世界中の名だたる映画祭の中でも、重要な映画祭の一つであるトロント国際映画祭(TIFF)。
映画好きな人なら、きっと一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
オーディエンスの投票で決まる観客賞が最高賞という、ちょっとめずらしい映画祭なのですが、その観客賞はオスカーでも作品賞として有力視されるほどです。
2020年9月20日、『ノマドランド』が観客賞を受賞し幕を閉じたTIFF。
2020年はコロナウイルスの影響で、オンライン上での上映となってしまいましたが、もちろん多くの注目作品が出品されていました。
ぼんぬ
なお、タイトルは『ノマドランド』以外、原題となります。
目次
トロント国際映画祭2020で注目の映画おすすめ10選
『Summer of 85』
監督:フランソワ・オゾン
出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン
働くか文学の勉強を続けるかで決めかねているアレクシスは、ワーキングクラス出身のティーンエイジャー。
セーリングに出ていた間に嵐に遭遇し、見知らぬ18歳のデイヴィッドに助けられます。
『理想の友達』に出会ったアレクシスとデイヴィッドの間には友情と恋が芽生え始めるのですが…。
エイダン・チェンバースの小説『おれの墓で踊れ』を映画化。
1980年代のフランス・ノルマンディー地方を舞台に2人のティーンエイジャーを描いた青春映画です。
ぼんぬ
フランス映画を語る上で欠かせないフランソワ・オゾンの新作は、すでに高い評価を得ている模様。
ぼんぬ
『Good Joe Bell』
監督:レイナルド・マーカス・グリーン
出演:マーク・ウォールバーグ、リード・ミラー
オレゴン州の小さな街に住む15歳のジェイデン・ベル。
怒りっぽい父親のジョーとは対照的に、優しく才能のある青年に育っていたジェイデン。
しかし、『ゲイであることは犯罪』とみられてしまうような保守的な地域で、精神的にも肉体的にもイジメをうけ、それを苦に自殺をしてしまいます。
この先ずっと後悔したくないと考えたジョーは、ジェイデンが生前に住みたいと言っていたNYへ、アメリカ横断の旅に出ることに。
それは各所で学校やゲイバーに立ち寄り、イジメに関する講演やゲイであることについて議論し、息子の死を無駄にしないためのものでもありました。
ショートフィルムを中心に活躍し、『Monsters and Men』(原題・日本未公開)で初の長編映画を撮ったレイナルド・マーカス・グリーン。
『Good Joe Bell』は、脚本にラリー・マクマートリーとダイアナ・オサナ(共に『ブロークバック・マウンテン』の脚本を担当)、製作にキャリー・フクナガ、そして製作総指揮にジェイク・ギレンホールを迎えた長編2作目となります。
ゲイであることを理由にいじめられ、2013年に自ら命を絶ってしまった少年・ジェイデン・ベルと、彼の亡きあとに立ち上がった父親・ジョーにフォーカスをあてた実話を基にした作品です。
ぼんぬ
『Ammonite』
監督:フランシス・リー
出演:ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン
19世紀のイギリス・ドーセット。
古生物学者のメアリー・アニングは、アンモナイトの化石コレクターでもあり、ドーセットの海岸で化石集めをして毎日を過ごしていました。
この時代の学者は男性の仕事であり、ロンドンの地質学会もメアリーのような学者を迎え入れてはくれません。
そのため、メアリーは独りで化石を集め、男性の生物学者が研究のためにやってきては、メアリーの成果を自分のものとして奪い取っていくのです。
ある日、ロデリックという男性が妻のシャーロットと共に訪ねてくると、彼女を残してロンドンに戻ってしまいます。
というのも、シャーロットは鬱を抱えており、海辺で過ごすことで良くなるとロデリックは信じていたのです。
最初こそシャーロットのことを気にしていなかったメアリーですが、忙しく過ごしてもらおうと仕事を与え始めます。
そして次第に2人は惹かれあっていき…。
ぼんぬ
メアリー・アニングは歴史的な古生物学者で、実在した人物です。
労働者階級出身のメアリーはろくに学校教育も受けられませんでしたが、独学でこの地位まで登りつめています。
女性であることで理不尽な立場に置かれながら、数々の功績を残し、現在はロンドン自然史博物館でその功績を見ることができるそうです。
そんなメアリーをケイト・ウィンスレットが、そしてシャーロットをシアーシャ・ローナンが演じています。
ウィンスレットの演技はキャリア上で最高のものだと評価しているレビューもいくつかあり、作品自体も高評価です。
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『Monday』
監督:アリギリス・パパディミトロポルス
出演:セバスチャン・スタン、デニス・ゴフ
金曜日。
アテネに住むミッキーと、アテネで最後の週末を過ごしていたクロエの2人のアメリカ人がパーティーで知り合います。
すぐに意気投合した2人は、そのままビーチで一晩を過ごすことに。
アメリカへ戻る予定だったクロエはアテネに残り、ミッキーと一緒に過ごすなかでお互いを知っていくことになります。
