原作は『ビッグコミックオリジナル』で連載中の同名漫画です。
保護司が主人公のはずなのに、気づけば森田剛のことばかり考えていました。それもそのはず、タイトルが『前科者』でしたね。
・原作にないオリジナルストーリー
・話の中心は保護司ではなく『前科者』
それでは『前科者』をネタバレなし・ありでレビューします。
目次
『前科者』あらすじ【ネタバレなし】
阿川佳代(有村架純)は、2つの仕事をしています。コンビニ店員と保護司です。
保護司とは、元受刑者に寄り添い更生を助ける存在。国家公務員ですが、ボランティアのため報酬はありません。
現在、阿川が担当しているのは殺人を犯した工藤誠(森田剛)という元受刑者。
自動車修理工場で真面目に働いていましたが、保護観察終了前の最後の面談に来ませんでした。
一方その頃、連続殺傷事件が発生。容疑者として捜査線上に浮かび上がったのは、工藤誠でした。
『前科者』感想・考察【ネタバレあり】
阿川佳代の生活
原作漫画では、3つの仕事をしています。新聞配達とコンビニ勤務、そして保護司です。
毎朝4時に起きて全力で自転車を走らせたあと、コンビニで品出しをしてレジ打ちをこなす。
ニヤニヤしている店長に嫌みを言われながら、保護司としても活動しています。
バイタリティがあふれかえって、同じ人間とは思えません。
有村架純がシャカシャカのジャージを着て新聞配達するなんて、想像できないので観てみたかったです。
それにしても、映画版の阿川佳代はコンビニ勤務だけで生活できているのでしょうか。まさかの週7日勤務⁉ 彼女なら、十分あり得る話です。
牛丼 vs ラーメン
仮出所した工藤誠は、その足で吉野家に行きました。牛丼をかきこんでお腹を満たしてから、保護司である阿川の自宅へ。「お腹空いてますよね?」と出された手作りの牛丼を、誠は何も言わずに勢いよく食べます。
“ これ以上、誰も傷つけたくない ”という誠の臆病な気持ちが隠れているような気がして、とても切なくなりました。
また別の日の面談では、弁当を用意して公園へ。誠は渡された牛丼弁当を食べながら、一番好きな食べ物がラーメンであることを明かします。それは、家族で行った思い出のラーメン屋があるからです。
なぜ誠は、仮出所した日にラーメン屋ではなく吉野家に行ったのでしょうか。私なら、間違いなく思い出のラーメン屋に行きます。感慨深い表情で牛丼を食べていたと思ったのですが、あまり深い意味はなかったんですね。
謎の男=工藤誠の弟
ラーメン屋で、誠と相席になった男がいました。プラモデルの箱を大事そうに抱えて、なぜか誠の目をじっと見たまま独り言をつぶやいています。魂が抜けたような顔をしたその男は、児童養護施設を出てから会っていなかった誠の弟・実(若葉竜也)でした。
公式サイトにも「工藤誠の前に現れる謎の男」とありますが、外見があからさまに謎めいています。
白い髪なのは、プラモデルの箱に入っている薬物を乱用しているからでしょうか。
偶然兄と相席になり、偶然兄の顔を見ながら独り言をつぶやき、店を出て声をかけられても一瞬兄のことがわからなかった“ 謎めかされている弟 ”。
都合の良い登場に、早くも話についていけるか不安になってしまいました。
連続殺傷事件の犯人
夜の河川敷で、誠と実は話をしています。そこに、キーキー音をさせて近づいてくる自転車。
実はゆっくり立ち上がると、通り過ぎようとした自転車の男性に向けて拳銃を発砲します。
交番勤務の警察官から拳銃を奪い逃走しているという、あの連続殺傷事件の犯人は実だったのです。
“ 警察官から拳銃を奪う方法 ”という物騒なキーワードを検索したら、拳銃を収めるホルスターについて書かれた記事を見つけました。
強奪を防止するため、2019年に新型樹脂製ホルスターの配備を開始。装着している本人以外の角度からは、簡単に取れない構造になっているそうです。
それにしても拳銃の扱いに慣れていない素人が、動いている対象者に1発で命中させるなんて。実にどんな裏設定があるのでしょうか、気になります。
ターゲットは5人
実が恨みをもっている相手は、5人います。
①話をまともに聞かなかった警察官(拳銃強奪)
②転居手続きをミスした福祉課の職員(射殺)
③虐待をしていた児童養護施設の職員(射殺)
④母親を殺害した義父
⑤義父を担当した弁護士
誠の目の前で射殺されたのは、3人目の被害者。誠は草むらに死体を移動させたあと、被害者の指を使い自分の頬に傷をつくりました。
前科者である自分のDNAを残すことで、弟を守ろうとしたのです。被害者の爪から誠のDNAが検出されたことで、警察は誠が容疑者であると断定。
保護司である阿川のもとに、話を聞きに行きます。そして、誠を追っている刑事・滝本真司(磯村勇斗)と阿川が再会。
映画だからでしょうか、事件のスケールが大きいです。主人公である保護司の存在が、どんどん薄まっていきます。
滝本と再会したことで明らかになったのは、阿川の隠された過去。
保護司を志すきっかけとなった重要な話ではあるのですが、逃走中の誠とは無関係なエピソードの追加に私は疲れてしまいました。
またしても奪われる
登場人物たちが、誠の義父・遠山史雄(リリー・フランキー)の自宅に集まります。弁護士・宮口エマ(木村多江)に連絡をとってもらい、直接会いに行く阿川。自宅周辺で張り込みをする警察。そして義父を射殺するために、誠の運転する車で実もやってきました。
実は、警察の制止をふりきって玄関の扉を破壊。義父に銃口を向けますが、引き金を引くことはできませんでした。一度は取り押さえられた実ですが、再び拳銃を奪うとその場で自殺します。
予告編で阿川が叫んでいたのは、目の前で実が自殺したからだったんですね。2度も簡単に拳銃が奪われるなんて、面白くありません。
同じ自殺を図るなら、取り押さえられたときに舌を嚙み切ってほしかったです。ちなみに、舌を嚙み切っても人間はなかなか死なないらしいですよ。
弟の代わりに
押収品の確認をしていた滝本は、最後のターゲットが弁護士であることに気づきます。
誠と会う約束をしていた弁護士は、入院している病室へ。看護師から盗んだ処置用のハサミを手に、待ち構える誠。しかし病室にやってきたのは、滝本から連絡をもらった阿川でした。
容疑者がいる部屋に、看護師ひとりで入るなんて不自然に思いました。処置をするために自分で用意した物品が不足していたら、看護師はすぐに気づきます。
病室の前には、常に警察関係者がいたはずです。簡単に阿川が入れたのは、どうしてでしょうか。疑問が次から次へと湧いてきます。
『前科者』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
・保護司に興味をもったら原作をチェック
・観たあとは牛丼を食べよう
以上、ここまで『前科者』をレビューしてきました。
しましろ