映画『バイス』あらすじ・ネタバレ感想!米国史上最強の権力に溺れた副大統領の半生

出典:映画『バイス』公式ページ

米国史上最強の権力を握った副大統領ディック・チェイニー。

そんな彼の半生を描いた一代記にして痛烈な批判精神を持ったブラックコメディです。

ポイント
  • そっくりすぎるキャスト達
  • アクロバティックで自由な演出スタイル
  • 権力がいかに暴走しやすくて、監視しなければならないものかよくわかる
  • 権力に踊らされ狂わされていく者たちの物語

それではさっそく映画『バイス』についてレビューしたいと思います。

映画『バイス』作品情報

『バイス』

出典:映画.com

作品名 バイス
公開日 2019年4月5日
上映時間 132分
監督 アダム・マッケイ
脚本 アダム・マッケイ
出演者 クリスチャン・ベール
エイミー・アダムス
スティーヴ・カレル
サム・ロックウェル
タイラー・ペリー
アリソン・ピル
ジェシー・プレモンス
音楽 ニコラス・ブリテル

映画『バイス』あらすじ


1960年代半ば、酒癖の悪い電気工ディック・チェイニー(クリスチャン・ベイル)は、恋人のリン(エイミー・アダムス)に激怒され、彼女を失望させないことを誓う。

その後、下院議員のドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)のもとで働きながら政治のイロハを学んだチェイニーは、権力の中に自分の居場所を見いだす。

そして頭角を現し大統領首席補佐官、国防長官になったチェイニーは、ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)政権で副大統領に就任する。
出典:シネマトゥデイ

映画『バイス』みどころ

『バイス』みどころ

ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーを描く社会派ドラマ。

アダム・マッケイ監督、クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレルをはじめ、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスタッフ・キャストが再び集結。ベイルは大幅な肉体改造を行い、チェイニー副大統領にふんした。

エイミー・アダムス、サム・ロックウェルらが共演している。
出典:シネマトゥデイ

映画『バイス』を視聴できる動画配信サービス

『バイス』は、下記のアイコンが有効になっているビデオ・オン・デマンドにて動画視聴することができます。

なお、各ビデオ・オン・デマンドには無料期間があります。

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注意点
  • 動画の配信情報は2019年4月10日時点のモノです。
  • 動画配信ラインナップは変更される可能性もありますので、登録前に各サービスの公式ページにて必ずご確認ください。

ご覧のとおり、2019年4月10日現在はどこのビデオ・オン・デマンドでも配信開始となっておりません。

動画配信が開始になり次第、追って情報を掲載させていただきます。

【ネタバレあり】映画『バイス』感想レビュー

キャストのそっくりぶりと演出の奇抜さ的確さがスゴイ

1941年生まれで、ブッシュ政権副大統領時には60代の薄毛の肥満男だったチェイニーを演じるのは、現在44歳のクリスチャン・ベール。

今までも様々な肉体改造を見せてきた彼は、今回も頭を剃って、20キロ増量、さらにはアカデミー賞を受賞したメイクアップの力も借りてチェイニーになり切っています。

ぼそぼそした喋り方や目つきの悪さ、口のゆがみも色んな映像を見て完コピし、もはや本人にしか見えません。

おまけに徐々に体重を変えて20代から60代までを演じているという離れ業です。

ブッシュ大統領をを演じるのは『スリー・ビルボード』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したサム・ロックウェル。

彼もメイクと、ブッシュ独特の眉を顰める表情をマスターしてかなりのそっくりぶりです。

チェイニーの師匠ラムズフェルドを演じるスティーブ・カレルは割とスティーブ・カレルそのままでしたが(笑)

個人的にはパウエル国務長官を演じた、コメディアンのタイラー・ペリーがあまりにも似ててびっくりしました。

また普通だったら重苦しくなる題材のはずの本作を、コメディ映画出身のアダム・マッケイ監督は自由で奔放な演出でブラック・コメディとして描いています。

誰もがびっくりするのは映画開始50分のところで突然エンドロールを流して一度映画を終わらせかけるシーンです。

そのシーンはただの意外性のギャグではなく、「ここでエンドロールが流れるように、チェイニーの表舞台の人生が終わってくれていれば…」と思わせるための演出という意味もあります。

それくらい、この疑似エンディングの後に起きることはおぞましいのです。すべて実話ですけどね。

また無口なチェイニーが、そのとき何を考えていたのかを表現するために、突然シェイクスピア風の劇が始まったり、ブッシュ政権の閣僚たちがフレンチレストランのメニュー説明を受けるように「こんな違法行為の正当化の方法がありますよ」と薦められてノリノリでそれを聞くシーンがあったりとやりたい放題。

しかし、すべてただ笑わせるためだけでなく、観客にいかに恐ろしいことが起きていたのかを説明するために機能しています。

それから本作には、冒頭からずっとチェイニーの人生や、それに沿ったアメリカの歴史を語る謎のナレーターの男がいますが、彼の正体が誰なのかという点にも注目してほしいです。

