事務所に所属せずフリーで活動している無名の女優、オリアアキ。
マジシャンの助手として催眠術にかかる演技を繰り返していくうちに、妄想と現実の境目が曖昧になっていく…。
- 何が現実で起こっていて何が妄想の出来事なのか。曖昧になる境目に振り回されるのが楽しい作品
- 要所要所で流れるEDMが心地よく、目から入ってくるカラフルな映像も綺麗です
- この世界が誰のものなのか、とかそういうちょっと哲学めいたことを考えるのが好きな人は見てみたら良いと思いますよ
それでは『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』をネタバレありでレビューします。
目次
『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』作品情報
作品名 | リミット・オブ・スリーピング ビューティ |
公開日 | 2017年10月21日 |
上映時間 | 89分 |
監督 | 二宮健 |
脚本 | 二宮健 |
出演者 | 桜井ユキ 古畑新之 佐々木一平 新川將人 成田凌 山谷初男 満島真之介 高橋一生 阿部純子 信太昌之 |
音楽 | 原田智英 |
【ネタバレ】『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』あらすじ
無名の女優アキと、カイトの出会い
何もない田舎で生まれ育ったオリアアキ(桜井ユキ)は女優になることを夢見てフリーで活動することもう何年か、年は29歳になっていました。
夢は女優、実際のところは10年以上も見世物小屋でマジシャンの助手をしています。
時折、自分の存在を認識しているにも関わらず、いつどこで何をしているのかわからなくなる時がある。
そんなことを話すのは見世物小屋AURORAの屋上にあるベッドの上。
今の仕事に就くきっかけは些細なものでした。
10年ほど前のある夜、街を歩いていたアキはなんとなくバーが目に入り、店に入ってみます。
年配のマスター(山谷初男)に「オレンジジュースください」と頼むと、出てくるまでの間に男性客が1人入ってきました。
彼はカイト(高橋一生)というカメラマンで、バーの常連客らしくカウンターにつくと同時に「ジントニック。ライムじゃなくてオレンジで」と頼みました。
カイトはAURORAのオーナーもしており、パンパンの大きなバッグのアキを見て家出少女だと思ったために「帰るところがないなら泊めてあげる」と言いました。
30歳、カイトと同じ年になったアキ
ある時、アキはビト(信太昌之)という有名な監督が指揮を執るハムレットのオーディションに向かいます。
たまたま隣に座ったマリア(阿部純子)という女性が突然「ハムレットの登場人物で誰が一番好きですか?」と聞いてきました。
アキはオフィーリア、と答えました。
マリアもアキも事務所には所属していない女優志望ということもあり簡単な会話を二、三しました。
オーディションではヒロインの座を求めてやってきた女優たちに対して監督が“愛とは何か”と問いました。
アキは何も答えられませんでした。
マリアは「救われるもの、でも奪われるもの。でもそれを知りたくて芝居を続けているんだと思う」と答えました。
結局“世界のビト監督”の最新作となる「東京ハムレット」のヒロイン、オフィーリア役に抜擢されたのはアキでした。
30歳になって頭角を現した女優として話題になりスケジュールはずっと先まで埋まるほど忙しいアキの目の前に、燻っていたころからずっと現れていた道化師のブッチ(古畑新之)が現れます。
ブッチはアキの妄想の産物。
心の内を素直に話せるのはブッチだけでした。
しかし今となっては相手をしているほど退屈ではない事を伝えると、ブッチは消えました。
この日どうしてもアキはAURORAに行かなければなりませんでした。
カイトの命日だったのです。
花を手向けに行くと、店長のフク(木村知貴)からAURORAを閉店すること、一か月先に取り壊しが決まっていることを告げられました。
アキはマジシャンの助手として初めて店を訪れた日のことを思い出していました。
子どもの頃にマジックとかサーカスを見てわくわくした気持ちを、いくつになっても忘れられなかったカイトが作った店がAURORA。
カイトはアキにどうして家出をしたのか聞きます。
アキは3人で暮らしていたこと、その3人とは自分と母と、“なんか男”であることを答えました。
カイトはそれだけで“なんか男”が原因であることを察します。
それとアキは女優になることが夢であるということも話しました。
そして、AURORAの宿舎に住まわせてもらう代わりに働かせてほしいと申し出ます。
カイトは「いいよ」と言いました。
身に覚えのない“黒い交際”
夜、アキはビト監督と東京ハムレットについてディスカッションしていました。
オフィーリアと自分とを照らし合わせながら語っている最中、ふと監督が「当たり前の情報だけでは苦痛すぎる、この世界は何だ?」と問います。
今までは夢を心のよりどころとして生きてきたけれど、その夢が叶ってしまった今は“夢”を持続させなければならない。そんなのは地獄だと話すアキは、妙な感覚に襲われました。
ある日、週刊誌にアキの悪い記事が大々的に載ってしまいます。
そこには暴力団から不正な金を受け取り鳴り物入りで芸能界デビューした、と書いてありました。
アキが苛立ちながら目の前を行ったり来たりしているマネージャーにどういうことか聞くと、ハメられたんだと言われます。
売れて浮かれて都合の悪い記憶全部消えたか?とまで言われましたがアキは身に覚えがありませんでした。
パパラッチに追われ何が何だかわからないままに追い詰められて立ち行かなくなったアキはブッチを呼び出します。
こんな茶番でオフィーリアの役を失うのは嫌だと言うアキに、ブッチは「どっちが茶番だよ」と吐き捨てました。
アキはカイトとの幸せな時間を思い出していました。
