映画『隔たる世界の2人』あらすじ・ネタバレ感想!アカデミー短編映画賞受賞!人種差別を描いたタイムループ作品

『隔たる世界の2人』

出典:Netflix

第93回アカデミー賞で短編映画賞を受賞した『隔たる世界の2人』。

主人公の黒人青年が帰宅をしようとするも、毎回同じ白人警官に遭遇し命を奪われるというタイムループが描かれます。

2020年、アメリカのミネアポリスで警察に逮捕される際に命を落としたアフリカ系アメリカ人、ジョージ・フロイドの死から2ヶ月後にトレイボン・フリー監督が今作の脚本を執筆し、制作にあたった短編映画です。

マルコヤマモト

それではさっそく『隔たる世界の2人』について、ネタバレありでレビューします。
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映画『隔たる世界の2人』作品情報

『隔たる世界の2人』

出典:Netflix

作品名 隔たる世界の2人
公開日 2021年4月9日
上映時間 29分
監督 トレイボン・フリー
マーティン・デズモンド・ロー
脚本 トレイボン・フリー
出演者 ジョーイ・バッドアス
アンドリュー・ハワード
音楽 ジェームズ・ポイザー

【ネタバレ】映画『隔たる世界の2人』あらすじ・感想


白人警官に殺されるループにはまった黒人青年

ニューヨークでグラフィックデザイナーとして暮らす黒人青年のカール(ジョーイ・バッドアス)は、一晩を共に過ごした女性の家のベッドで目覚め、愛犬が待っている自宅へ帰ろうとしていました。

しかし、カールに声をかけてきた白人警官のメルク巡査(アンドリュー・ハワード)に取調べを受けている最中に揉み合いになってしまいます。

さらに、応援に駆けつけた警官たちの強い力によって地面に押さえつけられたカールは、そのまま命を落としてしまいます。

マルコヤマモト

メルク巡査の顔からはどういうわけかカールに対する憎悪しか感じませんでした。そして、この時カールが口にしていたのが「I Can’t breath.」(息ができない)です。あのジョージ・フロイドが警官に押さえつけられて亡くなった時と同じ台詞です。

次にカールが目覚めると再び女性宅のベッドの上で、違和感を感じながら再び家に帰ろうとすると再びメルク巡査に遭遇し、今度は銃で撃たれて命を落としてしまいました。

再び女性宅のベッドで目が覚めたカールは、さすがにおかしいと思い、今度は家に帰らずに女性の家で朝食を作ることに。

『隔たる世界の2人』

出典:IMDB

今度は女性宅に麻薬の捜査という名目で機動隊が突入、メルク巡査が「ナイフだ!」と言ってライフルでキッチンに立っていたカールを狙撃。

しかしカールが手にしていたのはナイフではなく泡立て器で、警察が入った部屋番号は間違い。

マルコヤマモト

持っていたものをナイフや銃と勘違いしたり、ポケットに手を突っ込んだから銃を出すと思った、なども警官に遭遇した黒人が命を奪われる原因になっています。

カールはまたしても警官に命を奪われ、女性のベッドで目を覚ますというループから抜け出せなくなっていました。

『隔たる世界の2人』の結末

同じ夢を99回見た後、カールは思い切って街角に立っていたメルク巡査に話しかけます。

自分が家に帰ろうとするとメルク巡査に殺されることと、周囲の人々の行動を事前に予測することで自分がループの世界から抜け出せないことを説明し、驚きながらも納得してくれたメルク巡査に対して「家に送ってほしい」と願い入れます。

パトカーの中で議論や、お互いギリギリの線を超えない感じの会話を交わしつつ車は無事カールのアパートに到着。

『隔たる世界の2人』

出典:IMDB

マルコヤマモト

メルク巡査に家まで送ってもらうことが最善の方法だと考えたカール。肌の色が違ったって、ちゃんと話をすればわかるはず、たとえ全てを理解できなくてもこの状況だけは改善できるはずと、観客を安心させたところで思わぬ展開が待ち受けています。