それが分かった瞬間なんとも言えない気持ちになります。

また、チェイニーが趣味の疑似餌を使った釣りをしているシーンがいくつかインサートされるのですが、それが何を意味しているかは映画を見ていれば分かります。

彼は様々な抜け道や詭弁や裏工作で国民や、他の政治家たちを釣り上げて利用したのです。

副大統領が裏で政権を牛耳ってイラク戦争まで起こし、世界を滅茶苦茶にしたという実話は、そのまま語れば陰惨極まりないですが、本作はコメディ演出や様々なイメージ映像を使ってポップにわかりやすくそれを見せてくれます。

おまけにたった130分にチェイニーと取り巻きが行った悪事を高密度に詰め込んで、かつ分かりやすくテンポよく見せてくれます。

もちろんだからといってこの話の恐ろしさが損なわれているということはなく、むしろ先鋭化されています。

権力の暴走が恐ろしい

本作は我々の政治への根拠のない信頼をことごとく打ち砕いてくれます。

「難しいことは立派な人物たちに任せればいい」

「とりあえず今日が楽しければいい」

「政治家も人間なんだから、そんなひどいことはできないだろう」

そう思って権力側を野放しにしていた結果が、本作の後半にこれでもかと描かれています。上記のような考えは憶測であり願望に過ぎません。

序盤に若手時代のチェイニーが師匠ラムズフェルドに「理念はないのですか?」と聞くと、ラムズフェルドが「理念?こいつは傑作だ」と爆笑する場面があります。

これは別にラムズフェルドが特別に悪徳というわけでもなく、政治家なんてそんなものだと描いていると思います。

自分と同じように欲望も弱さも狡さも持っている人間が、支配して決定する側に回って、何をしてもバレない批判されない状態になったら一体どうなってしまうのか、少し考えてみれば分かることです。

チェイニーが劇中で推し進める一元的執政府論というものがあります。

一般的に言われる三権分立ではなく、特に緊急事態においては議会を通さずに大統領権限に基づいて物事を決めていいという考え方です。

実際は大統領ではなく副大統領がその権限を手にしていたわけですが、なんにせよ自由で民主主義の国アメリカで、一時的にでもそんな状態になってしまっていたのです。

しかし、そんな状況を選んだのは主権者たる国民です。

9.11という悲劇によって人々は自由よりも安全を求め、政府の権限が拡大されることを許してしまいました。

政府からは監視される一方、どさくさに紛れて富裕層への減税や特定の企業と政府の癒着、正義の国アメリカにあるまじき拷問行為の合法化などの横暴が見過ごされました。

人々が真面目に絶対視している憲法や法律も解釈次第でいくらでも都合よく捻じ曲げられるということも、本作はきっちりと見せてくれます。

もちろんこれはアメリカ以外のどこの国でも起き得ることです。無関心は自分の首を絞めます。

ラストにチェイニーがカメラ目線で喋るセリフと、エンドロール後についているおまけ映像を見ると余計にその思いが強まります。

映画で楽しんで終わりにしてはいけないのです。

権力に溺れた側の悲劇

チェイニーは決してただの悪魔ではありませんでした。

彼は奥さんと子供を愛し、本当は田舎暮らしで釣りをしている方が性に合っていたような普通の男でした。

しかし、才気あふれるのに女だからという理由だけでキャリアアップができない妻リンの夢を叶えてあげようと若きチェイニーは頑張ります。

彼にとって権力を得ることは奥さんに喜んでもらうための手段だったのですが、権謀術数渦巻く政界に身を置くうちに、権力自体が目的化していってしまいます。

リンも含め、この夫婦は権力にとりつかれ、麻薬のようにズブズブとハマっていってしまうのです。

何度か彼らが権力から離れられるチャンスはあったのですが、たまたま上手くいってしまったり、権力側から彼らに近づいてきたりと、なんだかんだで突っ走ってしまいます。

私は2度この映画を見て、最初はチェイニーたちに「ふざけんな!」と怒っていたのですが、2回目からは「ああ、ここで政治から離れていれば、彼らも世界中のみんなも幸せになれていたのに…」と悲劇的な目線で見てしまいました。

チェイニーは劇中でどんどん顔が歪んでいきます。

実際にそうだったらしいのですが、彼は無理して権謀術数渦巻く政治の世界に身を置いていたので、その辛さが見た目に出てしまっているのです。

権力で身を持ち崩していくのはチェイニーに利用されたブッシュ(彼も父の期待に応えたいという想いがありました)、権力の使い方を教えながら最終的に裏切られるラムズフェルド、とある場面で自分の良心に反する行為をする羽目になるパウエルも一緒です。

一番恐ろしいのは、常にホワイトハウスに、いや世界中に潜む権力そのもの。

だからこそ、みんなで見張って誰かに偏ったりしないように気を付けなければならないと教えてくれる映画です。

映画『バイス』まとめ

以上、ここまで『バイス』について感想を述べさせていただきました。

本作『バイス』と、『記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜』をセットで見るとより一層楽しめるはずです。

映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』あらすじ・感想と解説!9.11同時多発テロからイラク侵攻までの記者視点の真実
要点まとめ
  • 俳優の演技と演出が一級品且つ意表を突かれます
  • どれだけ恐ろしいことが起きていたのか身もふたもなく教えてくれます
  • 権力がどれだけ人を狂わせるかよくわかります

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