映画『横道世之介』は、「悪人」や「パレード」を書いた有名作家・吉田修一による同名小説を映画化した作品です。
- 大満足の160分、それでもまだまだ観ていたい…そう思えるような作品
- 理屈では表現できない傑作、この映画を見た人は見ていない人よりちょっと得した気分になる
- 衝撃のラスト、予想だにしない展開に動揺。母の手紙に号泣。
それではさっそく映画『横道世之介』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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『横道世之介』作品情報 吉田修一の同名原作小説を映画化した作品です。 吉田修一が書いた『悪人』などのサスペンス……
目次
『横道世之介』作品情報
作品名 | 横道世之介 |
公開日 | 2013年2月23日 |
上映時間 | 160分 |
監督 | 沖田修一 |
脚本 | 沖田修一 前田司郎 |
原作 | 吉田修一 |
出演者 | 高良健吾 吉高由里子 池松壮亮 伊藤歩 綾野剛 ムロツヨシ 黒川芽以 |
音楽 | 高田漣 |
【ネタバレ】『横道世之介』あらすじ・感想
160分、全然長くない!
『横道世之介』というタイトルだけでも気になってしまうこの作品。
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とにかく、ほっこりしながらもユルくはないという絶妙なテンポで進みます。
だから飽きずに観られ、むしろもっと観ていたい…と「おかわり」したくなってしまう。
沖田監督の才能が全開に発揮されています。
出てくる登場人物のキャラが、ひとりひとり魅力的に描かれていて理解しやすいのも160分惹きこまれる要因。
1987年の世界と2003年の世界が上手く交互するので、すぐに答えが出るようなスッキリ感もあります。
しかし、肝心なことはラストまで解らないという手綱を握られたまま、知りたいという欲求を刺激され気持ちよくストーリーにのめり込むことができるのです。
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でも、その結末が教えてくれることはとても尊いものです。
最後は「横道らしいな~」と回顧して自分の友達だったように感じてしまうエンディング。
心にイイものが何か残る、そんな映画です。
横道世之介(高良健吾)は本名!1987年の新宿にテンション上がる
1987年春、大学進学で長崎から上京してきた横道世之介(高良健吾)。
背中にリュックを背負い、パンパンに詰まったちょいダサめのバックを手に持って東京にやってきます。
いかにも田舎者で能天気そうなこの男が横道世之介。
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1987年の新宿の街並みを見ることができます。
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特に斉藤由貴さんのカセットテープのポスターは「懐かしい!」と喜んで観ていました。
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「これを観れただけでも価値がある!」と父は上機嫌。
テンション上がる両親を見て、こんな楽しみ方あるのかと発見でした。
2回しか登場しないのに…205の小暮さん(江口のりこ)がいい味出してる
世之介のアパート205号室に住んでいる小暮京子(江口のりこ)は、キッチンの小さな窓から首だけヒョッコリ出して話します。
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上京して初めて会話を交わしたのが小暮さん。
小暮さんは初めての会話で「シチュー温めてたの。食べてく?」と誘ってくれます。
横道がそれに素直に応じようとすると…途端に迷惑そうに「えっ、本当に?」と言うんです。
世之介のまっすぐさが小暮さんとの会話でより伝わってきますよね。
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小暮さんは「最初見た時、大丈夫?とか思ったけど、何だろ…隙がなくなった?いやあるんだけど、前よりなくなった気がする」と世之介に話します。
「俺も…ちょっと成長したのかもしれませんね」と世之介が満足そうに返事。
このやりとりが横道世之介が歩んだ1年の月日の密度を感じさせてすごく好きです。
小暮京子役の江口のりこさんがシニカルな雰囲気を醸し出していて、でも好意的な感じもひとつまみ効いている絶妙な演技をしています。
小暮さんの出演時間は少ないけれど、なかなか誰も言わないすごく重要な一言を発したように思います。
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1年の中で横道世之介に何があったのか…気になってきませんか?
