『野性の呼び声』あらすじ・ネタバレ感想!名作冒険小説の完全実写化!人間と犬の絆を描いた奇跡と感動の物語

『野性の呼び声』あらすじ・ネタバレ感想!名作冒険小説の完全実写化!人間と犬の絆を描いた、奇跡と感動の物語

出典:109シネマズ

アメリカの文豪ジャック・ロンドンが1903年に発表した名作冒険小説「野性の呼び声」(または荒野の呼び声)を、ハリソン・フォード主演で映画化した本作。

アメリカの小・中学校の教科書に載り、世界47ヶ国に翻訳されているほど、知名度、人気が共にある作品で、何度も映画化されています。

原作で描かれたテーマは、生存と野性への復帰。

映画よりなお困難な環境を生き抜いた、バックの姿が物語の中にあります。

完全な実写化は不可能と言われた『野性の呼び声』を撮影技術の進歩により達成した今作では、フルCGで実際の犬を使うのは危険とされたシーンを息を飲むようなダイナミックな迫力で表現しています。

ポイント
  • フルCGで描かれているからこそ、バックが表現豊かでとにかく可愛い。
  • 現代の社会性に合わせ、原作と違う部分があちこちに。
  • サバイバルアドベンチャーではなく、自分の居場所をみつける旅の物語です。

それでは『野性の呼び声』をネタバレありでレビューしていきます。

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『野性の呼び声』作品情報

『野性の呼び声』

(C)2020 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

作品名 野性の呼び声
公開日 2020年2月28日
上映時間 99分
監督 クリス・サンダース
脚本 マイケル・グリーン
原作 ジャック・ロンドン
出演者 ハリソン・フォード
ダン・スティーヴンス
オマール・シー
キャラ・ジー
カレン・ギラン
ウェス・ブラウン
テリー・ノタリー
コリン・ウッデル
アレックス・ソロヴィッツ
スコット・マクドナルド
音楽 ジョン・パウエル

【ネタバレ】『野性の呼び声』あらすじ・感想


あらすじ

時は19世紀末、ゴールドラッシュ期のカナダのユーコン準州。

雪と氷に覆われた土地ですが、一攫千金という夢を求め冒険家たちが訪れる危険な場所でした。

セントバーナードとコリーのミックス犬であるバック(テリー・ノタリー)は、遠く離れたカリフォルニアで地元の名士であるミラー判事の屋敷で何不自由ない暮らしを送っていました。

しかし、犬ぞりを引く犬は当時高価で取引されていたため、バックは屋敷から誘き出され業者によって遠くカナダのユーコン準州に送られてしまいます。

捕らえられたバックは棍棒を持った人間に殴られたことで、「棍棒を持った人間」には敵わないと船の中で学びます。

そして辿り着いた極寒の地で、初めての雪に触れるバック

また、息子を亡くし妻とも別れ一人で雪の大地までやって来ていたソーントン(ハリソン・フォード)とこの時初めて出会います。

『野性の呼び声』

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バックは犬ぞりで郵便を届けている2人組フランス系カナダ人のペロー(オマール・シー)と先住民のフランソワーズ(キャラ・ジー)に買われ、そり犬として働くことになり様々なことを学んでいきます。

『野性の呼び声』

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フランソワーズを助けたことで2人からの信頼も厚くなりますが、リーダー犬のスピッツはバックに苛立ち、ある日2頭は対決します。

バックはスピッツに打ち勝ち、スピッツはそのまま姿を消したため、バックはそり犬たちのリーダーになります。

しかしバックが仕事にやりがいを覚えたのも束の間、政府からの通達によりそり犬での郵便事業は廃止になってしまいます。

悲しむペローたちですが、仕方なくバックを手放すことになります。

『野性の呼び声』

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バックたちの新しい主人は黄金を探しに来たハル(ダン・スティーブンス)、ハルの姉マーセデス(カレン・ギラン)と夫という3人組でした。

