映画:『彷徨い』あらすじ・感想!90分弱でサクッとみられる胸糞×不穏なファミリードラマ

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Netflixオリジナル映画として2023年に配信された『彷徨い』は、ある女性の過去を巡るスリラー映画です。裕福で優しい夫と子どもたちに囲まれながらも、実はある秘密を抱えたことで、家族を巻き込むとんでもない事態に発展していきます。

あらすじからは予想もできない、胸糞×不穏な演出がずっと続く作品となっていました。

ポイント
・アンチファミリー映画として
・不条理映画として
・手軽に見れる胸糞映画?

それでは『彷徨い』をネタバレありでレビューします。

『彷徨い』あらすじ【ネタバレあり】


プロローグ

2003年。とあるアパートの一室。黒人女性のシェリル(アシュリー・マデクウェ)は電話越しの相手に、涙ながらに自分の現状を訴えていた。シェリルは夫からの暴力を受け、周囲からは黒人として冷遇されていることに我慢ならないでいる。

「配られた手札で何とかしないといけない」と言われたシェリルは、おもむろに荷造りを始める。そして夫からの電話も無視して部屋を後にした。冷蔵庫には「美容室に行ってくる」というシェリルのメモが張られていた。

ニーヴ

それから時は流れ2020年。シェリルはニーヴという名前で白人の夫イアンと再婚。セバスチャンとメアリーの子どもたちと4人家族で、豪邸に暮らすほどの成功者となっていた。私立学校の副校長としての地位もあり、最近では自宅でチャリティーパーティを開催しようと計画している。そんなニーヴに近所の人々も一目置いていた。

ある時、ニーヴは喫茶店でひとりの黒人男性を見かける。この街では珍しいその黒人は、遠くからずっとニーヴを見ている。その黒人に違和感を覚えたニーヴは、この日を境に彼女の日常が少しずつ崩れ始める。

【以下ネタバレ】パーティで起きた悲劇

ニーヴが副校長として働く高校にはセバスチャンとメアリーが通学しており、イアンは保険会社で勤務している。イアンの職場には、最近若い黒人女性がアシスタントとして入社してきた。

一方で、ニーヴの勤務する高校でも黒人男性がひとり清掃員として雇われる。その清掃員は喫茶店で見かけた男性だった。セバスチャンが清掃員と会話をしているのを見たニーヴは、慌ててセバスチャンに教室へ行くよう怒鳴りつける。

さらにセバスチャンは密かにタバコを吸っており、誰かにそそのかされた痕跡があった。ついには夜遅くまで帰ってこなかったセバスチャンをニーヴは何度も殴るのだった。

メアリーにも変化があり、友人の家から帰ってくると、急に髪型が「民族的」になるなど、明らかに様子が違っていた。

ニーヴは何度も目に付くあの黒人男性の存在に苛まれ、ひどいストレスと幻覚を見るようになる。その後、黒人の清掃員を解雇するよう訴えるが、明確な理由もないのに退職させるのは差別ではないかとたしなめられる。

学校ではチャリティーコンサートで披露する合唱の練習が行われ、ニーヴは監督してその様子を見守っていた。すると、練習中に火災報知器が鳴り、生徒は避難する。ニーヴがトイレに向かうと、そこには男性の清掃員がいた。すると彼は「俺たちを見捨てた」とニーヴを怒鳴りつける。ニーヴは人違いだと言って、怯えてその場から逃げ出すのだった。

チャリティー当日。ニーヴは自宅に清掃員の男とメアリ―と同い年くらいの女子が来ていることに気づく。我慢の限界に達したニーヴは2人に帰れと強く当たるが、2人はニーヴのことを「ママ」と呼ぶのだった。

カール&ディオン

チャリティーの5日前。カールとディオンはニーヴの暮らす街までやってきた。そこでホテルに泊まり、カールはニーヴの勤め先である学校で清掃員として働き、ディオンはイアンの保険会社で事務員として働くことに。

ディオンはメアリ―にも接触し、2人は友達になる。

カールも清掃員としてセバスチャンと接触。たばこを教え、生意気な同級生にも負けないよう、兄貴分としてセバスチャンと信頼関係を作る。

ディオンは宿泊中のホテルにメアリーを招いて一緒に遊ぶが、すべてを持つメアリーに対して嫉妬にも似た感情をぶつける。またカールもセバスチャンの母親の話を聞くと様子が変わり、彼に無理難題を押し付けて怯えさせてしまう。

カールはこの街で、自分たち黒人が歓迎されていないと感じるようになり、街を去ることを決意する。しかしディオンはメアリ―の家で開かれるチャリティーパーティに行きたいと懇願する。

2人はそこでニーヴと対面し、ディオンはすべてを手にしたニーヴを「ママ」と呼ぶと同時に、「どうして自分にはなにもくれないの?」と絶叫するのだった。

シェリル

ニーヴもといシェリルは自分の素性を今の家族に隠していた。事実を知った家族は動揺し、イアンはシェリルに「カールとディオンを捨てたのか」と責める。おまけにシェリルとカールたちの再会は17年ぶりだった。

その後、シェリルは喫茶店でカールとディオンと待ち合わせをし、2人のこれまでに同情しながらも、手切れ金として小切手を渡す。受け取ったカールたちに笑顔は全くなかったが、小切手を受け取り別れる。

シェリルは家族に、カールたちと話をつけてきたと話す。イアンは「家族はこんな時こそ支え合うべきだ」と一致団結する。シェリルの抱える“問題“はすべて解決したかのように見えた。