カールはメルク巡査に感謝しつつ、「また明日と言いたいところだけど…」と笑顔を浮かべて2人は握手をして別れます。

「やっと愛犬が待っている家に帰れる…」

そう思ったカールが背を向けた瞬間、「ブラボー!最高だったよ!」という声とともにメルク巡査の拍手が聞こえました。

カールに対して「秀逸な演技」と称賛したメルク巡査は、自分もループしていることを明かします。

そして、「また明日な」と言って逃げようとするカールの背中に銃弾を打ち込みました。

カールが倒れた場所には、アフリカ大陸の形をした血痕が広がります。

『隔たる世界の2人』

出典:IMDB

家ではカールの愛犬がドアの前で彼の帰りを待っていました…。

再び女性のベッドで目を覚ましたカールの「どれだけ時間がかかっても、何度繰り返しても、俺は絶対に犬が待つ家に帰るんだ」という台詞とともに、部屋を出るシーンで物語は終わります。

そして「ザ・ウェイ・イット・イズ」という曲に合わせて、警官に遭遇したことで命を奪われた黒人の名前が画面上に挙列されます。

最後には、ブラック・ライブズ・マター(BLM)の発端となったジョージ・フロイドの名前も…。

「彼らの名前を叫ぼう」「彼らの名前を心に刻もう」という言葉とともに、映画は幕を閉じます。

マルコヤマモト

エンドロールと思って見ていたら、まさかの犠牲になった方々の名前でした。「玄関で対応中」「公園で遊んでいた」「子守り中」「車中で寝ていた」など、こんなのあり得る?というシチュエーションで警官によって命が奪われた人々がいることに正直ショックを隠せませんでした。普通に生活しているだけで銃で撃たれる可能性があるなんて、アメリカは怖い国だなと思いますが、他人事としては考えたくないです。問題提起をするエンディングも含めて良い作品だと思いました。

SNSでのみんなの感想・評判

2021年4月9日に配信されてからアカデミー賞の短編映画賞ノミネートと話題になり、配信直後から映画ファンの間で話題を集めていた『隔たる世界の2人』。

そして、ついに第93回アカデミー賞の短編映画賞を受賞しました。

マルコヤマモト

あらすじはなんとなく知っていたのですが、やっぱり見ていてしんどいなぁ〜と胸が苦しくなったのは事実。白人警官の1本だけの金歯に余計に憎悪の気持ちが湧いてきましたが、そういうキャラ作りも上手いなぁと感心したものです。

すでに作品を観た方からも「短い分、残像が半端ない」「肌の色だけでこんなにも違いがあるなんて」「コンパクトでわかりやすい」というおおむね高評価の感想が目立ちました。

マルコヤマモト

一体主人公はいつになったら家に帰れるんだろう?終わって欲しくても終わらない悲しい連鎖につい諦めたくもなるけれど、彼が諦めないことが現実で戦っている人に勇気を与えるのではないかな、と思いました。

映画『隔たる世界の2人』あらすじ・ネタバレ感想まとめ

短編映画『隔たる世界の2人』について、ネタバレありでご紹介しました。

要点まとめ
  • タイムループというSF要素に加えて、BLM問題にもしっかり向き合っている
  • 30分の短編映画だが、アカデミー賞を獲るに値する作品
  • 世界中で様々な差別に対する戦いはまだまだ続く…

マルコヤマモト

『隔たる世界の2人』は、「あなたの30分を下さい。ちょっと見て欲しい映画があるんです!」と、全ての人におすすめしたい作品です。

「散歩中」「家で寝ていた」「子守りをしていた」「ベッドで寝ていた」

マルコヤマモト

普通に生活をしているだけでアフリカ系アメリカ人の方が命を落としていることを知って、最後にショックを受けました。

日本では「人種差別は遠いアメリカで起こっている事件」と他人事に感じている人も多いと思いますが、もしかしたら気づかないうちに私たちの身にも降りかかる問題かもしれません。

『隔たる世界の2人』

出典:IMDB

映画の中でも、主人公はタイムループからまだ抜け出せていないことが事実。

戦いは現実に持ち越されるという終わり方に不安を感じながらも、差別と戦うための勇気を少なからずもらえる作品だと思います。

映画を見ただけで、問題が解決するわけではないことは承知の上。

マルコヤマモト

本当に30分だけなので今作を見て、多くの方にBLMをはじめとする人種差別に対して関心を持って欲しいと思いました。
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