しかしハルたちはそりの扱いも、極寒の地での旅の知識も、何も持ち合わせておらす無理にバックたちを働かせようとします。

そこに偶然通りかかったのがソーントンでした。

ソーントンはハーモニカを拾ってくれたバックを覚えていて、ハルたちに旅は危険だと告げますが、聞き入れられませんでした。

『野性の呼び声』

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無謀で危険な行程を強いられるバックは疲れ果て、ついに倒れてしまいます。

追って来たソーントンに、凍った川が融けかけていて危険だと教えられても、仲間たちに止めようと提案されても、無理に先を目指すハル。

倒れたリーダーを心配しながらも犬たちはそりを引いて川を渡っていきました。

ソーントンは気を失っているバックを自らが暮らす小屋に連れて帰ります。

やがて元気になったバックとソーントンの間には確かな絆が生まれます

『野性の呼び声』

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ソーントンは死んだ息子が行きたがっていた地図にない土地を目指してバックと旅立つ決意をします。

カヌーで川を下り、山を越えた先に待っていたのは、どこまでも広がる美しい大自然でした。

『野性の呼び声』

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無人の小屋をみつけたソーントンとバックの新しい生活が始まります。

ソーントンは川の中で黄金をみつけバックは美しい森林狼と出会います。

バックは昼の間は狼たちと狩りをしたりと森の中を駆け回って過ごし、夜はソーントンの元に戻り愛情を確認する日々を送るのでした。

しかしだんだんとバックの帰りは遅くなっていきソーントンはバックが野性に目覚めつつあると悟ります。

『野性の呼び声』

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そうしてソーントンは家に帰ろうと決意し、必要な分の黄金以外を川に戻してしまします。

ところがそこに復讐に燃えるハルが現れます。

ハルはあの後、犬たちにも逃げられ何もかもを失ったことでソーントンを逆恨みしていたのです。

小屋は燃え上がり、ハルに撃たれ倒れるソーントン。

そこへバックが駆け付けハルを炎の中に突き飛ばします。

ソーントンはバックに看取られて息を引き取ったのでした。

その後バックは森林狼と共に行動するようになり、やがて白い狼との間に子供も生まれ、群れのボスにもなります

それでもバックは時折ソーントンと過ごした小屋の跡地を訪れるのでした。

豊かな感情表現を見せるバックの描き方にびっくり

実写版の『ライオンキング』を鑑賞した際、既にフルCGで描かれる動物たちに驚かされていましたが、今作『野性の呼び声』の「バック」にはまさに脱帽。

冒頭はあまりにアニメ的な描き方に可愛いながらもある種の違和感を覚えましたが、すぐにまったく気にならなくなりました。

くりす

とにかく表情豊かなバックがまるで本当に生きているようですごいです!くるんとした大きな目やちょっとした仕草が本当に可愛いんですよ。
『野性の呼び声』

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モーション・キャプチャーでバックを演じたのは、元シルクドソレイユのアクターのテリー・ノタリーです。

ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラムや『猿の惑星』シリーズのシーザーをモーション・キャプチャーで演じたアンディ・サーキスと共に仕事をしているテリー・ノタリー。

『猿の惑星』ではシリーズ通して役者たちに猿の指導をしていたパフォーマンスコーチであり、ロケット役も演じています。

そんなテリー・ノタリーがモーション・キャプチャーを通して表現したのが、主役であるバックの豊かな個性なのです。

くりす

バックは物語の中で会話こそしませんが、感情豊かな目や動作で、台詞を言うより雄弁に様々な感情を伝えてくれます。

映画での主役は間違いなくバックで、人間のソーントンは物語の語り手。

『野性の呼び声』

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物言わぬ動物が主人公でありながらも、バックのちょっとした首の傾げ方、瞬き、視線の動かし方で観客は物語をしっかりと追うことができます。

技術の進歩は当然なのですが、それでもモーション・キャプチャー・アクターのテリー・ノタリーが素晴らしい演技をしたからこそ、観客が惹き付けられる「バック」が生まれたのだと思います。

監督のクリス・サンダースと主演のハリソン・フォードもテリーの演技力を絶賛していますからね。

くりす

生き生きとした動物たち、広大で美しい大自然を描いたCGを観ると、まるでドキュメント映画でも観ているかのような錯覚を覚えるほど。

犬は大事な家族だと思っている方、動物モノの作品が好きな方にはオススメですよ!

