『思いやりのススメ』は、ポール・ラッドの主演の介護士ベンと身体の不自由なトレヴァーと心の交流を描いたロードムービー。
介護の基本の5つ、「問いかけて、聞いて、よく見て、手伝い、また問う」をベースに、人と人にとって何よりも必要なコミュニケーション、思いやりを持つことの大切さを、ユーモラスに描いております。
ポール・ラッド演じる息子を失い心に傷を負ったベンと、心を閉ざして臆病なトレヴァー、道中で出会ったヒッチハイクのドットもメンバーに入れた3人の心のひだにふれる、優しい気持ちになれる作品です。
・家を飛び出そう
・実は臆病なトレヴァー
・自分の殻を破るきっかけ
それでは『思いやりのススメ』をレビューします。
目次
【ネタバレ】『思いやりのススメ』あらすじ・感想
初仕事の担当は、毒舌トレヴァー
介護士認定を受けたばかりのベン(ポール・ラッド)が、面接に訪れたのは、9か月前にイギリスから大手銀行の支店長として転勤してきたイギリス人のエルサ(ジェニファー・エール)の自宅。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーを病にもつ息子をもつエルサは、まだ介護士としての実績も経験のないベンに難色を示すものの、
そこに乱入したトレヴァー(クレイグ・ロバーツ)の、「アンタは、どんなふうにボクのケツを拭いてくれるの?」との問いに、
「ケツに、クソが残らないよう、しっかりと拭く。」と大真面目な答えをしたベン。
気難しく、面倒くさいトレヴァーは、その答えが気に入った様子で「合格」と、即決。
エルサはベンをトレヴァーの介護士として雇うことにしたのでした。
トレヴァーの日課は、起床もテレビも毎日ぴったり同じ時間、食事も朝昼晩と、ワッフル2つとソーセージ1本だけで、それ以外は食べずに、全てを栄養剤で補っているといいます。
寝るときには、呼吸器をつけ、出かけるのは、週に1回、公園に出かけるときだけ。
ルーティンを守らないとパニック障害を起こすというトレヴァーは、それでも10代の男子、毒を吐きまくり苦しがるふりをしたり、
シャレにならないいたずらで、ベンを困らせては喜ぶ悪魔ぶり。
そんなトレヴァーの憎まれ口にも、慣れて、気にすることなく、トレヴァーの病状さえもネタに返すようになったベンを、トレヴァーはだんだんと慕うようになるのでした。
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くだらないセックスネタをいうトレヴァーに、ベンもしょうもない下ネタで応戦するという、コミュニケーションの王道も満載。
いたずらばかりのトレヴァーに、ハイハイハイと雑に返すさまが妙にツボでした。
嘘から出た誠 「世界一深い穴」を目指すドライブ旅行
息子を亡くし、立ち直れずにいるベンに、心無い言葉を投げてしまったトレヴァー。
怒ったベンに、「お前なんかクソだ!家に閉じこもって人生をムダにしている。」と怒鳴られ、ムキになったトレヴァーは、母のエルサに、「ベンにドライブ旅行に誘われた。」とまるで逆のことを口走ったのです。
怒鳴ったことで、エルサとトレヴァーとの関係が悪化するとばかり思っていたベンは、あっけに取られたものの、トレヴァーを外に連れ出すいい機会だとトレヴァーの嘘にのっかることにします。
てっきり、母にベンとのドライブ旅行を反対されると思い込んでいたトレヴァー。
エルサとベン旅を前向き検討するのをみて、怖気づくも、後の祭り。
母が出張で不在の一週間を使ってトレヴァーが、作っていた奇妙な博物館や史跡のあるアメリカの「ダサい名所マップ」をめぐることにしたのでした。
イギリスにいたときも、アメリカにきても自宅を閉じこもったまま、どこにも出かけたことがなく弱気になるトレヴァーの背中を押し、トレヴァーの地図にある「世界一深い穴」を目的地として、ふたりは車を出発させたのでした。
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それを気にしたトレヴァーは、心にもない大ボラをふくのにはビックリ…ベンも、トレヴァーの思いもよらない反撃に、は?と驚くのだけど、
「そうだ!旅に出よう!」とすぐに前向きに切り返すところがすばらしい。
介護の基本、「何事も前向きな姿勢」の実践をするいい介護士なのです。
