ニコ・トスカーニ
もともとはイラストレーターの武内崇氏、シナリオライター・作家の奈須きのこ氏らを中心に発足した同人サークル。
その後、法人化し現在は有限会社ノーツが持っているゲームブランド名になっています。
成人向け伝奇ビジュアルノベルゲーム「Fate/stay night」を2004年に発表し同作が大ヒット。
同シリーズは続編、スピンオフ、スピンアウトも含め様々な形式でメディアミックス展開され、二次元コンテンツ界で確たる地位を築いています。
メディアミックス展開にはもちろん、少なからぬ数のアニメが含まれます。
ニコ・トスカーニ
目次
- 1.TYPE-MOON制作アニメ評価まとめ
- 1.1『真月譚 月姫』(2003)
- 1.2『Fate/stay night』(2006)
- 1.3『空の境界』シリーズ(2007~2013)
- 1.4『Fate/Zero』(2011-2012)
- 1.5『カーニバル・ファンタズム』(2011)
- 1.6『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(2014-2015)
- 1.7『Fate/EXTRA Last Encore』(2018)
- 1.8『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(2013-2016)
- 1.9『Fate/Apocrypha』(2017)
- 1.10『衛宮さんちの今日のごはん』(2017-2018)
- 1.11『ロード・エルメロイII世の事件簿-魔眼蒐集列車 Grace note-』(2019)
- 1.12『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(2019-2020)
- 2.TYPE-MOON制作アニメまとめ
TYPE-MOON制作アニメ評価まとめ
『真月譚 月姫』(2003)
TYPE-MOONが同人サークル時代に発表した同人ゲームのアニメ化。
アルクェイドをヒロインに選択したルートのトゥルーエンドがベース。
長尺のビジュアルノベルを正味24分×12話で映像化することの限界を示した作品。
技術的な問題か予算上の問題か、または両方か、動きが緩いです。
特にアクションシーンでその欠点は明らかで、人物同士の距離感に対して移動速度と接触するまでの時間がおかしいです。
ニコ・トスカーニ
同じことが後述するスタジオディーン版のfateにも言えます。
出来が今一つだったせいか、アナウンスされたゲーム版『月姫』商業リメイクの続報が途絶えているせいか、言及されることがあまりありません。
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『Fate/stay night』(2006)
いまやドル箱コンテンツになった『Fate/stay night』の一回目のアニメ化。
アニメーション制作はスタジオディーン。
3ルートあるうちの一つ、セイバールートを基本に他2ルートの要素も加えられており、単独作品としての完結感は感じられます。
ニコ・トスカーニ
主人公の衛宮士郎は何かと言うと「女の子だから」とセイバーを戦いから遠ざけようとしますが、戦うために呼び出されて戦う力も意思も持ったサーヴァントに「戦うな」と連呼する展開にはストレスを感じます。
ニコ・トスカーニ
映像を見るという行為は「見る」以外の行為が許されない受動的な行為です。
ストレスの溜まる展開を一方的に見せられるとどうしても厳しいものがあります。
映像としては全体にパンニングが多く、画面に動きをあまり感じません。
そのため、時々アニメでは無くフルボイスのビジュアルノベルを見ているような気分になります。
ドラマパートの演出はあまり気になりませんが、アクションパートは気になる部分が多いです。
ニコ・トスカーニ
特にアーチャーVSバーサーカーのアクションパートで粗が顕著で、低重力状態の現象が重力1Gの地上で起きているような違和感がします。
また、動きのバリエーションが少なく、画面の上手下手に相対する人物を置いて叫びながら突進して交差するという動きがやたらと多く、高さや奥行きといった空間性を感じません。
fateはもともと「万能の願望機である聖杯を巡って魔術師と召喚された英霊が戦う」のに、「舞台が極東の地方都市一つ」に収まっているというスケールが大きいのか小さいのかよくわからない作品です。
ニコ・トスカーニ
同じことが同じ監督、同じスタジオの劇場アニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(2010)にも言えます。
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『空の境界』シリーズ(2007~2013)
『空の境界』は奈須きのこが同人時代の初期に書いていた同人小説、そして思春期の男子のみに書くことを許されたポエムです。
