Netflixで配信中の映画『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』。
2016年4月に漏洩したことで明らかになり世界に激震が走った、租税回避行為に関する一連の機密を記した“パナマ文書”問題を題材にした作品です。
実在の問題とそこに付随する事件や人物を描いた時事性の高い映画ですが、コメディチックな演出で観る者を惹きつけるストーリーになっています。
監督を務めたのは『オーシャンズ11』シリーズなどで知られるスティーヴン・ソダ―バーグ。
そして、主演は『クレイマー、クレイマー』や『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』など様々な作品で多くの賞を受賞してきた名女優、メリル・ストリープが務めました。
今回はそんな映画『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』を後半ネタバレありでご紹介します。
目次
『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』作品情報
作品名 | ザ・ランドロマット-パナマ文書流出- |
配信開始日 | 2019年10月18日 |
上映時間 | 96分 |
監督 | スティーヴン・ソダーバーグ |
脚本 | スコット・Z・バーンズ |
出演者 | メリル・ストリープ ゲイリー・オールドマン アントニオ・バンデラス ジェフリー・ライト メリッサ・ラウシュ マティアス・スーナールツ デヴィッド・シュワイマー ロバート・パトリック ジェームズ・クロムウェル ウィル・フォーテ シャロン・ストーン |
音楽 | デヴィッド・ホームズ |
『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』あらすじ【ネタバレなし】
クルーズ船事故でわかった保険会社の闇
エレン(メリル・ストリープ)は湖でのショアクルージングに参加しました。
沖合に出ると急な高波に襲われ、乗っていたクルーズ船は転覆。
この事故で21名の死者が出ましたが、その中にはエレンが長年連れ添った夫も含まれていました。
傷心状態で弁護士に相談すると、クルーズ会社からの保険金と和解金での解決を勧められます。
一方、事故に遭ったクルーズ船の船長をしていたペリー(ロバート・パトリック)は、節約のために安い保険会社と契約していたものの、すべての契約に穴があり、詐欺被害に遭っていたことを部下から知らされます。
その頃、エレンは保険金を使ってホテルの一室を購入しようと、娘と孫たちを連れて下見に来ていました。
しかし、不動産会社のハナ(シャロン・ストーン)が、他の客が2倍の値段で部屋を買ったことを伝えに来ます。
購入を断られたエレンが部屋を買ったロシア人を調べてみると、税金対策で買っていることが判明しました。
その後、エレンは弁護士に呼ばれて再び話をします。
クルーズ会社からの保険金がおりず和解金のみになると知らされ、夫の生命保険はおりるから和解したほうがいいと勧められました。
納得がいかないエレンは、クルーズ会社が入っていた3つの保険会社共通の取締役がネイビスにいることを突き止め、直談判しに行きますが…。
※ここからの感想・解説パートはネタバレを少し含みます。
【ネタバレ】『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』感想・解説
世界を震撼させた事件をコメディチックに描く
『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』は、事故で夫を亡くしたエレンが保険詐欺の被害に遭うところから始まります。
調べていくうちに保険会社自体が実態のない“ペーパー・カンパニー”だったことが明らかになり、その“ペーパー・カンパニー”を作ることで不正な取引を行っている法律事務所の存在にまで行き着くのです。
“パナマ文書”とは、パナマにあった法律事務所“モサック・フォンセカ”が保持していた1970年代から2016年までの約1150万件もの膨大な機密データのこと。
このデータが流出したことで、世界中の大企業や政治家、著名人などの富裕層が脱税をしていたことや、犯罪者の資金隠しが明らかになり、世界各国に衝撃が走りました。
監督のスティーヴン・ソダーバーグは、この世界的な大事件を“モサック・フォンセカ”の創立者であるユルゲン・モサック(ゲイリー・オールドマン)とラモン・フォンセカ(アントニオ・バンデラス)の視点から描き、ブラック・コメディとして昇華させています。
実際に起きた出来事をベースに、その裏側を描いたビジネス映画というと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』が思い浮かびますが、『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』は風刺的な要素を強くしているように思いました。
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これは劇中で描かれるマネーロンダリング(資金洗浄)を表しています。
どこまでがノンフィクション?
劇中では保険詐欺の真相を追うエレンのストーリー以外にいくつかのパートが挟まれています。
それは“モサック・フォンセカ”に関わっていた様々な人物のストーリーなのですが、“パナマ文書”問題に付随した実在の人物や事件が含まれています。
例えば、エレン夫婦の存在はフィクションであるものの、湖でのクルーズ船転覆事故は実際にありました。
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エレンがネイビスまで探しに行ったアーヴィン・ボンキャンパーも実在の人物。
保険詐欺による利益のマネーロンダリングを行ったとして実刑判決を受けました。
さらに、中国を舞台にしたパートで起きた毒殺事件も実際にあった出来事です。
政治家の妻であるビジネスウーマンがホテルの一室でイギリス人の実業家を毒殺し、死刑判決を受けています。
事件に関与した部下の女性も実在しており、9年の実刑判決が下されました。
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2016年に機密データの存在が明らかになった後、2017年に逮捕されました。
刑務所でおよそ3ヶ月過ごし、翌年には法律事務所を営業停止にしています。
ちなみに2人はこの映画化に際して名誉棄損で訴訟を起こし、Netflixに配信停止を求めましたが、裁判所はそれを拒否。
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また、“パナマ文書”事件とは直接関係していませんが、劇中でモサックが「この映画の監督も“ペーパー・カンパニー”を5社持っている」と話しています。
実は、監督のソダ―バーグは実際に“ペーパー・カンパニー”を持っており、自虐的なセリフを登場人物に語らせたことになります。
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“ジョン・ドウ”の存在
“パナマ文書”はある人物によってデータをリークされ、その存在が明らかになりました。
リークした人物は劇中と同様に自らを“ジョン・ドウ”と名乗っていて、これは英語圏で匿名の人物を表す際に使われる名前です。
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映画の終盤ではジョン・ドウのマニフェストが引用され、そこでリークした理由が語られています。
「命の危険に晒されるので身元は明かせない」ともいっていますが、劇中ではジョン・ドウの正体が明かされました。
このラストはメリル・ストリープの好演によって、本当に印象的なシーンになっています。
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しかし、現実ではジョン・ドウは身元不明のまま。
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“パナマ文書”事件を知らなくても楽しめるストーリーですが、たくさんのパートと複雑な詐欺の仕組みが描かれることで混乱する人もいるかもしれません。
それでも、ラストシーンを観るとジョン・ドウとメリル・ストリープのおかげで良い映画だった!という気持ちになること間違いなしの作品です。
『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』まとめ
いかがだったでしょうか。
『ザ・ランドロマット-パナマ文書流出-』はNetflixで絶賛配信中。
多くの人に観てほしいラストが待っています。
ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?
- 実際に起きた事件を基にしたストーリー
- 皮肉を込めた時事性の高いブラック・コメディ
- 豪華なキャストが作品を彩る!