『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』は、小さな田舎町に住むエリーの心の片側探しを描くストーリー。主人公のエリーが語るように、この物語は恋愛ものでもなければ、望みがかなう話では、ありません。
文学的であり、哲学的でありながら、難しいトーンにならず、さわやかで穏やか、瑞々しい感性を感じられる作品です。
町で唯一のアジア系住人で居心地の悪さを感じるエリーと友情を深める純朴なスポーツ青年のポール、そのポールが心を寄せるアスターと密かに心を通わせるエリーの3人の繊細な心模様。
エリーの目を通して語られる心の旅は、視聴者の心のひだにきっと触れることでしょう。
・はじまった奇妙な文通
・交差する想いと芽生えた友情
・いつか出会う片割れ
それでは『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』あらすじ・感想
ラブレターの代筆
小さな田舎町に住むエリー (リーア・ルイス)は、駅長の仕事をする父とふたり暮らし。
学校になじめず、いつも控えめでひとりのエリーだけど、小遣い稼ぎでクラスメイトのレポートを書くのは抜群にうまく、A評価はあたりまえ。
他の生徒のレポートを代わりに書くエリーを黙認するゲセルシャップ先生(ベッキー・アン・ベイカー)も、その出来に舌を巻くほどです。
そんなエリーに、ラブレターを書くのを手伝ってほしいと声をかけたアメフト部のポール(ダニエル・ディーマー)。ラブレターの代筆なんて書かないと、いったんは断ったものの、「君は恋をしたことがないからラブレターが書けないんだ。」とけしかけられ、ボールを手伝うことになってしまうのでした。
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はじまった奇妙な交流
ポールが心を寄せるアスター(アレクシス・レミア)は、キレイで誰にでも優しく学校の人気者。
そのアスターに、実はほのかに恋心を抱いていたエリーが、ポールのかわりに書いた手紙にアスターから返事がきたことで、思いがけず始まった交流。
文学や美術に造詣が深いアスターと、ポールとしてアスターに手紙を書き送る奇妙なやりとりは続くのでした。周りの期待に流され、それに応えようとするアスターの意外な悩みや、絵を描くことを辞めた心の吐露に驚きが隠せないエリー。
表向きはポールの手紙としてアスターとやりとりを続けるポールとエリーは、アスターをもっと知ろうと作戦会議を開いては、一緒に過ごす時間がどんどん増えていくのでした。
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エリートポールの友情
文字だけのやりとりに業を煮やしたポールが勢いで送ったメールでデートをすることになったポールとアスター。
これまでやりとりをしてきた文字だけのポールと実際に会ったポールとギャップを感じながらもアスターは、武骨だけど人のいいポールとデートを純粋に楽しむのでした。
エリーと多く時間を過ごすようになったポールは、頭のよいエリーがどうしてこんな田舎町にいるのかを問います。
もともとは、工学博士のエリーの父エドウィン(コリン・チョウ)が駅の仕事を受けたのは、システム・エンジニアの技術職への仕事を得る足掛かりとするため。
でも中国出身のエドウィンの語学力が追いつかずに仕事を得ることができず、駅での仕事を続け町にとどまり続けているというのです。
ポールもまた、昔から町にある家族経営のレストランの四男で、この町から出たことないといいます。
祖母のレシピを受け継ぐ店で、自分の作る「タコス・ソーセージ」をメニューに新しく入れたいと、自分のことをエリーに話すのでした。
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ふたりが友情を育んでいく様子がとても繊細で丁寧に描かれています。お互いのことをよく見ているし、知らないところで、お互いがお互いの背中を押す自然な関係です。
なにより、ダニエル・ディーマーの演じるポールの好感度は相当に高いです。
理解者に出会えた
高校生活最後の学芸会が終わり、誘われた二次会でしたたかに酔ってしまったエリーは、次の日、ポールの家で目を覚まします。
そこに自分の絵をポールに渡しに来たアスターと鉢合わせ、とっさにポールとアスターを陰で応援してきたとうまく話を合わせ、アスターの絵をみて「孤独だけど希望がある」と去ろうとします。
自分の心情を言い当てるエリーの言葉を、怪訝に思ったアスターは、エリーを自分の秘密の場所へとドライブに誘うのでした。
密かにアスターの想いを寄せていたエリーは、ポールの陰から離れ、初めて自分の言葉をアスターとかわすのに、どぎまぎ。アスターが語る、実際のポールと文章だけのポールに感じた違和感、それでも理解者に出会えたと口にするのを耳にして、アスターもエリー同様にふたりの交流にざわめきを感じていたと知るのでした。
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そんなことを知らないエスターと同じ時間を過ごし、はにかむエリーが瑞々しく、静かに美しいシーンでした。
自分を偽らない言葉
アメフトの試合での大活躍をし、気持ちが高ぶり、エリーにキスをしようとしたポール、そんなふたりの姿の見たアスターに動揺をするエリーに、ポールはようやくエリーがアスターを好きだったことに気付きます。
そして、ついにアスターにも、ポールが書いたとばかり思っていた美しい手紙や文章は、実はエリーが書いたものだと知られてしまいます。
そんなエリーは、アスターとポールを前に、「本当の自分を偽るのはつらい。愛は、寛大でも、親切でも、謙虚でもなく、厄介で、おぞましくて利己的で大胆。
重要なのは、自分の片割れをみつけることじゃなくて、相手によりそうのに、努力をして手を伸ばし、失敗することで、次に備えること。」と、堰を切ったように話すのでした。
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』をレビューしてきました。
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』は、学校になじめず透明人間のような存在だったエリーが、実直で素朴なポールとの交流がきっかけで、塞ぎがちだった気持ちが解放されて、彩りを取り戻していく物語。
理解者を渇望していたエリーが、ポールを応援するうちに友情が芽生え、ポールのかわりに、エスターとやりとりをするエリーは、文学を引用して美しい言葉を語ります。
そんなエリー言葉に惹かれ、自分の心情を吐露するエスター。
決して本音を語らずにいたエリーが、自分に理解を示す相手に率直でいることに心地よさを感じるのも無理はありません。
題名の「ハーフ・オブ・イット」は、古代ギリシャの「人間には4本の手足とふたつの顔があって、幸せで完璧だった。神が、完璧すぎる人間の力を恐れ、人間の身体をふたつに引き裂いて以来、人間は半身を失った人間は地上をさまようようになってしまった。」という「片割れへどこにいる」からきています。
エリーやポール、エスターが探していたのは、別の半身ではなく、まだ自分探しの途中にある、自分自身だということ。
・理解者を渇望するエリー
・自分を知る心の旅
・面白いのはこれから
小さな町での暮らす三者三様のきめ細やかな心情が見るのが快いし、誰が誰とやりとりをしているのか、混線しているのにも関わらず、負の感情はなく、お互いに思いやりをもつ作品のトーンに安心を覚えます。
主演のリーア・ルイス、ダニエル・ディーマーの好演もひかり、抜群のバランスとハーモニーを生み出しています。
最後はご多聞に漏れず、嘘はバレるのですが、エスターの心のどこかで、心の目で相手が見えていたというセリフに、納得するのです。
人を知るには、まず自分を知ることから。いつか見つける、自分の半身を探す前の通過点にいる人間の「面白いのはこれから」。
エリーは、ポールとの友情とアスターとの交流を得て、確かな自信をもって、これからの道を歩むのです。
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