日本ではあまり知られていないようですが、『Wasted Youth』や『Suntan』で有名なギリシャ人監督のアリギリス・パパディミトロポルスが描くラブコメです。
『アベンジャーズ』シリーズのバッキー・バーンズでお馴染みのセバスチャン・スタンが主演をつとめ、相手役はアイルランド出身で舞台を中心に活躍するデニス・ゴフ。
アテネを舞台に繰り広げられる恋愛模様は、なんと監督自身や知り合いに起こったことからインスピレーションを得たとのこと。
イギリスのガーディアン誌は酷評していますが(笑)、そのほかのレビューではおおむね好評な模様です。
ぼんぬ
『私というパズル』
監督:コーネル・ムンドルッツォ
出演:シャイア・ラブーフ、ヴァネッサ・カービー
もうすぐ自宅出産で赤ちゃんを迎える、ボストンに住む若い夫婦のマルサとショーン。
マルサが破水したため助産師に電話したところ、担当予定だった人は他の出産についていて、代わりとして別の助産師が自宅にやってきます。
ところが、無事に生まれたかのようにみえた赤ちゃんの心臓は止まっていて、死産という結果になってしまうことに。
マルサは悲しみに明け暮れ、2人の間には亀裂が入り始めます。
ショーンはマルサの母と共に助産師を訴える決意をし、マルサもまた悲しみから立ち直ろうともがきだすのでした。
ハンガリー人監督、コーネル・ムンドルッツォの初めての全編英語作品となる『私というパズル』。
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マルサとその母親を通して、女性の強さや母親であるということにフォーカスしており、すでに各所で大絶賛されています。
特に、オープニングの24分に及ぶワンカットでのシーンが凄いとのこと。
マルサを演じたヴァネッサ・カービーはすでにヴェニス国際映画祭で主演女優賞を獲得しており、オスカーのノミネートが期待されます。
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『ノマドランド』
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド
リーマンショック後に職を失った、未亡人である60代のファーン。
住み慣れた家も手放すことになり、荷物を乗せた白いバンでアメリカを渡る旅にでることになります。
季節労働でその日暮らしをしながら、他のノマドたちと交流を深めていくファーン。
現代に生きるノマドたちの生き様を描いたロードムービーです。
『ザ・ライダー』で大絶賛されたクロエ・ジャオの最新作です。
フランシス・マクドーマンドが製作と主演を務めています。
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前作の『ザ・ライダー』でも俳優を雇わず、主人公を本人に演じてもらうというドキュメンタリーに近い映画を撮ったクロエ。
本作でも、フランシスとデイヴィッド以外は実際に車中生活をしている人たちを起用したようです。
どのレビューでも大絶賛されており、ヴェニス国際映画祭では金獅子賞を、そしてTIFFでも観客賞を受賞しています。
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『Concrete Cowboy』
監督:リッキー・スタウブ
出演:イドリス・エルバ、ケイレブ・マクラフリン
学校で問題ばかり起こしているコールは、しびれを切らした母親によってデトロイトから北フィラデルフィアに住む別居中の父親のもとへ送られ、ひと夏を過ごすことに。
父親のことはほとんど知らないコールは、馬小屋を持つ父親やその友達がカウボーイをやっていることを知り驚きます。
Fletcher Streetにはアフリカンアメリカンのライダーたちによるコミュニティがあり、そこではカウボーイたちがレスキューされた馬の面倒を見ていました。
馬など見たこともなかったコールですが、いやいやながらもそこで働き始め、カウボーイとしての基礎を学び始めます。
一方で、長年会っていなかった従兄弟のスマッシュに再会するコール。
ドラッグディーラーをやっているスマッシュによって、再びトラブルに巻き込まれる道へいくのか、それともカウボーイとしてコミュニティで頑張っていくのか。
『現代のカウボーイ』たちを通しコミュニティの価値に気づいていくコールの姿を描きます。
リッキー・スタウブによる初の長編映画は、実在する非営利団体『Fletcher Street Urban Riding Club』を題材にした父と息子の物語です。
主演にイドリス・エルバ、そして息子のコール役に『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のケイレブ・マクラフリンを迎え、『現代のカウボーイ』と呼ばれるアフリカン・アメリカンのライダーたちを描きます。
西部劇のカウボーイといえば白人の文化というイメージが強いですが、本作は黒人たちによる現代のカウボーイ文化ということで、そのテーマからも期待が大きな作品です。
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『The Father』
