映画『ツレがうつになりまして。』は、細川貂々のコミックエッセイを映画化した作品です。
突然「心因性うつ病」になってしまった夫・ツレ(堺雅人)とその妻・ハル(宮崎あおい)の物語。
監督は『半落ち』『夕凪の街 桜の国』の佐々部清監督。
- うつという「心の風邪」について120分かけてゆっくり学べるムービー
- 暗い側面だけじゃない…うつという病にできるだけ前向きに向き合った夫婦の物語
- 通称『ツレうつ』。キャッチコピーは「ガンバらないぞ!」「すこやかなる時も、病める時も、君と一緒にいたい。」
- うつ病になった夫との日常を妻目線で綴ったストーリー、本当の夫婦力はこれだ!
難しいテーマを解りやすく、時に赤裸々に、時にユーモアを交え描いています。
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目次
『ツレがうつになりまして。』作品情報
作品名 | ツレがうつになりまして。 |
公開日 | 2011年10月8日 |
上映時間 | 121分 |
監督 | 佐々部清 |
脚本 | 青島武 |
原作 | 細川貂々 |
出演者 | 宮﨑あおい 堺雅人 吹越満 津田寛治 犬塚弘 梅沢富美男 田山涼成 大杉漣 余貴美子 |
音楽 | 加羽沢美濃 |
【ネタバレ】『ツレがうつになりまして。』あらすじ・感想
スタートはイグアナ目線!?惹きつけるスタートカット
ツレこと髙崎幹男(堺雅人)と、その妻・ハルこと晴子(宮崎あおい)は、結婚5年目。
埼玉の一軒家に住み、他の家族は「髙崎イグ」という名のイグアナ1匹。
『ツレがうつになりまして。』のスタートシーン。
朝、イグがゲージを出て家の中をゆっくりのそのそと歩きまわり、案内してくれます。
イグ目線での髙崎家紹介といった感じ。
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ツレは几帳面。
毎朝ちゃんとお弁当を自分で詰め、曜日ごと種類の違うお気に入りのチーズまで入れるこだわりさん。
ネクタイも、これまた「月~金」それぞれ決まったものをして会社に向かいます。
月曜日はエメンタールチーズと青いネクタイの日…といったように、彼にはお決まりのルーティーンがあります。
ぎゅうぎゅうの満員電車に乗って向かう彼の勤務先は、パソコンソフトのサポートセンター。
毎日、お客様からの電話に対応するという過酷な業務に就いています。
一方のハルは、家事全般が苦手。
ツレと違い大らかで大雑把なとこあり。
仕事はマンガを描くこと…しかし、数少ない連載の読者アンケート結果が芳しくなく、来月号で打ち切りと宣告されたがけっぷち漫画家です。
どう見てもツレのライフスタイルはストレスフル…見ているだけでも気詰まりする感じ。
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三上隆(梅沢富美男)は声だけで威圧感がエグい
梅沢富美男の演じる三上隆は「できないさん」とあだ名がついているセンター内でも有名な常連ご意見番。
ツレを指名しては「恐縮だが…ひとつお訪ねしたい」とくどくど…真摯に対応するツレですが、納得いただけず。
果ては社長宛てに手紙まで書いて「貴社のウィルス対策ソフトは高齢の私には理解できない、苦情係の髙崎氏に説明を求めたがまったくもって要領を得ない…」と。
こんな風に書かれてはツレの立場が無い。
お訪ね手紙のせいで、ツレの会社での立場が次第に危うくなります。
容赦なくツレのメンタルを削り取っていきます。
とうとうツレは大好きなチーズの入ったお弁当ですら喉を通らなくなっていました。
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威圧的で頑固なのが電話口からも漏れ出ており、聞いていて確かに嫌になってきます。
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ツレ(堺雅人)の異変…心の風邪・うつ病発症まで
現代人の心の風邪、うつ病。
うつ病は太陽の光と関係しているという説があり…雨降りは体調悪化し大敵。
ハルは後に、この病の不思議さをまるで得体のしれない「宇宙風邪」と例えます。
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うつとは…気分が落ち込んだ状態を指します。
普通は気持ちを切り替えたり、割り切ったりして…落ち込んだ状態から脱するだけなのですが。
それを「自力ではできなくなってしまっている状態」のことを、うつ病といいます。
こじらせるとしんどくなるのは風邪と一緒。
説明を読んでも分かる通り、特別なことじゃないんです。
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- とにかく食欲がない、食べ物の味を美味しく感じなくなる、味がよくわからない
- 夜よく眠れず、過剰にいびきがうるさくなり…夫婦の営みも減少。朝異常なまでに目が充血しまくっている
- 不思議な行動…ゴミ捨て場に捨てられたゴミをじーっと見て「これってみんないらないものなんだよね~」と悲しそうに呟く
- 几帳面で毎日のネクタイにまでこだわり身だしなみを気にするツレが「後ろ髪のハネ」に気づかない
- 無気力で体がだるいと訴える、他には背中の痛み、頭痛。
- 高崎と書いた人に「はしご高です!」と食ってかかる…穏やかな性格が一瞬豹変
- 「僕…お弁当がつくれないよ…何もできない…僕、死にたい」と以前できていたことがなぜかできなくなった、死を口にするようになった
やっとツレは病院に。
うつ病にかかっていることがわかります。
治療が順調にいっても元の状態に戻るには半年~1年半はかかります。
発症するのも治すのも、時間がかかる病気なのです。
家族の支え…まずは「うつ」を知ること
ツレからの報告で「うつ病」を知ったハル。
うつ病は、神経細胞間の伝達物質「セロトニン」の減少で、情報が上手く伝わらずに起こるらしい。
妻・ハルはさっそく調べ「でも、なぜセロトニンは減ってしまったの?」と根本原理を考えます。
感情だけに走らない、ハルの大らかで前向きな考え方があるから、この「うつ」という重めのテーマなのに観ていられます。
