映画『やがて海へと届く』あらすじ・ネタバレ感想！いなくなってしまった親友と過ごした日々を ふかく ふかく 思い出していく物語

映画『やがて海へと届く』には、公式サイトや予告編をチェックしただけではわからない秘密があります。

ビデオカメラに残された親友の秘密よりも、もっと大切な話です。

このレビューをさらっと読んでから、観るかどうかを判断してもいいかもしれません。

それでは『やがて海へと届く』をネタバレなし・ありでレビューします。

『やがて海へと届く』あらすじ【ネタバレなし】

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

内気で自分に自信が持てない湖谷真奈（岸井ゆきの）は、明るく自由奔放でどこかミステリアスな卯木すみれ（浜辺美波）と大学で出会い親友になります。

しかし、すみれは一人旅に出たまま行方不明に。

5年が経過しても、真奈はすみれのいない現実を受け入れることができません。そして、彼女を亡き者として扱う周囲の気持ちが理解できずに苦しんでいました。

ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野敦（杉野遥亮）から彼女が大切にしていた物を受け取ります。すみれがいつも肌身離さず持ち歩いていた、ビデオカメラです。

『やがて海へと届く』原作小説【ネタバレあり】

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

【奇数章】親友が行方不明になってから3年が経過した、真奈の視点

【偶数章】一人旅をしているときに津波にのまれた、すみれの視点

それぞれの視点で、交互に話が進んでいきます。

カフェで泣いている真奈に、心配して声をかけてきた女子高生 “カエルちゃんとキノコちゃん”。小説を読みながら、河合優実と見上愛の姿を思い浮かべていました。

楽しみにしていたのですが、映画にはカエルもキノコも登場しませんでした。

『やがて海へと届く』感想【ネタバレあり】

パーソナルすぎるスペース

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

真奈とすみれは、大学の新歓コンパで出会います。

居酒屋のトイレで、吐き気に襲われている真奈。出会ったばかりのすみれが、心配してやってきます。

「吐けないの？」「さわるね」「かまないでね」

吐けずに苦しんでいる真奈を見て、自分が持っているシュシュを使い髪を結ってあげてから、喉の奥に指を突っ込む。

のちに親友になれた二人だからいいですけど、私はもうドン引きです。パーソナルすぎるスペースに、勝手に指を突っ込むのはやめてください。

ダンディな楢原店長

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

『店長は楢原さんという顔つきがヤギに似た四、五十代の穏やかな男性で、垂れ気味のやさしい目をしている。』

引用元：『やがて海へと届く』彩瀬まる

店内のBGMを、客層を見てさりげなく変える楢原店長（光石研）。こういうタイプの人は雇われ店長より、こだわりの喫茶店やバーを自分で経営するほうが合っていると思いました。

本人にしかわからない理由で自ら死を選んでしまうわけですが、電話で「何か困ったことはある？」という真奈との会話が切ないです。

震災に限定することなく「当たり前に人はある日突然亡くなる」という思いを込めて書いたと、原作者の彩瀬まるがインタビューで語っています。

それでもやっぱり、楢原店長には “さらっと名言を吐くおじさん” として生きていてほしかったです。

キッチンリーダー国木田

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

『国木田さんは体が大きい。がっしりとした首や顎、大きく鼻の張りだした精悍な顔立ちがなんとなくライオンっぽい。』

引用元：『やがて海へと届く』彩瀬まる

この作品『やがて海へと届く』を観て、初めて中崎敏という俳優を知りました。180cmという高身長に加えて、優しく響く低い声が魅力的です。

口数が少ないだけで、周りへの気遣いがしっかりできるキッチンリーダー。中崎敏は、国木田のイメージにぴったりですね。

真奈と国木田（中崎敏）が東北に行ったときの、民宿での “2つの音” がとても印象的でした。

●真奈がお風呂に入っているときに、隣の男湯から聞こえてくる音。
●部屋で眠れずにいる真奈が壁を3回ノックすると、少し間があってからぎこちなく返ってくる4回のノックの音。

国木田の姿は見えないのに「俺は湖谷のそばにいるよ」と感じさせるような、愛おしくなる場面です。

原作では、徐々に心が近づいた二人のキスシーンがあるのですが…126分という限られた時間のなかで、そこまで描くのは難しいですよね。

開けっぱなしの窓

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

居心地のいい空間をつくりたいという真奈の部屋は、おしゃれ過ぎない感じがいいと思いました。晴れた日は、外のイスに座って日光浴。ベッドの横にあるテーブルが可愛いです。

そんなことより、真奈は窓を開けたまま寝てますよね？

女性の一人暮らしで、窓もカーテンも開けっぱなしだなんて考えられません。朝日をダイレクトに浴びたいのでしょうか。不審者とか虫とか余計な心配をしてしまい、物語に集中できませんでした。

ジョーズ

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

ビデオカメラを手にした真奈が振り返ると、そこには “もういないはずの” すみれの姿が。ポスタービジュアルにもなっている場面です。

このシーンで流れる音楽に、私は身体がぞわぞわしました。何かが起こると予告されているような、緊張感のある旋律。ジョーズが近づいてくるときの “あの感じ” に似ていると…思ったのは、きっと私だけですね。

すみれは、キスをするかのように自分の唇を近づけます。でも、キスはしません。お互い無言のまま見つめ合っていると、真奈の目からは大粒の涙が。

心揺さぶる感動のシーンだと思うのですが、すみれの無表情がとにかく怖いです。違う意味で、私は心を揺さぶられてしまい泣きそうでした。

アニメーション

(C)2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会

原作にでてくる “すみれが見たであろう景色” が、水彩画のようなタッチのアニメーションで描かれています。

小説を読んでから映画館に行ったので、顔の部分が白い菊で覆われている女性が登場しても、驚くことなく世界観を理解することができました。反対に、何も知らない状態で映画を観ると意味がわからないかもしれません。

そして心配なのは、終盤のアニメーション部分で黒い波にのまれる描写があるということです。作品の公式サイトや予告編を観ただけでは、東日本大震災の話だと気づくことができません。「3.11の話だってわかっていたら観なかった」そんな言葉を、ネット上でいくつも見かけました。

未成年の飲酒シーンがあるということでPG12（小学生以下は保護者同伴）に指定されている作品ですが、同じように3.11に関してもアナウンスしてほしかったです。

『やがて海へと届く』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

以上、ここまで『やがて海へと届く』をレビューしてきました。