映画『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』は、特撮のテレビ番組『ウルトラマンジード』の後日談となる、完結編を描いた映画作品です。
この作品にはどんな想いが隠されているのか。私なりにヒモ解いていきます。
- 沖縄で繰り広げられる、ウルトラマンジード最後の戦い
- 坂本浩一監督のあふれ出るウルトラマン愛
- 主人公リクのヒーローとしての成長を描いた感動の名作
目次
『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』作品情報
作品名 | 劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!! |
公開日 | 2018年3月10日 |
上映時間 | 70分 |
監督 | 坂本浩一 |
脚本 | 根元歳三 |
出演者 | 濱田龍臣 山本千尋 長谷川眞優 小澤雄太 本仮屋ユイカ 宍戸開 ジャッキーちゃん 青柳尊哉 石黒英雄 |
主題歌 | May J.「絆∞Infinity」 |
音楽 | 川井憲次 |
本作の監督は、テレビシリーズでもメイン監督を務めた坂本浩一。
脚本はテレビシリーズ第14話・第15話を担当した根元歳三が担当して制作されています。
『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』あらすじ
知的生命体が存在する星を破壊する巨大人工頭脳ギルバリスが地球に近づく。
朝倉リク(濱田龍臣)ことウルトラマンジードはギルバリスが“赤き鋼”を入手するために地球へやって来たことを知り、その手掛かりのある沖縄へ行く。
沖縄で出会ったアイル(本仮屋ユイカ)にある使命を託されたリクのもとにクレナイ ガイことウルトラマンオーブ(石黒英雄)、ウルトラマンゼロが駆けつけ、ギルバリスに戦いを挑む。
出典:シネマトゥデイ
『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』みどころ
ウルトラマンベリアルの遺伝子を受け継ぐウルトラマンジードを主人公とする特撮ドラマシリーズの劇場版。
究極形態ウルティメイトファイナルとして目覚めたジード、ウルトラマンオーブ、ウルトラマンゼロが集結し、巨大人工頭脳と戦う。
朝倉リク(ジード)を演じる濱田龍臣をはじめ、山本千尋や長谷川眞優らドラマ版のキャストに加え、ゲストとして本仮屋ユイカらが出演する。
本作のドラマ版や、多くの特撮作品を手掛けてきた坂本浩一が監督を務める。
出典:シネマトゥデイ
『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』を視聴できる動画配信サービス
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【ネタバレ】『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』感想レビュー
今作における過去のウルトラシリーズのオマージュ。そこにはウルトラマンジードの完結編としての重要な意味がある!
まず始めに、テレビ本編の『ウルトラマンジード』について少しだけ書いておきます。
メイン監督および今作の監督を務めた坂本浩一監督はこのように語っています。
最近の特撮で見なくなった画を撮りたい。
出典:ウルトラマンジード超全集
たしかにテレビ本編では、水上での戦いや泥にまみれるウルトラマンなど、昭和のシリーズではあったけれども、最近は見られなくなった描写が多く取り入れられておりました。
この試みについては、
- 「かつて見たものをもう一度見る」と言い換えられます。
- そして今回の映画は、ウルトラマンジードの「最後の戦い」となります。
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『初代ウルトラマン』のバトル設定
今作のラスボスであるロボット怪獣ギルバリス。
ギルバリスには、ウルトラマンの光線技が効きません。
この設定は『初代ウルトラマン』の最終回に登場したゼットンと一致しています。
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『ウルトラセブン』を連想させるシーン
中盤に主人公リク(男)がアイル(女)と砂浜で語り合うシーンがあります。
背景には沖縄の海があり、男女が海を背景に語り合うという場面です。
これは『ウルトラセブン』の最終回でダン(男)とアンヌ(女)が語り合う場面を連想させます。
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『帰ってきたウルトラマン』と同じ見送り方をする
ラストシーンで、ウルトラマンゼロと仲間たちが宇宙へと帰還します。
それをリクたちは夕焼けの砂浜で見送っています。
宇宙へと帰還するウルトラマンを夕焼けの砂浜で見送るという場面は『帰ってきたウルトラマン』の最終回にもあります。
タイトルの「願い!!」は『ウルトラマンエース』のセリフを思い出させる
今作のタイトルにもなっている、掛け声「つなぐぜ!願い!!」。
この「願い」の部分に注目してみます。
『ウルトラマンエース』の最終回で「~前略~ これが私の最後の願いだ。」という印象的なセリフがあります。
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赤い空は、映画『ウルトラマン物語』と設定が似ている
