2011年、アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞した映画『英国王のスピーチ』。
吃音症に悩まされたイギリス王・ジョージ6世と、平民の言語療法士・ローグの友情を描いた史実に基づいた作品です。
イギリス王室は長年ジョージ6世が吃音だったことを隠していたそうですが、ジョージ6世と妻のエリザベス妃の死後、映画化することができたそうです。
脚本を担当したデヴィット・サイドラーがおよそ30年に渡り温めていた作品ということで、アカデミー脚本賞を受賞したのも納得のストーリーになっています。
- 立場を超えて生まれる友情
- 悩む王と支える妻の夫婦愛
- 史実に基づいた素晴らしい脚本
今回はそんな映画『英国王のスピーチ』をネタバレありでご紹介します。
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目次
『英国王のスピーチ』作品情報
作品名 | 英国王のスピーチ |
公開日 | 2011年2月26日 |
上映時間 | 118分 |
監督 | トム・フーパー |
脚本 | デヴィッド・サイドラー |
出演者 | コリン・ファース ジェフリー・ラッシュ ヘレナ・ボナム・カーター ガイ・ピアース ティモシー・スポール デレク・ジャコビ ジェニファー・イーリー マイケル・ガンボン アンソニー・アンドリュース |
音楽 | アレクサンドル・デスプラ |
【ネタバレ】『英国王のスピーチ』あらすじ
吃音症との戦い
1925年、大英帝国博覧会の閉会式でスピーチをすることになったヨーク公(コリン・ファース)。
ヨーク公は後にイギリス王ジョージ6世となる人物で、この日は父であるジョージ5世(マイケル・ガンボン)の代理として式典の場に出ることになっていました。
しかし、ヨーク公は吃音症に悩まされており、スピーチには苦手意識があります。
ラジオ放送が始まったばかりの時代で、国王や皇太子のスピーチを聴衆は楽しみにしていましたが、ヨーク公のスピーチは失敗に終わり、聴衆を落胆させてしまいます。
その後、ヨーク公は吃音症を治すためにトレーニングを始めます。
ビー玉を口いっぱいに咥えて朗読したり、煙草を吸ったりする治療方法は、古代ギリシャで行われていたスパルタな内容でした。
ヨーク公はそんな治療方法の数々にうんざりし、「治療はもうやめよう」と言います。
ヨーク公の妻であるエリザベス妃(ヘレナ・ボナム・カーター)は、治療の様子をいつも心配そうに見守っていましたが、独自の治療方法でたくさんの患者を診てきたという言語療法士・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)の元でトレーニングを再開しようと説得します。
嫌がりながらもローグの元へ出向くと、ローグは英国王室への礼儀に反して、ヨーク公のことを愛称で“バーティー”と呼び、自分自身のこともローグ先生ではなくファーストネームの“ライオネル”と呼ぶように言います。
そんなローグの態度を無礼だとして怒ったヨーク公は帰ろうとしますが、ローグは「生まれつきの吃音症なんていない」と言い放ち、さらにヨーク公の癇癪持ちも指摘します。
ヨーク公は「数多くの欠点の1つだ」と認めますが、苛立ちを抑えられません。
そんなヨーク公に対し、ローグは賭けを持ちかけます。
それはシェイクスピアの「ハムレット」の台詞を朗読できるかどうかというものでした。
ローグはヨーク公にヘッドホンをつけさせ、音楽を聴かせながら朗読させます。
しかし、苛立ちが収まらないヨーク公は、朗読を途中でやめてしまいました。
帰ろうとするヨーク公に、ローグはレコードを手渡します。
そのレコードには「ハムレット」を朗読するヨーク公の声が録音されていました。
ジョージ6世が即位するまで
イギリス王ジョージ5世は、クリスマスにスピーチのラジオ放送をします。
ジョージ5世は自らの死後、国が滅びることを危惧していました。
それは、ヨーク公の兄であり次期国王のデイヴィット(ガイ・ピアース)が、離婚歴がある平民のアメリカ人女性・ウォリス(イヴ・ベスト)と不倫関係にあるからです。
当時ヒトラーやスターリンが勢力を強めており、次期国王が不適格な状態ではいけないと思ったジョージ5世は、長男のデイヴィットではなく、真面目な次男のヨーク公に期待していました。
そのため、ジョージ5世は「威厳を持て!」とヨーク公に厳しく接します。
帰宅後、イライラしていたヨーク公はローグに渡されたレコードを聴きました。