ベンに怒鳴られ、ムキになったことが実現に向かうと、途端に尻込みをするトレヴァーが、ただの駄々っ子じゃなく、彼の本音が繊細に透けてみえる、ぐいぐいと引きこまれるストーリー展開なのです。
旅の仲間に加わったヒッチハイカーのドット
イギリスでも、アメリカにいる今もほとんど外に出たことのないトレヴァーは、これまでの威勢の良さは消えて、不安な気持ちでいっぱい。
体の不自由なことで、出来ることさえも諦めてしまっていたトレヴァーは、新しいチャレンジをけしかけるベンに応戦する形で、少しずつ勇気を出し始めるのでした。
そして、ベンとの旅で、3歳のころに出て行ったアメリカ人の父のいるソルトレイクシティにも立ち寄るとも言いたしだのです。
道中に知り合ったヒッチハイクの女の子のドット(セレーナ・ゴメス)を、トレヴァーが気にするのに気づいたベン、話かけて「車の乗るように話しかけてこい!」とけしかけたのに、自分のヘタレ心に負けて、きびすを返して車いすで戻ってくるトレヴァー。
そんな本当は臆病なレヴァーの気持ちに寄り添い、ドットを車に乗るように誘うベン。
ベンとトレヴァーの車に同乗することになったドットは、デンバーの美術学校をめざす21歳の元気な女の子。
明るく、物怖じしないドットとの旅は、体の不自由なことでいろんなことを諦めていたトレヴァーに、勇気と自信をもつきっかけとなるのでした。
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「「問いかけて、聞いて、よく見て、手伝い、また問う」。
家では横暴極まりないトレヴァーでしたが、外の世界では周りに気を使って、自分の本当の気持ちをうまく表現できないトレヴァーとよく話して、よく見ています。さりげないその姿は、介護士でなくとも、相手の気持ちを尊重することが基本だといえるのです。
ヒッチハイカーのドットは、トレヴァーの頭の良さをすぐに見てとり、自然に受け入れて、そこが気持ちいいのです。
ドットをデートに誘おうと、不自然なベンとトレヴァーにクスっと笑って、サラッと「じゃ、準備が出来たら声かけて」と自然に去る、ドットが、チャーミングで、たまりませんでした。
「世界一深い穴」での世紀の立ちション
車が故障して困っている妊婦のビーチズ(メーガン・ファーガソン)も旅の道連れに4人で、到着したトレヴァーの父のいるソルトレイクシティ。
3歳の自分を置いて家を出て行って以来、会ったことのない父親のボブ(フレデリック・ウェラー)との最悪な再会にショックを受けるトレヴァー。
父親への複雑な想いをベンにぶつけ、ケンカになったふたり。そんな険悪なムードの中でも、ドットにお尻をたたかれ、向かった「世界一深い穴」で、なんとピーチズが産気づいてしまい、ペンは子供を取り上げることになってしまうのです。
そして、そこはベンやトレヴァー、さまざまな想いが交錯する旅、ドッドとピーチズとの別れを意味していたのでした。
ドットとピーチズが去り、意気消沈するトレヴァーに、ベンが手助けしたのは、立ち上がることの出来ないトレヴァーの、「世界一深い穴」での世紀の立ちションだったのでした。
『思いやりのススメ』あらすじ・ネタバレ感想まとめ
以上、ここまで『思いやりのススメ』をレビューしてきました。
・話をきくことと、相手に寄り添うことの大切さ
・チャレンジは、続けるもの
・一歩前に踏み出したトレヴァーとベン
『思いやりのススメ』は、難病をもち車いすのトレヴァーにふりまわされ気味だった介護士ベンの楽しくも、ちょっぴりせつない旅の物語です。
家にこもって、シャレにならないいたずらと憎まれ口ばかりたたくトレヴァーをドライブ旅行に連れ出したベン。心を閉ざすトレヴァーを、軽くいなすベンと、道中に加わったヒッチハイクの女の子のドットが、トレヴァーの心の鎧を少しずつはずしていくのに、心が温まります。
コミュニケーションをとるということは、相手をよくみて、よく聞くこと。相手の気持ちに寄り添い、お互いを知れば知るほど痛い所に手が届くようになる、助け合いとはそこから始まるのです。
友情を育むには、ケンカもするし、動揺もある、でもそれは、コミュニケーションがあればこそ。
「人生は、そうクソでもないさ‥」と最後にそうつぶやくベンもまた、トレヴァーに触発され、かたくなだった自分の心を解放して、つきものが落ちたようなすっきりとした表情をみせるのです。
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