自分のために一晩かけて“自分の人生が詰まっている”という10曲のMIXをくれた日のこと。
目が覚めたらカイトがいなくなっていたこと。
朝になりベットに座り込むアキは、悲しいことがあるとカイトのことを思い出す、はっきりと思い出すとブッチに言いました。
生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ
我に返ったアキがテレビを眺めていると、オーディションの時に隣に座っていた山本マリアがオフィーリア役の女優として紹介されていました。
オフィーリアは自分の役なのに、とテレビでマリアにあてたメッセージに出ていたゴトウリュウというプロデューサーに会いに怒鳴り込みに行くと、受付嬢には「そんな人はいない」と言われ、暴れているところを警備員に押さえつけられたところで意識が落ちました。
目を覚ましたアキは病院のようなところのベッドに拘束されていました。
医師からは「お前は病人なんだよ」と言われます。
ブッチが現れてから夢と現実がわからなくなった、というアキにブッチは「順番が逆だ」と言います。
夢と現実がわからなくなったから、自分が見えるようになったんだというのです。
病院内の周りにいる患者を見渡すと、ハムレットのオーディションに来ていた女優たち、山本マリアもいました。
アキはオーティションの日のことを思い出します。
ゴトウはハムレットのことを残念だったとし、しかしアキを主役にして一本作品を作ろうと思っていると言いました。
浮かれていたのもつかの間、ゴトウから怪しげなバーに呼ばれると「映画の主演をやりたいなら中にいるオッサンに絶対気に入ってもらえ」と言われ個室に通されました。
オッサンは大金を目の前に広げて、アキに裸になるよう命じます。
アキは頬を平手打ちされたり頭を打ちつけられたり、乱暴されて泣きながら逃げ出しました。
向かった先はEDMが大音量で流れるクラブ。
仮面をつけた男女が踊ったり抱き合ったりするような場所。
バーテンダーに酒を注文したところで、アキは「もういいよ、ブッチ」と言いました。
そこが妄想の世界だとわかったのです。
ブッチは「何をどうしようとここはアキの世界だ。最後の選択をしろ」と言いました。
「生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ。」アキには覚えのある言葉でした。
そして「もうちょっとでAURORAの取り壊しが始まるぞ」と急かしました。
覚醒したアキは銃をぶっ放して精神病院にいる医師や看護師を殺して回り、ブッチと共闘して医師の恰好をしたオッサンをも殺します。
そしてAURORAに向かうとステージにはカイトがいました。
カイトは起爆装置のスイッチを持っていて、これを押したらAURORAは爆発、さよならだと告げます。
アキは一緒に全部1からやり直そうと言いますが、カイトは「君はもう夢からさめるべきだ」と言いました。
アキは嫌だ嫌だと泣きましたがカイトは譲りませんでした。
カイトは「それでも世界は素晴らしい、やってけるよアキなら。大丈夫、またアキを見つけるから。次はヘビになって。」と、いつかアキと交わした言葉から2人だけにわかる言葉をくれました。
アキは笑顔でAURORAを後にし、起爆装置のスイッチを押しました。
【ネタバレ】『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』感想
『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』を見た理由、ざっくりとした感想など
完全なるジャケット買いならぬジャケット見です。
簡単な紹介文に“妄想と現実の境界線が揺らいでゆく”みたいな文言があったのが決定打でした。
vito
難点を申し上げるならあらすじとして上手いこと文章を書けないことですね。
vito
結局、現実で何が起きたことがきっかけでアキが妄想に入り浸るようになってしまったのかっていうあたりは描かれているけど現実世界で最終的にどうなったか、最後に目を覚ましたのはどこなのかっていう部分は描かれていないわけですが。
それがまたいい。
vito
割と終盤の、現実のアキに何が起きたのか明かされていくあたりでの冒頭のリフレインみたいな場面でヒィヒィ言ってしまいました。
こういうの大好き。
vito
この世界とは?とか時間とは?とか考えることがあったり平行世界ってあるんじゃないかとか…あとは自分の頭の中で考えていることって“妄想”という一言で片付くものなのか?とか、そんなことを普段から考えちゃったりしている人には何が何でも見て欲しいです。
たぶん脳内クラウドを同期する、の意味がわかると思います。
vito
アキとカイトの場面が尊い
vito
ダントツで好きな場面は、カイトがアキのために一晩かけて作ったMIXを流す場面。
楽しそうに幸せそうにしているアキとカイトが尊いんです。
ブランケットみたいな大きな布みたいなのに包まって笑い合っていたり、カイトがアキの髪にキスしたり、幸せそうで凄く儚い場面。
vito
あとはもう全編通してアキ役の桜井ユキがずっと可愛い。
vito
最後にAURORAを爆発する前、カイトと話していて子どもみたいに泣いちゃう場面とかもう本当にグッときた。好きです。
vito
あとそういえばEDMガンガンのクラブで仮面つけてるバーテンとして成田凌が出てくるのもツボだったのでここに記しておきます。
『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』まとめ
以上、ここまで『リミット・オブ・スリーピング ビューティ』をレビューしてきました。
- “妄想と現実の境目が曖昧になっていく”この文言にドキリとした人には絶対見て欲しいです
- 主人公に感情移入できたらめちゃくちゃ楽しめる、200%気に入る作品
- 目に映るこの世界、こうしている今も回っているこの世界は誰のものだと思いますか?