「賢い医師生活」のユ・ヨンソクと、『007/慰めの報酬』でボンドガールを演じたオルガ・キュリレンコがタッグを組んだ、韓国とフランスの合作サスペンス『バニシング:未解決事件』が5月13日より公開されます!
韓国×フランスというコラボによって実現した、サスペンスとロマンスの融合が見られる本作の見どころをご紹介!
・短い作品ながらオルガ・キュリレンコの魅力もたっぷり
・細かな”フランス的”演出が随所に効いている!
それでは『バニシング:未解決事件』をネタバレなしでレビューします。
目次
『バニシング:未解決事件』あらすじ【ネタバレなし】
指紋のない死体
韓国・ソウルで身元不明の女性遺体が発見された。事件を調査するパク・ジノ刑事(ユ・ヨンソク)は専門家から遺体の様子を確認すると、死亡時期は一か月前で死因は不明。さらに指紋が失われた上に、全身に酷い傷が残されていた。ジノは専門家から紹介された国際法医学者のアリス・ロネ(オルガ・キュリレンコ)に、遺体の身元特定の協力を依頼する。
シンポジウムのために来韓していたアリスは、ジノの依頼を引き受けると、特殊な技術で指紋の検出に成功する。指紋から遺体は中国人女性であることが判明し、出稼ぎのために、身寄りのない韓国までやってきたことが発覚した。
トラウマを抱えるアリスと事件の闇を追うジノ
ホテルに戻ったアリスだが、過去のトラウマを思い返す悪夢にうなされる。彼女は故郷のフランスで、ある暗い過去を抱えていた。遺体の調査に協力したことも、トラウマによって生きた人間の手術ができなくなったからだ。
後日、発見された遺体の腕に残された傷が、麻酔の投与ではなく輸血の痕だと発覚する。それは被害者を長く生かすことを意味し、臓器摘出のための手段だった。ジノは事件の背後に臓器売買が行われていると考える。捜査が本格的に動き出したとき、臓器摘出の新たなターゲットが決まる…。
『バニシング:未解決事件』感想
韓国映画のダークな世界観とフランス映画のロマンスが融合!
本作最大のポイントは、韓国映画の特長ともいえる暗く重いサスペンス要素と、フランス映画の強みでもある「男と女」のロマンス要素が融合している点です。本作は『チェイサー』や『殺人の追憶』を参考にしており、臓器売買の実態や、その背後にある組織的な闇を垣間見ることができます。監督のドゥニ・デルクールはフランス人ですが、彼が監督だと知らなければ、普通に韓国人による韓国映画と思うほどの完成度です。
一方で、王道の韓国サスペンスと異なるのは、ジノとアリスの関係性が徐々にロマンスに発展していくところです。2人がいい感じの雰囲気になるシーンが幾度かあり、その際にはフランスのロマンス映画で耳にするようなムーディーな劇伴まで…!
この辺りは”サスペンスもの”としての賛否が分かれる演出かもしれませんが、個人的には新しいジャンルの掛け合わせを感じられて面白かったです。
監督のドゥニ・デルクールも、インタビューで「事件の解決だけを目的にするのではなく、様々な人物のストーリーまで盛り込んだ緊張感溢れる映画を作りたかった」と語っています。事件の結末だけでなく、ジノとアリスの関係性にも注目してほしい作品です。
短い作品ながらオルガ・キュリレンコの魅力もたっぷり
オール韓国ロケの本作で、唯一韓国以外のキャストであり、ヒロインを演じたオルガ・キュリレンコ。ウクライナ出身の俳優であり、2001年にフランスの市民権を獲得しています。本作では完全アウェイという設定ですが、あるトラウマによって、祖国から離れた韓国に滞在しているような影も見せていました。
88分というコンパクトな本作ですが、それでもオルガ・キュリレンコの魅力はたっぷり感じられます。トラウマを抱えながらも、逃げずに事件の真相を追及する姿は勇ましく、文化や習慣の違うジノたちを理解しようする優しい一面も見せていました。
オルガ・キュリレンコ自身も、本作のシナリオを読んで「絶対に演じたい」と熱意を見せており、作中で登場する手術シーンもスタントなしで演じています。
思っている以上にガッツリ活躍しているので、キュリレンコファンの方はマストで見た方がよい作品です!
細かな”フランス的演出”が効いている!
本作で捜査が動き出すきっかけとなるのが、アリスが実践した特殊な指紋の検出方法です。その手法はかなり独特で、成功させるには、ジノのように医療の専門家でなくても立ち会う必要があります。ビジュアル的にも「おおっ…」となる感じなので、自分がその手法に立ち会っていたら、全身がこわばってしまうかもしれません…。あの手法は実在するのか、ちょっと気になります。
個性的な演出はほかにもあり、ジノが姪っ子にマジックを披露するために練習しているシーンが何度か登場します。アリスと距離を縮めるために披露したり、同僚に見せたりするシーンもあるなかで、ついには捜査のために乗り込んだ現場でさえ、マジックを披露するというハマりっぷり…(笑)
…なんて書くと、ちょっと間が抜けたように見えますが、現場でのマジック披露はぜひ注目してほしいシーンのひとつ。犯人との静かな攻防戦を描くうえで、非常に見ごたえがありました。あのような演出が成せるのも、韓仏合作だからこそ。ベースは韓国映画ならではのダークさに、随所でフランス特有のユーモアやムーディーな感じが活きている、面白い化学反応が見られる作品でした。
『バニシング:未解決事件』あらすじ・感想まとめ
・オルガ・キュリレンコが熱望した役をぜひチェックしてほしい!
・手品は時に敵を制圧する
以上、ここまで『バニシング:未解決事件』をレビューしてきました。
本作のように、作風がイメージづけられている国同士がタッグを組むことで、面白い化学反応が起きることが分かりました!
今作をきっかけに、もっといろんな国同士でお互いの強みを掛け合わせた、新たなジャンル映画が誕生していくといいですね!
ヤマダマイ