本作で初めてアニメーション会社ufotableがTYPE-MOONアニメを手掛けることになるわけですが、本作を境にTYPE-MOON原作アニメは劇的に品質が向上します。
『真月譚 月姫』も『Fate/stay night』もビジュアルノベルによくあるように、メインヒロインに誰を選択するかで大きくシナリオが変わるマルチエンディングを採用しています。
どのヒロインを選択したかで同じキャラクターでも空気になったり重要な存在になったり大きな変化があります。
それぞれのルートが補完しあうゲームと違い『空の境界』はもともとが一本の完結した作品であるため、「活躍しないキャラクターがいる」「回収されない伏線がある」といった欠点がありません。
ニコ・トスカーニ
映像面ではありとあらゆる点が『真月譚 月姫』やスタジオディーン版の『Fate/stay night』を上回っていますが、とりわけ明白な差があるのがアクションシーンです。
上手と下手に人物を配置して左右の動きを主体にしていた『真月譚 月姫』や『Fate/stay night』に対して『空の境界』は上下・左右・手前奥の動きがあり紛れもない2Dアニメであるにも関わらず圧倒的な空間性を感じます。
ニコ・トスカーニ
特に手練手管の限りを尽くしたあおきえい監督の『第一章 俯瞰風景』と平尾隆之監督の『第五章 矛盾螺旋』は出色の出来です。
ufotableと言えば珍しく王道少年漫画原作『鬼滅の刃』(2019)を手掛け、その圧倒的なクオリティーが原作者にも絶賛されていましたが基礎はこの頃にできていたことがわかります。
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『Fate/Zero』(2011-2012)
『Fate/stay night』の設定を元に虚淵玄氏が執筆した前日譚の同人小説をアニメ化。
アニメーション制作は『空の境界』で名前を上げたufotable。
ニコ・トスカーニ
ufotable+あおきえい監督の演出で作り上げられた映像のクオリティは凄まじく、特にアクションパートは三半規管にまで訴えかけてくるような刺激に満ちています。
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『カーニバル・ファンタズム』(2011)
全3巻のOVAでTYPE-MOON作品のキャラクターがワイワイしている短編コメディ集という完全に同人なノリの小品です。
監督・岸誠二、脚本・上江洲誠、アニメーション制作・ラルケという『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 The Animation 』(2013)、『暗殺教室』(2015-2016)を手掛けたトリオなので中身は安定の出来です。
『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』(2014-2015)
アニメーション制作は『空の境界』シリーズ、『Fate/Zero』に続き、ufotable。
映像のクオリティーは本作も素晴らしいです。
ニコ・トスカーニ
同作は原作ゲームの1ルートである「Unlimited Blade Works」シナリオを採用しています。
原作に無いオリジナルエピソードを盛り込んで一本の作品として完結感を出そうとはしていますが、本作に関しては脚本に粗が目立ちます。
ゲームシナリオで存在意義が不明だったキャラクターは空気のままですし、ブン投げたまま回収されない伏線もそのまま放置です。ニコ・トスカーニ
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『Fate/EXTRA Last Encore』(2018)
PlayStation PortableフォーマットのRPG、「Fate/EXTRA」のアニメ化作品です。
アニメーション制作はシャフト。
正直、本作に関してはいったい誰をターゲットに作ったのかが最後までわかりませんでした。
ニコ・トスカーニ
一見さんも取り込もうとしたにしては説明不足で意味不明と方向性が不明確でただモヤモヤした気持ちだけが残りました。
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『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』(2013-2016)
同人作家時代から「イリヤの人」として知られていたひろやまひろし氏のスピンオフコミックが原作。
アニメーション制作はSILVER LINK.です。
『Fate/stay night』ではサブキャラクターの一人だったイリヤスフィールが主人公ですが、『Fate/stay night』とは並行世界であるため共通する同一キャラクターでも性格が全く違います。
ローティーンの女の子が山ほど出てくる大きなお友達御用達のイロモノと思いきや、中身はバトル満載の少年漫画的展開でいい意味で意表を突かれました。