原作と異なる点はこんなところ

長年愛されてきた物語『野性の呼び声』ですが、原作と今回の映画では大きな違いがいくつか見られます。

少し挙げていくと、まずソーントンという男の背景が違います。

『野性の呼び声』

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映画では、子供を亡くし妻との関係がこじれ遠い極寒の地に流れ着いた男として描かれていますが、原作では黄金を採掘しに来た男です。

くりす

ハリソン・フォードが演じていることもあって、暗い影を背負っていながらも魅力的な人物になっていますよ。ソーントンとバックの姿は、『スター・ウォーズ』のハン・ソロとチューイをどこか思い出させます(笑)

それからバックは原作ではシアトルでフランス系カナダ人の2人組に買われますが、彼らは郵便を運んでいたわけではありませんでした。

そり犬として働くようになってからそりのチームリーダーだったスピッツと対立して戦いに勝ったのは同じ流れですが、原作ではスピッツは負けたことでエスキモー犬の群れに殺されてしまっています。

そしてその後政府命令で、そり犬チームはスコットランド系の混血の男に引き渡され郵便ぞりで酷使されることになるのです。

原作で犬ぞり用にバックを買った2人組と郵便配達人の役割をまとめバックにとって悪くない主人として登場させたということですね。

『野性の呼び声』

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原作で郵便ぞりで疲れ果てた犬たちは使い物にならないと売り払われてしまいます。

売却された先がハルたちです。

ハルが無理に川を渡ろうとしたのを止めたのがソーントンという流れは、原作と映画は同じなのですが、原作では犬ぞりはソーントンが警告したようにそのまま氷が割れて川に落ちてしまうのです。

くりす

もっとも映画では犬たち、無事みんな逃げたことになったので、ほっとしましたが。

また、地図にない土地に向かうバックとソーントンの「2人旅」という状況は原作にはありません。

原作では仲間2人と金の採掘に行くソーントンに、そり犬として数匹の犬たちとバックは共に旅立つのです。

何より、ラストでソーントン(仲間や犬たちも)を殺すのは「インディアン」たち。

バックはソーントンも殺されたと理解したことで森の中へ戻って行くことになるのです。

ソーントンの死も、映画と違ってしっかりと描かれていません

原作ではインディアンの集団に襲われソーントンの仲間や犬たちが殺されていて、バックがインディアンを殺した後に姿の見えないソーントンも殺されたとバックは理解したのです。

さすがに100年前の小説を現代でそのまま表現したら大問題を巻き起こすことになるでしょうから、改変は当然だったのかもしれません。

くりす

ディズニーが関わっていて、ネイティブアメリカンの人たちにソーントンを殺させバックに復讐させるとか絶対あり得ない展開ですからね。動物愛護の点からも、バックにあまり過酷なことを強いるのも無理ですし、ソーントンを殺すのが白人男性のハルになるのも妥協点としては正解なのでしょう。

一本の映画としてまとめあげることや、現代の価値観・社会性を考慮すると、あちこち変更されたのは当然かなと納得するところも大きいです。

くりす

しかし一つだけあえて言うなら映画の中盤であれほどアウトドアに不向きだったハルが一人でよくソーントンのところまで来られたなあと、謎に思ったのも確か。復讐心は川も山も超えさせるんですかねえ。ハルを演じるダン・スティーブンスはなかなか良かったんですけど。

野性への復帰というより、居るべき場所をみつけるという物語

今作『野性の呼び声』のメガホンを取ったクリス・サンダース監督は、『ヒックとドラゴン』第1作の監督と脚本をディーン・デュボアと共同で務めており、第2作『ヒックとドラゴン2』、第3作『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』には製作総指揮で関わっています。


リロ&スティッチ』でも、監督と脚本を担当していて、種族の違う言葉も通じない者同士のふれ合いや絆を描くのはお手の物でもあったでしょう。

何より音楽のジョン・パウエルも、シリーズ通して『ヒックとドラゴン』の音楽を担当した人物。

くりす

私が大好きなヒクドラに関わった人たちが手掛けただけあり、あちこちからヒクドラと同じ匂いがプンプンと(笑)と言うより、ヒクドラが『野性の呼び声』を意識していたのか?

