『さよなら、退屈なレオニー』はセバスチャン・ピロットが監督・脚本を手がけた青春映画。
日本では2018年に第31回東京国際映画祭「ユース」部門にて『蛍はいなくなった』のタイトルではじめて上映され、2019年6月に劇場公開されました。
- 不安でつぶされそうなのに不思議と自信に満ち溢れたレオニーの青春に共感
- 良いことも悪いことも変わっていく流れの中で必死にもがく大人たち
- The Wisely Brothers「メイプルカナダ」との親和性の高さ
それではさっそくレビューしたいと思います。
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目次
『さよなら、退屈なレオニー』作品情報
作品名 | さよなら、退屈なレオニー |
公開日 | 2019年6月15日 |
上映時間 | 96分 |
監督 | セバスチャン・ピロット |
脚本 | セバスチャン・ピロット |
出演者 | カレル・トレンブレイ ピエール=リュック・ブリラント フランソワ・パピノー リュック・ピカール マリー=フランス・マルコット |
音楽 | フィリップ・ブロー |
【ネタバレ】『さよなら、退屈なレオニー』あらすじ・感想
鬱屈としたレオニーの青春
主人公のレオニー(カレル・トレンブレイ)は高校卒業を1ヶ月後に控えていましたが、やりたいこともなりたいものも分からず、気怠い日々を送っています。
友だちがいないわけではないけど何となくグループに馴染めず、信頼を寄せる実父は遠くで暮らし、家では大嫌いな義理の父と住んでいて、心から落ち着く居場所がありません。
「早く街を出たい」と言いつつも行動には移せない、でも行動できていないだけで何でもできるような自信もある。
その自信はきっと不安の裏返しで、この自信と不安の浮き沈みや将来がぽっかりと空いた感覚は誰もが共感できる青春の一時ではないでしょうか。
ある日、ギター講師のスティーヴ(ピエール=リュック・ブリラント)と出会い、何も続かなかったレオニーがギターを習い始めます。
レオニーが欲しかったのはギターの技術ではなく、心の拠り所。恋愛感情ではありません。
レオニーにとって、スティーヴは将来への不安や孤独などやりきれない気持ちを受け止めてくれる父親であり友人なのです。
青春映画と言いつつ、恋愛もアルコールもない物語ですが、スティーヴに寄り掛かって自分自身や父親と向き合い、少しだけ大人になったレオニーがバスに飛び乗る極上のラストシーンは観る者の心に柔らかくて温かくて清々しい風を吹き込みます。
何かを探してもがく大人たち
主人公レオニーの成長に心を揺さぶられる傑作であることはすでに説明しましたが、レオニーの周囲の大人たちにも要注目です。
レオニーが誰よりも信頼していた父親が、過去に母親に暴力を振るったという事実はレオニーに大きなショックを与えます。
レオニーは心に傷を負い、物語上の最大のターニングポイントとなりますが、その事実を“レオニーが知った”ことが大人たちを動揺させます。
過去を打ち明ける実父のいたたまれない姿から、“両親を引き離した悪人”としてレオニーから毛嫌いされてきた義理の父の複雑な心境から、100%善人な人間なんていないということをレオニーと一緒に思い知らされました。
また、レオニーに“頼られる”だけで生い立ちや過去の経歴がほとんど説明されなかったスティーヴも、断片的な描写から何かしら大きな喪失や失望を経ていることが想像できます。
一緒に暮らしているのは老いた母親と愛犬、地下スタジオに籠って生活するスティーヴは強い孤独感を放っていますが、レオニーとの出会いで少し変わったように見えました。
終盤、スティーヴの母親が息を引き取ったとき、葬儀場にレオニーを呼びます。
特別なにかを語るわけでもないですが、はじめてスティーヴがレオニーを頼った場面と見ることもできます。
母親の死後、地下のスタジオや家をどうするか問われ「落ち着くから今のままで良い」と答えたのに、荷物を上階へ運ぶシーンがありました。
レオニーと過ごした時間が前向きに生活を変える力になっているように思えて、心に響きました。
スティーヴも実父も義理の父も今を良くしたいだけなのに、否定され衝突しもがいています。
見えない何かを探しているような姿は、ある意味愛おしくもあり、寂しい余韻が残りました。
“さみしさを愛しく思える日”
余談でもないですが、本作『さよなら、退屈なレオニー』の日本版予告編で、The Wisely Brothersというバンドの楽曲「メイプルカナダ」がタイアップで起用されています。
賛否が分かれる洋画の日本版主題歌も多いですが、この曲に関しては驚くほど映画の内容にフィットしているので、ぜひ映画と併せてチェックしてみてほしいです。
2014年下北沢を中心に活動を開始し、2018年2月に1stフルアルバム「YAK」と共にメジャーデビュー。
2019年7月2ndアルバム「Captain Sad」をリリース予定。
自他ともに認める“映画狂い”のボーカル・真舘晴子さんは、インタビューにて下記にように語っています。
映画を観て「こんなことがあるの?」ってくらいピッタリでびっくりしました。
しかも、カナダに行ったこともないし、メイプルっていう言葉もメイプルシロップくらいしか知らないのに、作った瞬間から、この雰囲気は“メイプルカナダ”だと思っていたんです。
リリースから3年経っていますけど、その思いがいま繋がった気がしてうれしかったです。
出典:www.cinra.net
と話していますが、本当に歌詞と物語の親和性が高くて感動しました。
“恥じらいはいつの間にか自信と姿を変えて 戸惑いを心の余力として考えたの”
という曲中の一節は、レオニーの不安を裏返した自信にピッタリ重なりますよね。
“さみしさを愛しく思える日がきても 何もないのに何も手放してないのに”
曲のピークで歌われるこのフレーズは、映画のキャッチコピーにしても良いくらい登場人物たちの心情を完璧に捉えていると思います。
もともと大好きなバンドで、この映画を知ったきっかけもタイアップの情報でしたが、好きなものが素晴らしい作品と繋がる喜びに鑑賞後もずっと浸りっぱなしです。
この映画を観た帰り道は、The Wisely Brothersを聴きながらバスに飛び乗れたら最高ですね!
『さよなら、退屈なレオニー』まとめ
🌿絶賛コメント到着🌿 /
もどかしいこと、上手くいかないこと、
それもある種の光だとおもう。
今は重ならなくても、すこしづつ。
水銀灯がつくみたいに時間はかかるけど、
何かが変わっていっていることが、
彼女の目を見れば分かるはず。#真舘晴子(@WiselyBrothers)#さよなら退屈なレオニー pic.twitter.com/2Cf5Tp1uOr— 映画「さよなら、退屈なレオニー」 (@sayonara_leonie) 2019年6月15日
『さよなら、退屈なレオニー』の公式Twitterでも、The Wisely Brothersボーカルの真舘晴子さんによる本作のコメントを紹介していました。
とても良い映画なので、ぜひご覧になってみてください。
- 心に柔らかくて温かくて清々しい風が吹き込む極上のラストシーン
- 今を良くしようと見えない何かを探す大人たちの姿が寂しい余韻となって残る
- 見事にハマったタイアップ曲「メイプルカナダ」がおすすめ
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