ニコ・トスカーニ
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『Fate/Apocrypha』(2017)
シナリオライター・作家の東出祐一郎氏によるスピンアウト小説のアニメ化。
アニメーション制作はA-1 Picturesです。
もともと『fate』シリーズがギャルゲーだった面影としてボーイミーツガールな要素は残っているものの、全体的には少年漫画な雰囲気が漂う作品。
ニコ・トスカーニ
映像面では特にアクションパートが見ものでデフォルメさせた画でダイナミックに動かすという大胆なことをやっています。
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『衛宮さんちの今日のごはん』(2017-2018)
『Fate/stay night』のキャラクターが平和な謎時空で料理して食べるだけの話。
これがTYPE-MOON作品である必要があるのか?という疑問が浮かばないでもないですが、原作者のTAa氏が同人出身なのでこれも同人誌の延長と考えれば存在そのものがファンサービスみたいなものかもしれません。
アニメーション制作はまたもufotableですが、内容が内容なのでアクションとはほぼ無縁。
ニコ・トスカーニ
特に目を惹くのがシーンとシーンのつなぎ目に出てくる風景のカットです。
シーンのつなぎ目で時間経過を見せるために実景のカットを入れるのはアニメ・実写を問わない常套手段ですが、実写で実景カットを撮る手間とすべてを描かなければいけないアニメではかかる手間には著しい差があります。
映像である以上多少は動きが欲しいので、その辺を通りがかる一般人がいたら、少なくとも実写のインディーズ映画では、そのまま撮ってしまいますが、アニメでは人を動かそうと思ったらメインだろうとモブだろうと描かなければいけません。
ニコ・トスカーニ
1話12分のwebアニメで、劇的な出来事は起きない内容ですが映像作品としての密度はすごいです。
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『ロード・エルメロイII世の事件簿-魔眼蒐集列車 Grace note-』(2019)
原作は三田誠氏のスピンアウト小説。
『Fate/Zero』の登場人物ウェイバー・ベルベットのその後を描いています。
アニメーション制作はTROYCA。
アニメ前半クールは原作の世界観を踏襲した一話完結のオリジナルストーリーで後半は原作の一章である「魔眼蒐集列車」をもとにしています。
ニコ・トスカーニ
オリジナルエピソードの話は手堅く良好な出来。
小説を映像化する難しさを感じさせます。
『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(2019-2020)
スマートフォン向けゲーム「Fate/Grand Order」の第7章を原作にしたテレビアニメ。
アニメーションはCloverWorksが担当。
『Fate』が今や人気コンテンツになったこともあり、予算に余裕があるのでしょう。
演出、アニメーション技術はすばらしく、特に動きの多い場面は見ごたえがあります。
ニコ・トスカーニ
細かい欠点は色々あるのですが、致命的な問題として主人公を全く描けていません。
ゲームの主人公はプレーヤーのアバターであり、明確な性格付けがされていません。
なのでここが一番重要な脚色ポイントになると思うのですが、『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』の主人公は自分が体を張って戦うでも実際に戦うサーヴァントを後押しするだけでもなく、ただ叫んでイキっているだけにしか見えません。
ニコ・トスカーニ
「Fate/Grand Order」は人気ゲームなので、コミカライズの企画も何本か進行していますが共にマガジン系で連載されている『Fate/Grand Order -turas realta-』と『Fate/Grand Order -Epic of Remnant- 英霊剣豪七番勝負』は主人公の肉付けを読んで全く違和感のないレベルで実現しているので、やってできないことでは無いはずです。
『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』は映像のクオリティは高いのでその点が残念でなりません。
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TYPE-MOON制作アニメまとめ
以上、いかがでしたでしょうか?
TYPE-MOON制作アニメの今後の作品は新型コロナウイルスの影響で公開延期になりましたが『劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song』が2020年内に公開予定です。
ニコ・トスカーニ
今後も敬意を以て評価をしたいと思います。