第93回アカデミー賞で短編映画賞を受賞した『隔たる世界の2人』。
主人公の黒人青年が帰宅をしようとするも、毎回同じ白人警官に遭遇し命を奪われるというタイムループが描かれます。
2020年、アメリカのミネアポリスで警察に逮捕される際に命を落としたアフリカ系アメリカ人、ジョージ・フロイドの死から2ヶ月後にトレイボン・フリー監督が今作の脚本を執筆し、制作にあたった短編映画です。
マルコヤマモト
目次
映画『隔たる世界の2人』作品情報
作品名 | 隔たる世界の2人 |
公開日 | 2021年4月9日 |
上映時間 | 29分 |
監督 | トレイボン・フリー マーティン・デズモンド・ロー |
脚本 | トレイボン・フリー |
出演者 | ジョーイ・バッドアス アンドリュー・ハワード |
音楽 | ジェームズ・ポイザー |
【ネタバレ】映画『隔たる世界の2人』あらすじ・感想
白人警官に殺されるループにはまった黒人青年
ニューヨークでグラフィックデザイナーとして暮らす黒人青年のカール(ジョーイ・バッドアス)は、一晩を共に過ごした女性の家のベッドで目覚め、愛犬が待っている自宅へ帰ろうとしていました。
しかし、カールに声をかけてきた白人警官のメルク巡査(アンドリュー・ハワード)に取調べを受けている最中に揉み合いになってしまいます。
さらに、応援に駆けつけた警官たちの強い力によって地面に押さえつけられたカールは、そのまま命を落としてしまいます。
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次にカールが目覚めると再び女性宅のベッドの上で、違和感を感じながら再び家に帰ろうとすると再びメルク巡査に遭遇し、今度は銃で撃たれて命を落としてしまいました。
再び女性宅のベッドで目が覚めたカールは、さすがにおかしいと思い、今度は家に帰らずに女性の家で朝食を作ることに。
今度は女性宅に麻薬の捜査という名目で機動隊が突入、メルク巡査が「ナイフだ!」と言ってライフルでキッチンに立っていたカールを狙撃。
しかしカールが手にしていたのはナイフではなく泡立て器で、警察が入った部屋番号は間違い。
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カールはまたしても警官に命を奪われ、女性のベッドで目を覚ますというループから抜け出せなくなっていました。
『隔たる世界の2人』の結末
同じ夢を99回見た後、カールは思い切って街角に立っていたメルク巡査に話しかけます。
自分が家に帰ろうとするとメルク巡査に殺されることと、周囲の人々の行動を事前に予測することで自分がループの世界から抜け出せないことを説明し、驚きながらも納得してくれたメルク巡査に対して「家に送ってほしい」と願い入れます。
パトカーの中で議論や、お互いギリギリの線を超えない感じの会話を交わしつつ車は無事カールのアパートに到着。
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カールはメルク巡査に感謝しつつ、「また明日と言いたいところだけど…」と笑顔を浮かべて2人は握手をして別れます。
「やっと愛犬が待っている家に帰れる…」
そう思ったカールが背を向けた瞬間、「ブラボー!最高だったよ!」という声とともにメルク巡査の拍手が聞こえました。
カールに対して「秀逸な演技」と称賛したメルク巡査は、自分もループしていることを明かします。
そして、「また明日な」と言って逃げようとするカールの背中に銃弾を打ち込みました。
カールが倒れた場所には、アフリカ大陸の形をした血痕が広がります。
家ではカールの愛犬がドアの前で彼の帰りを待っていました…。
再び女性のベッドで目を覚ましたカールの「どれだけ時間がかかっても、何度繰り返しても、俺は絶対に犬が待つ家に帰るんだ」という台詞とともに、部屋を出るシーンで物語は終わります。
そして「ザ・ウェイ・イット・イズ」という曲に合わせて、警官に遭遇したことで命を奪われた黒人の名前が画面上に挙列されます。
最後には、ブラック・ライブズ・マター(BLM)の発端となったジョージ・フロイドの名前も…。
「彼らの名前を叫ぼう」「彼らの名前を心に刻もう」という言葉とともに、映画は幕を閉じます。
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SNSでのみんなの感想・評判
#隔たる世界の2人
-何度も何度も殺される、それでも家に帰るんだー
約30分の短編タイムループ映画。感想を言うとネタバレになるので控えますが、テンポが良く濃密で非常に良かったです、特にラスト。(“良い”という表現が合っているか分からないけど)#映画好き #映画鑑賞 pic.twitter.com/1R2mcVCp4x— アヤ (@movie_a_) April 19, 2021
Netflix『隔たる世界の2人』も感想書いてないけどよかったです。
BLM後に、この瞬発力で「繰り返し警官に殺される黒人のループもの」を撮れるのはすさまじい。
ジョージ・フロイド氏殺人の罪で、デレク・ショーヴィンへの有罪判決という歴史的な判断が下された今、ひときわ胸に来るものがあるはず— しゆ🐾LXH毎週土曜12時更新🎊🎉🎉🎉✨ (@omph_fyi) April 26, 2021
「隔たる世界の2人」
黒人青年がふつうに家に帰る途中に殺される毎朝を繰り返すタイムリープ物語。感想は…何て言葉にすれば良いのかな…https://t.co/FpMhjuucW5
— きら (@kira_bball) April 26, 2021
『隔たる世界の2人』感想
タイムループ物って何度も何度も繰り返す狭い世界から抜け出せない絶望感が特徴の1つだと思うけど、その絶望感を何度も繰り返される終わらない人種差別と重ねた作品。見ていて本当に胸が苦しくなる。でも主人公は家に帰るのを諦めない。犬が待ってるから。当然の権利だから。 pic.twitter.com/yYtivJwjU7
— たぬき (@tada11110) April 20, 2021
2021年4月9日に配信されてからアカデミー賞の短編映画賞ノミネートと話題になり、配信直後から映画ファンの間で話題を集めていた『隔たる世界の2人』。
そして、ついに第93回アカデミー賞の短編映画賞を受賞しました。
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すでに作品を観た方からも「短い分、残像が半端ない」「肌の色だけでこんなにも違いがあるなんて」「コンパクトでわかりやすい」というおおむね高評価の感想が目立ちました。
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映画『隔たる世界の2人』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
It’s official! #Oscars pic.twitter.com/s7j0sGyHEp
— The Academy (@TheAcademy) April 26, 2021
短編映画『隔たる世界の2人』について、ネタバレありでご紹介しました。
- タイムループというSF要素に加えて、BLM問題にもしっかり向き合っている
- 30分の短編映画だが、アカデミー賞を獲るに値する作品
- 世界中で様々な差別に対する戦いはまだまだ続く…
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「散歩中」「家で寝ていた」「子守りをしていた」「ベッドで寝ていた」
マルコヤマモト
日本では「人種差別は遠いアメリカで起こっている事件」と他人事に感じている人も多いと思いますが、もしかしたら気づかないうちに私たちの身にも降りかかる問題かもしれません。
映画の中でも、主人公はタイムループからまだ抜け出せていないことが事実。
戦いは現実に持ち越されるという終わり方に不安を感じながらも、差別と戦うための勇気を少なからずもらえる作品だと思います。
映画を見ただけで、問題が解決するわけではないことは承知の上。
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