関わった人が「ちょっと得した気持ちになる」横道世之介
世之介に関わったことで周囲の人たちが、変わっていきます。
みんな彼のまっすぐな心持ちと、ちょっとウザめだけど人を受け入れる大きさに救われていくんです。
学生時代、人には言えない秘密を持っていた加藤(綾野剛)は、世之介に打ち明けたことで救われました。
2003年、世之介をふと思い出したときに言う加藤の「あれ?何か得した気分。あいつに会ったっていうだけで何かだいぶ得している気がするよ」という言葉は、心にガツンときます。
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本当にこの言葉はピンポイントで「横道世之介」を表していてハッとさせられました。
映画の中の人物と本気で友達になりたいと思ったのは初めてです!
最強お嬢様現る!?
たいてい横道世之介という名前を聞くと「珍しい」とか「本名?」とかそんな返答が返ってくるのですが、最強お嬢様・与謝野祥子(吉高由里子)は違いました。
「横道世之介、お名前が韻踏んでますわね」と笑顔でひと言。
笑い上戸で活発。
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世之介に想いを寄せ、グイグイ積極的に攻めてきます。
しかし、世之介には他に気になる人が…それをものともせず、一途に明るく世之介を振り向かせようとする姿が愛おしい!
突然世之介のアパートに現れたり、夏休みの長崎帰省に一緒にきたり…行動力半端なし、待ったなしの祥子。
次第に世之介も祥子が好きになっていきます。
世之介が祥子に告白するシーンは悶絶の可愛さ。
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告白され…くるくるっとカーテンの中に隠れ、恥ずかしがる祥子の姿。
後半のクリスマスの初雪の中ではしゃいでキスをするシーン。
いろんなことが明らかになってきた後の2人の場面だったので、こみ上げたものが止まらず泣きながら見ました。
幸せそうに何度もキスを交わすふたりがとても眩しく見えます。
ほのぼのした「ほっこりカップル」の姿に癒され、泣かされます。
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なのにもっとこのカップルの続きが見たい!そう思わせる何かがあるんですよね。
日常の小さくてささやかな喜びを積み重ねた「幸せ」の温かさを教えてもらったように思います。
1時間43分頃、衝撃が走る!こんな未来予想だにしなかった…
横道世之介が想いを寄せていた千春(伊藤歩)は、2003年東京でラジオのパーソナリティーをしています。
この千春によってショッキングな事実が伝えられます…
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と思いながら、一旦思考停止してしまい…。
後にその場面にムロツヨシさんが出ていたと知るのですが…目に入らなかったほどに驚きました。
いま冷静に考えてみても、すごいストーリー展開だなと感心します。
ラスト読まれる世之介・母の手紙に涙腺がパンクした
世之介の母(余貴美子)が祥子宛てに書いた手紙、世之介のことを書いた文章が素敵なのです…。
久しぶりに祥子さんとお話ができ懐かしかったです。
お電話で話したもの送りますね。
世之介のことだから大したものではないかもしれませんけど。
…と文章が続きます。
そのあと母は…いつものんきなあの顔が浮かぶ。
世之介が自分の息子で本当によかったって思うことがある。
こんなふうに言うのはおかしいかもしれないけど、世之介に出会えたことが自分にとって一番の幸せではなかったかって。
またお話しましょう。きっと笑い話ばかりになりそうね。
…こう書き綴ります。
親に「出会えたことが一番幸せだ」と言わせるって最高の親孝行ですよね!
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『横道世之介』を観終えた後、毎日を少し丁寧に生きようと考えるようになりました。
平凡な毎日こそ特別で愛おしい…というとっても大事なことを確認させてくれる映画ですよ。
『横道世之介』まとめ
以上、ここまで『横道世之介』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- 長尺を感じさせないストーリーの面白さと沖田監督の構成と演出は凄すぎる
- 映画を観ただけなのに、人と関わるステキさを教えてくれる
- 平凡な毎日こそ特別で愛おしい…大事なことを確認させてくれる映画
- 公開前日、吉高由里子が「愛される映画になる」とツイートで宣言するほど。
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