『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』あらすじ・ネタバレ感想!爽快な優しさに包まれる異色のロードムービー

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』あらすじ・ネタバレ感想!異色の3人の爽快な優しさに包まれるロードムービー

出典『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』公式Twitter

無名監督2人の初長編作品ながら『リトル・ミス・サンシャイン』のプロデューサー陣が集結した『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』。

SXSW映画祭観客賞受賞し全米各都市でチケットが売り切れると言う騒動を巻き起こした話題作です。

爽やかなハートフルストーリに心温まること間違いありません。

ポイント
  • 食料もお金もない完全DIYのロードムービー
  • スクリーンに映し出される海や木漏れ日が美しい
  • ラスト8分予想外の展開に緊張感が走る!

それでは『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』をネタバレありでレビューします。

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『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』作品情報

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

(C)2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

作品名 ザ・ピーナッツバター・ファルコン
公開日 2020年2月7日
上映時間 97分
監督 タイラー・ニルソン
マイク・シュワルツ
脚本 タイラー・ニルソン
マイク・シュワルツ
出演者 シャイア・ラブーフ
ダコタ・ジョンソン
ジョン・ホークス
ザック・ゴッtツァーゲン
ブルース・ダーン
ジョン・バーンサル
トーマス・ヘイデン・チャーチ
ミック・フォーリー
ジェイク・ロバーツ
イェラウルフ
音楽 チャールズ・バーサミアン

【ネタバレ】『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』あらすじ・感想


爽やかなストーリーの良作

普通に暮らしていれば出会うはずのなかった2人が、出会い、それぞれの目的を果たすため共に旅へ出る。

こういった話の筋は映画のストーリー展開としてもよくあるパターンです。

まさに『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』も、このパターンに当てはまります。

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しかしながら主役2人の抱えているものの大きさを考えると、この作品を「よくあるパターンの映画」と一刀両断にしてしまうのはあまりに早計です。

主役の1人であるダウン症のザックは家族に捨てられ、2年半もの間、老人養護施設で暮らしています。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

(C)2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

ザックの夢は憧れのプロレスラー、ソルトウォーター・レッドネックのレスラー養成学校に入ること。

「そいつを観るたび5セントもらってりゃ、俺は大金持ちだ。」と同部屋の老人カールに言われるくらいソルトウォター・レッドネックのプロレス講座のビデオを繰り返し観る熱狂ぶりです。

もう1人の主人公である漁師のタイラーは、慕っていた兄を自分が起こした事故のせいで失い、生きる気力を失って孤独な日々を過ごしています。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

(C)2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

ある日、他人の獲物を盗んで、更に放火事件まで起こしてしまったタイラーは追われる身になってしまいます。

その逃避行のさなたに、養護施設から逃げ出したザックと出会うのです。

養護施設で暮らすダウン症の青年と孤独な漁師。

普通ならば、出会わない組み合わせの2人。

しかしながら共に「追われる身」として、旅を続けることで次第に打ち解け、それぞれ変化を見せていきます。

ザックと触れ合い、ザックの夢の達成に付き合うことで、タイラーの死んだようだった目が生き返るのが観客席で観ていても分かるくらいです。

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またタイラーと出会ったことで、ザックの表情も精悍なものに変化していくのが分かります。

それまでのザックの生活といえば、お年寄りと看護人しかおらず、老人養護施設という狭い檻でしか彼の世界は広がっていませんでした。

それが逃走しタイラーというワイルドな逃亡者に出会うことで、彼の世界は大きく広がるのです。

大自然の中を歩き回り、時にはフェリーに轢かれそうになったり、銃をぶっ放したりと養護施設では考えられないことばかりを経験していきます。


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そういった経験ありつつ、やはりザックの変化の要因は、タイラーとのやりとりが大きかったのではないでしょうか。

タイラーは最初からザックを見下すこともなければ、過度な同情や世話を焼くこともなくフラットに接します。

彼は対等に意見を言い、またザックの話をタイラーはちゃんと耳を傾けるのです。

そして、ザックが「俺は弱い。」というと「そんなことない。お前は強い。」と答えるように、常にザックを受け入れ力付けます。

養護施設ではザックにもエレノアや同部屋のカール、ローズマリーなど親しい人間がいた描写はあるものの、やはり同性の若い男性が自分を受け入れてくれたことは、ザックにとって大きなことだったように感じます。

旅での2人の様子は、時には兄弟のように見えるくらいです。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

(C)2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

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男兄弟で育ったタイラーにとっても、気がつけばザックは弟のような存在になっていたのではないでしょうか。

この映画の中で一番印象深いシーンは物語の中盤、夜の砂浜でザックがタイラーに悪役プロレスラーになりたいと告白する場面です。

なぜ悪役なのかとタイラーに問われると、ザックは「家族に捨てられたから」と答えます。

その一言はザックの悲しみや孤独全てが濃縮しているようです。

そして、そんなザックの言葉を受けて始まるタイラーとの会話のやり取りが美しく、とても素敵なシーンになっています。

またタイラー自身も純粋で真っ直ぐな人間だということが感じられるシーンです。

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タイラーにとってもザックとの出会いは大きなものだったに違いありません。