セロトニンの元は「アミノ酸のトリプトファン」。
だからハルは毎日、卵とバナナ、ホットミルク(牛乳)、それと納豆を食卓へ。
ハルは苦手な納豆をクサっ!と鼻をつまみながらも用意し、ツレに食べさせます。
そして、ハルは自分の母(余貴美子)と父(大杉漣)に相談。
娘との電話が終わるとすぐに調べたのでしょう。
「うつ病には野菜をたくさん食べるのが良いそうよ」
「オレンジとブロッコリーのサラダのレシピ」
というFAXがハルの所へ。
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- 症状を薬で緩和する薬物療法
- 精神症状を改善する心理療法
- 原因となった環境や人間関係を調整する環境調整療法
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でも自らに顧みたとき、同じ言葉をパートナーにかけることができるだろうかと深く考えさせられました。
ツレ(堺雅人)、サラリーマンから主夫へ
「うつ病なんかになってゴメンね…」
このままではいけないと思った彼は、勇気を出して部長にカミングアウト。
しかし、部長の返しが「こんなに忙しいと、みんなうつ病みたいなもんだよ。泣きごと言ってないでリストラされた奴らの分も頑張ってくれよ」と最悪な反応。
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ますます職場で追い詰められたツレ。
この限界の状態から、彼が元通りになるには1年以上。
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ハル行きつけの骨董品屋にて。
アンティークガラスの一輪挿しを見て、店のおじいさんが「割れなかったから今もここにある」と言ったのを聞いて、ハルは「割れなかったことに価値がある」と脳内変換。
その日、家に帰宅したツレに彼女が言ったひと言が凄いのです。
「ツレ。会社辞めちゃえば?こんな風になった原因は会社にあるんだよ。ツレ、割れないであることに価値があるんだよ。会社辞めないなら離婚する。」
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その日のハルの日記には「割れないで、ツレ!」と記してありました。
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退職までの間、毎朝出勤前にハルがツレにかけた言葉はふたつ。
- 「できないことはしなくていいよ」
- 「調子が悪かったら早退しちゃえばいいよ」
心に響くいい言葉だと思いませんか。
「爬虫類になったらこんな風に温かくないんだぞ」
ハルはマイナス思考の塊。
マイナス思考でナマケモノの彼女がひとつだけ好きになったことが「マンガを描くこと」でした。
「ハルさん。マンガだけを描けよ。生活の面倒は僕が見る。」
それがツレのプロポーズらしき言葉でした。
ツレに守られ、イグに癒されて、マンガを描いてきました。
そして今、目の前には最愛の人で恩人でもあるツレの苦しむ様子と言い知れぬ寂しさにもがく姿が。
「(寂しさを感じないように)爬虫類のように冷徹になりたい」と顔をくしゃくしゃにして泣きながら訴える夫がそこに。
彼女はそっと彼の右手を持って、自分のTシャツの下から入れて胸を触らせ、「爬虫類になったらこんな風に温かくないんだぞ」って目に涙を溜めポロッと一筋流しながら言うのです。
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ひとつひとつの描写がリアルで胸が詰まります。
うつ病は、側にいる人も心をゴリゴリ削られる…そう感じました。
でも同時に、なんて素敵な夫婦なのだろうと感動もこみ上げます。
「ツレがうつ病になった原因じゃなくて、うつ病になった意味は何か?」
ハルは「どうしてなってしまったのか?」の追及ではなくて、「うつ病になった意義」を考えるようになっていました。
病という感覚よりも、ツレの個性として受け入れはじめます。
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髙崎夫婦が大変なのはこれからで…振り子のように症状が一進一退するうつ病。
「なんて面倒な病気なのさ!」
ハルの日記の一文に深く頷ける壮絶な日々が、その大変さを物語っています。
「ツレがうつになりまして。仕事を下さい!」
ハルはこう言うのです。
「頑張らなくていいんです、辛かったら頑張らなくたっていいんです。そのままでいいんです。」
しかし、彼女は全部を「頑張らない」と言った訳ではありませんでした。
編集者の元へ行き、頭を下げ、「ツレがうつになりまして。仕事を下さい!」と懇願。
必死の頼みに、編集者は自己啓発本の挿絵イラストの仕事を紹介してくれるのです。
何よりも「ツレがうつになりました」って言えた自分が嬉しかったとハル。
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そして、ツレに危機が訪れます。
「ハルさん、僕はここにいていいのかな…」
大粒の涙を目からいっぱい落とし、あることがきっかけで「自分のために治りたい」と考えるように変化します。
ラストは「教会での告白」と「ツレの日記」に号泣。
危機を乗り越え「本当の夫婦」を見ることができます。
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大抵のことは何とかなるって勇気づけてくれます。
素敵な映画でした。
『ツレがうつになりまして。』まとめ
以上、ここまで映画『ツレがうつになりまして。』についてネタバレありで紹介させていただきました。
- 左右に猫耳をつけたような髪型がキュートな宮崎あおいが可愛すぎる
- 偏見や誤解が多いと言われている「うつ病」をちょっぴり理解できる
- 愛を感じる、この映画が実話ということに感動。
- 病気になったことは恥ずかしいことじゃない…ラストのツレの言葉が心に沁みる
- 実は原作者であるご本人夫婦も登場!?その姿に胸がアツくなる
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