『ウォーリー』は2008年に公開されたピクサー・アニメーション・スタジオ9作目の長編CGアニメ映画。
SF映画として非常に高い完成度でピクサーの守備範囲の広さを世界に知らしめました。
- 舞台は荒廃した地球!ディズニーとしてはかなり異質なSF映画
- 物語の印象明るく変える可愛いロボットたち!ただ可愛いだけではなく…
- 名作『2001年宇宙の旅』からのオマージュを多用し描く“人間賛歌”
それではさっそく映画『ウォーリー 』をネタバレありでレビューしたいと思います。
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映画『ウォーリー』作品情報 2008年に公開されたディズニー・ピクサー作品の『ウォーリー』。 可愛いロボットた……
目次
『ウォーリー』作品情報
作品名 | ウォーリー |
公開日 | 2008年12月5日 |
上映時間 | 97分 |
監督 | アンドリュー・スタントン |
脚本 | アンドリュー・スタントン ジム・リードン |
声優(英語/日本語) | ベン・バート/横堀悦夫 エリサ・ナイト/園崎未恵 ジェフ・ガーリン/草刈正雄 フレッド・ウィラード/小川真司 マッキントーク/江原正士 ベン・バート/吉野裕行 ジョン・ラッツェンバーガー/立木文彦 |
音楽 | トーマス・ニューマン |
主題歌 | ピーター・ガブリエル「ダウン・トゥ・アース」 |
【ネタバレ】『ウォーリー』あらすじ・感想
ディズニーが提示する退廃的な未来
ウォーリーは、ゴミをキューブ状に圧縮し積み上げる量産型ゴミ処理ロボット。
人類が地球を去ってから700年間もゴミを圧縮し続けていたウォーリーたちの最後の1機が本作の主人公です。
そう、本作『ウォーリー』の舞台はなんと西暦2805年。
人類はおろか、生物の姿がまったく見当たらない汚染された地球です。
ねお
さらに本作では、ピクサー作品として唯一実写の人間が登場します。
ウォーリーがゴミ山の中から発見したと思われる、1969年に公開されたミュージカル映画『ハロー・ドリー!』のVHSを観る場面があります。
その場面では実際の映画のワンシーンが使われるので実写の人間が映るのですが、映像の中にだけ存在する人間。
そして、その人間同士の恋に憧れる感情を持ってしまった独りぼっちのロボット、という状況に恐怖と悲しみを感じました…。
さらに物語の後半では、地球を棄て宇宙船で生活する人間たちが登場します。
しかし、長きに渡る宇宙船での生活によって筋力が弱り、丸々太って自力で歩くことができず、機械の椅子に頼りきって座ったまま生きています。
ねお
可愛い造形のロボットたちに与えられた役割
本作はウォーリーと、人類が地球へ帰還するための鍵となるイヴという2機のロボットを中心に物語が進みます。
この2機の可愛いデザインと恋の進展のおかげで深刻な物語がかなり和らぐ気がします。
また、『ウォーリー』を語る上では、舞台が宇宙船に移ってから登場するロボットたちも外せません。
ウォーリーとイヴは宇宙船内で欠陥があり、隔離されているロボットたちと行動を共にすることになりますが、みんな愛嬌があって可愛いです。
ねお
さらに、ただ愛嬌のある欠陥ロボットで終わらせないところが本作の魅力です。
地球へ帰還する直前、最後のピンチのときに欠陥ロボットたちが自分にできる能力(機能)を使って、足りない能力を互いに補ってウォーリーを助ける場面があります。
ねお
もうひとつ印象的なシーンがあって、ラインに沿って動くお掃除ロボットが遠くの汚れを磨くためにラインから飛び出すシーンは、自分の可能性を信じて決められた道から1歩外へ踏み出す勇気を示しているように感じました。
この辺りの描写は、すべて後述の物語の根幹に通じていると思います。
物語の根幹は“人間賛歌”
冒頭で「生物の姿がまったく見当たらない」と書きましたが、ウォーリーの地球での唯一の友だちに“ハル”という名前のゴキブリがいます。
また、宇宙船の自動操縦AIのAUTOは不朽の名作として名高い『2001年宇宙の旅』に出てくる“HAL 9000”と同じ赤い目が特徴的な外見をしています。
さらに、宇宙船の艦長であるBマックリーがAUTOに反旗を翻し、自分の足で立ち上がるシーンでは、まさに『2001年宇宙の旅』で使用されたことで有名なリヒャルト・シュトラウス「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れます。
ねお
地球を汚染し、ゴミで溢れさせて生物が生活できない環境に追い込み、宇宙へ逃げ延びたものの機械の言いなりになって怠惰に生きる人類、文明社会の最悪の末路です。
しかし、イヴが地球から植物を持ち帰り、地球への帰還がはじまると、最初は艦長から、そして人々が人間性を取り戻していきます。
人類の歴史にはじめて触れた艦長は、地球に憧れを抱き、目を輝かせて文字通り“自立”します。
農作物を育て、歌い、踊り、文化を育み、技術を開発し文明を築く。
宇宙空間で暮らす人類が忘れてしまった輝かしい歩み。
やがて宇宙船の人々も機械に頼る生活から脱して、自分の足で立つことを知り、日々の営みを知り、人類の歴史を再興していく道へと進み、物語は幕を閉じます。
文明の否定から始まった物語が、人類の歴史を美しく描く結末に着地する。
これ以上ない素晴らしい“人間賛歌”だと思いました。
『ウォーリー』まとめ
以上、ここまで『ウォーリー』について紹介させていただきました。
- 汚染された地球、機械に管理された人間、恐ろしい舞台からはじまる物語
- 現代社会に通じるメッセージ性を持ったロボットたちの活躍
- 文明社会の否定と肯定、俯瞰的な視点から描かれる美しい人類の歩み
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