兄を殺してしまったことへの自責の念から、自分の人生を失ったかのような目をしていたのが逃避行前のタイラーでした。

しかしながら、劇中に度々映し出される兄と一緒の回想シーンでは生き生きとしたザックの姿が見ることができます。

また、そのシーンからは兄を本当に慕っていたことが分かるだけに、彼の後悔や背負ってしまった十字架の重さも十分に伝わってきます。

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きっと回想シーンの彼こそが本来の姿だったのでしょう。

そんなタイラーも真っ直ぐなザックに出会い、ザックの夢に付き合うことで生きる望みを取り戻します。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

出典:IMDB

本来ならば1人でさっさとフロリダに逃げればいいところを、何度か離れる機会があったのにも関わらず、タイラーはザックと共に旅をすることを選ぶのです。

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追い詰められ、人生を諦めていたタイラー自身、ザックの純粋無垢な姿に救われたのかもしれません。

そしてザックと親しくになるに連れて、彼の夢に自分の未来をかけていたようにも感じられました。

出会うはずのなかった2人は、まさに出会うべきして出会った「バディ」で「家族」だったのです。

2人のザックの夢がリンクする感動ストーリー

ザ・ピーナッツバター・ファルコン』はザック役を演じているザック・ゴッツァーゲンが本作の共同監督の1人、マイケル・シュワルツに言い放った一言で制作が決まりました。

ダウン症のザックがマイケルに「映画スターになりたい」と話すものの、マイケルは「それは叶いっこない」と取り合いません。

感情的になったザックがマイケルに言った言葉が「じゃ、君たちが僕のために映画を作ってくれよ。」でした。

この一言がマイケルともう1人の監督タイラー・ニルソンを動かし、ついには『リトル・ミス・サンシャイン』のプロデューサー陣をも動かし、本作の制作が始まったのです。

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このエピソードを知って、映画を観ると2人のザックの夢が見事にリンクします。

「ダウン症だから、映画スター/プロレスのヒーローにはなれない。」

そんなことを両方のザックは他人の言葉や態度から、そして時には自分自身からも感じ取っていたことでしょう。

実際に役者の方のザックは、マイケルに夢を否定されています。

そして彼の夢を否定したのは、マイケルだけではないことは安易に想像ができます。

それでも、ザックは諦めなかった。

劇中、プロレスの試合でザックが不可能なはずの技を相手にかけるように、マイケルに強烈な一言を言い放ち、自身が主演の映画の制作を実現させます。

そして、その映画は全米で大ヒットし、世界中で公開されているのです。

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誰もが負けると思っていた試合にザックがウルトラ技で勝ったように、ザック・ゴッツァーゲン自身も彼の大きな試合に勝ち、勝利を掴み取ったと言っても過言ではありません。2人のザックのエピソードがうまくリンクしているからこそ、物語でのザックの苦悩や成長、喜びが実にリアルかつストレートに観客にまで届いてくるように思いました。

個性豊かな愛すべき脇役がたくさん!

物語の序盤に登場するローズマリー(ザックの逃亡計画の共犯者)やザックと同部屋のカール、旅先で出会う盲目のジャスパー、そしてザックの憧れのソルトウォーター・レッドネックことクリントなど個性豊かなキャラクターが多いのも、『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の愛すべき点です。

何と言っても、ザックがソルトウォーター・レッドネックとの対面を果たせず、タイラーとの雲行きが悪くなった時に登場するクリントの格好良さはたまりません。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

出典:IMDB

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観客も「そうだよな。そんな簡単に夢は叶わないよな」と少々センチメンタルになっている時に、そんな気持ちをぶっ飛ばしてくれるような登場の仕方で表れてくれるので実に爽快です。

そして登場シーンは少ないものの、忘れてはいけない人物がカールです。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

出典:IMDB

カールこそが老人養護施設でのザックの理解者であり、ザックの逃走に大きく貢献した人物でした。

ダウン症といえども、22歳と若いザックが老人養護施設にいることを哀れみ、外の世界を見せてあげたいという親心のようなものがカールにはあったのではないでしょうか。

そう思えるくらい、ザックの見る目は優しく、その会話のやり取りは肉親のようです。

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ザックが逃亡した後のエレノアとのやり取りも愛嬌に溢れており、どこからどう見ても憎めないおじいさんそのものです。

そんなカールがザックとの別れ間際に言うセリフが、この映画のテーマのようになっています。

「友達ってのは自分で選べる家族だ。」

カールの言葉の通り、物語のラスト、それぞれ家族を失った過去を持つザック、タイラー、そしてエレノアは、まるで家族のようにフロリダに向かい、映画は終わります。

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彼らは自分の意志でそれぞれを選び家族になったんだと思わせる素敵なラストでした。

『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』まとめ

以上、ここまで『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』についてレビューしてきました。

要点まとめ
  • 出会うはずのなかった2人の友情と成長物語
  • 物語と映画製作秘話がリンクして感動
  • 愛すべき脇役たちにも注目!

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