監督:フロリアン・ゼラー
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン
80歳になるアンソニーは、ロンドンにあるフラットで娘のアンと共に暮らしています。
認知症の症状が見られるアンソニーに、アンはヘルパーを雇うことに。
というのも、アンはもうすぐボーイフレンドと暮らすためにパリに引っ越す予定だからです。
最初に雇ったヘルパーは、アンソニーに悪態をつかれすぐに辞めてしまいます。
アンはアンソニーにそろそろ介護施設へ入居してほしいと思っているのですが、パリへ行くことを告げるだけで精一杯でした。
アンソニーがリビングに行くと、アンの旦那が新聞を読んでいます。
3人は一緒に暮らしているようです。
次の瞬間、戻ってきた娘はアンではなく別の女性で、夕飯にチキンを買ってきたと言うのです。
何がなんだか分からないアンソニー。
それもそのはず、そこに”旦那”などいるはずもなく、チキンもまた食卓に並んでなどいなかったのです。
フランス人の小説家・舞台作家であるゼラー監督による、2014年の同名舞台の映画化になります。
認知症を抱える老人役にアンソニー・ホプキンス、そして娘のアン役にオリヴィア・コールマンを迎え、認知症の人と暮らすことはどういうことなのかを描きます。
アンソニーが見えている世界を入れることで、それが本物なのか認知によるものなのか、見ている観客も一緒に考えることになるようです。
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『Another Round』
監督:トーマス・ヴィンタバーグ
出演:マッツ・ミケルセン
高校で歴史を教えているマーティンは、生真面目で気だるい毎日を送っています。
学校では授業にやる気がなく、ティーンエイジャーの2人の息子と妻と暮らす家庭内でもほとんど喋らないほどです。
ある日、同じく高校教師で長年の友人たちの3人とディナーに行った席で、ノルウェー人精神学者の研究が話題になります。
その研究とは、成人男性の血中アルコールは通常より0.5パーセント低いため、その0.5パーセントを維持するといいというものでした。
仕事中にアルコールを入れることで最高のパフォーマンスをできると知ったマーティンは、さっそく翌日の授業を飲酒して行うことに。
すると、酔っ払っているほうが素敵な先生でいられることに気づくのです。
その話を聞いた他の3人も、マーティンと同じく学校にお酒を持ち込み、0.5パーセントだけアルコール濃度を高めることに。
4人は記録を取り、単なる『酔っ払い』にならないように注意するのですが…。
マッツ・ミケルセンが飲みまくる映画で、予告だけでもすでに面白い注目の作品です。
監督曰く、単なるアルコールの映画ではなく、人生についての映画でもあるとのこと。
ぼんぬ
コメディ要素とテーマであるミッドライフ・クライシスを描くドラマの要素が混ざったストーリーで、こちらもレビューは軒並み高評価を得ています。
ぼんぬ
『One Night in Miami』
監督:レジーナ・キング
出演:キングズリー・ベン=アディル、 イーライ・ゴリー、 オルディス・ホッジ、レスリー・オドム Jr
1964年2月のある晩。
カシアス・クレイ、ジム・ブラウン、サム・クックとマルコムXの4人は、クレイのヘビー級王座の勝利を祝うために集まっていました。
クレイ(のちに改名し、モハメド・アリとなる)とフットボールスターのブラウンは、このパーティが人権侵害からの単なる一時的な逃避であると自覚していました。
4人の会話は次第に、アメリカで有名な黒人であることについての話題になっていきます。
オスカー女優のレジーナ・キングが監督を努めた本作は、同名の舞台をアダプトしたものです。
1960年代の黒人解放運動の最中を舞台に、黒人であることの意味、自分たちの地位をどうコミュニティに捧げればいいのか?といった難しい問題に直面している4人を描きます。
登場するのは実在する有名人たちですが、ストーリー自体はフィクションです。
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トロント国際映画祭2020で注目の映画おすすめ10選まとめ
2020年トロント国際映画祭観客賞を、クロエ・ジャオ監督『ノマドランド』が獲得!過去には『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』『グリーンブック』といった作品が同賞を受賞後、アカデミー作品賞を獲得している https://t.co/3WLs7eKgdq #HIHOnews
— 映画秘宝 (@eigahiho) September 20, 2020
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- 『The Father』
- 『Another Round』
- 『One Night in Miami』
日本での公開は『ノマドランド』をのぞきまだ未定のものばかりですが、今回は10作品をピックアップしてみました。
どれも良作ばかりなようで、公開が待ちきれません。
2021年のアワードシーズンも楽しみですね。