雪崩を避けるシーンや、バックがフランソワーズを助けるため氷の中に飛び込むシーンなどは特に同じテイストを感じます。


音楽も同じジョン・パウエルなので、当然と言えば当然なのですけれど。

そしてバックとソーントンが、かけがえのない絆・愛情を持ち合うのも前述の作品たちと同じ。

大変素晴らしい絆、愛情、友情なのですが、しかし2人の冒険に「サバイバル臭」がほぼないのがどうにも残念なのです。

予告を観た限り、過酷な環境を生き抜くサバイバルアドベンチャーになっているのかと想像していたので正直拍子抜けでした。

くりす

原作を考えれば想像するのが間違っていたんですけどね(笑)しかしまったく危機感がなくほのぼの道中になるとは予想外すぎました。
『野性の呼び声』

(C)2020 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

原作が描いたのが、生存と野性への復帰だとすると映画で描かれたのは、自分が自分らしく生きる場所、もしくは「帰るべき場所」をみつけることでした。

原作でも映画でも甘ったれた飼い犬だったバックがいきなり自然に帰ったとしても上手く順応できるはずもありません。

人間のエゴで過酷な環境に追いやられながらも、生きる術を学んでいったことで、バックは先祖である狼の暮らす大自然の中へ帰ることができました。

『野性の呼び声』

(C)2020 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.

くりす

ソーントンとの愛情を大切に感じていたため、野性に戻ることをどこか躊躇っていたバックが、ソーントンを亡くしたことで人間社会への未練のようなものを断ち切れたことも大きかったと思います。

映画のソーントンもまた、森にいる時間が長くなって来ているバックの姿に自らを顧みたのか、バックと別れて妻の元へ一度は帰ろうとします。

くりす

お年を召されたなあと感じるハリソン・フォードですが、しかしやはり激シブで格好良いのです!

しかし復讐心に燃えるハルにソーントンは撃たれてしまい人生最後の相棒であるバックに包まれて、息を引き取ることになってしまうのです。

くりす

ソーントンは亡き息子と一緒にやり遂げたかった冒険をバックと成し遂げられたこと、かけがえのない相棒で家族のバックの傍らで最期を迎えたことで、ある意味幸せだったのだろうと思います。

息子への償いの気持ちを抱えていたソーントンですが、バックに出会ったことで本当の自分を取り戻すこともできたからです。

ハラハラドキドキのアドベンチャーでは決してありませんが、主人公のバックと相棒になるソーントンそれぞれが大切なものをみつける物語なので、鑑賞後は人生を考えさせられる人も出るような深みのある作品になっています。

くりす

最後に、余談ですが。

昔の少年漫画『銀牙~流れ星 銀』が好きだった人はこの作品を気に入るのではないかと思っています。

作者の高橋よしひろ氏が犬の物語を描く上で原作のジャック・ロンドンの作品に影響を受けていたとも語っているので、特別ポスタービジュアルを手掛けたのも納得です。

まるで銀牙のようなビジュアルのポスターも必見です。

『野性の呼び声』まとめ

以上、ここまで『野性の呼び声』についてネタバレありでレビューしてきました。

要点まとめ
  • 犬好き、動物好き、大自然の風景好き、『ヒックとドラゴン』好きにおすすめしたい!
  • 大人は考えさせられる内容ですが、ディズニーアレンジで小さなお子様も楽しめる映画に仕上がっています。
  • 犬の描き方はちょっとアニメショーン的なので、賛否が割れるポイントになるかも。予告詐欺でこれは犬の映画です!

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