最後の決戦で、ロボット怪獣ギルバリスと戦う舞台である惑星クシアは、赤い空に覆われています。
『ウルトラマンタロウ』の最終回後に公開された、映画『ウルトラマン物語』のラストも赤い空の惑星でロボット怪獣と戦います。
※ただし、時系列的には過去にあたります。
上述のように、昭和のウルトラ兄弟たちの「最後の戦い」を意識した場面が多くあります。
ウルトラマンジードの最後の戦いを描く今作は、「かつて見た」ウルトラ兄弟の最後の戦いを背負った作品でもあるのです。
若きウルトラマンであるジードも、これからは「ウルトラマン」という大きな責任を背負って戦っていくとも深読みできます。
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シリーズ構成、乙一氏が描く運命とウルトラマン
テレビ本編のウルトラマンジードは、作家の乙一氏がシリーズ構成を務めました。
彼の小説では何度か運命論が書かれています。
短編『calling you』では、主人公が過去を変えるべく奮闘します。
しかし、結局過去を変えることはできませんでした。
同じく短編『失はれる物語』にて、交通事故で体中が麻痺してしまった主人公が、自らを以下のように表現します。
「どこかに降りて休むことができず、苦しくても永遠に羽を動かし続けなくてはならない運命を背負わされた蝶だった。」
乙一氏の作品では、運命とは変えることができないものだと描かれることが多いです。
しかし、ウルトラマンジードは「運命をひっくり返す」というテーマがありました。
人間を完全に超越した存在であるウルトラマンを描いた乙一氏。
ウルトラマンとは不可能を可能にしてしまう一種の神のような存在なのです。
その存在は、乙一氏が自ら描いてきたテーマをも「ひっくり返した」のです。
映画で、乙一氏は脚本協力に回っています。(脚本は根元歳三氏)
今回の映画で登場する武器ギガファイナライザー。この武器は誰にも起動させることができません。
しかし、覚悟を決めたリクは見事に起動させます。ウルトラマンジードにしか扱えない武器なのです。
「ウルトラマン」は特別な存在であり、人々の希望であることを見事に描いています。
「ウルトラマンになれなかった男」ジャグラス・ジャグラーが、ギガファイナライザーを起動できないというくだりも、ギャグシーンに見せかけて「ウルトラマン」という存在を際立たせる意味があるのです。
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「僕らはみんなでウルトラマンなんだ!!」この名セリフに隠された多層構造。
予告でも聞くことができますが、映画のクライマックスでリク=ウルトラマンジードはギルバリスに向かって叫びます。
「僕らはみんなで、ウルトラマンなんだ!!!」
ウルトラマンであるリクも決してひとりで戦っているわけではなく、仲間がいるからこそウルトラマンとして戦えるという魂のこもった叫びです。
数々の戦いを仲間とともにくぐりぬけてきたリクの信念がこもっています。
このような主張は、過去のウルトラシリーズでも度々扱われてきました。
その中でも今回のセリフは、様々な思いを含んだとても厚みを持ったセリフになっています。
リクは生まれたとき天文台に置き去りにされていました。生まれたときの彼は独りだったのです。
なぜなら、敵の作戦によって人工的に作られた存在(=ウルトラマン)であったからです。
リクはウルトラマンとして生まれたが故に、独りだったのです。
つまり、ウルトラマンであったが故に独りだったリクが、「自分をウルトラマンたらしめるのは独りじゃないからだ。」と叫ぶという反転するつくりになっています。
中盤でクレナイ・ガイ(=ウルトラマンオーブ)がリクに言うセリフ、
「ウルトラマンだって完璧じゃない。」
そして、自分のせいでウルトラマンオーブが倒されてしまったリクが言うセリフ、
「僕ひとりじゃ地球は守れない」
この2つのセリフに対する解答とも捉えることができます。
このように非常に多層的な構造のセリフなのです。
「僕らはみんなでウルトラマンなんだ!」
このセリフこそが、様々な戦いを乗り越えた、リクの真の成長を表すセリフになっているのです。
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『劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』まとめ
「一生ジード、リクとして地球のみんなを守るために頑張りたい」
『#劇場版ウルトラマンジード』グランドフィナーレ
リクとレイトからカツミとイサミに「つなぐぜ!願い!!」https://t.co/ny9MBAWa5K#濱田龍臣 #小澤雄太 #平田雄也 #小池亮介#ウルトラマンジード #ウルトラマンルーブ pic.twitter.com/hXBI8GouUo
— 円谷プロダクション (@tsuburayaprod) 2018年6月23日
以上、映画『劇場版ウルトラマンジード つなぐぜ!願い!!』の考察と感想を述べてきました。
- 50年以上続くウルトラシリーズの歴史を背負った作品
- ヒーローとは、ウルトラマンとはなんなのかを考えさせられる
- 観た誰もがウルトラマンジードを応援したくなる
沖縄を舞台にしたみどころ満載のバトル、素晴らしいドラマ、そして主人公リクの魅力。
『ウルトラマンジード』という作品が持つ力がふんだんに詰まった名作です。
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