その夜、カールとディオンは深夜にシェリル宅へ侵入する。シェリルたちのスマホを使えなくして、外部との連絡を遮断させる。そして自分の家の様にくつろぎだす。

物音に気付いたシェリルたちがリビングに集まると、カールは手切れ金を渡したシェリルをより一層恨んでいた。そして今日はディオンの誕生日であり、家族全員で祝うべきだという。メアリーに中華料理をウーバーイーツで注文させ、セバスチャンには皆で遊べるボードゲームを用意させる。

恐怖に震えるシェリルたちをよそに、誕生日を祝われて喜ぶディオン。しかしカールの怒りは収まらず、今度はイアンを標的にする。「筋トレをしよう」といって、2人は自宅にあるジムまで移動する。イアンはバーベル上げをさせられ、カールはどんどん重りをつけていき、イアンの腕が限界に近づく。

そこへウーバーイーイーツが到着。シェリルは料理を受け取ると、チップを渡すために財布を取りに行く。バーベルを支えきれなくなったイアンはバーベルの下敷きになってしまう。

そんな状況にもかかわらず、シェリルは財布を取ってくると「配達員にチップを渡してくる」と子どもたちに伝え、そのまま家を去る。

取り残された子どもたちは、ただ呆然と立ち尽くすのだった。

『彷徨い』感想

アンチファミリー映画として面白い

本作はまるで『ヘレディタリー/継承』(18)にも似たアンチファミリードラマと、『ファニーゲーム』(97)に通ずる不条理な胸糞展開が印象的な作品です。

アンチファミリードラマの多くでは、切りたくても切れない家族のつながりが描かれています。家族の繋がりを大切にする作品がある一方で、あるネガティブな理由から家族との縁を切ろうとする(あるいはそのつながりに苦しめられる)作品もあります。

『彷徨い』は冒頭から自分が黒人であること、夫によるDVに苦しんでいる状況を嘆くシェリルが登場します。彼女が出自と家族から解放されるために、カールたちのもとを去ったことが後半で明らかになりました。

一方で、「ニーヴ」となったシェリルは、白人の夫と裕福な家庭を築きます。さらには私立高校という勤務先まで得ているなど、過去の境遇と著しい対比が描かれてました。これらはシェリルがあのアパートの一室で暮らし続けていたら、きっと得られなかった人生です。

しかし、なぜカールたちまで見捨てる必要があったのか?元の家族と完全に縁を(一方的に)切るなど、自分の黒人としてのアイデンティティまで上書きしようとしている様子が随所に見られます。

白人の夫と結婚し、白人ばかりが暮らす街でコミュニティに入ろうとパーティーを開き、カツラをかぶって地毛を隠すなど…。シェリルは自分の不遇さをすべて出自と家族のせいにしているかのようです。

もちろん、そう思わせてしまう現在の人種問題もありますが、シェリルの場合はあらゆる問題を解決しようとするのではなく、ひたすら現実逃避をしているように見ることができます。その現実逃避こそが、今作で何度も繰り返される悲劇の原因になっているのです。

『彷徨い』は人種問題をテーマにしつつ、さらにそこへ家族の問題も浮き彫りにする、かなりハードな作品でした。

不条理映画として

本作のクライマックスでは、カールとディオンがニーヴ一家を軟禁する展開が見られます。これはまるで別荘にバカンスのため訪れた一家を、見ず知らずの若者が監禁して殺していく『ファニーゲーム』に通ずる演出です。

監禁された家族とは別に、当事者が独自のルールで相手をもてあそんでいる様子もかなり似ています。

『ファニーゲーム』では家族が監禁・加虐される動機もいい加減で、明確な目的もないまま家族が嬲り殺される、不条理な展開が注目を集めました。

しかし『彷徨い』が恐ろしいのは、カールとディオンには「シェリルに捨てられた」という明確な動機がある点です。その恐ろしさに追い打ちをかけるように、シェリルは17年前同様、子どもたちを残して自分だけ無責任にも去ってしまいます。

『ファニーゲーム』になぞらえるなら、カールたちがシェリルを痛めつけて去っていきますが『彷徨い』ではその立場が逆転して、より作品の胸糞悪さが際立っていました。

一見、あらすじからはミステリーやサスペンスの雰囲気もありましたが、ラストの展開で一気に後味の悪い映画に変わったのは凄かったです。なにより上記でも書いたように、シェリルがずっと「問題解決」ではなく「問題回避」に徹している点も恐ろしいです。

繰り返される無責任さをみると、きっとまた同じことが繰り返されるだろうなという虚しささえ感じられました。

短いので気軽に鬱映画を楽しみたい人におすすめ

本作は97分と比較的短いわりに、伏線回収やラストの胸糞展開など、なかなかに見ごたえがありました。

Netflixオリジナル映画の中でも、大作からインディー系など規模感がはっきりしており、本作は間違いなくインディーよりではあります。

しかし、終始シェリルの不安を浮き彫りにした不穏な演出が続き、家族を軟禁して追い詰めるシーンはじりじりと観客を緊張させるなど、大作映画では味わえない演出も見どころです。

しっかりオチもある映画なので、ほかの人にも「鬱映画」としてはかなり勧めやすい作品だと感じました!

『彷徨い』あらすじ・感想まとめ

要点まとめ
・気軽に見られるNetflixの鬱映画!
・『ファニーゲーム』に通ずる不条理&胸糞展開
・『ヘレディタリー/継承』にも似たアンチファミリードラマとしてもおススメ

以上、ここまで『彷徨い』をレビューしてきました。

ミステリー、サスペンスと思って軽い気持ちで観たら、人種問題に不条理なラストという、なかなかにヘビーな作品でした…汗

無名の監督作でも、Netflixオリジナル映画にはこうした掘り出し物的な映画があるので、ついついチェックしてしまいます。まだまだNetflixオリジナル映画から目が離せません!

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