳でした。
『007 死ぬのは奴らだ』(1973)で初登板し、『007 美しき獲物たち』(1985)まで12年間、史上最多の7作品に出演しています。
ニコ・トスカーニ
ムーア時代のボンドは荒唐無稽な大作映画にひた走った時代です。
就任一作目となった『死ぬのは奴らだ』はジャマイカを舞台にブードゥーの儀式がバックグラウンドという、スパイアクションというよりもヘンリー・ライダー・ハガード(1856-1925)以来のイギリスの伝統であるアドベンチャーと言った方がしっくりきます。
ライダー・ハガードっぽいと言ってピンとこないのであれば『インディ・ジョーンズ』っぽいと言ってもいいです。
『007 ムーンレイカー』でボンドはついに宇宙にまで飛び出し、荒唐無稽具合が頂点に達します。
正直、この時代の007シリーズは全体的に脚本が雑です。
ニコ・トスカーニ
この不自然さに対するパロディが『オースティン・パワーズ』シリーズであり、一種の回答がスパイアクションなのにはっきりコメディでもある『『キングスマン』』シリーズなのではと私は思います。
ちなみにムーア時代の『007 黄金銃を持つ男』(1974)に悪役で出演したクリストファー・リーは原作者イアン・フレミングの従兄弟にあたります。
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ティモシー・ダルトン時代
『007 リビング・デイライツ』(1987)、『007 消されたライセンス』(1989)の二作品に登板。
ニコ・トスカーニ
ティモシー・ダルトンはどちらかという悪人面寄りの風貌で(顔がデカイ)、「殺しのライセンス」の設定に似合ったワイルド系のボンドでした。
批評家からは好評だったものの興行成績はイマイチ。
また、恐らくはプロデューサーのアルバート・R・ブロッコリがムーア時代のようなファミリー映画路線を望んでいたという状況も影響して、歴代で2番目に短い就任期間となってしまいました。
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ピアース・ブロスナン時代
ピアース・ブロスナンは『007 ゴールデンアイ』(1995)て初登板し、『007 ダイ・アナザー・デイ』(2002)まで4作品に出演。
既視感のあるフレーズですがシリーズはまたしても方向転換し、ムーア時代のような荒唐無稽ファミリー映画路線に戻りました。
ニコ・トスカーニ
時代を下るごとに『007』シリーズは洗練されていき、演出もアクションもレベルアップしました。
ただ、ムーア時代から続く「何か雑」という印象はブロスナン時代でも拭えません。
ニコ・トスカーニ
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ダニエル・クレイグ時代
ダニエル・クレイグは『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)で初登板し『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで5作品に出演。
権利の関係でしばらく塩漬けにされていた原作第一作『007/カジノ・ロワイヤル』がようやく映画化。
ニコ・トスカーニ
ツルっとしたハンサムガイのピアース・ブロスナンから、どちらかと言うと悪人顔系のダニエル・クレイグに交代。
ボンドの年齢は一気に30代まで若返り、『カジノ・ロワイヤル』では原作にないボンドが007のコードを受けるまでが描かれています。
おおまかな印象はダルトン時代のボンドに近いですが、今までのシリーズとはっきり違いクレイグ時代の『007』シリーズには明確に連続性があります。
今までの『007』シリーズは一作ごとの繋がりがほぼゼロだったので、これはシリーズとしても初めてのことです。
ニコ・トスカーニ
クレイグ時代のボンドは生身感たっぷりの泥臭い系ボンドです。
『カジノ・ロワイヤル』冒頭でいきなりモノクロ画面でアクションシーンがありますが、ボンドは至近距離で組み合って殴り合い血まみれになりながら締め技でとどめを刺します。
無意味にボコボコ殴り合うより締め技で落とした方が実戦では明らかに効果的なので今までではありえないぐらいボンドの戦い方がリアルです。
戦う場所がトイレというのもポイントが高いです。
トイレは便器や鏡、タイルなど硬いものが多いのでぶつけて打撃を与えることができ、戦う場所として良いチョイスです。
ニコ・トスカーニ
ここまで劇的に変化したのも前述のとおり『ジェイソン・ボーン』シリーズが大ヒットし、リアル系のアクションが好まれる時代になったこともあるのでしょうね。
また『カジノ・ロワイヤル』『007 慰めの報酬』(2008)とシリーズでお馴染みのメカニックであるQが登場しないので、秘密兵器は一切出てきませんが007は最新のテクノロジーをバンバン使います。
21世紀になってIT技術が劇的に進化したので、昔ながらの秘密兵器が陳腐化してしまったのでしょうね。
ニコ・トスカーニ
相変わらず大雑把な部分は残っていますが、脚本もクレイグ時代になって劇的に洗練されました。
クレイグ時代の007は『ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)以降のシリーズ脚本を担当しているニール・パーヴィスとロバート・ウェイドのコンビが続投していますが、『カジノ・ロワイヤル』ではポール・ハギス、『スカイフォール』ではジョン・ローガンとアクション映画のイメージが薄い脚本家が共同脚本で参加しており、いい意味で『007』シリーズにノイズが入っています。
監督も『カジノ・ロワイヤル』こそアクションの経験が豊富なマーティン・キャンベルでしたが、2作目以降はマーク・フォスター、サム・メンデス、キャリー・フクナガとまるでアクションのイメージが無い監督が連続して登板しており、サスペンス性だけでなくドラマ性にも重きを置くようになったことが伺えます。
007シリーズは主要な映画賞からは殆ど無視されてきましたが、クレイグ版ボンドは興行的にも批評的にも大成功。
『カジノ・ロワイヤル』でクレイグは歴代007で初めて英国アカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、『スカイフォール』は同年に公開された『レ・ミゼラブル』(2012)をおさえて英国作品賞を受賞しました。
どちらも『007』シリーズ史上初の快挙です。
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次のボンドは?
さて、ダニエル・クレイグが引退表明したことで巷では「次のボンドは誰か?」という予想が盛んに行われています。
挙がっている名前にはリチャード・マッデン、トム・ハーディ、トム・ヒドルストン、ヘンリー・カヴィル、ジェームズ・ノートンなど主にイギリスの30-40代の白人俳優ですが、彼らに並んで黒人のイドリス・エルバの名前も頻繁に出ています。
ボンドはスコットランドとスイスの混血なので原作に準拠するなら白人でなければおかしいのですが、ミス・マネーペニーもフィリックス・ライターも今の『007』シリーズでは黒人になっているのでは意外に黒人ボンドが最有力かもしれません。
ニコ・トスカーニ
『007』シリーズまとめ
ここまで『007』シリーズをまとめてきました。
延期にはなってしまいましたが、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』はすでに完成しており、予告編を見る限りでもとても面白そうです。
劇場の大スクリーンでボンドの活躍を目にできる日を楽しみに待ちましょう。
そしてイアン・フレミングの原作もおすすめです。