映画『斬、』ネタバレあらすじ・感想!侍映画なのにアンチ・サムライな時代劇!

斬、

Copyright© SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

『鉄男』『野火』などで知られる塚本晋也監督にとって、初の時代劇映画となった『斬、』の見どころをご紹介!

これまでの侍映画とは異なる”人を斬ることを恐れる”主人公の活躍によって、闘うこと・争うことの虚しさを痛感させてくれるドラマとなっています。

ポイント
・まるで戦争映画のようなドラマ
・侍らしからぬ”人を斬ることを恐れる”主人公の活躍
・池松壮亮×蒼井優の良タッグは必見

それでは『斬、』をネタバレなしでレビューします。

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『斬、』あらすじ【ネタバレなし】


都築杢之進と凄腕の侍・澤村との出会い

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江戸時代末期。浪人・都築杢之進(池松壮亮)は農家の手伝いや少年・市助(前田隆成)に刀の稽古をつけるなど、慎ましく暮らしていた。しかし稽古を受けた市助が戦に身を投じるのではないか、姉のゆう(蒼井優)は心配している。

当時は江戸幕府が開国をするか否かで揺れ動いており、京都では動乱が巻き起こっていた。ゆうは浪人である杢之進も戦に行くのではと心配するが、杢之進はその心配はないと安心させる。

そんなある日、杢之進と市助の稽古を見たひとりの侍・澤村(塚本晋也)がその腕を見込み、泰平を守るための組織に2人を勧誘する。杢之進と市助は澤村と江戸に行くことを決める。

村に訪れる不穏な空気…

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澤村が訪れてからしばらくして、村のそばに物騒な浪人連中がたむろしはじめる。彼らには悪い噂しかなく、このままでは農作業もできないと村人は皆恐れていた。

杢之進は連中と話すためにひとりで出向くが、リーダーの源田(中村達也)は「俺たちは悪いやつにしか悪いことをしない。

なのになぜ村人は逃げ隠れするのか?」と尋ねる。杢之進は臆することなく「その(悪人の)顔をやめればみんな歓迎してくれる」というと、皆笑いあい、杢之進は彼らのアジトで酒を酌み交わす。

しかし、村人たちは連中が去るまで杢之進の出発を延ばせないか説得するも、澤村はあくまで急ぐ。しかし出発当日、杢之進は体調を崩して寝込んでしまう。

復讐の連鎖がはじまる

出発が延期になって苛立つ市助は、うっかり源田の連中と出くわして喧嘩になる。市助はケガを負うが命に別状はなかった。それを受けた澤村は仇討ちとして、源田以外の連中を皆殺しにする。

これで一安心するゆうたちだが、 杢之進だけがこの事態を恐れていた。そしてその夜、杢之進が目を覚ますと、源田がほかの仲間を連れて復讐に来た後だった。澤村をかくまった罰として、市助をはじめとする村人たちが斬り殺されていたのだ。

ゆうは何もしてくれなかった杢之進を怒り、彼にこそ市助の仇討ちをさせるべきだと捲し立てる。

人を斬ることができない侍・杢之進

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翌日、澤村は杢之進を連れて連中のアジトに乗り込む。澤村は杢之進の実力を見るためにその場を去る。しかしこの状況でも杢之進は刀を抜かず、落ちていた木片で闘い続ける。しかし、隠れて後を付けていたゆうが連中に見つかり乱暴されてしまう。

それでも刀を振るえない杢之進。ついに澤村が現れ、今度こそ連中を皆殺しにする。その夜、杢之進は「私も人を斬りたい」と叫び続け発狂する。澤村は「明日、共に江戸に行かなければお前を斬る」と言い残す。

翌朝、杢之進は村を逃げ出していた。後を追う澤村に、ゆうは「なぜそこまで杢之進にこだわるのか」と尋ねる。

澤村は「自分の実力を確かめるため」と答えた。ゆうはこれ以上の戦いはやめてほしいと訴えるが、ついに杢之進と対峙した澤村は刀を抜く。

そこでついに杢之進は刀を振るい、澤村を斬り殺す。ゆうの願いは届かず、杢之進は人を斬った刀を引きずりながら森の中へ姿を消していった。

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『斬、』感想

まるで戦争映画のようなドラマ

本作ではゆうが江戸に行く杢之進に「死ぬんですか?」と尋ね、「…死にません」と返されるやり取りが2度あります。これはまるで戦争の残酷さを描く映画でよく見る、男女の別れを匂わせるやり取りです。

時代劇といえば歴史に名を残すほどの戦いを描く作品が多い中で、本作は戦うことに対するアンチ・侍映画の形をとっています。人を斬れば、また別の誰かが斬られると恐れる杢之進の恐怖は、戦わなければ平和が保たれることを体現していました。

それでも彼を戦いに連れていく澤村の存在は、本作における真のヒール役とも取れます。

作中の時代に限らず、もっと先の時代でも、杢之進のように”戦わない平和”を理解している人はきっといたはず。

しかし、他者(映画では澤村のような人物)の重圧につぶされてしまった人たちもきっと多かっただろうと、この映画のラストを見て感じました。

池松壮亮×蒼井優の良タッグ!

本作のもうひとつの魅力が池松壮亮×1蒼井優の共演です。『斬、』の翌年に公開された『宮本から君へ』でも主要キャストで共演した2人ですが、両作品とも池松壮亮演じる弱さと、蒼井優演じるの強さがとてもよく対比されています。

本作では人を斬れない弱さを持ちながら、争いをしない信条を持つ杢之進と、愛する弟を奪われ怒りに燃えるゆうとの対比が描かれていました。とくに蒼井優が演じる怒りや葛藤は、のちの『宮本から君へ』にも通ずる力強さがあり必見です。

サムライ映画のお約束が杢之進を苦しめる

人を斬れない杢之進ですが、その一方で典型的な侍・澤村の登場によって作中に緊張感が増していきます。

しかしその信条が災いして、村に悲劇が訪れてしまうのもまた事実…。復讐の連鎖、国のために刀を振るう侍のプライドなど…あらゆる侍映画の”お約束”が杢之進を苦しめていきました。

ラストの杢之進と澤村の対決によって、侍映画としての盛り上がりはピークに達しますが、杢之進のその後については様々な解釈ができそうです。

人を斬ることを恐れなくなった杢之進は、今まで通り「戦わない平和」を守り続けることができるのか?

まるで怪物のようになってしまった杢之進の姿を見ると、新たな悲劇の連鎖を想像せずにはいられません…。

『斬、』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・戦争映画にも通ずる、争いを否定するドラマ
・蒼井優が演じる怒りや葛藤を抱える演技は必見!
・怪物となった杢之進が伝えるアンチ・侍映画

以上、ここまで『斬、』をレビューしてきました。

ヤマダマイ

ひとりの浪人を通して見る、戦うことへの苦痛と虚しさを血生臭く描いた良作です!

ひとりの救われなかった男を通して、改めて平和な生活を守るために大切なことが学べる作品です。

塚本晋也監督が自ら演じた澤村のような、往年の侍がこれほど憎らしく感じたのも凄いと思いました…。

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