すると、レコードからは滑らかな朗読が流れてきます。
自らの発声に驚いたヨーク公は、再びローグの元へ出向きました。
そして、発音や呼吸の訓練、発声に使う筋肉をほぐす練習など、本格的にトレーニングを始めます。
しかし、一度失敗したというトラウマやプレッシャーがあるからか、なかなかスピーチはうまくいきません。
ある日、ヨーク公は乳母から虐待を受けていたことや末の弟が亡くなったことなど、幼少期のつらい記憶を語ります。
その幼少期の出来事が原因で吃音症を発症したと気づいたローグは、ヨーク公と友達として接することに努めます。
2人の仲は徐々に縮まっていき、そこには確かな友情が生まれていきました。
やがて、ジョージ5世が亡くなり、デイヴィットがエドワード8世として即位します。
しかし、デイヴィットはウォリスとの関係を諦めることができずついに結婚。
その結婚は首相や大臣たちに受け入れられず、即位して1年も経たないうちに退位してしまいました。
こうしてヨーク公はジョージ6世として即位しますが、自分はこれまでに海軍士官の経験しかしていないとエリザベス妃に言い、自信をなくします。
王を支えた友情
戴冠式に向けて準備が進む中、ジョージ6世はローグの経歴を知ることになります。
実は、ローグは医療資格を持っていませんでした。
それでも第1次世界大戦の後、戦争後遺症によって話ができなくなってしまった人たちと真摯に向き合い治療をしてきたのです。
ローグが医療資格を持たないと知った周囲の人は、ジョージ6世とローグを引き離そうとします。
しかし、ジョージ6世はローグを自分のそばに置くことを譲りませんでした。
そんなジョージ6世は、相変わらず国王となることに不安を抱いています。
見かねたローグが挑発すると、ジョージ6世はその態度に憤りを感じ、怒鳴りつけました。
そのことをきっかけにジョージ6世は自分の雄弁さに気づき、自信を取り戻します。
やがて、ナチス・ドイツが英国大使館の要望を受け入れなかったことにより、第2次世界大戦が始まります。
勝利のためには、国民を鼓舞する王の声が必要でした。
国民に王の声を届けるため、ラジオ放送が行われることになりました。
ジョージ6世とローグは2人きりで放送室に入ります。
ローグは友達と話すみたいにスピーチするようアドバイスし、ジョージ6世は緊迫した状況の中での生放送を見事に成功させました。
宮殿の外で待つ市民からの大喝采を受け、ジョージ6世はバルコニーから堂々と手を振ります。
ローグはその後姿を穏やかに見守っていました。
『英国王のスピーチ』感想
キャストやスタッフの強い想い
『英国王のスピーチ』でアカデミー脚本賞を受賞した脚本家のデヴィット・サイドラーは、自身が吃音症だったこともあり、この作品に強い思い入れがありました。
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これはライオネル・ローグについての資料や記録がほとんど見つからなかったことや、イギリス王室がジョージ6世とエリザベス妃の存命中に事実を公表することを拒否していたためにかかった時間でした。
ようやく制作・公開できるようになったあとも、舞台となったイギリスでは過激な言葉遣いの台詞があることを理由にR15指定されてしまい、一悶着がありました。
監督のトム・フーパ―がこの年齢制限は適切な判断ではないと批判したことで、12A(大人が同伴していれば12歳未満でも鑑賞可能)まで引き下げられますが、アメリカでも年齢制限がかかってしまいます。
より多くの人に観てもらいたいという気持ち、とりわけ若年層にこそ観てほしいという想いから、一部では問題視されたシーンを編集したバージョンを制作する声も上がりました。
この件については、監督のトム・フーパ―をはじめ、出演したジェフリー・ラッシュやヘレナ・ボナム・カーターなど関係者が反対しています。
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実際に幅広い世代に響く、勇気を与えてくれる作品になっています。
『英国王のスピーチ』まとめ
いかがだったでしょうか。
史実を基に国王と平民との友情を描く映画『英国王のスピーチ』。
悩みを抱えている時、不安な気持ちになっている時におすすめの作品です。
- 友情や夫婦愛が成功へと導くストーリー
- 戦争前の空気感が伝わってくる演出
- キャストやスタッフの想いが詰まった作品
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