93歳の老人がオレオレ詐欺師に立ち向かう。
その過程でまたひとつ、人生のヒントを見つける。
『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』は、笑えるけど心が温かくなる。そんな映画です。

(C)Courtesy of Universal Pictures
主演のジューン・スキッブは、本作で93歳にして映画初主演を果たし、映画主演の史上最高齢を記録しています。
・「老いること」と「自立すること」を真剣に考えさせてくれる
・実際に93歳の女優がアクションやスタントのほとんどを自身で演じている
それでは『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』をネタバレありでレビューします。
目次
『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』作品情報
公開:2025年6月6日(日本)
監督:ジョシュ・マーゴリン
脚本:ジョシュ・マーゴリン
出演者 :ジューン・スキッブ(日本語吹替:宮沢きよこ)、フレッド・ヘッキンジャー(日本語吹替:岩中睦樹)、リチャード・ラウンドトゥリー(日本語吹替:伊藤和晃)
上映時間:99分
「テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ」は、マーゴリン監督の祖母に詐欺電話がかかってきたことから着想を得た作品です。
また、アメリカの映画批評サイトで批評家から絶賛されています。中でも「主演のジューン・スキッブの才能を堪能できる」ことが評価されています。
なお、本作は第96回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞でインディペンデント映画トップ10に選出されました。
【ネタバレ】『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』あらすじ

(C)Courtesy of Universal Pictures
孫思いのおばあちゃんが、詐欺師に1万ドルをだまし取られる
テルマ(ジューン・スキッブ)は93歳のひとり暮らしのおばあちゃん。
孫のダニエル(フレッド・ヘッキンジャー)とはとても仲良しで、一緒にトム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」の映画を見たりパソコンの操作を手伝ってもらったりして過ごしていました。
そんなある日、テルマのもとに電話がかかってきます。
「おばあちゃん、僕だよ!事故に巻き込まれた」
「ダニエルの声じゃないみたい…」と違和感を覚えるテルマ。
しかし、「エアバッグで鼻を折った」「留置場から出るにはお金がいる」と畳み掛けられ、テルマはパニックになってしまいます。
続けて弁護士を名乗る人物から電話があり、「保釈金1万ドルを郵便で送れ」と指示されます。
テルマは家中のお金をかき集めて郵便局へ向かい、お金を送ってしまいました。
ところが、それは典型的なオレオレ詐欺でした。
警察に相談しても「次の被害を防ぐための注意」しか教えてもらえず、テルマは深く落ち込みます。
「ミッション・ポッシブル」を胸に、テルマが動き出す
そんなとき、新聞でトム・クルーズの写真と共に「ミッション:インポッシブル」の見出しを目にします。
「ミッション・ポッシブル(実行可能)」
それを見て、テルマは決意します。
ダニエルに渡されていたスマートウォッチをカバンに詰め、スニーカーを身につけ、詐欺師が指定した住所を突き止めるために動き出します。
老人ホームにいる旧友のベン(リチャード・ラウンドトゥリー)を訪ね、「試乗させて」と言いながらシニアカートを乗り逃げを試みます。
「1人では行かせられない」というベンに説得され、2人で街へと飛び出していきます。
途中でモナという知人の家に立ち寄り、なんと銃まで手に入れてしまいました。
連絡が取れずに心配したダニエルが追いかけてきます。
しかし、テルマはスマートウォッチを使って撹乱し、うまくまきます。
2人の口論、そして敵地へ
順調に見えた道中、テルマとベンは口論になります。
「私はまだ1人でやれる。赤ん坊のように人を頼り始めたら赤ん坊扱いされる」
と言い張るテルマ。
ベンは
「愛する人の荷物になっていなくても、実際は周りに心配をかけている。昔のままじゃいられない」
と静かに諭します。
しかし意見は平行線のまま。しかも、シニアカートは車に轢かれて壊れてしまいました。
そして、ベンとはそのまま喧嘩別れ。
それでも1人で歩き続けるテルマでしたが、途中で転んで起き上がれなくなります。
そこへ戻ってきたベンが手を差し伸べ、2人は和解。
通りがかりの知り合いの車に乗せてもらい、なんとか敵地へとたどり着きます。
銃を突きつけて、お金を取り返す
着いたのは、普通の照明屋さん。
奥では、老人(マルコム・マクダウェル)と若者(エイダン・フィスク)がオレオレ詐欺の電話をしていました。
「店の売り上げが落ちたから仕方がなかった」
と言い訳する老人。
テルマはわざと惚けたふりをして老人の油断を誘い、背を向けた瞬間に銃を突きつけます。
「金を返せ」
逃げ出そうとした若者は、入り口で待機していたベンに取り押さえられました。
テルマは慣れないパソコン操作に苦戦しながらも、電話越しにダニエルの助けを借りてなんとか送金ページへ辿り着きます。
しかし店が潰れてしまうことに絶望した老人の様子を見て、1万ドルではなく9千5百ドルに変更して送金しました。
ねじれた木と、いつも通りの日常
迎えにきたダニエルの車で帰り、ベンとこれからの交流を約束して別れました。
後日、夫の墓参りの帰り道。
テルマは道端でねじれた木を見つけてダニエルに言います。
「根元がねじれているけど生きてる。すごいと思わない?倒れたっておかしくないのに。頑張り屋さん」
そして、テルマのいつも通りの穏やかな日常が戻ってきました。
【ネタバレ】『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』感想

(C)Courtesy of Universal Pictures
「93歳の初主演」という事実
テルマを演じるジューン・スキッブは、撮影当時93歳にして映画初主演。
「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派です。
同じ年齢の役を演じているからこそ、表現のリアル感が増しています。
しぃぷ
ジューン・スキッブ自身がそのことばを体現しているようで、胸が熱くなりました。
高齢だからといって「守られるだけの存在」ではない。
その主張を、テルマというキャラクターがユーモアたっぷりに証明してくれます。
「老いること」と「自立すること」のリアルな葛藤
道中、テルマとベンは口論になります。
「赤ん坊のように人を頼り始めたら赤ん坊扱いされる」というテルマ。
それに対して、 ベンは「昔のままじゃいられない」と静かに諭します。
しぃぷ
年を重ねるにつれて、できないことが増えていく。
それを受け入れることと、それでも諦めないこと。
2つの間で揺れるテルマの姿は、どこか自分自身のことと重なって見えました。
一見、20代・30代の若い世代には直接関係のない話のようです。
しかし、実は親や祖父母のこと、あるいは将来の自分のことを考えさせてくれます。
ラストの「ねじれた木」が深い
大冒険ののち、テルマはねじれた木を見ながらダニエルに言ったセリフ。
「根元がねじれているけど生きてる。すごいと思わない?倒れたっておかしくないのに。頑張り屋さん」
これは、監督の実の祖母テルマが言った言葉であることが、最後の最後に明かされます。
「1人で、人に頼らずに生きる」ことに執着していたテルマが、大冒険を経て、人生の新たなヒントを得たと感じました。
また、「今」を生きづらいと思っている人にも刺さる言葉にも思います。
『テルマがゆく!93歳のやさしいリベンジ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
・コメディ色が強いのに、「老いと自立」というテーマが深く刺さる
・ラストの「ねじれた木」が考えさせられる
しぃぷ
それでいて、見終わったあとに「自分、頑張ってるな」という気持ちになれる映画です。
「なんだか最近疲れているな」と感じるときや、家族や大切な人のことを思い出したいときにおすすめです。

